平和的な普通の男が、激しい怒りで変貌していく様子がすさまじい(65点)
© 2007 HPE Rights, Inc.
司法や警察に頼らず、自らの意志と圧倒的な暴力によって裁きを与える復讐劇を、ヴィジランテ(自警)映画と呼ぶ。“自分のことは自分でカタをつける”という自立自助の精神はアメリカ建国以来の理念だ。それが負の沸点に達した時、法を無視した復讐という形になる。家族と幸せな日々を送るニックは、大切な長男をギャングに殺されるが、裁判では犯人に納得のいく刑罰が与えられないことを知る。ニックは、怒りと悔しさから自らの手で報復するが、彼が殺した犯人はギャングのボスのビリーの弟だった。それはやがて凄惨な暴力の応酬を招いていく。
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◆タランティーノらしい、映画愛に満ちた映画至上主義の映画。キャラクターが魅力的で、すべての場面に緊張感がある(91点)
本作のテーマが「映画愛」であることは、誰の目にも明らかだ。映画館を舞台に「映画館作戦」が実行される。ナチスは映画をプロパガンダの武器にしようと、プレミア上映会を開催。その上映会で、ナチスへの復讐の武器となるのはフィルムなのである。最後は映画が歴史すらも変えてしまう。どこまでも映画至上主義の作品だ。
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◆ルールに従って行動すれば、ゾンビのいる世界でもうまくやっていけるさ!(55点)
「新しいゾンビ映画だ!観なきゃ!」と思ってルーベン・フライシャー監督のハリウッド映画『ゾンビランド(原題:ZOMBIELAND)』を観ると、「ふむふむ、ユーモアも利いてて、展開も軽快で、なかなか面白いかも」となる。でも待てよ、この映画は新作のはずだが、どこかで見覚えがある。バランスも良いのに、一体どうして? その理由は、この映画がいろんなゾンビ映画の要素を含んだミックスゾンビ映画だからだ。
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キャラが抜群に立っているのが魅力(65点)
© 2009「悪夢のエレベーター」製作委員会
密室型のサスペンス・コメディには驚きの仕掛けが満載で、謎解きの醍醐味が味わえる。マンションのエレベーターが急停止し、男女4人が中に閉じ込められる。偶然乗り合わせた彼らは、空き巣専門の刑務所帰りの男、他人の過去が読める中年の超能力者、自殺願望のゴスロリ少女、そして臨月の妻がいながら浮気中の若い男という面々だ。4人は互いに不信感をつのらせるが、腑に落ちない小さな違和感から、やがて互いの秘密を暴露しあうことになる。
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散文的なゆったりとしたテンポの中、絶妙な間合いの会話がとぼけた味わいを醸し出す。もどかしいまでに進展しない主人公と恋人の仲は見る者の期待を裏切り続け、先の見えないエピソードが日常に潜む意外性を強烈に意識させる。(50点)
パリで出会った男と女、そこからイメージされる華やかな街並みや心躍る恋とは一線を画し、とらえどころのない男のだらだらとした日々を追う。異国の異文化に対する好奇心もなく、時間が過ぎ去るだけ。そんな日々でも健康な男なら性欲を催し、抑えきれなくなる。映画は散文的なゆったりとしたテンポの中、絶妙な間合いの会話がとぼけた味わいを醸し出す。もどかしいまでに進展しない主人公と恋人の仲は見る者の期待を裏切り続け、先の見えないエピソードが日常に潜む意外性を強烈に意識させる。
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◆良作『サイドウェイ』を日本人向けにアレンジ(70点)
小品ながらもアカデミー賞、ゴールデングローブ賞など数多くの賞に輝いたハリウッド映画『サイドウェイ』(04)のリメイク版。冴えないシナリオライターの道雄(小日向文世)とお調子者の大介(生瀬勝久)が、カリフォルニアのワイナリー巡りをする中で、麻有子(鈴木京香)とミナ(菊地凛子)に出会う。大介とミナは早々にデキてしまうが、小心な道雄の方は……。
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◆掟やぶりの変形タイムトラベルSF(70点)
この映画はひとりのタイムトラベラーを主人公にしている。が、だからといって正統派のSF映画を期待して劇場に出向くと、冒頭から客席でのけぞることになる。過去に戻った主人公が、あろうことか少年時代の自分とあっさりコンタクトしちゃうからだ。幾多のタイムトラベルSFが絶対のタブーとしてきたその行為を、彼はいとも簡単に犯してしまう……。
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騙す方も騙す方なら、騙される方も騙される方(70点)
© 2009『クヒオ大佐』製作委員会
詐欺というと華麗なテクニックが常だが、この映画の主人公のそれはまぬけすぎて逆に魅力に見えるから不思議だ。恋愛詐欺師・クヒオ大佐は実在の人物で、女性たちから約1億円を巻き上げたというから驚きである。名前こそクヒオだが正真正銘の日本人だ。90年代初頭、米軍特殊部隊のパイロットを名乗るクヒオは、デタラメな経歴で女性を騙して金を巻き上げていた。どう見ても怪しい彼に、弁当屋の主人のしのぶや自然博物館の学芸員の春は騙され、正体を見破ったホステスの未知子でさえも彼に惹かれていく。
