板尾創路の脱獄王 - 渡まち子

◆ちょっと小ワザの効いた小品(50点)

 昨今人気のお笑い芸人の監督作だが、これはちょっと小ワザの効いた小品。何しろ監督・主演の板尾創路にはセリフがない。もっとも声を発しないという意味ではない。昭和初期、胸に逆さ富士の入れ墨をした脱獄常習犯の男・鈴木が信州の刑務所に移送される。脱獄を繰り返してはワザと逮捕され、より過酷な監獄に入る鈴木。なぜ彼は脱獄するのか。看守長の金村は、鈴木に興味を持ち、彼の過去を調べ始める…。

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BANDAGE バンデイジ - 福本次郎

◆半端な意思や能力はすぐに淘汰され、特別な才能を持った者だけが生き残る現実。見果てぬ夢を追う若者たちの姿を、音楽業界に飛び込んだ素人の女の子の目を通して、切ないメロディを奏でるかのようなしっとりとした映像で描く。(60点)

 主人公が好きな女の子ためにギターを爪弾きながら口ずさんだ恋人を励ますための歌が、「大人の判断」で大衆を元気付ける歌謡曲に脱皮する。ごく個人的な歌が、まさにジャニーズのアイドルグループの歌のようにアレンジされ売り出される過程は、音楽業界のシステムをリアルに再現する。半端な意思や能力はすぐに淘汰され、特別な才能と向上心を持った者だけがプロとして生き残る現実。見果てぬ夢を追い、自分の目指す音楽こそ最高と信じて疑わない若者たちを、この業界に飛び込んだ素人の女の子の目を通して、切ないメロディを奏でるかのごとくしっとりとした映像で描く。

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板尾創路の脱獄王 - 福本次郎

◆一切の会話を拒み、脱走してはわざと捕まり、さらに警戒厳重な監獄に送り込まれるのを望む。自由を得るために逃げるのではなく、拘束されるために逃げる。その奇妙な発想は官憲の意表を突き、見る者の予想を裏切り続ける。(50点)

 金網からかすめ取った針金で錠を開け、鼻血をねじにこすりつけ鉄格子を緩め、歯を削って作ったレンチで手錠をはずす。身のこなしは軽業師のようにしなやかで、小窓を抜け梁を登り屋根をかける。拘置所・刑務所を脱獄することだけに10年以上の月日を費やした男の恐るべき執念と情熱。一切の会話を拒み、脱走してはわざと捕まり、さらに警戒厳重な施設に送り込まれるのを望む。自由を得るために逃げるのではなく、拘束されるために逃げる。その奇妙な発想は官憲の意表を突き、見る者の予想を裏切り続ける。

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今度は愛妻家 - 福本次郎

◆ケンカばかりしていても深く愛し合っている夫婦の、本当は相手の心を分かっているけれど素直に感謝を口にできない照れくささが妙味を見せる。一見古いホームドラマのようで、重い喪失感と後悔を含蓄に富む物語にまとめている。(70点)

 かいがいしく夫の世話を焼く妻、妻を鬱陶しく思いつつも甘えてしまう夫。ケンカばかりしていても深く愛し合っている夫婦の、本当は相手の心を分かっているけれど素直に感謝を口にできない照れくささが妙味を見せる。そして、妻の家出が夫にもたらす解放感と無気力。長年連れ添った夫婦だけがたどり着くなれ合いという名の愛情を、ほとんど室内の限定された空間の中で、ふたりのベテラン俳優が芝居のせりふのような間の掛け合いを見せる。一見古いホームドラマのようで、重い喪失感と後悔を含蓄に富む物語にまとめている。

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オーシャンズ - 佐々木貴之

◆あくまでも海の世界の魅力にスポットを当てている(75点)

 渡り鳥の生態を記録したフランス製ネイチャー・ドキュメンタリー『WATARIDORI』のジャック・ぺラン&ジャック・クルーゾーが、50ヵ所の海とそこに息づく数々の生物を記録した。

