© 2010 浅野いにお・小学館/「ソラニン」製作委員会/写真:太田好治
◆どこにでもいるような20代の恋人と仲間たちの日常と心情がリアル(65点)
都会の片隅で寄り添うように生きるカップルの存在証明を、素晴らしい歌が具現化するリリカルな青春物語だ。アジカンの曲と宮崎あおいの熱唱が忘れがたい。OL2年目の芽衣子は自由を求めて会社を辞める。一方、同棲中の芽衣子の恋人で、フリーターの種田は音楽の夢をあきらめきれずにいた。「ソラニン」という曲を書き上げた種田は、仲間たちと一緒にレコード会社に持ち込み、手応えは感じるものの、アイドル歌手のバックバンドにならないかと誘われ、やりきれない思いを抱く。そんなある日、種田はバイク事故に遭ってしまう…。
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© 2009 District 9 Ltd All Rights Reserved.
◆インタビュー映像を取り入れ、立ち退き作業を手持ちカメラで捉えた臨場感溢れるドキュメンタリー・タッチの作風でリアリズムを追求(90点)
南アフリカの新鋭ニール・ブロムカンプが監督・脚本を手懸け、ピーター・ジャクソンが製作を務めた異色のSFアクション・ドラマ。
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© 2010 映画「半分の月がのぼる空」製作委員会
◆ベストセラー小説の映画化である本作は、いわゆる難病もの。またか…と思っていたら後半に意外な仕掛けがあって驚いた(65点)
ドラマやアニメで人気のベストセラー小説の映画化である本作は、いわゆる難病もの。またか…と思っていたら後半に意外な仕掛けがあって驚いた。そのことにより青春恋愛映画から、長い年月を懸命に生きた人間ドラマにシフトする。平凡な高校生の裕一は退屈な入院生活を送る病院で、心臓病を患う少女・里香と出会う。最初は里香のわがままに振り回されるが、次第に彼女に惹かれていく裕一。9歳の頃から病院で暮らし、「銀河鉄道の夜」を愛読する孤独な里香もまた、外の世界を見せてくれる裕一に好意を持つ。一方、病院の医師の夏目は、医者でありながら最愛の妻を救えなかった過去に縛られていた…。
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© 2009 Screen Gems, Inc. All rights reserved.
◆命がけだからこそチームワークを大切にし、仕事に誇りを持っている。そんな男たちが立てた現金強奪プランは些細な失敗で崩れていく。映画はB級のにおいを強烈に放ちながらも、良心と友情の狭間で葛藤する主人公の姿を描く。(50点)
いかにもミリタリー崩れといった風情の荒くれ男たちは、その任務の性格から同僚を家族同然に扱い信頼を深めている。それは、堅牢な装甲を施した輸送車で毎日大量の高額紙幣を運ぶ彼らがギャングの襲撃を備えているから。命がけだからこそチームワークを大切にし、仕事に誇りを持っている。そんな男たちが立てた現金強奪プランは些細な失敗で崩れていく。武骨な輸送車、使われなくなった工場、杜撰な計画、重低音が腹に響くサウンドデザイン・・・。映画はB級のにおいを強烈に放ちながらも、良心と友情の狭間で葛藤する主人公の姿を描く。
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◆若き日のモリエールが、喜劇とは何かを模索し、実践する決意を実行するまでを描く。豊かな暮らしの中で暇を持て余した人々が走るものはいつの時代でも恋。相手の美しさを称え愛を語るうちに言葉が洗練されていく過程が楽しい。(50点)
人間を観察し、そのクセや特徴をつかむ。誰もが他人に抱いているかすかな感情を刺激し、リアリティを持たせつつ笑いに昇華させる。大衆演劇でウケるのは、観客にとって「こんな人いるよね」というような共感を持てるキャラクターで、そのディテールを誇張することで琴線に触れる役者。映画は後に劇作家として歴史に名を残したモリエールが、喜劇とは何かを模索し、実践する決意を実行するまでを描く。豊かな暮らしの中で暇を持て余した人々が走るもの、それはいつの時代でも恋。相手の美しさを称え愛を語るうちに、言葉が洗練されていく過程が楽しい。
