◆モノクロの画面は淡々と主人公の行動を描写するが、映像にかぶせられた独白が心理的な緊張感を盛り上げる。カメラと対峙する俳優は感情を大げさに表現することを拒み、脱走の準備をする過程はこの上ないテンションをはらむ。(60点)
自動車のドアノブ、狭い独房、木製のドア、スプーンで作ったノミ、高窓からみた中庭・・・。主人公は目で見た世界を分析し、脱走のプランを練る。モノクロの画面は淡々と彼の行動を描写するが、映像にかぶせられた独白が心理的な緊張感を盛り上げる見事な演出だ。カメラと対峙する俳優は感情を大げさに表現することを拒み、あくまでリアリティに徹する。それゆえ狭い独房で繰り広げられる外部との通信、道具の製作といった脱走の準備はこの上ないテンションをはらんでいく。
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◆大いなる自然の前で人間とはなんとちっぽけで卑小な存在なのかということも思い知らされる(70点)
大自然の脅威と極限状況下のクライマーたちの姿を描く本格的な山岳映画だ。ベルリン五輪直前の1936年。ナチス政権は国家の威信を世界に示すため前人未到のアルプスの難所アイガー北壁のドイツ人初登頂を切望する。若き登山家のトニーとアンディは一流の登山家でさえ死に追いやる北壁への挑戦を決意。2人の幼馴染であるルイーゼは、新聞社の一員として彼らを取材することになる。トニーとアンディは他国の登山家と競いながら初登頂に挑むが、落石による負傷や悪天候から、想像を絶する状況へと追い込まれていく…。
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◆最後は暴力にものをいわせる豪快なホームズ映画(55点)
原作者アーサー・コナン・ドイルが19世紀に作り出した名探偵シャーロック・ホームズは、実写映画からテレビドラマ、はては犬アニメまで、何度も映像化されてきた。ミステリファンならずともその知名度は絶大で、彼が住んでいるベーカー街221B宛てに手紙を出せば、今でもちゃんと届くなどと言われている。本作はその、ドイルの原作に忠実な最新の実写映画化である。
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◆平凡な時代劇だが、庶民を安心させるにはちょうどいい(45点)
いまは皆が苦しい時代である。ろくな仕事はなく、結婚も出来ない。ブログを書けば暇人に荒らされ、つぶやきを書き込んでもだれもフォローしてくれない。人々は時代のせいだという。いまの世の中が悪いのだ、と。
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◆心を傷つけるおそれのある犯罪映画(70点)
少女を監禁して筆舌に尽くせぬ虐待をした事件といえば、日本人なら誰でもあの悲劇を思い出すことだろう。だが、世界に冠たる犯罪大国アメリカにも当然のこと、類似の事件がないはずはなく、シルヴィア・ライケンス事件という65年におきた痛ましいケースが有名である。かつてエレン・ペイジ主演で映画化もされているが、『隣の家の少女』はこの実在の事件を大きくアレンジした犯罪ドラマだ。
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◆アニメ版でなく、大林監督版のファン限定作品(50点)
『時をかける少女』にしろ、『サマーウォーズ』にしろ、あるいは『耳をすませば』にしろ、その魅力はどこかノスタルジーを感じさせる点にある。「今では汚れきった俺にも、こういう純情だった時代あったよなぁ」などと感動するわけだ。
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◆物語が進むにつれて、暴力描写は決して得られない家族愛への慟哭に思えてくる(70点)
傷だらけの魂からヒリヒリした叫びが伝わってくる鮮烈な内容で、韓国映画のポテンシャルの高さを感じる映画だ。借金の取り立て屋のサンフンは母と妹を死に追いやった父を激しく憎み、周囲の人間に対して粗暴な振る舞いを繰り返す男。社会の底辺で生きるサンフンは、ある日、勝気で生意気な女子高生ヨニと出会い、不器用な付き合いを始める。ヨニもまた家庭に問題を抱えて悩みながら生きていた。互いの境遇はよく知らなくても心で引かれ合う二人だったが、ヨニの弟ヨンジェとサンフンが仕事でつながってしまってから運命が変わり始める…。
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◆なぜこういうことになったのかと興味をそそる導入部は上手い(45点)