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今度は愛妻家 - 渡まち子

◆見終わってタイトルの意味が分かり、思わずホロリとする(60点)

 平凡な中年夫婦が再出発を決意する物語は、ささやかな日常を丁寧に描く前半と後半のどんでん返しの対比が効いている。かつては売れっ子カメラマンだった北見俊介は、今では仕事もせずグウタラと暮らしている。浮気までするダメ亭主を、妻のさくらは明るく献身的に支えるが、ある日、さくらは唐突に「別れて」と切り出し、俊介を動揺させる…。

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ユキとニナ - 福本次郎

◆両親の不仲に小さな胸を痛める女の子は、食卓で父と母が怒鳴りあっていても黙々と食事を続ける。目の前の夫婦崩壊をなかったものにしておけば、再び家族が仲良く暮らせるようになるのでは、という彼女の思いが切なく哀しい。(60点)

 両親の仲が悪いのは自分にも責任があるのではと小さな胸を痛める女の子は、食卓で父と母が些細な行き違いで言いあいを始め、やがてそれが怒鳴りあいに発展してもまるで耳をふさいでいるかのように黙々と食事を続ける。目の前で起きている夫婦関係の崩壊をなかったものにしておけば、再び家族が仲良く暮らせるようになるのでは、という彼女の思いが切なく哀しい。映画は、離婚という大人の事情に人生を左右される少女の姿を通じて、彼女たちの成長を描く。

すべては海になる - 福本次郎

◆仕事・恋・人間関係、しがらみを感じながらも何とか折り合いをつけているヒロインは、現状を否定しているわけではないが、「これは本当の自分ではない」と違和感を覚え、満ち足りているはずなのに居心地の悪さを感じている。(50点)

 「“愛”は本を売るために作家が考えた言葉」、ヒロインが言うように、恋愛小説に描かれた物語のごとき劇的な出来事などわずかで、ほとんどの人は退屈な毎日を繰り返しながら歳老いていく。そんな、仕事・恋・人間関係、それらにしがらみを感じながらも何とかうまく折り合いをつけている彼女の平凡な日常がリアルだ。現状を否定しているわけではないが、どこか「これは本当の自分ではない」と心の隅で違和感を覚え、満ち足りているはずなのに居心地の悪さを感じる現代女性の繊細な心理を佐藤江梨子が好演。不幸な環境の少年を救うことで己を変えるきっかけを探そうとする姿は、真正面から他人と向き合うのが生きることの第一歩であると語っている。

作戦-THE SCAM- - 小梶勝男

◆韓国で初めての「株」をテーマにした作品という。仕手株を巡って、騙し騙される頭脳戦がテンポよく描かれている。韓流スターのパク・ヨンハが冴えない男を演じているのも見所だ(69点)

 韓流スター、パク・ヨンハの7年ぶりの映画出演作。日本では歌手としてのイメージが強いが、元々は演技派なのだろう。「負け組」から勝ち上がろうとあがく、冴えないデイトレーダーの青年を好演して、実力を見せてくれた。

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HATCHET/ハチェット - 小梶勝男

◆昔懐かしいオールド・スクール・ホラーに捧げるスプラッター・コメディー。残酷描写が派手で、ホラーへの愛に満ちている(80点)

 オールド・スクールとは「保守的」という意味だが、普通は70~80年代前半の「古き良き」ヒップホップのことをいう。本作は「オールド・スクール・ホラー」を謳っている。70年代後半から80年代前半の古き良きスプラッター映画を指しているのだろう。それは、「ハロウィン」(1978)、「13日の金曜日」(1980)、「バーニング」(1981)など、当時大量に作られた殺人鬼ホラーのことだ。

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シャネル&ストラヴィンスキー - 渡まち子

◆同時期に作られた3本のシャネルの映画の中で、本作が最もクールでファッショナブル(70点)

