恐怖 - 渡まち子
◆本当に怖いのは学問や名声より“見えない何かを知りたい”という欲望を膨らませて、家族やついには自分まで使ってタブーの領域に踏み込んでいく母親の狂気(55点)
世界が認めるジャパニーズ・ホラーの特徴は、何か分からないものが迫ってくる、核のない恐怖を描く点にあるが、本作もその系譜につながる作品だ。脳科学の研究者である太田夫妻は、戦前の満州で行なわれた脳の人体実験のフィルムに映った真っ白で不気味な光を目にするが、二人の幼い娘も偶然にその光を見てしまう。17年後、死への誘惑に取りつかれた姉・みゆきが失踪。姉の行方を捜す妹のかおりは、違法の脳実験を繰り返す母親・悦子と再会する。狂気の母親と二人の姉妹を待ち受けているのは、恐ろしい“もうひとつの現実”だった…。
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© 2010「必死剣鳥刺し」製作委員会
◆クライマックスには怒涛の斬り合いと流血描写が用意され、理不尽すぎる展開に驚く(60点)
組織と権力の悪意に、個人の正義が利用され踏み潰されるこの物語は、藤沢文学の中でも異色の苛烈さを持つ時代劇だ。江戸時代の海坂藩。兼見三左ェ門は藩主の失政の元凶である愛妾を城中で刺し殺す。死を覚悟したその行為には意外なほど寛大な処分が下り、再び藩主の傍に仕えることに。腑に落ちない思いを抱きながらも、亡妻の姪・里尾とのおだやかな日々の中で三左ェ門は再び落ち着きを取り戻す。そんなある日、中老・津田民部から、天心独名流の剣豪の三左ェ門に、必勝技“鳥刺し”をお上のために役立てろという秘命が下る…。
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◆元夫婦ならではの騙し合いと微妙な愛情を組み合わせて、なかなかテンポがいい(55点)
元夫婦が追うものと追われるものに、さらに二人揃って犯罪組織に追われるという二重の追いかけっこが楽しめるアクション・ラブコメディ。賞金稼ぎ(バウンティー・ハンター)のマイロは借金まみれ。返済金を返すために請け負った仕事は、懸賞金が懸けられた新聞記者で元妻のニコールを捕まえて警察に連行すること。妻に捨てられ、実はまだ未練があるマイロと、捕まってはすり抜けるニコールは互いに駆け引きを繰り広げる。だがそんな二人は、ニコールが追っていた特ダネから、いつしか犯罪組織から追われる羽目になり…。
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© 2010 TWENTIETH CENTURY FOX
◆クドクドとした説明などなく一気にサバイバルに突入する展開が小気味良い(70点)
最強の地球外生命体プレデターとの戦いは完全アウェイでの死闘。ゲーム的展開ながら独創的なストーリーは映画として見事に成立している。不気味なジャングルに人間の男女8人が放り出される。そこは未知の惑星で、恐るべき地球外生命体・プレデターの人間狩りの場だった。傭兵やスナイパー、特殊部隊やヤクザなど、戦闘のプロたちは、自分たちが狩りの獲物としてこの星に連れてこられたことを知る…。
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◆おもちゃの再出発というエモーショナルな展開で大人を泣かせる傑作。さよならの涙はこんなにも温かい。(85点)
おもちゃの持ち主アンディは大学生に。屋根裏に行くはずだったおもちゃたちは、手違いで託児施設に寄付されてしまうが、そこは凶暴な子供たちがいるトンデモナイ場所だった。カウボーイ人形のウッディはアンディの元に帰ろうとするが、残ったバズやジェシーら仲間たちに危機が迫っていることを知る…。
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◆ビミョーな三角関係には、おしゃれなかけひきや真剣な修羅場もなく、ひたすらドンくさい(55点)
「あぁ、なんてダメな人たちなんだろう」。見ている間に感じるこの軽い嫌悪感が、見終わった後に自らをふりかえる反省材料へと変貌する。この小さな作品が持つ意外なほどの力に驚いてしまう。30歳の百瀬は自信過剰なダメ男で、同棲中の佳代とは倦怠期。二人の住む部屋に佳代の妹で15歳の桃が、夏休みを利用して遊びにくる。天然なのか早熟なのか、奔放な桃に翻弄される百瀬は、すっかり彼女に夢中になるのだが…。
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◆久々の新作だが、第2作の「ザ・リターン」の続きというより、第一作の物語の続編という位置付けだ(50点)
90年代を代表するSFアクション「ユニバーサル・ソルジャー」の18年ぶりの新作は、オヤジパワーを炸裂させながら、スタントなしで挑む格闘シーンを満喫したい。物語の発端は、チェチェン民族主義のテロリストが、ロシア首相の子息を拉致・誘拐し、原子力発電所を占拠したこと。犯人は、人質の解放と引き換えに独立を要求する。テログループには、寝返った科学者が作り出した最先端の兵士再生プログラム“NGU”によって誕生した最強の兵士がいた。一方、このテロに対抗できる戦力として、社会に戻るためリハビリ中だった初代のユニソルのリュックを、再び兵士として送り込むことに。NGUの最強ソルジャーVS初期兵士再生プログラム“ユニソル”のリュックが対峙する。さらに、冷凍冬眠から覚めた旧敵スコットが現われるが…。
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◆当時の時代背景と警察組織内のタブーをえぐりながら進んでいく(60点)
昭和最大の未解決事件を追う刑事が、巨大でどす黒い闇の中に、その執念ごと呑みこまれるクライム・サスペンスだ。異様な犯罪は、過去と現代を揺るぎなく結びつけ、関わった人間を呪縛する。出世を夢見る若手刑事の片桐と、定年間近のベテラン刑事の滝口は、ある殺人事件でコンビを組むことに。傍若無人な滝口の振る舞いに困惑しながらも、その事件の被害者が三億円事件の犯人グループの一人と分かったことから、恐るべき真相に辿り着く。と同時に二人は、警察組織の中の陰謀に係る闇へと引きずり込まれていくことになるが…。
