◆たいした超大作、休養をとって本気で挑むべき(65点)
どんな分野であろうと、すべてを知っている人間などいない。つまりは、誰もがあらゆる物事を、不十分、不完全にしか知らないということだ。だからすべてを把握し、忠実だと思っていた奥さんが隣の大学生と浮気していたとしても、あなたはショックを受ける必要などない。
◆たいした超大作、休養をとって本気で挑むべき(65点)
どんな分野であろうと、すべてを知っている人間などいない。つまりは、誰もがあらゆる物事を、不十分、不完全にしか知らないということだ。だからすべてを把握し、忠実だと思っていた奥さんが隣の大学生と浮気していたとしても、あなたはショックを受ける必要などない。
◆気持ちのいい連中が活躍する、万人むけ大ヒットゾンビ映画(75点)
ゾンビ映画といえば、娯楽映画のド定番。予算の大小にかかわらず面白いものが作れるし、コメディから恋愛、アクション、サスペンス、セクシー、そしてもちろんホラーと、どんなジャンルの要素も包み込む懐の深さがある。これはもう、ホラーではなく「ゾンビ」というジャンルで捉えたほうがよほどわかりやすい。
◆若さゆえの無謀と情熱を感じる青春映画(50点)
人気俳優の小栗旬の初監督作品は、彼の人脈をいかしたキャストのイキの良さが伝わる青春ムービーだ。過去の悪ふざけのツケで目標のない毎日を生きている若者たちが、冴えない人生を変えようと暴走する。タクミら5人の高校生は、バンドを組み文化祭に向けて練習していたのに、文化祭が中止になると知り激怒。抗議するために狂言の爆破事件を予告するが、手違いで本当に爆発が起きてしまう。それから3年、学校を退学になった彼らは、自分たちが起こした事件が引き金で、親しかった人の人生が大きく狂ってしまったことを知る…。
◆とりあえず物語の続きを待つしかない(50点)
良くも悪くも観客を翻弄するシャマラン監督の新作だが、なんと物語半ばでプツリと終わる。これでは映画の評価は難しいのだが、とりあえずは、シャマランがストーリーより映像に重きを置いた点は注目したい。有史以前、気・水・土・火の4つの王国が均衡を保つ世界。各国にはそれぞれ4つのエレメントを操る“ベンダー”がいた。だが火の国が反乱を起こし世界を征服する力を得ようとして争いが起こる。4つのエレメントすべてを操ることができる“アバター”である、気の国のエアベンダー・アンに、世界の希望が託されるが…。
◆鬱積したエネルギーを爆発させるようなテンションと躍動感がスクリーンを彩り、荒削りでパワフルな映像は小栗旬の熱き感性がほとばしる。目標なく生きる若者たちが仲間に対する信頼を再構築していく姿は熱い一方でほろ苦い。(60点)
若気の至りで高校中退、青春を棒に振った若者たちが失われた時間を取り返すかのように疾走する。大金強奪事件に偶然遭遇してしまった彼らが、ヤクザに追われ謎の女の消息をたどるうちに、明かされていく子供時代の強烈な思い出と3年前の後悔。映画は鬱積したエネルギーを爆発させるかのごときテンションと躍動感でスクリーンを彩り、荒削りながらもパワフルな映像からは小栗旬の熱き感性がほとばしる。失うものがない者の強さと、まだまだ走ることができる喜び、目標なく生きる彼らがそれらを最大の武器にして暴れまわる中で仲間に対する信頼を再構築していく姿は熱い一方でほろ苦い。
◆いかに残酷に倒しまくるかを競うかつてのゾンビ映画と比較して、ゾンビに素手の格闘を挑むところが目新しい。ゾンビ相手に洗練されたマーシャルアーツを見せる登場人物の身のこなしには、格闘ゲームのような爽快感を覚える。(50点)
十数発の銃弾を撃ち込んでもひるまないゾンビに対して、パンチやキックを見舞った上に関節技で首をへし折ろうとする。いかに残酷に倒しまくるかを競うかつてのゾンビ映画と比較して、ゾンビに素手の格闘を挑むところが目新しい。ゾンビたちも昔ながらの動きの鈍い種族とは違い、格闘技こそ身につけていないもののいくら殴られても蹴られてもすぐに反撃する打たれ強さと敏捷さを発揮する。対ゾンビ戦法としては無駄の多い闘い方だが、数体のゾンビ相手に洗練されたマーシャルアーツを見せるギャングの用心棒や女刑事の身のこなしには、格闘ゲームのような爽快感を覚える。
