◆人気が出るのもよくわかる入魂の一作(80点)
ライトノベルも深夜アニメも見ない私としては、涼宮ハルヒと遭遇する機会はまずないだろうと安心していた。だから角川の編集者に、いかに熱くその魅力を目の前で語られろうとも、これまでは軽くいなすことができた。
◆人気が出るのもよくわかる入魂の一作(80点)
ライトノベルも深夜アニメも見ない私としては、涼宮ハルヒと遭遇する機会はまずないだろうと安心していた。だから角川の編集者に、いかに熱くその魅力を目の前で語られろうとも、これまでは軽くいなすことができた。
◆デヴィッド・リンチの反対を押し切った監督(60点)
鬼才デヴィッド・リンチ(製作総指揮)と、それに負けないくらい個性的な娘のジェニファー・リンチ監督が、父子協力して黒澤明の「羅生門」を撮る。そう聞いただけで、いいようのない疲労感を感じさせる、マニアにはたまらない一品。それが『サベイランス』だ。
◆何事にも今一歩が踏み出せないのは自信のなさが原因でとわかっているのに、目に見えない殻を脱却できない主人公。その姿には突き放したくなりつつもつい共感を覚え、しまいには応援したくなるほど人間的な魅力に満ちている。(60点)
押しが弱いために仕事ではうだつが上がらず、好きな女の子との距離もなかなか縮められない。そんな、何事にも今一歩が踏み出せず、どうしようもないほどウジウジした男の生活がリアルに再現される。誕生日をテレクラで迎え、せっかく彼女をホテルに誘っても何もできず、挙句の果てにライバル会社の社員に売り場も彼女も横取りされる。自信のなさが原因であるのがわかっているのに目に見えない殻を脱却できない主人公の姿には、突き放したくなりつつもつい共感を覚え、しまいには応援したくなるほど人間的な魅力に満ちている。
◆巧妙に張り巡らされた罠とカメラの目。権力によってスケープゴートにされ、あてもなく逃げ回る主人公。誰を信じればいいのか、追い詰められた男は己の無実を疑わない友人知人たちへの「信頼」だけを武器に、街中を奔走する。(60点)
巧妙に張り巡らされた罠とカメラの目。警察組織とさらにその上に君臨する権力によってスケープゴートに仕立て上げられた主人公が、あてもなく逃げ回る。ゴールは見えず、あきらめたときはすなわち死。誰を信じればいいのか、誰が裏切り者なのか、追い詰められた男は己の無実を疑わない友人知人たちへの「信頼」だけを武器に、街中を奔走する。情報管理の名のもとに政府が行う国民の監視に対して日頃から反発を覚えている一般市民が、できる範囲で彼に手を差し伸べて少しでも不快感を表明しようとする。彼に力を貸すのは、ひいては民主主義を守ることにつながるとみな感づいているのだ。
◆アパルトヘイトの名残りある南アフリカ、マンデラは国をまとめるためラグビーW杯を利用する。映画はイーストウッドが近年描いてきた愛や苦悩といった個人的な感情より、壮大な目的に命をかけた男のゆるぎなき人間像に迫る。(70点)
手入れの行き届いた芝のグラウンドでラグビーの練習をする白人、道路一本隔てた石ころだらけの空き地では黒人少年たちがサッカーに興じる。その境界の道路を釈放されたマンデラが乗る自動車が走りぬける。まだアパルトヘイトの名残りある南アフリカが新しい時代に向かってスタートを切る象徴的なシーンだ。やがてマンデラは人種の入り混じった国を一つにまとめるためラグビーW杯を利用する。映画は、イーストウッドが近年描いてきた愛や苦悩といった個人的な感情の機微より、新国家建設という壮大な目的に命をかけた男のゆるぎなき人間像に迫る。
◆80年代の香港映画や90年代の韓国映画を見ているかのよう(55点)
中国を代表する女優チャン・ツィイーが、ドジでキュートなヒロインを熱演するドタバタコメディ。女流漫画家のソフィーは、アメリカ帰りの外科医ジェフと結婚寸前に、高慢な美人女優のジョアンナに彼を横取りされてしまう。打ちのめされたソフィーは、友人や、ジョアンナの元カレと噂される写真家のゴードンを強引に巻き込み、ジェフを取り戻す計画を立てるが、失敗ばかり。そんなソフィーにゴードンは惹かれていくが…。
◆現在と過去を描き分けて魅せる波乱万丈の人間ドラマ(60点)
