原発事故を正面から描いた園子温監督の力作。放射能の恐怖をあおるような描写に疑問を感じながらも、そのエネルギーに圧倒された(点数 78点)
(C)The Land of Hope Film Partners
「ヒミズ」が昨年のベネチア映画祭に出品された際、園子温監督は、「次は原発の話を撮る」と語っていた。
その言葉通り、東日本大震災から数年後を舞台に、地震で原子力発電所がメルトダウンする話を撮った。
テーマがテーマだけに、日本では資金調達が難しく、イギリスと台湾の製作会社からの出資を得て完成させたという。
そのエネルギーには敬意を覚える。
だが、このような描き方でいいのか、どうか。問題作である。
タイトルは「希望の国」だが、描かれているのは、絶望なのだ。
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第二次大戦後、ブラジル日系人社会で日本の敗戦を信じなかった人々の悲劇を、ブラジル人監督が日本人キャストで描いた力作(点数 78点)。
(C)2011 Mixer All Rights Reserved.
9年前、ブラジル・サンパウロの日本人街に行ったことがある。
商店街のような通りだが、日系ブラジル人が数多く住んでいるので、そう呼ばれていた。
そこの商店には、カップヌードルが2種類、並んで置いてあった。
ちょっと見た目は全く同じだが、一つは日本からの輸入品で、もう一つは、現地で生産されたものだった。
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サメ映画の定番の描写もたっぷり取り入れながら、従来のサメ映画にないアイデアも盛り込んで、最後まで楽しめた(点数 69点)。
(C) 2011 INCENTIVE FILM PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
サメが人を襲う映画は見飽きた気がしていた。だが、この作品の監督は、スプラッター・ホラーの秀作「デッドコースター」「ファイナル・デッドサーキット3D」などを手掛けた、デヴィッド・R・エリスである。
ただ若者たちが海洋に投げ出されてサメに襲われるだけの「赤い珊瑚礁 オープンウォーター」などとは違い、殺人ゲームを仕掛ける人間たちの狂気を描いて、意外に面白いサスペンス・ホラーを作り上げた。
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カルト監督・井口昇がアイドルグループ・スマイレージのメンバーを主人公に手掛けたオムニバス・ホラー。アイドル映画としても成立させつつ、井口監督らしい恐怖と笑いの世界を作り上げている(点数 70点)。
(C)2012「怪談新耳袋 異形」製作委員会
「怪談新耳袋」はこれまで、テレビ版、劇場版とも質が高く、Jホラーを中心に現在の映画界を担う新鋭の監督たちによって、様々に実験的な試みが行われてきた。その最新作を、「片腕マシンガール」「富江 アンリミテッド」のカルト監督・井口昇が手掛けた。
四つの短編からなるオムニバスで、それぞれにアイドルグループ・スマイレージのメンバーが出演している。
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新人監督による群馬県桐生市のご当地映画。高校生の孤独がテーマだが、ご当地映画の要素を様々に入れて話が拡散してしまったのが惜しい。(点数 55点)
(C)GAFLLC
27歳の新人監督・草野翔吾が、2時間近い映画を作った。監督の故郷でもある群馬県桐生市の企業や団体、ボランティアが協力したご当地映画だ。
予算もなかっただろう。2時間はさすがに長い。ゆるい部分もある。
それでも、捨てがたい魅力を持った作品だ。
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テレビドラマの映画化。物語はスケールアップしたものの、テレビ的な演出がそのまま引き継がれていて、映画としては密度が薄い。(点数 65点)
(C) 2012 「臨場 劇場版」製作委員会
テレビドラマの映画化は難しい。原作が小説や漫画ならば、文字や絵を実写化するので、そこにアレンジの余地がある。しかし、テレビドラマは最初から映像だ。そもそもテレビドラマの好評を受け、ドラマのファンを当て込んで映画化するわけだから、そんなに大胆にアレンジするわけにはいかない。同じ設定、同じ役者、同じスタッフで作った場合、映画化に際して向かう方向は、時間的、空間的なスケールアップしかない。
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スペインのゾンビ・ホラー「REC」シリーズの3作目。途中からPOVを放棄し、大スプラッター大会になるのが痛快(点数 67点)
(C)2011 REC GENESIS A.I.E
謎の伝染病により、人々がゾンビ化していくスペインのホラー「REC」シリーズの第3弾。シリーズは主観カメラ(POV=ポイント・オブ・ビュー)によるドキュメンタリーのようなリアルな映像がウリだった。
1作目はアパートに舞台を限定、そこに取材で入ったテレビクルーのカメラ目線で全編を描き、POVの効果をうまく生かした秀作だった。
2作目はアパートに突入した警察の特殊部隊の隊員たちが、それぞれヘルメットにビデオカメラを装備しているという設定で、様々なカメラによる記録映像を組み合わせていたが、なぜかPOVによるリアリズムとは相反する、オカルトめいた悪魔憑きのストーリーとなり、怪作という印象だった。
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ご当地映画のUターンものだが、渡辺大と山口紗弥加の熱演や、ラーメンというテーマの面白さで、Uターンものの水準を超えた秀作となった(点数 70点)
(C)「ラーメン侍」製作委員会
ここ数年、「ご当地映画」と呼びたくなるような作品が増えている。
ある地域を舞台に、そこのフィルムコミッションが協力し、地元でエキストラを賄って作られる作品だ。
地域の歴史や特色がテーマとなり、ときにはスタッフやキャストも地域出身者や、地域と関連のある人々が集められる。
エキストラはたいていボランティア。
スタッフの一部がボランティアの場合さえある。
