田中麗奈がヒロイン野江を丁寧に演じて好感が持てる。(55点)
藤沢周平の原作では珍しく、主人公は女性。不幸な結婚生活を送る女性が、誠実な武士との再会で生きる希望を取り戻す物語だ。あの短い小説をよくここまでふくらませたと感心するほど、原作はささやかな小品。田中麗奈がヒロイン野江を丁寧に演じて好感が持てる。だが、物語そのものは抑揚が少なく、野江の生き方も現代では共感は難しい。映画にするにはあまりに保守的な物語だが、登場人物のたおやかさが心に残った。
田中麗奈がヒロイン野江を丁寧に演じて好感が持てる。(55点)
藤沢周平の原作では珍しく、主人公は女性。不幸な結婚生活を送る女性が、誠実な武士との再会で生きる希望を取り戻す物語だ。あの短い小説をよくここまでふくらませたと感心するほど、原作はささやかな小品。田中麗奈がヒロイン野江を丁寧に演じて好感が持てる。だが、物語そのものは抑揚が少なく、野江の生き方も現代では共感は難しい。映画にするにはあまりに保守的な物語だが、登場人物のたおやかさが心に残った。
一見、純愛に見えるが、実はこの話、相当にキモい。(35点)
強い女の子と気弱な男の子。前半は笑わせ、後半は怒涛の不幸。韓国映画界が得意とする世界だ。“彼女シリーズ”のジェヨン監督によるこの日本映画は、未来から来たサイボーグと青年の恋、そして彼らの切ない秘密を描くSFファンタジー。一見、純愛に見えるが、実はこの話、相当にキモい。オタクとナルシシズム、さらに大人のオモチャをブレンドしたようなオチに、体温が下がる思いだ。綾瀬はるかがキュートなのでファンには目の保養だが。
ストーリーは二の次にしてガン・アクションに徹した潔さがあっぱれ。(65点)
ストーリーは二の次にしてガン・アクションに徹した潔さがあっぱれ。無敵だが情け深い一匹狼の殺し屋が、なりゆきで赤ん坊を託され“子連れ狼”チックに悪に立ち向かうアクション映画だ。映画のほとんどが銃撃戦なのだが、動物や植物など、銃以外の小道具を巧みに使って闘う創意工夫が楽しい。特に活躍するのはニンジン。そんなのアリ?と笑いが出てしまう。ベルッチやジアマッティなど、ひねりの効いたクセモノ系豪華キャストも見所だ。
随分と保守的で幼稚なラブ・コメディだ。(50点)
痛快だった「プラダを着た悪魔」のスタッフの作品にしては、結婚をゴールとするこの物語は、随分と保守的で幼稚なラブ・コメディだ。だからこそ安心感満載の1本ともいえるのだが。ヒロインは介添え人を27回も務める世話好きのお人よし。彼女がついに幸せをつかむまでをテンポ良く描いていく。面白いのは花嫁介添え人を含む米国の結婚式周辺事情。ハッピーエンドを楽しむ予定調和の女の子映画だが、27着のドレスの行方のオチは上手かった。
キャラクターの個性やノリの良さは楽しい。(65点)
最近もっぱら流行の理科系男子を主人公にした痛快な青春映画は、貧乏な天才学生がラスベガスのカジノで荒稼ぎした実話が基。主役のスタージェスをはじめ、チームを組むMITの学生を演じる俳優たちが秀才に見えないのは難点だが、キャラクターの個性やノリの良さは楽しい。何より、ただお勉強ができるだけではダメという米国の教育の価値観は見習いたいもの。難解なカード・カウンティングが分かった気になるから不思議だ。
まったくもって凡庸な出来のドキュメンタリーだ。(20点)
この作品のレビューは8月15日にしようと本気で思っていたのだが、このモヤモヤを夏まで心にしまっておくかと思うと神経をヤラれそうなので、大騒ぎの末に公開された5月中に書いておく。
当人には大事件でもハタから見れば滑稽なもの。(65点)
イーサン・ホーク自身の体験が基の恋愛劇は、当然、男目線。新進俳優のウィリアムが歌手の卵のサラに劇的に恋し、やがて彼女を失うまでの物語だ。ようやく結ばれたと思ったら、急激に冷めていく女のわがままと、うるさくつきまとう男のうっとうしさは、当人には大事件でもハタから見れば滑稽なもの。だからこそ情緒不安定な恋愛の本質を突いて上手いと感じる。父親の不在が共通なのは興味深いが母親の存在こそがトラウマのような気もした。
風変わりで味のあるサスペンス映画だ。(70点)
