◆イスラエルのレバノン侵攻に伴う「サブラ・シャティーラの虐殺」を描くアニメーション・ドキュメンタリー。幻想的なアニメ映像がラストで一転して、ざらついた「真実」に変わるのが衝撃的だ(91点)
イスラエル人のアリ・フォルマンが監督、脚本、製作を務め、イスラエル軍によるレバノン侵攻を描いたアニメーション。アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたほか、ゴールデン・グローブ賞の最優秀外国語映画賞など、数々の賞に輝いた。
◆イスラエルのレバノン侵攻に伴う「サブラ・シャティーラの虐殺」を描くアニメーション・ドキュメンタリー。幻想的なアニメ映像がラストで一転して、ざらついた「真実」に変わるのが衝撃的だ(91点)
イスラエル人のアリ・フォルマンが監督、脚本、製作を務め、イスラエル軍によるレバノン侵攻を描いたアニメーション。アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたほか、ゴールデン・グローブ賞の最優秀外国語映画賞など、数々の賞に輝いた。
◆ジョルジュ・シムノンの原作をハンガリーの鬼才タル・ベーラが映画化。通常のドラマを否定したキャメラによる「観察」で、人生の現実に迫る傑作(92点)
冒頭、キャメラは窓越しに巨大な客船を捉える。非常にゆっくりとしたパーン。船上でのやりとり、そして、船を下りて列車に乗る人々を、キャメラが移動しながら、どこまでも窓越しに追う。窓枠をまたぎながら、いつまでもカットは変わらない。その異様な緊張感は、本作が普通の映画ではないことを物語る。長いワンカットは、観客にドラマを見ているのではなく、もっとリアルな「何か」を観察しているような気にさせる。
◆日本人なのにアメリカ人と名乗って女性を騙した実在の結婚詐欺師を、堺雅人が付け鼻と片言の日本語で演じる。岡本喜八作品にも通じる映画らしい映画(90点)
本作は’二部構成’になっている。第一部は「血と砂と金」。岡本喜八監督の「血と砂」から取ったタイトルであることは明らかだ。第一部はごく短く、第二部の「クヒオ大佐」が本編となる。
◆スザンヌが初主演したアイドル映画。ゆるい演出が奇妙にスザンヌのキャラクターに合っている。その「ゆるさ」に身をゆだねて楽しむべきだ(60点)
最近、「スター映画」「アイドル映画」というジャンルが廃れつつある。テレビの歌番組が激減し、いわゆる「お茶の間」が消えてしまい、山口百恵や松田聖子のような、絶対的なアイドルがいなくなったせいだろう。そんな中で、久々の「アイドル映画」を見たような気がした。
◆ベルギーで大ヒットしたサスペンス。よく練られた脚本に巧みな語り口で十分に楽しめるエンタティンメント(72点)
珍しいベルギー映画。ベルギーでは国民の10人に1人が見たというほど大ヒットしたらしい。それも納得出来る。確かに面白かった。
◆秀作「ディセント」の非常にオーソドックスな続編。ゴア度は前作に劣らない。洞窟内でのスリリングな攻防は、閉所恐怖症になりそうなほどの迫力があった(67点)
ニール・マーシャルが監督した前作「ディセント」は秀作だった。冒頭の交通事故の場面から、異様な迫力があった。ホラーは暗闇や狭い場所を描くことが多いが、これがヘタだと何が何だか分からず、見ていられない。だが、暗闇や狭い場所を描くのは、映画としては結構難しい。そこを、実に巧みに描いていた。そして、洞窟の闇と、主人公の「心の闇」が重なっていくのがスリリングだった。女主人公は「事故」を忘れようと洞窟を探検するが、地の底で、忘れようとしていた「心の闇」に出合う。女同士の微妙な関係や疑心暗鬼も、ふだんは抑圧している「闇」の部分として表現されていた。そんな「闇」の実在化が、モンスターなのかも知れない。リドリー・スコットの名作「エイリアン」(1979)の主人公リプリーが、宇宙空間という闇で、自らの深層心理に直面したように。
◆日本の伝統空手をそのままアクションに取り入れて、娯楽作に仕上げた本当の意味での「空手映画」。主演の武田梨奈は日本の女子アクションを担う存在になっていくと期待出来る(83点)