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Jホラーの先駆者・鶴田法男監督がPOV(主観映像)に挑んだ意欲作。フェイク・ドキュメンタリーがラストで一気にエンターティンメントに昇華されるのが見事(点数 75点)
(C)2012「POV 呪われたフィルム」製作委員会
鶴田法男監督は、Jホラーの先駆者として知られている。初監督のビデオ作品「ほんとにあった怖い話」(1991)などで、今日「Jホラー」と呼ばれるジャンルの演出法の基礎を確立したのだ。「ほんとにあった怖い話 第二夜」(1991)に収録された「霊のうごめく家」は特に有名だ。この作品からJホラーが始まったと言ってもいい。
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「南極料理人」の沖田修一監督が描く、ゾンビ映画の監督と木こりが心を通わせていくコメディー。映画作りの熱気や楽しさが伝わってきて、観客を幸せな気分にさせてくれる(点数 78点)
ゾンビ映画の撮影隊が田舎へロケに出かけ、木こり(役所広司)と出会う。木こりは撮影隊に半ばむりやり手伝わされるうち、映画作りに夢中になっていく。一方で、撮影隊の若い映画監督(小栗旬)は決断力がなく、映画作りから逃げ出したくて仕方ない。だが、木こりと心を通わせるうちに自信を取り戻していく。
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ピラミッドの謎から超古代文明の存在を示唆するドキュメンタリー。内容は興味深いが、映像は付け足しで、これなら本で読めば十分(点数 40点)
エジプト・ギザの大ピラミッドに関するこれまでの「定説」を覆し、高度な科学力を持った古代文明の存在を示唆するフランス製ドキュメンタリー。
ピラミッドは本当に国王の墓なのか。
建設期間は20年といわれるが、未発達な工具でそんなに短期間での建設は可能だったのか。
石の積み方がなぜこれほど不規則で、しかも精度が高いのか。
円周率や黄金数に正確に基づくデザインは、なぜ可能だったのか。
確かにピラミッドに関しては、従来の定説では説明できない謎が多く存在する。
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ドニー・イェンが見せるソード・アクションが素晴らしく、ドラマとしても見応えのある秀作(点数 77点)
(c)2010 STAR UNION SKYKEE (BEIJING) FILM &MEDIA ADVERTISEMENT CO.,LTD. All Rights Reserved
昨年はドニー・イェンが大活躍した年だった。日本での劇場公開作が「イップ・マン 葉問」「イップ・マン 序章」「孫文の義士団」「レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳」「導火線」「処刑剣 14BLADES」と続き、いずれも最高レベルのアクションを見せた。
作品的にも「イップ・マン」シリーズや「孫文の義士団」は優れた出来映えだった。
トニー・ジャーが映画製作のトラブルで姿を消し、ジャッキー・チェン、ジェット・リーの両雄がアクションを押さえ気味な方向に進んでいる今、香港クンフーアクションのトップ・スターといっていいだろう。
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事実を基本にしたノン・フィクション・ホラー。前半、エクソシスト養成講座や悪魔払いの現場がリアルに描かれ、興味深い。後半は普通のホラー映画になってしまって残念(70点)
(C) 2010 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
エクソシストについて書いた2冊の本がある。
トレイシー・ウイルキンソン「バチカン・エクソシスト」と、島村菜津「エクソシスト急募」だ。
ヨーロッパで近年、悪魔払いの需要が増え、バチカンはエクソシストを増やそうとし、イタリアの大学では養成講座が開かれた。
イタリアを中心に、現代も悪魔払いは多くの人々に「現実」と見なされている。
2冊の本はほぼ同じ内容だが、衝撃的なのは、どちらもノン・フィクション、つまり事実だということだ。
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現代のスクリューボール・コメディーを目指した前田弘二監督の劇場公開デビュー作。テンポがよく笑えるが、登場人物のキャラクターが強烈過ぎて共感出来ないのが惜しい(点数 65点)
(C) 2011『婚前特急』フィルム・パートナーズ
列車が舞台の映画ではない。恋愛コメディーだ。
タイトルはエルンスト・ルビッチの「極楽特急」(1932)やハワード・ホークスの「特急二十世紀」(1934)を意識しているのだろう。
これらの作品から連想するのは、「スクリューボール・コメディー」という言葉だ。
余りにも古く、今や死語かも知れないが、1930年代から40年代初めごろにかけて、アメリカで流行したジャンルである。
スクリューボールは言うまでもないが野球で言う変化球の一種だ。
そこから、変人という意味にも使われる。
スクリューボール・コメディーとは、(ルビッチの「極楽特急」がそれに含まれるかどうかは異論があるだろうが)変人の男女が、たいていはいがみ合いながら、結局は恋に落ちるというストーリーである。
「婚前特急」はまさにその通り、変人男女の恋を描いており、現代のスクリューボール・コメディーを目指したのだろう。
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悪人 - 小梶勝男
© 2010「悪人」製作委員会
◆深津絵里がモントリオール世界映画祭で最優秀女優賞を受賞した話題作だが、面白くない。誰が悪人かというテーマが、分かりやすすぎる(72点)
周囲の評価が相当に高い作品だが、私には、余り面白いとは思えない。確かに力作ではある。前半から中盤にかけては、実に丁寧に芝居を撮っている。深津絵里はモントリオール世界映画祭で最優秀女優賞を受賞した。それだけでも立派な映画なのだろう。だから面白いかというと、はっきり言って面白くない。
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