カンニバル・マン 精肉男の殺人記録 - 小梶勝男

◆1972年スペイン製ホラーの米国編集版である。日本では未公開で、これまでソフト化もされていないという。余りの残酷描写に世界中で公開中止が相次ぎ、映画館では「嘔吐用パック」が配られたとされるが、今見ると、それほど過激な描写があるわけではない。だが、全体にどうにも奇妙な雰囲気が漂っていて、それが一種の「味」になっている(66点)

 冒頭、精肉工場で牛から血がドクドクと流れる場面が、ドキュメンタリーのように映し出される。ここで何だか嫌な感じになるのだが、この「嫌な感じ」は、ラストまで続くことになる。工場で働く主人公マルコス(ヴィセンテ・パラ)は恋人とデート中、タクシー運転手とトラブルを起こし、つい殴ってしてしまう。後になって、運転手が死んだことを知った恋人が、主人公に自首を迫る。またしてもつい恋人を殺してしまった主人公は、さらについ兄を殺し、兄を探しに来た兄の恋人をつい殺し・・・・と、最初の殺人を隠すため、何となく成り行きで次々と殺人を重ねてしまう。そして死体の処分に困り、精肉工場の牛の肉に混ぜるようになる。

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アイガー北壁 - 佐々木貴之

◆壮大なスケールで魅せつけ、緊迫感を漂わせたスリリングな描写が魅力的(75点)

 アルプス登攀史上最大の事件と呼ばれた実話をフィリップ・シュテルツェルが映像化した入魂のアドベンチャー・ドラマ。

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フィリップ、きみを愛してる! - 渡まち子

◆ブランドものの服や小物、優雅な邸宅。ゲイ・ライフとはかくもお金がかかるものなのか!(60点)

 主人公は「愛してる」の一言のために懲役167年をくらった男。これが実話だというから恐れ入るが、何ともロマンチックな犯罪者だ。警官のスティーヴンは大事故で命を失いかけたのを機に、自分らしく生きようと決意。警官を辞め、ゲイであることをカミングアウトし、詐欺師人生に突入する。保険金詐欺で投獄された刑務所で心優しいフィリップと出会い一目惚れ。彼を喜ばせたい一心で出所後も詐欺を繰り返すが、フィリップに嘘がばれてしまう…。

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時をかける少女 - 福本次郎

◆「記憶は消されても、心は覚えている」。出会いから別れまでほんの短い間だったけれど、その気持ちはまぎれもなく恋。人探しの途中で、ヒロインが偶然遭遇した大学生との間に芽生える人を思う感情は、時を経ても変わらない。(60点)

 「記憶は消されても、心は覚えている」。出会いから別れまでほんの短い間だったけれど、その気持ちはまぎれもなく恋。30年以上前にタイムリープした少女が、知識では知っていても感覚としては未体験の時代をエンジョイする姿が楽しい。古い自動車や路面電車、消えつつある駄菓子屋、銭湯のマッサージチェア、 4畳半一間のアパートとこたつでの雑魚寝、サイケ調の隣人、そして8ミリカメラ。映画は、人探しをするヒロインが偶然遭遇した大学生と接近していく過程で、人を思う感情は時を経ても決して変わらないことを描く。

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シャーロック・ホームズ - 渡まち子

◆世界一有名な名探偵は、タフな武闘派。科学と魔術が混在する19世紀ロンドンの空気が伝わってくる。(65点)

 1891年、ロンドン。若い女性を狙う連続殺人事件が起きる。名探偵シャーロック・ホームズと相棒のワトソン博士は、犯人のブラックウッド卿の逮捕に貢献するが、黒魔術を操る卿は、自分はたとえ死んでも蘇ると豪語する…。

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A PROPHET - 岡本太陽

◆数々の映画祭で大絶賛を浴びた感動の名作(85点)

 『リード・マイ・リップス』『真夜中のピアニスト』のジャック・オーディアール監督最新作『A PROPHET (原題:UN PROPHETE)』の主人公マリック(タハール・ラヒム)は6年の刑を受けた19歳のアラブ系の青年。外の世界でも塀の中でも独ぼっちの彼だが、刑務所内を操るセザール・ルチアーニ(ニエル・アレストリュプ)率いるコルシカ系マフィアグループに、入所早々殺しを強要される。そして鏡の前で1人、殺しの練習をするマリック。通常刑務所が舞台の映画やマフィアものとなると主人公はタフガイな場合が多い。ところが本作の主人公マリクは黒いピュアな眼差を持つストリート育ちの普通の青年。これは彼が刑務所にいる間に成長し、マフィアの新しいタイプのリーダーとなる物語だ。

 塀の外でも中でも結局権力抗争はあり、刑務所の中では昔から存在するコルシカ人マフィアグループと、彼らに比べれば新しいイスラム教徒のアラブ人マフィアが火花を散らしている。そんな中では一匹狼を貫こうとするマリックは隙だらけの存在。すぐに足を掬われてしまう。殺しの経験のない彼がルチアーニの依頼を渋々引き受けたのは生きるか死ぬかの選択を彼に迫られたため。断る事は出来ない。しかし、殺しが成功すれば、ルチアーニに守られる保障が付くという。無防備なマリックは、誰かの保護が無ければ遅かれ早かれ殺されてしまうだろう。

