◆独り試練に立ち向かう少女の決意が心を揺さぶる(70点)
『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(93)のヘンリー・セリック監督が、またまたストップモーション・アニメを駆使して創り上げた、ちょっぴりダークなファンタジー。11歳の少女コララインは、新居で見つけた不思議な扉の向こうで、現実世界とよく似た「もうひとつの世界」と出会う。「別のママ」は料理上手、「別のパパ」は楽しいことが大好きと、構ってくれない本当の両親とは大違いだが、なぜか彼らの目はボタンになっていて……。
◆独り試練に立ち向かう少女の決意が心を揺さぶる(70点)
『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(93)のヘンリー・セリック監督が、またまたストップモーション・アニメを駆使して創り上げた、ちょっぴりダークなファンタジー。11歳の少女コララインは、新居で見つけた不思議な扉の向こうで、現実世界とよく似た「もうひとつの世界」と出会う。「別のママ」は料理上手、「別のパパ」は楽しいことが大好きと、構ってくれない本当の両親とは大違いだが、なぜか彼らの目はボタンになっていて……。
◆一部のカルトムービー好きの高揚を誘う1本(65点)
カルト映画の奇才デヴィッド・リンチの愛娘ジェニファー・リンチが、物議を醸し出した「ボクシング・ヘレナ」(1993年)以降14年ぶりにメガホンを取ったのが本作「サベイランス」。2008年のカンヌ国際映画祭で上映された際に、評論家のあいだで賛否両論を巻き起こしたという問題作だ。
◆西田美和の演技ができていないため、作品自体が冗談のようになってしまっている(20点)
独身の40歳、倉田美和(西田美和)は、アイスショーなどで活躍するかたわら後進の指導にもあたっているプロフィギュアスケーター。ある日、元恋人の子供をあずかったことから、人生が動き始める。彼女は20年前に一度捨てた「オリンピックに出場する!」という夢を叶えるべく、再びフィギュアスケートの競技に取り組み始めた……。
◆豪華キャストが勢揃いした贅沢なアンサンブル・ムービー。すべてが薄味だが楽しい作品になった。(60点)
2月14日のロサンゼルス。恋人にプロポーズした青年、高校生のカップル、なぜかバレンタインデーが大嫌いな美人パブリシストなど、さまざまな年齢の男女がいた。バレンタインデーの24時間に生まれる彼らの愛の行方とは…。
◆家出をし、コックとして修業を積み、恋人と信じた男に全財産を持ち逃げされ声を失ったヒロインの半生を手短に紹介するイントロ部分は、魔法の国の扉を開けるような不思議なメロディに乗せた歌と簡潔な映像でテンポよく語られる。(30点)
家出をし、コックとして修業を積み、恋人と信じた男に全財産を持ち逃げされ声を失った女は、たった一つ残されたおばあちゃんのぬか床を手に故郷の村に帰る。ヒロインの半生を手短に紹介するイントロ部分は、魔法の国の扉を開けるようなメロディに乗せた歌と簡潔な映像でテンポよく語られる。これからどんなおとぎ話が展開するのかと期待はふくらむが、ブタを飼う母親が出てくるあたりで急速にしぼんでしまう。そして癖のある他の登場人物は、その存在が不思議というより不自然でまったく物語になじんでいない。もともとスカスカな内容の原作は映画化でいっそう隙間風を吹かせてしまった。
◆家族と離れて暮らし仕事も行き詰っているNYの男と、刺激のない日常にウンザリしているロンドンの女。未来などほんのわずかなきっかけで変えられ、運命は自分の足で歩こうとする者の味方をすることをこの作品は教えてくれる。(50点)
家族と離れて暮らし仕事も行き詰っているNYの男と、刺激のない日常にウンザリしているロンドンの女。人生も中盤を過ぎたふたりが、もう一度生きる目標を模索しているときに知り合う。現在の生活を変化させる勇気と、失敗したらやり直せないかもしれない躊躇の中で、男は未知なる世界に踏み出す決意をする。未来なんてほんのわずかなきっかけで変えられる。それをチャンスとみなして乗ってみるか、漫然と見逃すか。運命は自分の足で歩こうとする者の味方をすることをこの作品は教えてくれる。
◆タイトルが「交渉人」というわりには、本格的に交渉する場面は少ない(45点)
人気TVドラマの劇場版は、ヒロインの硬派なたたずまいが魅力のサスペンス・アクションだ。現金輸送車を襲いショッピングモールにたてこもる犯人グループと交渉するために、警視庁捜査一課特殊班捜査係の宇佐木玲子がやってくる。だが直後にモールは大爆発しパニックの中、犯人一味は逃走する。それから数週間後、玲子は羽田空港で不審な青年・木元祐介を目撃し、とっさに彼が乗った便に潜入する。立てこもり事件の人質の一人だった祐介は、飛行機をハイジャックするが、事件の裏側には予想を超えた巨大な悪がうごめいていた…。
