殺人犯 - 小梶勝男

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◆人間の心に潜む異常なまでの邪悪さを描くサスペンス・スリラー。連続殺人の残虐な描写の果てに、衝撃のラストが待っている(68点)

 この作品が長編デビューとなるロイ・チョウ監督は、アン・リーの助監督をやった人で、Jホラーの直接的な影響はさほど受けていないという。だが、冒頭から途中までの展開は黒沢清の「叫」(2006)によく似ている。そして後半のどんでん返しは、書くとネタバレになるのでタイトルを書けないが、「ある映画」と全く同じネタだ。「パクリ」なのかと思ったら、監督がこの話の元になる新聞記事を読んだのは2004年という。偶然、同じネタとなったようだ。作品としては「ある映画」の方がよく出来ているが、こちらもなかなか面白い。もし「ある映画」を見ていなかったら、かなり衝撃的なラストだと思う。

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サバイバル・オブ・ザ・デッド - 小梶勝男

© 2009 BLANK OF THE DEAD PRODUCTIONS INC.ALL RIGHTS RESERVED

◆モダン・ゾンビの祖、ジョージ・A・ロメロのゾンビ・サーガ最新作。これまでの作品に比べ、緊迫感は薄れたが、人間同士の戦いをメーンに新しい切り口に挑戦している(79点)

 すでに70歳を超えるジョージ・A・ロメロの新作を見ることが出来るのはとても嬉しい。「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」の製作は1968年。それから42年がたち、ロメロの生んだ(ブードゥーではない)モダン・ゾンビは世界中で様々に進化し、増殖してきた。その間、ロメロも常に新しいゾンビ映画を、一種のサーガとして作り続けてきた。本作はロメロの6本目のゾンビ映画だ。これまでの作品と大きく違うのは、人間とゾンビの戦いではなく、人間同士の戦いがメーンとなっていることだろう。人間もゾンビも、「攻撃してくる者」「戦う相手」として、同じように描かれている。

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ウルフマン - 小梶勝男

© 2010 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

◆ユニバーサルの名作「狼男」のリメーク。リック・ベイカーの特殊メークは素晴らしいがストーリーが中途半端(72点)

 ロン・チェイニー・Jr主演の「狼男」(1941)は日本未公開だが、ユニバーサルの怪奇映画の名作だ。後に、「狼男の殺人」のタイトルでTV放映され、多くのファンを生んだ。「フランケンシュタイン」(1931)なども担当したメークアップ・アーティストの巨匠、ジャック・ピアースの特殊メークが素晴らしく、森の中を狼男がさまよう場面の怪奇ムードは、今見てもわくわくさせられる。

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武士道シックスティーン - 小梶勝男

◆成海璃子と北乃きいの若手実力派2人が繰り広げる女子剣道の世界。他人と真っ直ぐに向き合い、ぶつかり合うことの大切さを描いた青春映画の佳作(78点)

 ネット社会は一見、それまでより人と人とを簡単に結びつけるようになったと思える。だが実は、自分に都合のいいときに、都合のいい相手を見つけて、つながっていると思っているだけなのかも知れない。それはどこまで行っても自分が一方的に拡大しているだけで、他人と「関わっている」とは言えないのではないか。男女間の体の売り買いが恋愛とは違うようなものだ。友達、あるいは恋人同士で一緒にいても、お互いに向き合わず、自分の携帯ばかりを見ている人たちが増えている気がする。ネット社会は逆に、人と人との関係性を希薄にしている部分があるようにも思う。

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4匹の蠅 - 小梶勝男

◆イタリアン・ホラーの巨匠ダリオ・アルジェントの「動物3部作」最終章。日本では1973年に公開されたものの、その後ソフト化されず、再公開が待たれていた。アルジェントらしいトリッキーなカメラワークが駆使されたジャーロの秀作だ(80点)

 日本劇場初公開から37年ぶりに本作がリバイバル・ロードショーされるというのは、衝撃的なニュースだ。「サスペリア」(1977)などで知られるイタリアン・ホラーの巨匠、ダリオ・アルジェントは、日本では非常に人気が高く、その作品のほとんどがソフト化されている。だが、1971年に発表された本作だけは、何故かこれまでソフト化されていないため、もう一度見たくても見ることが出来なかったのだ。

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不思議の国のアリス(1915年版) - 小梶勝男

◆幻の作品といわれていたW.W.ヤング監督による映画化作品。ジョン・テニエルの挿絵の世界を着ぐるみで再現し、不思議な幻想世界を作り上げている(80点)

 W.W.ヤング監督による52分の中編だ。原作者ルイス・キャロルが1865年に最初に出版社から出したとき、挿絵を描いた風刺画家ジョン・テニエルの世界を、ほぼ忠実に再現したことで知られている。だが、1915年の米国公開後、フィルムが紛失し、日本では未公開のままだった。そのため、幻の作品と呼ばれていたという。昨年、WHDジャパンから出たDVD「不思議の国のアリス1903-1915」に収録されたのは、ファンにとっては嬉しい驚きだっただろう。100年近く昔の作品で、モノクロ、サイレントであり、点数を付けるのは非常に難しいが、やはり「映画ジャッジ」の趣旨に則り、あえて点を付けた。

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不思議の国のアリス(1903年版) - 小梶勝男

◆ルイス・キャロルの原作を初めて映画化した8分の短編(80点)

 昨年、WHDジャパンからDVD「不思議の国のアリス1903―1915」が発売されたのは、「アリス」ファンにとってはうれしい驚きだった。「アリス」の世界初の映像化である1903年版と、原作の挿絵を描いたジョン・テニエルの世界を忠実に映像化したとされながら、日本未公開で長らく幻の作品とされていた1915年版の2本が収録された、実に魅力的なDVDだった。両作は、ティム・バートンの3D映画「アリス・イン・ワンダーランド」の原点ともいえる。バートン版と併せて見ると大変に興味深い。

