チェンジリング - 岡本太陽

アンジェリーナ・ジョリー主演のクリント・イーストウッド監督最新作(70点)

チェンジリング

© 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

 仕事よりも寧ろプライベートでの動向が注目を集める女優アンジェリーナ・ジョリー。それだけ彼女には存在感があるという事だろう。実話を基にしたクリント・イーストウッドの新作『チェンジリング』でもその圧倒的なオーラは溢れんばかりに満ちている。現在、その映画のヒロイン、クリンスティン・コリンズを演じるジョリーは来年のアカデミー賞へのノミネートが確実視されている。

 J・マイケル・ストラジンスキーが書き上げた95%事実の脚本ははじめロン・ハワードが映画化するはずだった。しかし、スケジュールの都合で彼が降板(彼はこの映画のプロデューサーとして名を連ねる)、白羽の矢が立ったのがクリント・イーストウッドだった。彼はジョリーの容姿がその時代の女性にぴったりという事で彼女をクリスティン・コリンズ役に抜擢した。

 イーストウッドはここ数年で『ミスティック・リバー』『ミリオンダラー・ベイビー』等の上質な作品を次々に世に送り出し、映画監督として高く評価された。『チェンジリング』もカンヌ映画祭でプレミア上映される等、彼の生み出す作品の注目度は今や最盛期を迎えている。彼は今回の作品では腐敗した権力に抵抗する女性を描いているのだが、それと共通するテーマが彼の作品の中では『許されざる者』にもあった事が思い出される。

 時は1928年、主人公クリスティン・コリンズ(ジョリー)はシングルマザーでありながらもロサンゼルスの大手電話会社に務め自立した生活を送っている。ある週末彼女は急に仕事が入り、いつもの様に息子ウォルター(ギャトリン・グリフィス)を1人置いて職場に行くが、家に帰るとウォルターの姿がない事に気付く。息子の失踪を警察に通報する彼女は、数ヶ月後に息子が発見されたとの情報を得る。しかし、ウォルターが到着する列車のホームで喜びと不安に包まれるクリスティンが対面したのは外見の全く違う少年(デヴォン・コンティ)であった。

 クリスティンは背丈も振る舞いも違う、ましてや割礼の施された謎の少年をウォルターではないとジョーンズ警部(ジェフリー・ドノヴァン)に訴えるが、間違った少年を警察側の責任にしたくないジョーンズは彼女を精神的に異常をを来したとし、精神病院に入れてしまう。グスタフ・ブリーグレブ牧師(ジョン・マルコヴィッチ)の助けでクリスティンはその病院を出るものの、その頃 20人の少年を誘拐し殺害した容疑で、ゴードン・ノースコットという男が逮捕されており、彼女は彼が誘拐した少年達の中にはウォルターも含まれていた事を知る。

 この物語は子供の失踪で幕を開け、クリスティン・コリンズが警察権力に抵抗し、彼女が間違っていなかった事が晴らされ、ほっと胸をなで下ろして終わるのかと思いきや、不意を突かれる様にその後の展開が。それは前の物語とはまるで別物で、クリスティン・コリンズと警察の法廷での争いとゴードン・ノースコットがほんとうにウォルターを殺害したのかどうかが描かれてゆく。

 物語は20年代後半が舞台、その時代はまだ女よりも男が社会の中で権力を握っていたとき。クリスティン・コリンズがジョーンズ警部に異議を唱え精神病院に無理矢理入れられた様に、女がつい主張しようとすると叩かれてしまうという事が背景にある。アンジェリーナ・ジョリーがほんとうにその時代の女性に相応しい容姿をしているかは別として、人気のある彼女が主人公を演じる事で、彼女に降り掛かる悪夢が彼女をどんどん惨めにさせ、わたしたちは否応無しに同情してしまうのだ。

 映画の中では、ほとんどのシーンにアンジェリーナ・ジョリーが映っており、彼女の体当たりの演技が物語以上に話題で、彼女がその時代の女性の品を作り出すために声や振る舞いを淑やかにしているのが印象的だ。しかし、彼女はアンジェリーナ・ジョリー。物語の主人公というよりは彼女が違う星から来た人の様に周りとは独立した存在に見えてしまっている。

 物語の中で起こる不条理がわたしたちに苛立ちを覚えさせ、ドラマチックな感動を生むのだが、脚本があまりにも事実に正確に描かれているせいか、事実を述べているだけで、どうしてこの物語を映画にしなくてはいけなかったのかという制作者の意図があまり伺い知る事が出来ない。『チェンジリング』はおそらくオスカーでノミネートされるであろうが、クリント・イーストウッドの最高傑作ではないのは確かだ。

岡本太陽

【おすすめサイト】 
Warning: file(): php_network_getaddresses: getaddrinfo failed: node name or service name not known in /export/sd09/www/jp/r/e/gmoserver/6/1/sd0158461/cinemaonline.jp/wp-content/themes/blog/sidebar.php on line 80

Warning: file(http://www.beetle-ly.net/linkservice/full_nor/group73): failed to open stream: php_network_getaddresses: getaddrinfo failed: node name or service name not known in /export/sd09/www/jp/r/e/gmoserver/6/1/sd0158461/cinemaonline.jp/wp-content/themes/blog/sidebar.php on line 80

Warning: shuffle() expects parameter 1 to be array, boolean given in /export/sd09/www/jp/r/e/gmoserver/6/1/sd0158461/cinemaonline.jp/wp-content/themes/blog/sidebar.php on line 82

Warning: Invalid argument supplied for foreach() in /export/sd09/www/jp/r/e/gmoserver/6/1/sd0158461/cinemaonline.jp/wp-content/themes/blog/sidebar.php on line 83

 

File not found.