◆「プロムナイト」をリメークしたネルソン・マコーミックが、今度は「Wステップファーザー」をリメークした。米国ではそれなりにヒットしたが、地味で日本では劇場未公開に。スリラーとしてはまずまずの出来(76点)
ホラーファンの間では知られている1987年公開のジョセフ・ルーベン監督作「Wステップファーザー」のリメークだ。2009年の米映画で、米国でそれなりにヒットしたにもかかわらず、日本では劇場未公開で、DVDのリリースのみとなってしまったサイコ・サスペンス。
◆「プロムナイト」をリメークしたネルソン・マコーミックが、今度は「Wステップファーザー」をリメークした。米国ではそれなりにヒットしたが、地味で日本では劇場未公開に。スリラーとしてはまずまずの出来(76点)
ホラーファンの間では知られている1987年公開のジョセフ・ルーベン監督作「Wステップファーザー」のリメークだ。2009年の米映画で、米国でそれなりにヒットしたにもかかわらず、日本では劇場未公開で、DVDのリリースのみとなってしまったサイコ・サスペンス。
◆実話を基にした、「山岳映画」の伝統を受け継ぐドイツ版「剱岳」。尤も、「剱岳」は一応登頂に成功するが、こちらは悲劇的な結末が待っている(71点)
ナチス政権下の1936年、ドイツ人の登山家、トニー・クルツ(ベンノ・フュルマン)とアンディ・ヒンターシュトイサー(フロリアン・ルーカス)の2人が、「殺人の壁」と呼ばれる前人未到のスイスの名峰アイガー北壁に挑む。アイガー北壁山麓の町クライネ・シャイデックには、2人の幼馴染みであり、ベルリン新聞社でアシスタントとして働いていたルイーゼ(ヨハンナ・ヴォカレク)も、上司と共に取材に訪れていた。絶好のコンディションを待って登攀を開始したトニーとアンディを、オーストリア隊の2人が追う。
◆地方の市民病院を一人の医師が変えていく医療ヒューマンドラマ。手術場面のリアルさと、堤真一の演技が素晴らしい(78点)
現職医師である大鐘稔彦の小説を「ミッドナイトイーグル」(2007)「ラブ・ファイト」(2008)の成島出が監督した、医療ヒューマンドラマ。地域医療の問題を真っ向から捉えて、実に見応えがあった。
◆江戸川乱歩の「芋虫」をモチーフにした、若松孝二監督らしいエロティックで幻想的、かつ政治的な反戦映画。戦場で四肢を失って帰ってきた男の妻を演じる寺島しのぶが、ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した(80点)
主演の寺島しのぶが、ベルリン国際映画祭で日本人として35年ぶりに最優秀女優賞を受賞した話題作だ。監督はかつて、ピンク映画の巨匠と呼ばれ、その後も政治的な作品を発表し続ける若松孝二。本作も若松監督らしい、エロスと権力への怒り、反戦思想が結びついた奇怪で刺激的な作品だ。
◆大林宣彦監督の名作の続編。大林版へのリスペクトが随所に感じられ、世界観の踏襲に成功している(68点)
大林宣彦監督、原田知世主演の「時をかける少女」(1983)には、今も多くの熱狂的なファンがいる。名作と言っていいだろう。本作は、そのリメークではなく、続編である。かつて原田知世が演じた芳山和子(今回は安田成美)の子供、あかり(仲里依紗)が、母親の代わりに1974年にタイム・リープし、深町一夫(石丸幹二)を探す物語だ。
◆1972年スペイン製ホラーの米国編集版である。日本では未公開で、これまでソフト化もされていないという。余りの残酷描写に世界中で公開中止が相次ぎ、映画館では「嘔吐用パック」が配られたとされるが、今見ると、それほど過激な描写があるわけではない。だが、全体にどうにも奇妙な雰囲気が漂っていて、それが一種の「味」になっている(66点)
冒頭、精肉工場で牛から血がドクドクと流れる場面が、ドキュメンタリーのように映し出される。ここで何だか嫌な感じになるのだが、この「嫌な感じ」は、ラストまで続くことになる。工場で働く主人公マルコス(ヴィセンテ・パラ)は恋人とデート中、タクシー運転手とトラブルを起こし、つい殴ってしてしまう。後になって、運転手が死んだことを知った恋人が、主人公に自首を迫る。またしてもつい恋人を殺してしまった主人公は、さらについ兄を殺し、兄を探しに来た兄の恋人をつい殺し・・・・と、最初の殺人を隠すため、何となく成り行きで次々と殺人を重ねてしまう。そして死体の処分に困り、精肉工場の牛の肉に混ぜるようになる。
◆テレビドラマ「ライアーゲーム」の「映画化」というより「続編」。テレビと同じ演出で、「映画」を見た気にはならなかった(60点)
テレビ(ドラマ)と映画との違いは何か。正面から聞かれると困ってしまう。画面の大きさ、製作費、出演俳優、撮影時間、演出、画質・・・。違いはいろいろあるが、どれも絶対条件とは言えない。簡単のようで、実は大変難しい問題だと思う。