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レギオン - 小梶勝男

◆「キリシタン・アクション」認定第2弾(第1弾は「ザ・ウォーカー」)。天使の軍団と人類との戦いを描いているが、スケールは実に小さい(66点)

 キリスト教は文化として全世界に広がっている。キリスト教的な世界観をバックグラウンドとしない映画を探す方が難しいだろう。しかし、キリスト教そのものをテーマとしたアクション映画は、それほど多くないと思う。本作や「ザ・ウォーカー」(2010)を見て、「キリシタン・アクション」というジャンル名を提唱したくなった。なぜ「クリスチャン・アクション」ではないのかというと、普通の日本人には納得しがたいテーマを扱っている「違和感」を、江戸時代のキリスト教という「異質なもの」の呼び方で表現したかったのだ。

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アリス・イン・ワンダーランド - 小梶勝男

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◆ティム・バートンが3Dで描く「不思議の国のアリス」の後日譚。独特の映像世界はさすがだが、ロールプレイングゲームのような話が理に落ちすぎている(78点)

 試写に行きそびれ、近くのシネコンで見た。日本語吹き替え版、3D吹き替え版、3D字幕版の3パターンが上映されていたが、字幕版はちょうどお昼とか、遅い回とか、鑑賞しにくい時間帯だけ。専ら子供向けの作品というわけではないのに、メーンは吹き替えだった。「シャッターアイランド」がきっかけで、吹き替えの時代が本格的にやってくると言われているが、3D作品に限って言えば、すでに上映は吹き替えが中心になってしまったようだ。

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17歳の肖像 - 小梶勝男

◆ビートルズ登場以前のイギリス・ロンドンで、大人の世界に憧れる中流階級の少女を描く。主演のキャリー・マリガンの魅力と、少女の気持ちにぴったりと寄り添った演出で、新鮮で心を打つ作品となった(91点)

 世間知らずの少女が、年上の男性とロマンチックな恋に落ち、大人の社会を体験していく。よくあるストーリーだが、魅力的なキャストで時代背景などを丁寧に描いて作ると、これほど新鮮で心を打つ作品になるのかと驚いた。

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第9地区 - 小梶勝男

© 2009 District 9 Ltd All Rights Reserved.

◆アカデミー賞4部門にノミネートされたピーター・ジャクソン製作のSF映画。エイリアンを「難民」と捉える視点が面白い(81点)

 ある意味、「裏・アバター」と言えるかも知れない。「アバター」では人間が他の星に行って、姿形を宇宙人に変えてコミュニティーに入り込もうとする。本作では逆に、宇宙人が突然、地球にやってきて、主人公は自分の意思とは無関係に宇宙人に姿を変えられてしまうのである。どちらに真実味があるかと言えば、明らかに本作の方だろう。

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ダーリンは外国人 - 小梶勝男

© 2010「ダーリンは外国人」フィルムパートナーズ

◆漫画家を目指すイラストレーターの女性と、語学オタクの米国人が結婚するまでの奮闘を描くコメディー。国際結婚に限らない、普遍的な家族の物語になっているのが良かった(68点)

 タイトルからして当然、国際結婚にまつわる様々な困難を乗り越えて結ばれるカップルの話だと思うだろう。ところが本作には、国際結婚に特有の困難は、ほとんど描かれていない。もっと普遍的な家族の物語になっている。そこがとても良かった。

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月に囚われた男 - 小梶勝男

◆たった一人、月で働く男を描いて、果てしない孤独を感じさせる本格SF。ひねりのきいたストーリーが、「存在」とは何かを問いかけてくる。(74点)

 優れたSF映画は、常に哲学的な問いを内包している。本作もそうだ。「存在」とは何かという、根源的な問いを投げかけてくる。

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ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲- - 小梶勝男

© 2010「ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲-」製作委員会

◆仲里依紗が魅力的で、それだけで十分に楽しめる。哀川翔のデビュー25周年記念作でありながら、どこまでも仲里依紗のための作品になっている(75点)

 三池崇史監督作「ヤッターマン」(2009)は、深田恭子が演じるドロンジョが余りにも魅力的だった。私も含め、もうストーリーなどどうでもいいから、ドロンジョだけを見ていたい、と思った人も多かったはずだ(と思う)。そんな人にとって、本作は理想の作品だ。ドロンジョよりもセクシーで魅力的な仲里依紗の「ゼブラクイーン」と「ゼブラウーマン」を、たっぷりと見ることが出来るからだ。

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ザ・ウォーカー - 小梶勝男

© 2010 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

◆デンゼル・ワシントン主演のアクション大作。最終戦争後の荒廃した世界を舞台に、「ある本」を運ぶ男をスタイリッシュな映像で描く。驚きのラストまで、ドラマとアクションがうまく噛み合っているが、「ある本」の意味が日本人にはピンとこないかも知れない(79点)

 監督のアルバート・ヒューズとアレン・ヒューズは双子の兄弟だという。製作がジョエル・シルバーで監督が兄弟と聞けば、「マトリックス」シリーズのウォシャウスキー兄弟を思い出すが、ヒューズ兄弟も彼らに負けないくらい映画マニアであるようだ。様々な映画へのオマージュを感じさせる。それがストーリーにうまい具合にはまっているのに感心した。日本の「あの映画」へもオマージュが捧げられているが、「落ち」に関わることなので、タイトルが言えないのが残念だ。

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