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◆思いが純粋なほど喪失感は深く、時間がたつほど自責の念が強くなる。少年と難病の少女の恋という手垢の付いたテーマながら、不器用でも懸命に体当たりする高校生ならではのまっすぐな感情をノスタルジックな映像に焼きつける。(70点)
その思いが純粋なほど喪失感は深く、時間がたつほど自責の念が強くなる。好きな気持ちに素直になれない出会いのころから、一緒にいるだけでときめいて仕方のない時期を経て、やがてつらい別れの後に悲しい記憶として胸の重しとなっていく。映画は、少年と難病に侵された少女の恋という手垢の付きすぎたテーマながら、不器用でも懸命に体当たりする高校生ならではの感情を、ノスタルジックな映像に焼きつける。主人公のまっすぐに人を思いやる姿が何の衒いもなく描かれ、過ぎ去った青春の日々を思い出させてくれる。
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◆孤島が舞台の謎解きミステリーの秀作。幻想的な心象風景が美しく、映像センスに鋭さがある。(70点)
1954年のアメリカ。連邦保安官のテディは、精神を患った犯罪者の収容施設があるシャッターアイランドにやってくる。鍵のかかった部屋から忽然と姿を消した女性患者を探す捜査だが、次々に不可解な謎が浮かび上がる…。
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◆少女のイタ過ぎる初体験が、観る者の胸を締めつける(80点)
ニック・ホーンビィは『ぼくのプレミアライフ』(97)や『アバウト・ア・ボーイ』(02)で、大人になりきれない男のささやかな成長を描いてきた作家/脚本家だ。その彼がイギリスの女性ジャーナリストの回想録を脚色し、悲しくも瑞々しい1人の少女の成長記を書きあげた。
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◆よくできた異例の低予算SF(70点)
デヴィッド・ボウイの息子、ダンカン・ジョーンズの映画監督デビュー作。月面を舞台にした近未来SFでありながら、最新のVFXなし、大がかりなセットなし、出演者は事実上サム・ロックウェルただひとりという特異な低予算映画として作られた。
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◆格闘技を見せるのが主目的なので、話は徹底的に短絡的(30点)
物語はそっちのけで格闘シーンのみ気合を入れまくる内容だが、人気ゲームの映画化にはそれでちょうどいいのかもしれない。強大な力を持つテッケン財閥の支配下にある近未来のアメリカ。才能ある格闘家の風間仁は、スラム街で密輸をしながら生計を立てていた。ある晩、家が財閥のロボット警備隊に襲われ、母が殺される。復讐を誓った仁は財閥のトップ三島平八が主催する史上最大の格闘トーナメントに出場して三島の懐近くに飛び込もうとするが…。
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◆史実に基づいたこの映画は、舞台となるアイガー北壁の二面性(美しさと厳しさ)をリアルに活写するほか、難攻不落の岩壁を果敢に攻める登山家のクライミングを臨場感満点に描く(65点)
1936年、ドイツの若き登山家トニー(ベンノ・フュルマン)とアンディ(フロリアン・ルーカス)は、"殺人の壁"と呼ばれるスイスの名峰アイガーの北壁に挑むべきか否か悩んでいた。ベルリン新聞社の女性アシスタントであるルイーゼ(ヨハンナ・ヴォカレク)は、トニーとアンディの幼なじみ。アイガー北壁に挑むオーストリア登山家を取材するためにアイガーの麓にやって来ていたが、そこに登攀(とうはん)を決意したトニーとアンディがやって来て……。
高い山がひと通り征服されたのちに、気鋭の登山家やクライマーが、より難しい山やルートに挑むようになったのは有名な話だ。ソロ(単独)や無酸素で登頂を目指したり、壁のような岩山をクライミングしたりと、あの手この手の「条件付き登山・登攀」で歴史にその名を刻もうとする者が急増した。