◆極北の映画人・山田誠二の現在(2010年3月)時点での代表作。江戸時代、西洋の吸血鬼と日本の妖怪、九ノ一たちの全面戦争という壮大なストーリーを、見事な「見立て」の力で描ききっている(65点)
山田誠二監督は極北の映画人といえるだろう。日本唯一の怪談映像専門プロダクションを主宰し、怪談映画や「必殺」シリーズの研究家、小説家、脚本家、コミック原作者、映像プロデューサーと様々な顔を持つ。その作風は非常にマニアック。子供じみたストーリーとチープな特殊効果で繰り広げられる残酷絵巻は、人によっては、あの“最低監督”エド・ウッドにちなみ、「日本のエド・ウッド」と呼ぶほどだ。
◆書籍の付録ながら、今年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭で上映された短編集。美女が次々と登場するのが楽しいが、中でも亥戸碧と中西絵里奈がいい(55点)
今年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭で上映された、極北の映画人・山田誠二監督の最新作だ。とはいえ、劇場公開用作品ではなく、DVDで販売されるものでもない。何と、書籍の付録なのだ。心霊スポットの紹介や実録怪談などを一冊にまとめた山田監督の著書「妖奇怪談全集」(ビジネス社)の付録として作られた短編6本で、1本が5分弱、全部で27分しかない。書籍の付録が国際映画祭で上映されるのは、初めてか、極めて稀なことだろう。
◆無実の罪で投獄された妻のため、夫は全てを投げ打って行動に出る。夫婦愛というより、運命に立ち向かう男をリアルに描いたサスペンスの秀作だ(81点)
暗闇の中、人が争う音だけが聞こえてくる。そして、血で濡れた手で車を運転する男。その表情は、もう後戻りできない不安と、突き進んでいくしかないという意思を、見事に物語っている。冒頭から、ただならぬ緊迫感。この場面だけで十分に、「いい映画」の予感がする。それは裏切られなかった。
◆俳優・渡部篤郎の長編初監督作。ワンテイク、NGなしで撮影した、ドキュメンタリーでも、劇映画でもない物語(83点)
俳優たちは普段から、映画にはワンテイクしか必要ないと思っているのかも知れない。俳優が監督すると、ワンテイクで撮りたがるように思う。俳優ヤン・イクチュンが製作・監督・脚本・編集・主演を務めた韓国映画「息もできない」(2008)は、打ち合わせ、リハーサルなしのワンテイク。クリント・イーストウッドもほとんどワンテイクで撮ると聞く。そして本作も、俳優・渡部篤郎が原案・監督・出演を務め、ワンテイク、NGなしで撮影された。
◆ナンシー・マイヤーズ脚本・監督・プロデュースのコメディー。下ネタ満載で下品だが楽しい(66点)
かつてイタリアに「艶笑喜劇」というジャンルがあった。本作はアメリカ映画だがその系列だろう。一見、感動作のように見えるが、かなり下品な下ネタのコメディーだ。名優メリル・ストリープがこういう役をやるのは、ロビン・ウィリアムスが変態の悪役をやるようなものなのだろうか。
◆太宰治の著名な原作を、「赤目四十八瀧心中未遂」(2003)の荒戸源次郎が監督、ジャニーズJr.の生田斗真が主演した話題作。鈴木清順風の映像は悪くないが、原作の表面をなぞって、その奥まで届かなかった印象だ(66点)
「人間失格」を映画化するのは、大変難しいと思う。個人的には、太宰治の本質は文体にあると思っている。「何が書かれているか」よりも、「どう書かれているか」の方に魅力があるのではないか。その文体をどのように「映画」として視覚化するのか。私には想像がつかない。もちろん、映画はいつも、私の貧弱な想像など軽々と超えてゆく。今回もそれを期待したのだが、残念ながら、そうはならなかった。
◆実話に基づく米国版「女子高生コンクリート詰め殺人事件」。ひたすら不快な作品で、見るには覚悟が必要だ(54点)
1960年代、米インディアナ州で起きた少女監禁陵辱事件をモチーフに、ジャック・ケッチャムが執筆した同名のベストセラー小説の映画化だ。
◆Jホラーの原点ともいえる伝説の作品がついにベールを脱いだ。多くのホラー・ファンにとってトラウマとなった怖さは、今見ても十分に納得できる(88点)
現在、「Jホラー」と呼ばれるジャンルを作った黒沢清、高橋洋、小中千昭、鶴田法男、中田秀夫、清水崇らの著作や講演、対談などを追うと、Jホラーに直接的に影響したと思われるいくつかの作品が出てくる。それはジョルジョ・フェローニの「生血を吸う女」(1961)であり、ジャック・クレイトンの「回転」(1961)であり、ハーク・ハーヴェイの「恐怖の足跡」(1961)であり、ロバート・ワイズの「たたり」(1963)であり、ジョン・ハフの「ヘルハウス」(1973)であり、ダニエル・マイリックとエドゥアルド・サンチェスの「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(1999)であり・・・・・そして、「シェラデコブレの幽霊」なのだ。