風変わりで味のあるサスペンス映画だ。殺人依存症の男をケビン・コスナーが演じる意外性もさることながら、彼の心の内の悪をウィリアム・ハートが演じ、一人の人物を二人で演じ分ける演出が絶妙で面白い。殺人の手口は完璧とは言えないが、倒錯的な主人公にはそのミスは次への殺人の絶好の口実だ。刑事役はデミ・ムーア。何気に豪華キャストだが、ヘタに恋愛パートを盛り込まず、サスペンスに徹したことが作品の質を高めている。
チャーミングな恋愛劇の主役は会話。(70点)
チャーミングな恋愛劇の主役は会話。才人ジュリー・デルピーが監督、脚本、音楽、編集、主演と八面六臂の大活躍だ。物語は倦怠気味の仏人と米人カップルがパリで過ごす2日間を描くもの。リズミカルなテンポで笑わせる会話の妙は、まるでウッディ・アレンの映画を見ているようだ。仏と米のカルチャー・ギャップや、男女の価値観の違いなど、なかなか奥が深い。デルピーの提供する仏人への皮肉と愛情がつまった、ユニークなパリ案内だ。
古典的なムードのラブ・サスペンスとして楽しめる。(65点)
19世紀末のウィーンは、科学と幻想が入り混じった不思議な空間だ。華やかなのに暗い古都を舞台に、天才幻影師の命を賭けたショーと、幼馴染の公爵令嬢との運命的な愛を描く。とはいえ、物語のプロットは映画を見慣れた人なら察しがつくもの。大掛かりな仕掛けや緻密な謎解きを期待すると肩透かしだが、古典的なムードのラブ・サスペンスとして楽しめる。全てを疑っても愛だけは信じる。この映画の作り手は大変なロマンチストと見た。
自らの代表作に決着を付けるスタローンの異様な気迫がみなぎっている。(55点)
自らの代表作に決着を付けるスタローンの異様な気迫がみなぎっている。タイで隠れるように暮らすランボーが、非道なミャンマー軍部との壮絶な戦いに挑む物語だ。R指定だけあって、凄惨な残虐場面は目を覆うほど。初代「ランボー」は傑作だが、続編を作れば作るほどおかしな方向に進んでいった。シリーズ集大成は、血や肉片が飛び散ったあげく、主人公の心に故郷と平和をプレゼント。いったい本気なのか?と思うがこれで最後なら勘弁しよう。
下駄の音や雨音などのクリアなサウンドも大きな魅力だ。(65点)
清水宏監督は黒澤や小津に比べて知名度は低いが日本を代表する名匠だ。彼の佳作「按摩と女」を、セリフやカット割まで忠実にカヴァーしたのが本作。山あいの温泉街で繰り広げられる小さな騒動と淡い恋をゆったりとしたテンポで描き、心がなごむ。個性派の石井克人作品と思うと意外だが、この名匠を掘り起こして紹介した功績は大きい。カラーならではの美しい緑の映像が鮮烈だが、下駄の音や雨音などのクリアなサウンドも大きな魅力だ。
緻密に練られた大人の“放課後”は一筋縄ではいかない。騙される快感はクセになりそうだ。(80点)
一流企業に勤める木村が行方不明になった。彼の同級生の、探偵の島崎と中学教師の神野は、木村探しに奔走する。だが、追えば追うほどに、今まで知らなかった彼の姿が。女と金の臭いがするこの失踪事件とは…。
生命の誕生を肯定する視点がいい。(70点)
出産は、女性にとって人生で最も劇的な“肉体の転機”。日本を含め、5大陸・10ヶ国の女性たちを追った異色ドキュメンタリーだ。劣悪な環境、ギリギリまで続けた仕事、医者に頼らない自然分娩など、出産スタイルは多様だが、子育て先進国フランスの作品だけあって、生命の誕生を肯定する視点がいい。中でも真っ暗な砂漠での出産とイルカと一緒の水中出産の様子は驚愕。痛みを乗り越えて子供を生んだママの顔は共通して輝いている。
感動の実話、病気、お母さん。これぞ韓国映画の世界だ。(50点)
感動の実話、病気、お母さん。これぞ韓国映画の世界だ。知的障害の息子が、大好きな母親のためにハーフマラソンに挑戦する物語である。主役のシン・ヒョンジュンの演技があまりにオーバーアクションなので見ているこっちが気恥ずかしいのだが、母親の描き方が意外とクールなのが良い。息子を思えばこそ厳しく接する韓国の典型的な母の姿に思えた。マラソン大会の結末もさわやかなもの。珍しく死人が出ないのが何より嬉しい。