◆バレンタインデー、およびカップル専用(55点)
誰にでも、憎らしい奴というのはいるものである。その悪意は、ときに凶悪な事件となって社会を不安定化させ、人々を震撼させる。よって社会人ともなれば、いかに相手を憎んでいても、それを顔に出さぬよう我慢して生きるのが当然である。
◆カラヴァッジョの全集などとぜひ一緒に(45点)
休み時間のたびに女の子と図書室へ行って美術全集を眺めるという、奇妙な高校時代をすごした私であるが、そのとき本の中でひとり異彩を放つ画家がいた。素人目にもわかる、その異様な迫力は長く心に焼き付いていたが、いうまでもなくそれこそが、現在ブームでもあるカラヴァッジョであった。
◆ストーリーが進むに連れてじわじわと心にしみてくる(70点)
「ボルベール<帰郷>」(2006年)のペドロ・アルモドバル監督が、全幅の信頼を寄せるペネロペ・クルスを主演に起用(ふたりが組むのは4度目)。スペインならではの極彩色に彩られたスクリーン上で展開されるのは、愛と嫉妬と憎悪と復讐が渦巻く濃厚なドラマだ。
◆高級車を乗り回す独身生活をエンジョイし、現状にあきらめに近い満足を覚えている一方で、心には埋めがたい空白と将来への漠然とした不安を抱えている。そんなヒロインの感情と、彼女を取り巻くスケート界の日常がリアルだ。(50点)
才能のない子供や初心者のオッサンにレッスンをしながら心は冷めている。華やかなショーで身にまとう女子高生の制服姿の不自然さも自覚している。かつてフィギュアスケートの五輪候補だった女・40歳の現在が丹念に描かれる。高級車を乗り回す独身生活をエンジョイし、現状にあきらめに近い満足を覚えている一方で、胸には埋めがたい空白と将来への漠然とした不安を抱えている。そんな微妙な気持ちと彼女を取り巻くスケート界の日常が非常にリアルだ。もう若くないけれどまだ若者と張り合うオバサン、十代のスケーターがヒロインを見るイタいまなざしが残酷だ。
◆妻と母の役割をきちんとこなし、豊かな暮らしを送る50歳の主婦がふとした瞬間に感じる空白は更年期からくるものなのか。愛や幸せなど幻想で本心に嘘をついている、そんな家族の虚構に気付いた彼女の心理がリアルに再現される。(50点)
優しい夫、気さくな隣人、少し反抗的だが一応まともに育った子供たち。妻と母の役割をきちんとこなし、それなりに豊かな暮らしを送る50歳の主婦がふとした瞬間に感じる空白は更年期からくるものなのか。不眠と夢遊病、刺激的な都会から老人人口率の高い退屈な住宅地に引っ越してきたヒロインは、あり余る時間の中で過去を振り返り、漠然とした不安と不満を心に抱いてしまう。愛や幸せなど幻想にすぎず、本心に嘘をついている、そんな家族の虚構に気付いてしまった彼女の心理がリアルに再現される。
◆決して華やかな作品ではないが人生の豊かさを感じさせる(60点)
大人の恋は、分別があるだけに最初の一歩に勇気が必要。中年男女の諦観や疲労といった心情を名優2人がしっとりと演じている。NY在住のCM作曲家ハーヴェイは娘の結婚式に出席するためロンドンにやってくる。離婚後疎遠だった娘や別れた妻と上手くいかず、仕事のことも気になるハーヴェイは帰国しようとするが、飛行機に乗り遅れてしまう。一方、空港で働くケイトは、婚期を逃して恋に臆病になっている40代の女性。そんな2人が偶然に出会ったことから、ロンドンの街で、1日を一緒に過ごすことになるが…。
◆Jホラーの原点ともいえる伝説の作品がついにベールを脱いだ。多くのホラー・ファンにとってトラウマとなった怖さは、今見ても十分に納得できる(88点)
現在、「Jホラー」と呼ばれるジャンルを作った黒沢清、高橋洋、小中千昭、鶴田法男、中田秀夫、清水崇らの著作や講演、対談などを追うと、Jホラーに直接的に影響したと思われるいくつかの作品が出てくる。それはジョルジョ・フェローニの「生血を吸う女」(1961)であり、ジャック・クレイトンの「回転」(1961)であり、ハーク・ハーヴェイの「恐怖の足跡」(1961)であり、ロバート・ワイズの「たたり」(1963)であり、ジョン・ハフの「ヘルハウス」(1973)であり、ダニエル・マイリックとエドゥアルド・サンチェスの「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(1999)であり・・・・・そして、「シェラデコブレの幽霊」なのだ。