◆ザ・ロックが宇宙人の兄妹を助ける(70点)
ミッキー・ロークが演じた『レスラー』の主人公は、とうとうリングの外に居場所を見つけることができなかったけど、プロレスラーのザ・ロックことドウェイン・ジョンソンは、着々とハリウッドで地歩を固めている様子。今作でもそれと知らずに宇宙人の兄妹を助けるタクシー運転手を演じ、十分鑑賞に堪える演技を見せている。相手役の年若い兄妹(セスとサラ)には、ともに児童文学の映画化作品に主演した経験を持つアレクサンダー・ルドウィグ(『光の六つのしるし』)と、アナソフィア・ロブ(『テラビシアにかける橋』)が扮した。
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◆ウディ・アレン旅行社の洒脱でアブないバルセロナ・ガイド(70点)
「双子と寝たい」と書いていたのは若い頃の村上春樹だったが、ウディ・アレンの今作のテーマはズバリ、3P。初対面の女性2人を臆面もなくベッドに誘う画家や、愛人を同居させた方が公私ともに順調という芸術家夫婦を見ていると、私たちが日頃疑うことのないモラルの土台がちょっと揺らぐ。「バルセロナが大好き」と公言するアレンが、有名な観光スポットをぜいたくにロケに取り入れているのも、見逃すことのできないポイントのひとつだ。
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◆人の心のヒダをまさぐる西川美和の仕掛けと企み(70点)
無資格の医師や、密かに虐待行為を行っていた医療従事者のニュースが、時おり世間をにぎわせる。やや不謹慎ながらも面白いと思わずにいられないのは、そうした行為で逮捕される人々が、決まって患者たちから評判のいい「名医」であったり、「明るくて真面目な職員さん」であったりすることだ。偽物というのはすべからく本物以上に本物に見えなければならないものらしい。
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◆抱腹絶倒の強盗を重ねる老夫婦が、社会に一石を投じる(70点)
エミルとヘディは大恋愛の末に結ばれた夫婦だったが、結婚から半世紀が過ぎた今では出会った頃の思いなどどこへやら。体調は悪くなる一方だし、生活も困窮。ついにアパートの電気さえ止められた。だが、ヘディの宝物だったダイヤのイヤリングが差し押さえられるに及び、エミルは20年ぶりに愛車のハンドルを握って郵便局に乗りこんでいく。そう、強盗をするために……。
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◆重いテーマを隠した、数奇な愛の物語(80点)
ドイツで書かれたベストセラー小説「朗読者」を、『リトル・ダンサー』(00)『めぐりあう時間たち』(02)のスティーヴン・ダルドリー監督が、丁寧かつ丹念に映像化した作品だ。ヌードや老けメイクをいとうことなく、ヒロインの数奇な人生を演じきったケイト・ウィンスレットは、6度目のノミネートにして初のオスカーを手に入れた。
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◆異色のスポーツ映画でミッキー・ロークが復活(80点)
短くても自分らしく生きることが幸せなのか、自分を殺して長生きすることが幸せなのか。『レスラー』は、人生の岐路に立つ中年プロレスラーの悲哀を描いた異色のスポーツ・ヒューマン・ドラマである。ダーレン・アロノフスキー監督のたっての希望で主演したミッキー・ロークは、自身の転落人生を地でいくこの役柄で、まさかの復活を果たした。
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◆ターミネーターが退化することで『ターミネーター』は進化(80点)
4作目にして初めてシュワルツェネッガー抜きでの製作。おまけにメガホンをとるのは、おバカ映画の『チャーリーズ・エンジェル』を撮ったマックG。『ターミネーター』シリーズのファンとしては大いなる不安を抱きつつ『T4』の完成を待っていたわけだが、喜べ、同志よ、幸い不安は払拭された。マックGは前三作を相当に研究したらしく、シリーズの精神をきっちりと押さえた、堅実な作品に仕上げている。
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◆アイラ・フィッシャーの突き抜けたコメディエンヌぶりが「買い」(70点)