長い原作の児童文学のプロローグにすぎない部分に映画1本分を使う本作、贅沢なのか無駄なのかビミョーなところだ。ごく普通の家庭で育った16歳のダレン・シャンは成績優秀で家族に愛される平凡な少年。ある日、毒蜘蛛に噛まれた親友スティーブの命を救うため、バンパイアと取引したことから、半分人間、半分バンパイアのハーフ・バンパイアになってしまう。家族の元を去り、風変わりなサーカス一座に身を寄せバンパイア修行に励むダレンだったが、バンパイア対バンパニーズという因縁の抗争に巻き込まれてしまう…。
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◆アカデミー賞受賞も当然の、いまアメリカに一番必要な映画(70点)
アカデミー賞はアメリカ映画界の業界人の政治的思惑で決まるものであり、作品の出来は二の次ですよと私は常日頃から言っているが、それを陰謀論だのユダヤのなんとかだのと批判する人がいる。
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◆ドラえもんの魅力をまるでわかってない失敗作(35点)
春の風物詩、映画版ドラえもんの最新作だが、なにしろ今年は通算30本目ということで力の入れようが違う。原作はあれど映画としてはリメイクでないオリジナル、舞台は海底と、冒険のスケールも大きい。
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◆人間関係のしがらみを捨て、人を解雇することを生業にしている主人公が薄っぺらな生き方に気付き、人生に本当に必要なものは何かを問いかける。たまったマイレージでワンランク上のサービスを受けて優越感に浸る姿が滑稽だ。(80点)
人間関係のしがらみという名の荷物をすべて捨て去り、人の働き口を奪うことを生業にしている男。もちろん彼にも多少の後ろめたさがあるのだろう、しかし、それを意識すまいと心がけ、他人からは充実しているように見られたい。そんな主人公が薄っぺらな生き方に気付き、人生に本当に必要なものは何かを問いかける。地に足のついた暮らしよりも忙しく動き回る自分の姿に酔っていて、一年中飛行機に乗り出張ばかりのなかで、ワンランク上のサービスを受けて優越感に浸る姿が滑稽だ。
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◆粗暴な言葉しか口にせずいつキレるかわからない、触れるだけで切れそうな危険な男がスクリーンから発する荒んだ緊張感は、まさに息ができないほど。映像から発散する常識をぶち破ろうとする異常なまでのパワーに圧倒される。(80点)
男は女を殴り、夫は妻を殴り、チンピラは学生を殴り、息子は父を殴り、取り立て屋は債務者を殴る。殺伐とした暴力の連鎖は、素直に感情を表現できない主人公の荒廃。肉親に愛された記憶がない男が、成長してもなざらついた心を持て余し、バイオレンスの衝動を抑えきれないでいる。粗暴な言葉しか口にせずいつキレるかわからない、触れるだけで指を切ってしまいそうな危険な男がスクリーンから発する荒んだ緊張感は、まさに息ができないほど。映像から発散する従来の常識をぶち破ろうとする異常なまでのパワーに圧倒される。映画はこのチンピラと女子高生の間に生まれた奇妙な共感を通じて、孤独な人間が他者と関わりの中でやさしさを取り戻していく過程を描く。
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◆人との大切なつながりはマイルには換算できない。クルーニーの演技が味わい深い秀作。(85点)
敏腕リストラ宣告人のライアンは、面倒な人間関係を避け、効率良く人生を生きてきた。年間322日も出張しマイレージを貯めることが唯一の生きがいの彼だったが、ある日、ネット世代の新人ナタリーの教育係に任命される…。
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◆シャーロック・ホームズの頭ん中(75点)
くわえパイプにチェックのハット、紳士的な出で立ちで警察もお手上げの難事件をパパッと解決!
と、言えば・・・?
誰もが知っている名探偵! シャーロック・ホームズ♪
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◆手持ちカメラによるリアルでダイナミズムあふれる映像表現と、兵士の心情を掘り下げた繊細な人間ドラマの両面から高い満足感を与えてくれる(85点)
女性監督キャスリン・ビグローが、ジャーナリスト兼脚本家のマーク・ボールの取材をもとに製作した「ハート・ロッカー」。ご存じの通り、第82回アカデミー賞の作品賞や監督賞など6冠に輝いた話題作だ。
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