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◆フランスの国民的人気コミック「アデル・ブラン=セック」シリーズの実写映画化だが、ハリウッド映画ばりの冒険アクションと、フランス映画らしいおしゃれなセンスが効いている(60点)
良くも悪くも仏映画をエネルギッシュにしているのがリュック・ベッソンだが、本作はヒロイン・アドベンチャーでたっぷり楽しませるエンタメ映画になった。1911年のパリ。世界中の不思議を追う美人ジャーナリストのアデルは、仮死状態の妹を救うため、エジプト王家に伝わる復活の秘薬を入手すべく王家の谷にいた。ピンチを切り抜けてパリに戻ってみると、そこでは、翼竜・プテロダクティルスが孵化し、人々を襲うという事件が勃発、街は大騒ぎになっていて…。
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© 2010 フジテレビジョン アイ・エヌ・ピー
◆シリアスに思えるが、中身は確信犯的にユルユルな物語(55点)
日本映画の興収記録を塗り替えてきたシリーズの7年ぶりの最新作は、過去の登場人物総出演の趣で、まるで同窓会か歌舞伎の顔見世興行のようだ。湾岸署を襲った連続殺人事件から7年が経ち、青島刑事は強行犯係係長に昇進、新湾岸署への引越しを一任される。だが、引っ越しの真っ最中に、湾岸署管内で、金庫破りやバスジャック、さらには青島らの拳銃が3丁が盗まれるという事件が次々に発生。特別捜査本部が設置され、管理補佐官の鳥飼とともに青島たちは捜査を開始するが、ついに新・湾岸署が占拠されてしまう…。
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© 2009 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
◆スマッシュヒットを放ったおバカコメディの秀作。少々下品だが、ダメ男たちの友情が微笑ましい。(65点)
2日後に結婚式を控えた花婿ダグのためのバチュラー・パーティ(結婚前夜祭)で、親友のフィルとステュ、義弟のアランはラスベガスのホテルでバカ騒ぎする。翌日ひどい二日酔い(ハングオーバー)で目覚めると、部屋はメチャメチャ。さらにダグの姿が消えていた。はたして昨夜何が起こったのか?!
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◆高額商品を売っては儲ける企業の企みとは別に、臓器レベルで自分の身体や能力をコーディネートするセンスは人類の未来志向を示唆していて面白い(60点)
人工臓器によって長寿を“買う”人類の欲望に手痛いしっぺ返しをクラわせる異色SFだが、終盤にどんでん返しが用意されていてる。近未来、人工臓器によって健康と延命が可能になった世界。ユニオン社は、ローンの返済が滞るとレポゼッション・メンという臓器回収人を送り、強制的に人工臓器を取り立てていた。生きたまま回収するその作業は、債務者にとっては死を意味する。腕利きの回収人・レミーは、ある出来事によってユニオン社の最高額商品である人工心臓を埋め込まれ、多額の借金を背負い、回収する側からされる側に。これは誰かの罠なのか、ユニオン社の陰謀か。謎の女性債務者ベスと共に真実を探ろうとするが…。
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◆せめて彼の音楽性を少しでも伝える内容であれば(5点)
マイケル・ジャクソンの命日にあたる6月25日に公開されたドキュメンタリー映画だが、これほどヒドい作品は久しぶりに見た気がする。MJのプライベートフィルムという触れ込みだが、とても映画とは呼べず、素人がユーチューブにアップした画像のレベルにすぎない。内容は、2009年に急逝し、キング・オブ・ポップと呼ばれるMJの素顔に迫るというもの。生前、彼の身近にいた元マネージャーによって撮影されたフィルムには、故郷を訪れ大歓迎を受ける様子や、ネバーランドでの様子、親しい人だけに囲まれたバースデー・パーティなど、素顔のMJの様子が記録されている。
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◆歌手で女優でもあるビルヒニア・ルーケの貫録の美しさにも見惚れてしまう(60点)
タンゴを愛する人たちにとって至福の音楽ドキュメンタリーだろう。高齢だが音楽への情熱がほとばしる巨匠たちの演奏に感動必至だ。2006年、40年代から50年代にかけて活躍し、アルゼンチンタンゴの黄金期を築いた世界的音楽家たちが、ブエノスアイレスに集まる。アルバム「CAFE DE LOS MAESTROS」に収める曲を演奏するためだ。タンゴに一生を捧げた彼らは、タンゴの魅力と共に自らの激動の人生を語り始める…。
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◆オリジナルや原作を知る観客にとっては、結果は分かっているのだが、それでも何ともいえない幸福感がじんわりと胸に広がる(60点)
日本映画「幸福の黄色いハンカチ」のハリウッド・リメイクだが、欧米で“黄色の布”と言えば、それは「Tie a Yellow Ribbon」の歌を連想し、兵士の無事と帰還を祈るというもの。その意味で黄色の布のモチーフは、日本とアメリカでは少し受け取り方が違うのかもしれない。6年の刑期を終えて出所した中年の男ブレッド。出迎えもなく一人で街の食堂でビールを飲む。偶然出会った若い娘マーティーンと、変わり者の青年ゴーディと共に、元妻メイが暮らすニューオリンズを目指す旅に出ることに。やがてブレッドは自分とメイとの間に起こった不幸な出来事と、ある約束を話し始めた…。
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