クレイジー・ハート - 岡本太陽

クレイジー・ハート

© 2009 Twentieth Century Fox

◆崖っぷちのカントリーシンガーが再起を図る(65点)

 俳優としても活躍するスコット・クーパーの映画監督デビュー作『クレイジー・ハート(原題:CRAZY HEART)』。低予算の非常に小さな映画でありながらも、演技派の俳優たちが集い、彼らの技が物語の中で絶妙に映える。本作はアメリカ南西部の広大な自然を背景に、老年期に差し掛かろうとしているジェフ・ブリッジス扮するカントリーシンガーのミュージシャンとして、そして男としての葛藤を丁寧に描きだす。

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ずっとあなたを愛してる - 渡まち子

◆抑制の効いた演出が光る佳作(70点)

 心に抱いた悲しみを描く物語にふさわしい、抑制の効いた演出が光る佳作だ。15年の刑期をおえたジュリエットは、歳の離れた妹レアの家に身を寄せる。再会した姉妹は互いに遠慮して、打ち解けることができない。ジュリエットの犯した罪は、幼い我が子を殺したことだ。その理由を決して語ろうとせず、自分の殻に閉じこもる姉の心に、懸命に近づこうとするレア。妹や周囲の人々とのぎこちない触れ合いの中で、ジュリエットは少しずつ変化を見せ始める…。

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(500)日のサマー - 福本次郎

◆男にとって、理性よりも感情で動く女心は永遠の謎。運命の出会いを信じる主人公が、出会いは偶然と割り切る女とのかみ合わない交際のなかで愛の苦悩に苛まれる物語は、傷つくことを恐れる現代の若者の胸の内をリアルに再現する。(50点)

 男にとって女心は永遠の謎。理性よりも感情で動き、ちょっとした出来事で不機嫌にも上機嫌にもなる、そのメカニズムを知らずにいると一方的に振り回される。恋の始まりのころならば小悪魔的な魅力に思える言動が時間がたつにつれて腹立たしくなり、好きな気持ちをはぐらかされ付き合っているつもりになっているのに不意に突き放される主人公は、いつしか愛という名の苦悩に苛まれていく。運命の出会いを信じる男と出会いは偶然と割り切る女のかみ合わない交際を通じて、傷つくことを恐れる現代の若者の胸の内をリアルに再現する。

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彼岸島 - 福本次郎

◆寒色系の映像の中、唯一血の色が鮮やかな色彩を帯びる。かみついた牙から滴る血、剣先がかすめた腕ににじむ血、ぶった斬った胴体からほとばしる血。血こそが人間の証明であるかのように赤い痕跡をスクリーンに焼きつける。(40点)

 寒色系に抑えられた映像の中、血の色が鮮やかな色彩を帯びる。首筋にかみついた牙から滴る血、剣先がかすめた腕からにじみ出す血、ぶった斬った胴体からほとばしる血。血こそが人間の証明であるかのように赤い痕跡をスクリーンに焼きつけていく。吸血鬼に支配された地図にない島に、行方不明の兄を探しにやってきた高校生がたどる凄惨な戦いを通じて、兄弟の思いと友情の大切さを描く。だが、ハンディカメラを多用した移動シーンや戦闘シーンは、その場にいるような躍動感や緊張感を観客に体験させる狙いなのは理解できるが、画面が激しく揺れて見づらい。それを補う効果音もやたら耳障りで、感覚を過剰に刺激するだけに終わってしまった。

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パチャママの贈りもの - 渡まち子

◆圧倒的な自然が素晴らしい(65点)

 南米ボリビアの雄大な自然と、そこに暮らす先住民ケチュアの人々の素朴な表情に癒される。13歳の少年コンドリの一家は、代々、ウユニ塩湖の塩採掘を生業にしている。毎日を無邪気に楽しく暮らしているコンドリは、ある年、初めて父親と共に3ヶ月をかけてアンデスの山間の村々に塩を運ぶ“塩キャラバン”に行くことになる。

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キャピタリズム~マネーは踊る~ - 前田有一

◆霞のような敵と戦っているようなもの(55点)

 マイケル・ムーア監督が「反資本主義!」を叫ぶ最新作『キャピタリズム マネーは踊る』の制作中、偶然にも例の金融危機が起きた。ムーアはそのとき内心しめた、と思ったという。自ら選んだ題材のタイムリーさを確信したというわけだ。

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マッハ!弐 - 前田有一

◆個別の動きは素晴らしいが……(55点)

 『マッハ!』(03年)で世界のアクション映画ファンに衝撃を与えたトニー・ジャーも、気づいてみればはや33歳。類まれなる運動能力も、ほうっておけば陰りが見えだす年齢である。

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エクトプラズム 怨霊の棲む家 - 小梶勝男

◆ドキュメンタリー風かと思ったら普通のホラー映画だった。派手な見せ場は楽しめるが、怖くはない。ただ、エクトプラズムを吐く場面だけは異様な迫力があった(66点)

 テレビのドキュメンタリー番組で放映された実話が基だというから、「フォース・カインド」(2009)や「パラノーマル・アクティビティ」(2007)のようなドキュメンタリー・タッチの作品だと思っていた。冒頭に、「事実に基づく」とテロップが出るし、テレビカメラに向かってバージニア・マドセンが話す場面から物語が始まるのが、「フォース・カインド」のような仕掛けを思わせる。さらに、「フォース・カインド」に出演していたイライアス・コーティアスも重要な役で出ているのである。

