◆観客の想像を超えられないものを、描かないことによって、観客の想像を超えようとした意欲作(72点)
次々と大作、話題作を手掛け、ヒットを飛ばしている堤幸彦監督は、一般の観客に支持されていると言っていいだろう。しかし、周囲の映画記者や関係者にそう言うと、強烈に反論され、バカにされることが多々ある。コアな映画ファンの一部には、堤作品が大嫌いな人たちが存在するのである。堤監督が一般の映画ファンに受け入れられるのに、一部のコアな映画ファンに嫌われるのは、なぜなのだろうか。
◆観客の想像を超えられないものを、描かないことによって、観客の想像を超えようとした意欲作(72点)
次々と大作、話題作を手掛け、ヒットを飛ばしている堤幸彦監督は、一般の観客に支持されていると言っていいだろう。しかし、周囲の映画記者や関係者にそう言うと、強烈に反論され、バカにされることが多々ある。コアな映画ファンの一部には、堤作品が大嫌いな人たちが存在するのである。堤監督が一般の映画ファンに受け入れられるのに、一部のコアな映画ファンに嫌われるのは、なぜなのだろうか。
◆スタローンの下に、ジェット・リーやステイサムら、アクション・ヒーローたちが大結集した超豪華なB級映画。粗っぽいが、それが「荒々しい魅力」にもなっている(73点)
シルベスター・スタローンにジェット・リー、ジェイソン・ステイサム、ミッキー・ローク、ドルフ・ラングレン。元プロレス界のスーパー・スター、「ストーン・コールド」スティーブ・オースティン、UFCのランディ・クートゥア。さらにカメオ出演で今やカリフォルニア州知事のシュワルツェネッガーと、ブルース・ウイリス。よくこれだけのメンバーが集まったものだと思う。集まっただけでもう十分、本作は成功と言えるだろう。これだけ集まってしまったら、逆にいい映画にはなりにくいが、いい映画じゃなくても全く構わない。とにかくアクション・ヒーローたちの大集結を観たいのだから。
◆「悪魔の凶暴パニック」を思わせるパニック・ホラー「ツキモノ」と正統派Jホラー「ノゾミ」。ホラー・マニアの篠崎誠監督による、対極的な2本立ては、どちらも一筋縄ではいかない面白さがある(68点)
篠崎誠監督はホラー・マニアである。ホラーを巡って、黒沢清監督との対談本を出しているくらいだ。その篠崎監督が、期待通りの一筋縄ではいかないホラーを見せてくれた。
◆予定調和的なハリウッドの娯楽作にジャッキー・チェンがピタリとはまって、気持ちがいい。上映時間は長すぎるが、端正な出来(69点)
ジグソーパズルの最後の1ピースがピタリとはまるのは、気持ちのいいものだ。例え完成した絵が凡庸だとしても。
◆アンジェリーナ・ジョリー主演のスパイ・アクション。ストーリーは荒唐無稽だが、それが気にならないほどのスピード感は見事。ジョリーはどのシーンでも魅力的だ(74点)
近頃、ロシアの美人スパイが逮捕されて話題になったが、現実の(恐らく)地味な諜報活動とはまるで無関係な、ド派手なスパイ・アクションである。
アンジェリーナ・ジョリーが、走り、飛び、格闘し、銃を撃つ。全編、アクションが全く止まらない。この疾走感は実に見事だ。
◆男女3人がスキー場のリフトに取り残される雪山版「オープン・ウォーター」(2003)。新鋭アダム・グリーン監督の手腕は確かだが、ストーリーにひねりが欲しい(67点)
「HATCHET/ハチェット」(2006)が日本で劇場公開されなかったのは残念だった。スプラッター映画が全盛だった1980年代を彷彿とさせるホラーの秀作だったと思う。監督はこれが劇場向け長編デビューとなるアダム・グリーン。新人だが、確かな演出力を感じた。
◆1976年に公開されて大ヒットした韓国初の本格的ロボットアニメの最新デジタルリマスター版。日本のアニメが洗練されすぎて失ったプリミティヴな魅力がここにはある(66点)
韓国では伝説的なアニメという。「マジンガーZ」にかなり似たデザインのロボットに、テコンドーの使い手が「ガッチャマン」みたいなヘルメットで乗り込み、テコンドーを駆使して悪のロボット軍団と戦う。相手は北朝鮮を思わせる「アカ帝国」で、試合で負けたテコンドー選手、プロレス選手、剣道選手などをロボットに改造し、操って人類を滅亡させようとする。なぜ試合に負けた選手ばかりを選んでいるかというと、「負けた恨み」を利用するから。さすがは「恨(ハン)」の国である。
◆ジャッキー・チェンのアクションは過激さがなくなった代わり、名人芸の域に達している。軽めのコメディーだが、熟練の技を堪能出来る。(67点)