 同時期に作られた3本のシャネルの映画の中で、本作が最もクールでファッショナブルだ。1920年のパリ。デザイナーとしても実業家としても成功していたココ・シャネルは、ロシア出身の作曲家イゴール・ストラヴィンスキーの才能に惚れ込み、彼を妻子と共に別荘に招待、経済的に援助する。斬新すぎる音楽が酷評されたストラヴィンスキーと、初めて愛した男性を事故で亡くしたシャネル。2人の天才は激しい恋に落ちる。

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BANDAGE バンデイジ - 渡まち子

◆繊細な味わいの青春映画(65点)

 どうせアイドルものだろうとバカにしていたら、思いがけず繊細な味わいの青春映画だった。これだから映画は見てみないとわからない。90年代、空前のバンドブームが吹き荒れる中、友人に誘われてLANDSというバンドのライブに行った女子高生アサコは、ボーカルのナツに気に入られ、偶然からバンドのマネージャーになる。音楽に情熱を注ぐ若いメンバー、彼らに夢を託す大人、そしてアサコは、共に歩んでいくが…。

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ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 - 福本次郎

◆40年前の失踪事件を洗いなおす主人公が真相を突き止めていく過程がアイデアに満ち溢れ、パズルのピースを埋めていく作業とリアルな暴力が交錯し、スリルとインテリジェンスを兼ね備えた上質なミステリーに仕上がっている。(80点)

 新聞に掲載された一枚の写真から連続して撮影されたネガにたどりつき、被写体の表情が変化するを発見する。平穏な表情が恐怖に一変する様子を探し出すという調査報道に携わるジャーナリストならではの観察眼と根気。さらに残された数字が迷宮入りしていた惨殺事件に結びつき、血ぬられた一族の恥部が闇から浮き上がる。大昔に起きた失踪事件を洗いなおす主人公が、警察も解明できなかった真相を突き止めていく過程がアイデアに満ち溢れ、地道にパズルのピースを埋めていく作業とリアルな暴力が交錯し、スリルとインテリジェンスを兼ね備えた上質なミステリーに仕上がっている。

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シャネル&ストラヴィンスキー - 福本次郎

◆音楽と振り付けは斬新で大胆、その常識を覆すスタイルは、流行を生み出してきた女の琴線に触れる。映画は時代の最先端を走っていた女と革新的な作風の男の才能と愛のせめぎあいを、感情のテンションをギリギリまで高めて描く。(60点)

 短く刻んだリズムにのせてダンサーたちが細かいステップを踏む。音楽と振り付けは斬新で大胆、保守的な観客には大罵声を浴びる。だが、その常識を覆すスタイルは、流行を生み出してきた女の琴線に触れる。映画は、生き方自体が時代の最先端を走っていた女と、作風は革新的でも家族を捨ててまで激情に身をゆだねられなかった男の、つかの間の才能と愛のせめぎあいを、感情のテンションをギリギリまで高めて描く。今年公開された2本の「シャネルもの」では、ボーイ亡き後のシャネルは男を断ってファッションに命を捧げたように語られていたが、この作品ではきちんと女の部分に迫っている。

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ブルー・ゴールド-狙われた水の真実 - 福本次郎

◆水は住むあらゆる生き物の必需品なのに、一部大企業が所有権を独占しようとする。梅雨や台風のおかげで雨水に恵まれ、「水はタダ」というのが常識の日本に住んでいると切実さはないが、その認識はいかに甘いかを痛感する。(60点)

 水はいったい誰のものか。地球に住むあらゆる生き物の必需品であるはずなのに、一部大企業が所有権を独占しようとする。梅雨や台風のおかげで雨水に恵まれ、「水はタダ」というのが常識の日本に住んでいると切実さはないが、その認識はいかに甘いかを痛感する。欧米の貪欲な水企業は、水を戦略的資源として虎視眈々と狙っているのだ。

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