 フランスには現在多くの移民がいるが、中でも特にアラブ系が多く、その多くはフランスの植民地であったアルジェリアやモロッコやチュニジアから来ている。マリックもアルジェリア移民の子で、コルシカ人らが「アラブ人め!」等と差別的ニュアンスを含む言葉を吐く様に、フランスでは肩身の狭い思いをして来た事が伺える。2005年10月にフランスで移民達による暴動事件が起きた。これは本作の背景を知る上で不可欠であろう。なぜなら、マイノリティの立場である移民達が力を持ち始めたという証拠であるからだ。オーディアール監督は本作に政治的な要素は特に含めていないというが、アラブ系移民の立場や、今後のフランスが辿る道筋が本作に反映されているように見受けられる。

 殺しも、運び屋業も、服役中に学んでゆくマリック。殺人というものがどういう事なのかも身をもって体験するシーンは生々しく、観る側には少々凝視困難だ。殺そうと意を決するものの、初めての殺人はもちろん思った通りに行かず、狭い部屋で揉み合いになる肉体と肉体。マリックはとにかく必死でその場を乗り切ろうとするが、事がきれいにはいかないどころか滅茶苦茶。そんな混乱した様子をカメラは映し出し、殺しはやはり恐ろしい犯罪として、そのシーンが私たちの脳裏に焼き付いてしまう。

 マリックは犯罪と学業の両面で教養がなく、読み書きが出来なかった彼は刑務所の中で勉強を始める。マリックは教師に「読み書きを覚えたいか?」と問われ、とりあえず頷いてはみるものの複雑な表情をする。読み書きが出来るという事がどんな事か分からない彼の素直な表情を、新星タハール・ラヒムが見事に表してみせる。教科書をめくり一語一語言葉を覚えてゆく様に、徐々に知恵を身に付け、また犯罪の経験を重ね、マリックはルチアーニから信用を得てゆく。そしてマリックの信頼が厚くなる毎に、刑務所内での勢力の変動も生じる。

 「予言者」の意味を持つタイトルは、マリクがイスラム信者で神のお告げを聞く事が出来る等、宗教的見地からではなく、彼がマフィアの異種である事を指す。また監督のオーディアールは本作同様、主人公が徐々にマフィアのボスの力を超えてゆく『スカーフェイス』のトニー・モンタナの様なクレイジーな人物としてではなく、感情移入しやすいリアルな人物としてマリックを描きたかったという。彼は刑務所の中でも夢や悪夢を見たり、ミッション中にも関わらず初めて乗る飛行機に感動したり、銃を懐に抱え、人を殺そうという時でも靴屋のウインドウに飾られている美しい靴に目を奪われる。そんな人間的な心が本作の主人公には宿っており、また彼がある時ビーチに行った際には、感慨深げに水に足を浸す。彼は海の水の心地良さを心で感じる事が出来るのだ。

 オーディアール監督の見せる世界は、殺伐としているが、どこか神秘的で、素直で嘘がない。酷い事が起きても、そこには不思議と人間性がある。わたしたちの住む世界の何気ないものが崇高で美しく映される瞬間、純粋な青年を通して、監督自身の純粋な心の眼の映す世界を目撃した気がした。

ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ - スタッフ古庄

◆気持ちよく1億円を手に入れる方法(60点)

 他人を騙して、勝てば賞金うん億円! 負ければ巨額の負債を背負う。一か八かの1ゲーム、参加してみたいですか・・・!?

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噂のモーガン夫妻 - 渡まち子

◆ヒュー・グラントのために書かれたという脚本は、浮気者なのに憎めないキャラが十八番の彼にピッタリだ(60点)

 笑いとペーソスで夫婦の危機を乗り越えるラブ・コメディ。モーガン夫妻は、NYでは人もうらやむ超セレブ・カップル。妻のメリルは不動産業を営み、夫のポールは全米屈指の敏腕弁護士だが、現在はポールの浮気が原因で夫婦仲は最悪に。堪忍袋の緒が切れたメリルとは対照的に、浮気したくせに妻に未練たっぷりのポールはなんとかヨリを戻そうと懸命だ。そんな二人は、たまたま一緒にいた時に殺人事件に遭遇し犯人の顔を見てしまう。唯一の目撃者として命を狙われる立場になった夫婦は、証人保護プログラムのため、身分を隠し、NYから遠く離れたワイオミングで一緒に過ごさねばならなくなる…。

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すべて彼女のために - 山口拓朗

◆この映画は「無罪の立証」にほとんど関心を示さない。リザの禁固刑が確定して以降のドラマに焦点を絞ったうえで、愛する妻のために命を張る夫の“執念”に迫った作品だ(80点)

 舞台はフランスのパリ。国語教師のジュリアン(ヴァンサン・ランド)と出版社に勤める妻のリザ(ダイアン・クルーガー)は、息子と3人で仲むつまじく暮らしていた。ところが、ある日突然、リザが無実の罪で妻が逮捕されてしまった。無実を証明する策も尽きた3年後、リザには禁固20年の刑が言い渡された。人生に絶望したリザは自暴自棄に陥り……。