ブルース・リーの「燃えよドラゴン」が日本公開され、ブームになった1970年代、香港から続々と上陸したクンフー映画は「空手映画」と呼ばれていた。だが、当然ながらアクションに使われていたのは日本の伝統空手ではなく、中国拳法、功夫だった。例外として、山下タダシの「ザ・カラテ」シリーズなどもあったが、伝統空手がベースとはいえ、動きはかなり誇張されていたように記憶している。
◆一種の「不況モンド映画」。「キサラギ」(2007)の佐藤祐市監督が、説明過剰だがスピード感のある演出で、暗く悲惨な話を明るく前向きなエンタティンメントに仕上げている(69点)
ブラック会社とは、残業当たり前、ムチャな仕事量、頭のおかしい同僚、安い給料とマイナス材料がそろい、社員が奴隷のように扱われる職場のことらしい。そんなIT会社に就職した高校中退・ニートの青年の物語。
◆日本初のデジタル3D実写長編映画は、清水崇監督のスリラー。富士急ハイランドのアトラクション「戦慄迷宮」の映画化だが、3Dによる心理描写など意欲的な試みが評価出来る(74点)
今年(2009年)は、日本でデジタル3Dが飛躍的に普及した年として、後年記録されるだろう。
夏休みには「ボルト」「モンスターVSエイリアン」「アイスエイジ3」と3本の3Dアニメが集客を競い、12月にはいよいよジェームズ・キャメロンの3D大作「アバター」が公開される。そして、日本初のデジタル3D実写長編映画も完成した。それが本作だ。
◆下品、エロ、残酷、暴力、スピードと全てが過剰なバカ映画。「トランスポーター」シリーズよりこっちの方が面白い(74点)
前作で「アドレナリンを出し続けないと死ぬ」毒薬を注入された殺し屋が、今度は充電し続けないと止まってしまう人工心臓を移植されてしまう。
◆アスペルガー症候群を「お洒落」に描いた秀作。障害を扱って、これほど気持ちのいい映画は滅多にない(83点)
自閉症の一つのタイプ、アスペルガー症候群という障害の話だが、日本映画には珍しく泣かせようとはしない。深刻ぶらず、変にドラマチックにもせず、「お洒落」に描き切っているのが素晴らしい。上映時間は1時間ちょっとと短いが、その中で、数十年間に渡る家族の歴史が凝縮して描かれた秀作だ。
◆© 2009 SUMMIT ENTERTAINMENT, LLC. ALL RIGHTS RESERVED(71点)
超能力者を扱った映画は、ジョン・トラボルタの「フェノミナン」(1996)のような例外はあるものの、「X-メン」シリーズや「ジャンパー」(2008)のようなアクション映画か、「キャリー」(1976)「フューリー」(1978)「スキャナーズ」(1981)のようなホラーか、どちらかになるのが普通だろう。超能力者はヒーローかモンスター。いずれにしても人間ではない部分が強調されるのである。
◆セガール映画ではなく、ゾンビ映画。セガールが活躍しない代わり、悪夢のようなスプラッター描写に見応えがあった(66点)
スティーヴン・セガールのいつものアクション映画かと思ったら、セガールがほとんど活躍しないのでビックリ。その代わり、かなり本格的なゾンビ映画だった。
◆忍者アクションとしてのレベルの高さに驚かされた。松山ケンイチをはじめ、役者たちの身のこなしが実に見事。しかし、ドラマとしてはまとまりがなく、カムイがどんな人物なのかすら、よく分からない(73点)
余りの評判の悪さに、ほとんど期待せずに見たのだが、忍者アクションとしてのレベルの高さに驚いた。カムイ役の松山ケンイチを始め、役者たちの動きが実にいい。ワイヤーワークも素晴らしい。日本映画では余り例がない凄いアクションではないか。
◆携帯に女子高生、恋愛、都市伝説、集団レイプ事件などを絡めたストーリーがよく出来ていて、妙な現実感もあるなかなか面白いホラー(66点)
10代の若者たちにとって、携帯やゲーム、それを通じてのコミュニケーションには、大人の我々が感じるのとは別の、特別なリアリティーがあるのかも知れない。この作品を見て、ふとそう思った。