アン・ハサウェイ主演の『プラダを着た悪魔』は、硬派なジャーナリスト志望の女の子がファッション雑誌に配属されて……というコメディだったが、『お買いもの中毒な私!』はその逆パターン。「お買いもの命」のレベッカはファッション雑誌への就職を狙うも、手違いからお堅い経済誌に採用される。チンプンカンプンの経済用語をネットで調べながら書きあげた記事は、しかし消費者の心理をとらえていると編集長から高評価。しかもよく見ると、この編集長、わりとハンサムで……。
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◆ザック・エフロンが“37歳の高校生”に変貌(70点)
『ハイスクール・ミュージカル』『ヘアスプレー』で大ブレイクしたザック・エフロンがミュージカルではない作品に初トライ。歌やダンスのシーンなしでも旬のスターのオーラはいささかも色あせず、作品自体のデキの良さも相まって、全米では公開第1週にトップに躍り出た。
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◆ジェット・リー、アンディ・ラウ、金城武が夢の競演(70点)
昨年公開された『レッドクリフ PartI』が、興収50億円を超える意外なメガヒットになったことは記憶に新しい。今年4月に封切られた後編もオープニングは好調のようだ。だが、あえて言おう。総花的な『レッドクリフ』より、主要なキャラクターを絞りこんだ『ウォーロード/男たちの誓い』の方が、実は格段に面白い。
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◆だまされるのを楽しみたい、トニー・ギルロイのソフィスティケートされた罠(70点)
劇中で交わされるほとんどの会話は、話し手が聞き手に聞かせるためのウソ、または話し手と聞き手が第三者に聞かせるためのウソ、あるいは映画の作り手が観客に聞かせるためのウソ。『デュプリシティ スパイは、スパイに嘘をつく』は、企業犯罪映画に大人の恋のスパイスをまぶした、ハイセンスなサスペンスコメディである。
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◆単なる動物映画を超えるデキだが、あざといCGはビミョー(80点)
「子供と動物には勝てない」というのは映画界の通説。あどけない子供や、愛くるしい愛玩動物がスクリーンに映ろうものなら、たちまち観客は相好を崩す。ただ、子供や動物のかわいさだけで客が呼べる映画というのは、往々にしてキャラクターは平板、ストーリーはグズグズという代物になりがちだ。『ビバリーヒルズ・チワワ』は、その点、2つの意味で「動物映画」ではない。
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◆イーストウッドの「いじわるじいさん」が下す勇気ある決断(80点)
息子や嫁に遠慮会釈なく憎まれ口を叩く。孫娘のへそピアスに不機嫌なうなり声を上げる。イタリア系の床屋と口汚く罵り合う。『グラン・トリノ』でクリント・イーストウッドが演じるのは、そんなポーランド系の偏屈ジジイ、コワルスキーの役だ。この「いじわるばあさん」ならぬアメリカ版「いじわるじいさん」の描き方がユーモラスで、起承転結の「起」の部分はクスクス笑い通し。コワルスキーは隣家のアジア系移民にも胡乱(うろん)な目を向けるが、ふとしたきっかけでその家の姉弟、スーとタオを救うことになり、思いもかけない交流が始まっていく。
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◆生命力と一途な愛、インド的なるものと普遍なるものをバランスさせたダニー・ボイルの最高傑作(90点)
ご存じ、アカデミー賞作品賞を初め、昨年の各種映画賞を総なめにした快作だ。インドで人気のクイズ番組に出場した青年ジャマールは、残り1問で大金を手にするところまでこぎ着けながら、不正を疑われて逮捕される。スラム出身の負け犬(=スラムドッグ)は、なぜ次々と難問に答えられたのか。そして何のために全問正解しなければならなかったのか……。
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◆墜落事故の生還者、72日間に渡る極限の記録(70点)
ウルグアイを飛び立ったチャーター機がアンデス山中に墜落。生き残った者たちが人肉を食べて72日間を生き抜いたという1972年のニュースは、当時の世界に衝撃を与え、イーサン・ホークの主演映画『生きてこそ』(93)の題材ともなった。本作は50代を迎えた生還者たちや、当時の救助関係者へのインタビューを通じ、現場で何が起きたのかを改めて伝えようと試みたドキュメンタリーだ。
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