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牛の鈴音 - 渡まち子

◆様々な対比を描きながら老夫婦の日常を静かにみつめる本作は、急速に成長を遂げた韓国社会の失われたものへの哀悼のように思える(70点)

 牛と老人の絆を不思議な温かさと哀しみで包む良質ドキュメンタリー。79歳のチェじいさんは昔ながらの農法にこだわり、来る日も来る日も40歳の老牛を使って畑を耕している。牛の寿命は15年が平均だというからこの牛は人間なら100歳以上だ。若い牛も飼っているが使い物にならない。じいさんは相変わらず老牛を働かせるが、やがて牛は立ち上がれなくなる…。

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シャーロック・ホームズ - 町田敦夫

◆ホームズが武闘派アクションヒーローに(60点)

 これはホームズではない……。英国グラナダTV版のホームズ(演じるはジェレミー・ブレット)を見たときにも「どこか違う」と思ったものだが、本作のホームズはさらにイメージが違う。まあ、何と違うのかと聞かれれば、こちらの基準は偕成社やポプラ社から出ていた児童書版のホームズなので(最近の子どもたちよ、信じられないだろうが、昔の子どもはテレビゲームの代わりに読書をしていたのだよ)、イギリスの映像作家が作ったホームズの方が原典に近いんだよと言われれば、グーの音も出ないのだが。

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噂のモーガン夫妻 - 町田敦夫

◆都会派カップルがド田舎でロマンチックなドタバタを展開(70点)

 都会で飛ぶ鳥を落とす勢いだった主人公が、ひょんなことから田舎暮らしを余儀なくされて、自分のすさんだ生き方を問い直す。そんな主題の物語は昔から繰り返し作られているけれど、『噂のモーガン夫妻』はそこに中年夫婦の愛の再生というテーマを絡めた点が新しい。監督・脚本のマーク・ローレンスは『トゥー・ウィークス・ノーティス』『ラブソングができるまで』に続いて三度ヒュー・グラントを主演に起用。彼の妻役は『SATC』のキャリーことサラ・ジェシカ・パーカーが務めた。

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ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ - 福本次郎

◆裏切りと嘘、ハッタリと罠、欲の皮が張った男女が綾なす壮絶な心理バトルがスリリング。参加者の行動を予測し、心の動きを解説する主人公はクールかつニヒルで、人間の本質を突く彼の考察は一般論としても十分に楽しめる。(40点)

 裏切りと嘘、ハッタリと罠、欲の皮が張った男女が綾なす壮絶な心理バトルが非常にスリリングだ。誰が味方で誰が敵か、寝返った者が次のステージではまた協力し、どんでん返しの先にある二重の仕掛けが見る者をひきつける。しかし、繰り返されるアップや短いカットの多用とわざとらしく観客の注意を喚起させる大げさな効果音、さらに後半はくどくどとした説明に大半の時間が費やされ、徐々にその安っぽい展開に飽きてくる。もはやCMによる中断のないテレビドラマの拡大版でしかなく、わざわざ映画にして劇場公開する意味が見えてこない。そういえばスクリーンの縦横比率もテレビと同じくらい、もしかして1年も経たないうちにTV地上波で放映されるのではないだろうか。

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劇場版 喧嘩番長~全国制覇 - 福本次郎

◆どちらが強いかだけでなく、誰がいちばん強いのかを確認したくなる、そんな高校生たちがバトルロイヤルを繰り広げる。小賢しい理屈はなく、有り余るエネルギーを爆発させる機会をもちたい若者たちの情熱がほとばしっている。(50点)

 どちらが強いかだけでなく、誰がいちばん強いのかを確認したくなる、そんな高校生たちが東京に集まり、バトルロイヤルを繰り広げる。各都道府県ひとりずつの腕に覚えのある番長たちが、次第に二派に分かれ、最終決戦に向かう様子は戦国時代を見ているよう。そこには小賢しい理屈はなく、有り余るエネルギーを爆発させる機会をもちたい若者たちの情熱がほとばしっている。あえて熱い友情といったベタな要素を薄くし、喧嘩に明け暮れるバカバカしさに徹したところに好感が持てた。

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悲しみよりもっと悲しい物語 - 渡まち子

◆リアリティ皆無でおそまつな内容(10点)

 死というアイテムでひたすら泣きたい韓流ファン向けの悲恋ものだが、リアリティ皆無でおそまつな内容だ。孤児として育ったケイは、高校で、生意気で奔放な女の子クリームと出会う。彼女も事故で家族を失った孤児だったことから二人は共同生活を始めることに。成長し、ケイはラジオ局のディレクターに、クリームは作詞家になる。互いにかけがえのない存在と感じている二人だったが、ケイは自分の身体が不治の病に冒され余命わずかということを知る。彼は、自分の代わりにクリームを愛し守ってくれる男性が現われることを願うが、そんな時、クリームは誠実な男性ジュファンと出会い急速に惹かれていく…。

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