ジャッキー・チェンのハリウッド進出30周年記念映画。内容も、それにふさわしく、冒頭、主人公のこれまでの活躍を紹介するのに、ジャッキーの過去作品のダイジェストを使うなど、様々な作品にオマージュを捧げている。
◆やりたい放題のわがまま社長というユニークなヒーロー像が痛快。CGの派手な見せ場に美女と、ゴージャスな見所の連続で、前作以上の出来(80点)
「アイアンマン」シリーズは、主人公が真面目なヒーローではなく、わがままでセレブ、兵器産業に関わる企業の2代目社長というのが面白い。しかもナルシストで、「正体」が世界中にばれている。自分は世界平和を民営化したと公言し、スーツを着て酒に酔い、武器を使って顰蹙を買う。そして、自分の非をなかなか認めない。普通のヒーロー像と全く真逆なのだ。だが、嫌な感じはしない。ロバート・ダウニーJrがユーモアたっぷりに演じていると、嫌味がないというか、嫌味なところも許せてしまう。むしろ痛快で、人間として様々な欠点があることで、普通のヒーローよりも共感できるほどだ。
◆第2次世界大戦下、イタリア・ボローニャの一家族の崩壊と再生を描いた秀作。過去と未来を一瞬で肯定するラストの奇跡に感動させられた(85点)
ボローニャはイタリア北部。長靴でいえば、脚の付根の下ぐらいか。井上ひさしが「ボローニャ紀行」で書いた、職人の町、庶民の町だ。スパゲッティー・ボロネーゼは、ボローニャ風スパゲッティーの意味。日本ではミートソース・スパゲッティーの方が一般的だろう。ボロネーゼとミートソースは別物という説もあるが、トマトの量が違うくらいである(と理解している)。
◆30男と恋人、その妹。徹底的にダメな3人の三角関係をリアルに描いたコメディー(81点)
「さんかく」は男女の三角関係である。釣具店のアルバイト店員で30歳の百瀬(高岡蒼甫)と、同棲している恋人・佳代(田畑智子)のアパートに、夏休みを利用して、佳代の妹、桃(小野恵令奈)が転がり込んでくる。中学3年生で15歳だが、体は大人の桃は、無防備に振る舞い、百瀬をドキドキさせる。やがて、百瀬は桃に夢中になり、佳代と別れる。納得のいかない佳代は百瀬のストーカーとなり、百瀬は桃のストーカーとなっていく。
◆暴力をテーマに、ヤクザ同士の潰し合いを描いた北野武監督作。よく出来たB級バイオレンス映画(77点)
北野武監督は、テレビ番組のインタビューで、「どつき漫才」を例に出し、暴力は笑いと同じだと語っていた。漫才でどつかれれば笑いが起こるが、どつかれる方が流血すれば、暴力として恐怖を呼ぶことになる。見せ方によっては、「どつく」という行為は、暴力にもお笑いにもなる。また別の番組では、暴力は描写が過剰過ぎるとホラーになってしまうとも語っていた。ホラーは恐怖だが、血しぶきが過剰に飛び散るスプラッター映画は時として笑いに転化する。笑いにも恐怖にも狂気にも成り得る暴力を、いかに斬新に、痛みが伝わるように表現するか。本作は、エンタティンメントであると同時に、北野武監督による暴力論であるとも言えるだろう。
◆SMAPの香取慎吾が座頭市に挑戦した意欲作。人間味のあるリアルな座頭市像を作ることには成功しているが、仲代達矢や倍賞千恵子らの大芝居が浮いていて、非常にバランスが悪い作品になってしまった(66点)
座頭市といえば、何といっても勝新太郎だろう。ビートたけしも演じたし、やや変則的なものとしては、綾瀬はるかが女座頭市に扮した曽利文彦監督の「ICHI」(2008)がある。その他、山田誠二監督「新怪談残虐非道・女刑事と裸体解剖鬼」(2004)のゾンビ市(橋本和博)、高橋洋監督の地下映画「ソドムの市」(2004)の俎渡海市兵衛(浦井崇)なども、座頭市の変奏曲だ。日本映画だけではない。「ブラインド・フィーリュー」(1989)のルトガー・ハウアー、さらに最近の米国映画(タイトルを書くとネタバレになるので書かない)にも、座頭市的なキャラクターは登場する。盲目の居合い斬りの達人は、あまりに強烈で魅力的なキャラクター故に、様々に作り手の創造力を刺激するのである。
◆舞台となる高知の町並みや、そこに住む人々の生活感が、詩的かつリアルに描かれた秀作。菅野美穂、小池栄子、池脇千鶴ら女性陣がとてもいい(80点)
西原理恵子の原作を、「クヒオ大佐」の吉田大八が監督。菅野美穂の8年ぶりの映画主演作としても話題だ。
◆B級ながら、セクシー・アクションの面白さを存分に楽しめる。主演の亜紗美がとびきりカッコいい(72点)
今年(2010年)のゆうばり国際ファンタスティック映画祭で最も驚かされたのが、「スケ番☆ハンターズ」2部作だった。いわゆるB級映画だが、空疎な大作よりも遥かに面白かった。