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サイコ・イコール - 小梶勝男

◆WHDジャパンのオリジナル・ホラー第1弾。「アンダルシアの犬」(1928)以来の目玉切り裂きシーンが見もののJトラッシュ(55点)

 関西の残虐ホラー製作会社・WHDジャパンの記念すべきオリジナル・ホラー第1弾。本作の後、「鬼殻村」(2009)「腐女子」(2009)と続き、現在(2010年1月)第4弾が企画されている。

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ヴィクトリア女王 世紀の愛 - 山口拓朗

◆ふたりが生涯のパートナーとして絆を深めて行くくだりが感動的(70点)

 1837年のイギリス。ときの国王ウィリアム(ジム・ブロードベント)は病に苦しみ、自身の死を予感していた。王位継承者のヴィクトリア(エミリー・ブラント)はまだ十代で、母から摂政政治を承認するように迫られていたが、これを断固拒否し続けた。そんな折、ヴィクトリアは、ベルギー国王の甥、アルバート(ルパート・フレンド)と出会う。ヴィクトリアは、誠実で公正中立なアルバートに惹かれ、少しずつその距離を縮めていくが……。

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バグダッド・カフェ ニューディレクターズ・カット版 - 渡まち子

◆他人を幸福にする愛すべきヒロインの物語(70点)

 タンクをせっせと磨く太めの中年女性と言えば、1989年に公開された「バグダット・カフェ」のポスターだ。映画を見たことがない人でも、主題歌「コーリング・ユー」のメロディには聞き覚えがあるだろう。監督のパーシー・アドロン自らフィルムを再編集し、クリアな映像で蘇った。ドイツから来た旅行者のジャスミンは、夫婦喧嘩の末に、さびれたモーテル兼ガソリン・スタンド“バグダッド・カフェ”に辿り着く。変わり者ばかりのこの場所で、ジャスミンは次第に自分の居場所を見つけていく。一方、この大女のジャスミンが来たことで、最初は不機嫌に怒鳴り散らしていた経営者のブレンダをはじめ、気力をなくしたバグダッド・カフェの人々も変わり始めた…。

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(500)日のサマー - 渡まち子

◆ラブストーリーではないと釘をさすのが興味をそそる(75点)

 センスの良さとユニークな個性を感じさせる小品である。トムは、運命的な恋を信じるロマンチスト。ある日、秘書として入社してきた魅力的な女性サマーに一目惚れしてしまう。音楽の話題で意気投合した二人だったが、サマーは、真実の愛など信じていない女の子だった。トムはサマーに夢中になり、振り回されていく…。

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彼岸島 - 渡まち子

◆本作の味わいはまるで寄せ鍋のよう(30点)

 日本のマンガを原作に韓国人監督が映画化した本作の味わいは、まるで寄せ鍋のよう。吸血鬼をモチーフに、ジャンルの枠からはみ出すトンデモな物語が展開する。高校生の明は、行方不明になった兄の篤を探すため、仲間と共に地図にも載っていない謎の島・彼岸島に向かう。兄と再会は果たしたものの、その島は、吸血鬼と化した住人たちに支配されていた。

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真幸くあらば - 福本次郎

◆ブルーが強調された映像は多く語らない登場人物のように寡黙だが、ピアノの乾いた旋律が彼らの感情を饒舌に物語る。それは時に絶望、時に優しさ、最後には希望にまで昇華され、なんとしても生きたいという願いに変化する。(60点)

 ブルーが強調された冷たい映像は内面を多く語らない登場人物のように寡黙だが、ピアノの乾いた旋律が彼らの秘めた感情を饒舌に物語る。それは時に絶望、時に優しさ、最後には希望にまで昇華される。誰にも愛されず育ったゆえに、他人を愛するどころか自分すら愛せない男。彼が刑の執行直前に覚えた他人を大切に思う感覚、その想いはアクリル板に隔てられ言葉のやり取りでしか交換できない。死の恐怖を知り、生きる喜びを知る、人を愛して初めて生まれた気持ち。それはいつしか、「なぜ生まれてきたのだろう」という己の存在を否定する考えから、なんとしても生きたいという願いに変化する。

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牛の鈴音 - 福本次郎

◆やせ衰え骨が浮き出た尻とあばら、おぼつかない足取りでしか歩けない老牛。一切の機械と農薬を使用せず、人力と牛だけで田畑を耕す頑固な老人。とぼとぼと進むしか能がない人間と牛との絆を通じて、生きることの意味を問う。(60点)

 やせ衰え骨が浮き出た尻とあばら、もはやおぼつかない足取りでしか歩けなくなった老牛を使役し続ける老人。彼らの時間は恐ろしくゆっくりと流れ、効率というものをまったく考慮に入れていない。21世紀にもなって、一切の機械と農薬を使用せず、人力と牛だけで田畑を耕す頑固な老人と、彼と同じくとぼとぼと前に進むしか能がない牛との絆を通じて、生きることの意味を問う。完全に時代からは取り残されている、しかし、そこには経済至上主義では測れない、素朴であるが精神的に満ち足りた人生がある。

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