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◆最初から最後まで狂った面白さがフルスロットル(75点)
ヘリコプターから落下して死んだはずの殺し屋チェリオス(ジェイソン・ステイサム)は、中国マフィアたちの手によって心臓を奪われ、代わりに機械の人工心臓を埋め込まれてしまう。チェリオスは、人工心臓のバッテリーが切れそうになると常に自身の身体を充電しながらも心臓を取り戻すべく突っ走り、敵を追い詰めて行く。
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3Dの美しい効果を真面目に追及している(70点)
© ショック・ラビリンス・フィルム・コミッティ2009
3Dのホラー映画は、飛び出してビックリさせることだけを目的にしたものも多いが、本作は非常に丁寧に作られ、かつ3Dの美しい効果を真面目に追及している。10年前に遊園地のお化け屋敷で行方不明になった少女ユキが突然戻ってくる。主人公ケンと友人のモトキ、盲目の少女リン、ユキの妹のミユは戸惑うが、突然ユキが倒れたため深夜病院に向かう。辿り着いたその病院はやがて姿を変え始め、朽ち果てた迷宮のような空間と化した。見覚えのあるその場所で、ユキを含めた5人は10年前の事件の秘められた真実を体感していく。
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◆重い病と闘う家族のリアル(80点)
愛する家族が、命に関わる重い病にかかったら・・・。家族は、病と闘う一人を中心とした生活になってしまう。
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釘、タイヤ、木切れ、鉄板、小石etc.スクリーンから猛スピードで弾ける飛翔物は無意識に身をかがめてよけてしまうほど。血しぶきと肉片・内蔵が飛び散る場面は悪趣味極だが、その立体感は次の犠牲者の最期が楽しみになる。(60点)
© MMV New Line Productions, Inc. All Rights Reserved.
釘、タイヤ、木切れ、鉄板、小石etc.スクリーンから猛スピードで弾けだす飛翔物は無意識に身をかがめてよけてしまうほど。カーレース場での大惨事から日常生活に潜んでいる何気ない違和感まで、ディテールにこだわった死神の悪意はあらゆる場所に宿り、モノに働きかけていく。ねじの緩みやオイル漏れ、不安定なレバーなど、小物を動かしてじわじわと登場人物に危険が迫っていることを予告し、予想通りに死ぬこともあれば意表をついた絶命もある。血しぶきと肉片・内蔵が飛び散る場面は悪趣味極まりないが、その3D映画の特性を生かした立体感からあふれるリアリティは、次の犠牲者の最期が楽しみになってくる。
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自らの妄想を信じ、己の言葉に酔い、なりたかった理想の姿になりきる。結婚をエサに数々の女からカネを巻き上げる瞬間に、この詐欺師の人生に真実の灯がともる。どんな嘘も相手が信じてくれている間だけは、本当になるのだ。(40点)
自らの妄想を信じ、己の言葉に酔い、なりたかった理想の姿になりきる。結婚をエサに数々の女からカネを巻き上げる瞬間に、この詐欺師の人生に真実の灯がともる。彼にとって、どんな嘘も相手の女が信じてくれている間だけは本当になり、彼の存在を肯定する。小さな嘘より大きなホラ、具体的な固有名詞とディテール、そして何より自分自身が作り話を信じるのが詐欺師にとって一番大切なことをこの作品は教えてくれる。だが、映画は主人公の内面に深く踏み込もうとはせず、行為だけからは彼の人となりがイマイチ見えてこない。
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相変わらずグロテスクな描写が満載(50点)
© MMV New Line Productions, Inc. All Rights Reserved.
創意工夫に満ちたショックシーンとどこかコミカルな味を売りにした「ファイナル・デスティネーション」シリーズの第4弾の発端は古びたサーキット場だ。ニックは友人たちと訪れたサーキットでクラッシュ事故による大参事の予知夢を見てしまう。間一髪で助かった彼らだったが“死の運命”は彼らを見逃してはくれず、生き残った者たちは次々に悲惨な事故死を遂げる。
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◆鮮やかな結末をもつ上質のミステリー(70点)
痛みとともに目を覚ますと、小川順(斎藤工)は急停止したエレベーター内に閉じ込められていた。非常ボタンは不通、携帯は電池切れ。小川と一緒に偶然乗り合わせていたのは、刑務所帰りの関西弁男(内野聖陽)と、人の心が読める超能力者(モト冬樹)、自殺志望者の少女(佐津川愛美)の3人。時を同じくして小川の妻が陣痛に襲われていた。小川は万が一エレベーターから出られなかったときのことを考えて、ボイスレコーダーに妻への気持ちを残すことにした……。
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