1930年代当時、多くの登山家が「西部アルプスの最後の難所」と呼ばれるアイガーの北壁に熱い視線を注いでいた。天空を目指して屹立する岩壁は1800mにも及ぶ。天候が変わりやすく、落石や雪崩も多発するデンジャラスな壁だ。映画のなかでも、他国の登山家同士がアタック日(登攀開始日)をけん制しあう描写が見られるが、彼らにとって、史上初かそうでないかは雲泥の差。言うなれば、一流の登山家にとっての登山とは、金メダルしか用意されていないオリンピックのようなものなのだ。
史実に基づいたこの映画は、舞台となるアイガー北壁の二面性(美しさと厳しさ)をリアルに活写するほか、難攻不落の岩壁を果敢に攻める登山家のクライミングを臨場感満点に描く。もっとも、中盤以降は、ほとんどスペースのない岩場でのビバーク(露営)、思わぬ落石事故、ザイルを命綱代りにしての救助劇、凍傷で黒ずんで行く皮膚、限界まで消耗する体力……等々、修羅場シーンが量産され、観客はただただ神経をすり減らされることになるのだが。
初登攀を目指す主人公らを興味半分で見守るマスコミや、彼らの無事を祈る幼なじみの視点を設けることで、骨太な山岳ドラマにエンターテインメント性を注入している点も本作「アイガー北壁」の大きな特徴だ。麓の高級ホテルに宿泊するのんきなマスコミや優雅な観光客らの様子をしばしば挟むことで、悪天候下でクライミングする主人公たちの過酷な状況を際立たせる演出は、ちょっぴりズルイほどだ。
唯一苦言を呈したいのが、トニーとアンディのライバルであるオーストリアの登山家ペアを悪者に仕立て上げている点だ。彼らの登山家にあるまじき姿勢や行動は、「史実に基づいたドラマ」というリアリティをスポイルすると同時に、モデルとなった実在の人物に対する冒涜でもある。娯楽性を高めるのは構わないが、作り手は、脚色の許される範囲と許されない範囲、この境目だけは自覚しておくべきだろう。
◆無駄なセリフや説明はいっさいないのに、主人公の心の葛藤が痛いほど伝わってくる(75点)
クールなモノクロ映像に緊張感が漂う脱獄映画の傑作だ。1943年・ドイツ占領下のフランス。抵抗活動によって逮捕されたフォンテーヌ中尉は、モンリュック監獄の独房に収監される。誰もが絶望し気力を奪われる中、フォンテーヌは囚人仲間から情報を集め、わずかな道具や設備を最大限に利用して、入念に脱獄を計画していた。独軍によって死刑を宣告され、いよいよ実行を決意するが、突如彼の独房に脱走兵の少年が送られてくる。これはワナなのか? 悩むフォンテーヌだったが…。
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◆Rainの研ぎ澄まされた肉体美、アクションスターではない彼が魅せつける華麗なる格闘アクションが大きな見所(65点)
『マトリックス』三部作のウォシャウスキー兄弟とジョエル・シルバーが組んで製作し、主演に韓流スターRainを迎えたアクション作品
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◆今の日本市場にこの映画がウケる余地があるかに注目(35点)
『誰かが私にキスをした』は、日本の映画業界人なら誰もがこりゃ無理筋だろうと即却下しかねないリスキーな企画である。なぜこんな、始まる前からコケる事間違いなしの危険な映画が作られてしまったのか、その理由については後で述べる。
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◆リチャード・マシスンの原作を「ドニー・ダーコ」のリチャード・ケリーが映画化。ケリー監督のファン向きの哲学風トンデモSFだ(67点)
ボタンを押せば100万ドル(約1億円)が手にはいるが、代わりに見知らぬ誰かが死ぬことになる。そんな「選択」を迫られた夫婦の物語だ。運命の皮肉を扱ったサスペンス・ミステリーかと思ったら、「ドニー・ダーコ」(2001)のリチャード・ケリー監督らしい、実にマニアックな、哲学風トンデモSFだった。
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