ぼくの大切なともだち - 渡まち子

観終わった後は気持ちが温かくなる(70点)

© 2006.FIDELITE FILMS―WILD BUNCH―TF1 FILMS PRODUCTIONS―LUCKY RED./WISEPOLICY

 ルコント流の友情の定義が堪能できるヒューマン・ドラマ。自己中心的な美術商のフランソワには本当の友人がいない。さして気にもしていなかったそのことで仕事仲間と口論になり、“親友”を作る賭けをすることに。気のいいタクシー運転手ブリュノから人に好かれるコツを伝授される姿が可笑しくも切実だ。主人公が、友情の本当の意味を知るには苦いレッスンを受けねばならないが、終盤のサスペンスフルな演出が素晴らしく、観終わった後は気持ちが温かくなる。もっとも、愛情ではなく友情で“すべてを犠牲にする”設定は、仏映画だけに、現実味に欠ける気がしないでもない。

881 歌え!パパイヤ - 渡まち子

ユニークな文化が楽しめる異色ミュージカル(65点)

 ゲータイ(歌台)というユニークな文化が楽しめる異色ミュージカル。現世に戻った死者の霊を楽しませるゲータイは毎年シンガポールで旧暦の7月の行われるド派手な歌謡ショーだ。パパイヤ・シスターズはゲータイの女神の力を借りて人気スターになるが、ライバルのドリアン・シスターズの妨害に遭う。歌、踊り、衣装とすべてがパワフルで、陽気すぎる鎮魂の行事にしばし唖然。どう見てもヘンな日本娘の仮装も登場する。いったい本気なのか?とあきれるが、根底にあるテーマは死だ。女神の不思議な力やライバルの呪いなど、荒唐無稽な展開に苦笑しつつ、冒頭とラストが見事につながる頃にはすっかり感動してしまう。アジア的エンタメ映画の魅力を満喫できる1本だ。

R246 STORY - 渡まち子

国道246号線をテーマに作った異色の短編集(55点)

 6人の監督が国道246号線をテーマに作った異色の短編集。時代劇、SF、ドキュメンタリー、青春ものとバラエティに富んでいる。何より監督を務める6人の人脈を示すような豪華キャストがスゴい。若者文化の発信地がテーマだけに生きの良さは魅力的だが、物語としてはまとまりに欠けるものばかり。それもまた“今”の気分だろう。そんな中、須藤元気が監督した「ありふれた帰省」は、友情物語、SF、ラブストーリーとイメージが変化し、センスを感じる1本だった。ストーリーとして分かりやすいのはユースケ・サンタマリアの「弁当夫婦」か。初監督に挑戦したアーティストもいるが、比較を避けられないオムニバス映画は難しい選択だったかもしれない。

インビジブル・ターゲット - 渡まち子

物語は怒涛の展開で飽きさせない(70点)

 ジャッキー・チェンの「香港国際警察」を若手俳優によって継承した作品だ。ジャッキーほどの本格アクションは望めないが、物語は怒涛の展開で飽きさせない。現金輸送車襲撃事件が勃発し3人の警察官が事件にかかわることに。だが彼らは、誤解と警察内部の裏切りで容疑者にされてしまう。前半の激しい暴力シーンには目をそむけたくなるが、ジャッキーの息子ジェイシー・チャン演じる正義感のワイ巡査の、穏やかなキャラクターに癒される。ただ、悪役ウー・ジンはアクションは見事でもルックスが善人顔なので説得力に欠けてしまった。ポリス・アクションは敵役こそが重要だというのに。ハードボイルドな物語にも、所々で笑いが混じるのが香港映画らしくていい。

パンダフルライフ - 渡まち子

少々子供っぽいのが残念(60点)

 ツートンカラーの珍獣パンダを密着取材したドキュメンタリーは、思わずなごむ。日本生まれの双子のパンダが中国へ。四川省にあるパンダ繁育研究基地「成都大熊猫繁育基地」でのパンダたちの成長を追う。ナレーションによって物語性が加わったのは親しみやすくて良いが、パンダの歴史を紹介するアニメが、少々子供っぽいのが残念。映画では、貴重な子育ての様子が見られるのが収穫だ。並んで座って竹をほうばる姿に無条件に癒される。ただ四川省といえば大地震があった場所。エンドロール後の文字情報でもいいから、その後パンダたちがどうなったかが知りたかった。

20世紀少年 第1章 終わりの始まり - 渡まち子

全24巻の原作漫画をどう削ぎ落としていくかが見もの(50点)

 不気味さが漂うSF冒険サスペンスで全3部作の第1作。コンビニを経営するケンヂは少年時代に遊びで作った“よげんの書” が現実化していることを知り、仲間とともに謎の黒幕“ともだち”を追うことに。全24巻の原作漫画をどう削ぎ落としていくかが見ものだ。映画は、物語の3分の1を観ただけで評価できる段階ではないが、昭和のレトロな雰囲気と冒険が始まるワクワク感は伝わってくる。さえない中年男が、人類滅亡を阻止し地球を救うというギャップが面白い。数多い登場人物の中でオッチョ役の豊川悦司が最も印象的だ。本編の後に予告があるので最後まで鑑賞を。

ハンコック - 渡まち子

嫌われ者のスーパーヒーローという設定が新しい。前半は面白いのに後半失速するのが残念。(65点)