◆深夜、立ち入り禁止区域に高価な機材を密かに運び込み、ペンライトだけを頼りに、岩に偽装したカメラやマイクを仕掛けていく。その様子をサーモカメラでとらえたシーンはサスペンスに満ち溢れ、スパイ映画を見ているようだ。(60点)
住民が寝静まった深夜、尾行に注意を払いながらミニバンを走らせ、フェンスを乗り越え立ち入り禁止の入り江に潜入する撮影クルー。特注した高価な機材を密かに運び込み、ペンライトだけを頼りに、岩に偽装したカメラやマイクを仕掛けていく。その様子をサーモカメラでとらえたシーンはサスペンスに満ち溢れ、スパイ映画を見ているかのよう。隠し撮りをする過程を記録する行為がこれほどまでにスリリングとは思わなかった。米国的な「正義の押し売り」的な方法論は別にして、地元漁師をすべて敵に回したスタッフが監視の目をかいくぐって“真実”を告発しようとする姿勢はあくまで戦闘的で、危険を顧みない勇気と行動力は称賛に値する。
◆小人の少女アリエッティのまなざしで人間の世界を照射する物語。日常のすべてが冒険に思えてくる。(70点)
郊外の古い屋敷の台所の床下に住み、生活に必要なものは人間から借りて暮らす小人の一家。アリエッティは、ある日、人間に姿を見られてしまう。小人の種族では人間に姿を見られたら引っ越さなくてはいけない掟があった…。
◆クリストファー・ノーランが夢を料理(70点)
『メメント』では記憶を、『プレステージ』では魔術をテーマに特異な世界を構築してきたクリストファー・ノーラン監督が、次なる題材に選んだのは夢。レオナルド・ディカプリオを主演に迎え、観る者を潜在意識の迷宮へと誘いこむ。
◆ヒロインは、セックスだけでなく恋人としての役割をもこなしていることから、充実した癒しの時間を売っているとも言える(60点)
大都会NYで暮らす高級エスコート嬢の日々を、ドキュメンタリータッチで綴る異色作だ。スタイリッシュな映像で、ヒロインの繊細な感情を浮き彫りにしていく。2008年のNY。22歳のチェルシーは、エリートを相手に本物の恋人と過ごすような時間を提供して大金を稼いでいる。常に自分を磨きビジネスもコントロールするチェルシーは、自分の仕事を理解する恋人のクリスとの関係も良好だ。だがある時、心惹かれる男性客が現れて特別な感情を持ってしまう…。
◆芸能人の戯れ(20点)
芸能人のように人前に出る仕事をしていると、おのずと自我は肥大し、ときにはおかしな行動をとる人が現れる。空気の読めない主張をしてブログが炎上したり、高慢キャラで映画批評サイトを作ってみたり、刺青に彩られた菊の門をご開陳したりと、その行動内容は多岐に渡る。
◆古典ミステリの映画化だが賞味期限切れ(40点)
私のようなミステリ好きにとっては、アリバイとか殺人だのといった単語がタイトルにあるだけで興味を引かれる。しかも聞くと本作は、アガサ・クリスティー原作ものだという。クリスティー原作の映画は数は多いが、どうも凡作ばかりの気がして少々心配だが、長編「ホロー荘の殺人」をかなり大胆にアレンジしたということで、それなりの期待を抱いて試写を見た。
◆高品質ではあれど、どうもスッキリしない(60点)
スタジオジブリのアニメーション作品の質の高さはいまさら言うまでもないが、宮崎駿監督作品のとっつきにくさだけは別格だと私は思っている。ぱっと見そうはみえないものの、この監督の作品はきわめて作家性が強く、毎回解釈に頭を悩まされる羽目になる。それでも物語をおろそかにせず、若々しい感性と高い娯楽性を兼ね備えていたジブリ初期あたりまでの作品は良かったが、最近のものはどうもスッキリ楽しめないというのが私の大まかな印象である。
◆こんな会社があったら嫌だ(70点)
英国発の傑作サスペンス『エグザム』は、しかし悲しいかな日本ではレイトショー公開である。内容は、非人道的な課題を押し付けるトンデモ企業の採用試験の様子を描いたもので、時節がらシャレにならないリアルさだ。やはりこういう映画こそ、大人が楽しむのにふさわしい。
◆ソ連に圧力をかけつぶされた、貴重な樺太史実映画(70点)
すでに公開されている反捕鯨お笑いムービー「ザ・コーヴ」だが、いまだにとんでもない内部情報が次々と入ってくる。ウェブでの公開は残念ながら遠慮するが、よくこんなものがアカデミー賞を取れたものだと呆れる話ばかりである。