50歳のピッパ・リー(ロビン・ライト・ペン)は30歳年上の人気作家ハーブ(アラン・アーキン)と結婚して以来、二人の子供も立派に育て上げた理想の妻、良妻賢母だった。だが、ハーブが体調を崩してからはマンハッタンからコネチカットに移ったピッパは幸せだと思う反面、コミュニティーでの老人たちと過ごす日々に満足感が得られなかった。ある日、15歳年下でバツイチの引きこもりニート青年クリス(キアヌ・リーヴス)と出会うが、この出会いがピッパを少しずつ変えていくことに……。
◆懸命に生きる兄弟の物語は郷愁を誘う(50点)
昭和30~40年代の新潟を舞台に懸命に生きる兄弟の物語は、郷愁を誘う。健一と龍二の兄弟は、児童擁護施設・希望宛で育った。弟の龍二は養子として引き取られ、優しい養父母のもと、のびのびと暮らしていた。兄の健一は宛に残り、出稼ぎに行ったまま行方不明になった父を待ち続けるが、連絡はなく、今は大工の見習いとして働いている。龍二が大学に進学することになり喜ぶ健一だったが、龍二の入試の前日に落下事故で重傷を負ってしまう…。
◆伏線未消化&回りを気にしすぎ(30点)
ごちそうばかり食べていると粗食も食べたくなる。美人ばかりとデートしていると、古女房が恋しくなる。そんな、誰にでもあるような感覚を映画監督も感じるのだろうか。「ロード・オブ・ザ・リング」「キング・コング」と、破格の超大作ばかり続いたピーター・ジャクソン監督の新作は、それらとはまるで違う、パーソナルで万人向けではないこぢんまりしたファンタジーとなった。
◆山田洋次の円熟味(75点)
『おとうと』をみると、これこそ横綱相撲だなという感じを受ける。最近は横綱というと、酔っ払って周りをぶんなぐる血の気の多い奴といった印象が強いが、もちろんこの映画はそうではない。奇手に逃げず、昔ながらの定番の技術のみで、堂々と見せる風格ある映画という意味である。
◆仙台ロケは迫力満点(70点)
『ゴールデンスランバー』は、首相暗殺の容疑をかけられたいち市民の逃亡劇を描いたアクションである。この新首相は、ケネディよろしくオープンカーでパレードしているところを狙われる。
◆家族の絆が薄れつつあるこの時代に、改めて家族のあり方を見つめさせてくれる"人間讃歌"の秀作(80点)
日本映画界を代表する巨匠、山田洋次監督が「十五才 学校IV」(2000年)以来、10年ぶりに撮影した現代劇「おとうと」は、そのキャリアにおいて常に日本の家族と、その精神性を描き続けてきた山田監督の集大成的な1本。涙あり笑いありの感動作だ。
◆イルカの群れがイワシの大群を水面近くに追い込み、一気に突進する。さらに、生まれたばかりのウミガメの赤ちゃんに群がるグンカンドリや、海岸で戯れるオタリアの幼獣に突然襲いかかるシャチなど、弱肉強食の掟を繰り返す。(60点)
イルカの群れがイワシの大群を水面近くに追い込み、一気に突進する。上空からは海鳥がくちばしを突き出して銛のように急降下してイワシをとらえる。仕上げにサメやクジラが大きな口をあけてイワシの群れごと一気に飲み込もうとする。まさにイワシ食べ放題といった壮大な晩さん会は、食べる者と食べられる者の力関係を冷酷に描写し、餌となるためだけに生まれてきたようなイワシにまったく同情を寄せることはない。さらに生まれたばかりのウミガメの赤ちゃんに群がるグンカンドリや、海岸で戯れるオタリアの幼獣に突然襲いかかるシャチなど、弱肉強食の掟を繰り返し、海洋で生きる厳しさを見せつける。
◆音はするが姿は見えない。気配は感じるが実体はない。邪悪な空気は小さな物音から始まり、ドアを動かし、ついには就寝中のベッドに侵入する。その得体の知れない存在に神経をさいなまれていく主人公ふたりの葛藤が生々しい。(50点)
音はするけれど姿は見えない。気配は感じるのに実体はつかめない。霊感の強い女が日々悩まされる未知なるものからのコンタクト。「それ」は邪悪な空気を振りまきながら、最初は小さな物音から始まり、やがてドアを動かし、窓を開け、ついには就寝中のベッドにまで侵入する。その得体の知れない存在に神経をさいなまれていく主人公の葛藤が生々しい。映画は、恋人の身に起きる超常現象を記録しようとする男のカメラがとらえた映像を通じて、常識の範疇を超えた恐怖に追い詰められていく感情の昂りをリアルに再現する。