 スーパーヒーロー・ハンコックは嫌われ者の困ったヤツ。人助けはするが勢いあまってビルや道路をメチャクチャにし、常に市民からヒンシュクを買っていた。酒好きでだらしない彼だが、偶然助けたレイからある提案を受ける…。

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ラストゲーム 最後の早慶戦 - 渡まち子

野球と学生たちを愛する人々の思いが胸を打つ(60点)

© 2008「ラストゲーム 最後の早慶戦」製作委員会

 戦争中、敵国のスポーツだった野球を愛したエピソードは多いが、これもそのひとつ。学徒出陣直前に、若者たちにせめて思い出をと、壮行早慶戦の実現に奮闘した早大野球部顧問の飛田の姿を描く。それぞれの立場で野球と学生たちを愛する人々の思いが胸を打つ。早稲田、慶応の互いの校歌を歌いあう場面は涙を誘うものだ。ただ、志は尊いが、現代とつながる視点がないのがこの作品の弱点。戦争そのものが風化しつつある今、若い世代にア ピールしなくては反戦という目的には達しない。渡辺謙の息子の渡辺大がりりしいが、やはり柄本明の静かで熱い演技が素晴らしい。

言えない秘密 - 渡まち子

楽譜を賭けてのピアノ・バトルは圧巻(60点)

 俳優、ミュージシャンとして活躍するジェイ・チョウの初監督作は、切ない青春物語かと思ったら、後半はスーパーナチュラルな展開で、驚いてしまう。音楽学校で出会ったシャンルンとシャオユーは互いに惹かれあうが、シャオユーには大きな秘密があった。劇中のピアノ演奏はジェイ・チョウ自身によるもので、素晴らしいのひと言。特に楽譜を賭けてのピアノ・バトルは圧巻だ。監督、脚本、主演、音楽と、八面六臂の活躍で多才ぶりがうかがえる。ただ、過去を変えてはいけないという大原則を堂々と破るラストに疑問が残った。寂しげな横顔のグイ・ルンメイの中性的な雰囲気がいい。

落語娘 - 渡まち子

ユニークなヒューマン・ドラマ(65点)

 落語の世界の裏事情が分かるユニークなヒューマン・ドラマ。落語家を目指す香須美は、問題児の師匠のもとで、女というハンデにもメゲず厳しい修行の日々をおくっている。ある時、師匠の平佐が呪われた演目に挑戦すると宣言したことから大騒動が巻き起こる。落語界の珍しいしきたりが興味深いが、セクハラと女性蔑視の中、頑張るヒロインの芯の強さが光った。一方で、頑張りすぎて見えなくなることもあると教えられる。劇中劇「緋扇長屋」がムード満点で思わず引き込まれた。最近ちょっぴりブームの伝統芸能。猛稽古を積んだというミムラをはじめ出演者たちの落語に拍手だ。

スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ - 渡まち子

自由な表現が見所(55点)

© Lucasfilm Ltd. & TM. All rights reserved.

 壮大なサーガ「スター・ウォーズ」には、作品の狭間にさまざまなエピソードが隠れている。物語はクローン大戦の秘話を3DCGアニメーションで描くもので、アナキンと弟子(パダワン)のアソーカが大活躍する。アニメならではのコントラストの強さや色彩など、自由な表現が見所。見習いジェダイのアソーカは新鮮で効いていたが、生意気を通り越し、傲慢な言動が鼻に付く。SWファンを自認する人は必見だが、私は実写版の方が断然好みだ。

デトロイト・メタル・シティ - 渡まち子

不本意なことで大成するやるせなさが哀愁の怪作コメディ(55点)

© 2008「デトロイト・メタル・シティ」製作委員会

 好きなことでは認められず、不本意なことで大成するやるせなさが哀愁の怪作コメディ。オシャレなミュージシャンを目指し田舎から上京したのに、なぜか悪魔系デスメタルバンドで大活躍してしまう青年の物語だ。主人公の根岸くん/クラウザーさん役のマツケンが白塗りでシャウトする姿は笑えるが、根がSな根岸くんの誇張した演技はあまりにキモい。原作ファンだというキッスのジーン・シモンズが出演するなど、唐突なゴージャス感が見もの。

セックス・アンド・ザ・シティ - 渡まち子

オバサン4人の下ネタ系井戸端会議(50点)

© MMVlll New Line Productions, Inc. Sex and the City™ is a trademark of Home Box Office, Inc. All Rights Reserved.

 大人気TVドラマの劇場版は、ドラマファンには懐かしくても、それ以外の者には、オバサン4人の下ネタ系井戸端会議。思わず引いてしまったが、溢れる欲望パワーはNYでの成功の必須条件なのだろう。コラムニストのキャリーがついに結婚へ。だがドタキャンにより親友同士の4人を思わぬ運命へ導いていく。派手なファッションも含め彼女たちの言動が垢抜けずイタいのだが、誇張した本音がこの物語のキモだ。方向性は実に正しい。

TOKYO! - 渡まち子

東京をテーマにした3話オムニバス映画。不安と不条理が東京をTOKYOへと変えていく。(70点)

 突然、体が木になってしまった女の子。マンホールから現れる怪人。10年間引きこもった男。どこかヘンテコな3つの物語は関係せず独立している。映画界で確かな実績を残す個性派監督3人が不思議な都市空間を読み解いていく。

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旅するジーンズと19歳の旅立ち - 渡まち子

物語の中心はカーメンの恋と成長(65点)

 女の子4人の友情物語は続編にして完結編。誰かが困った時にいつも助け合う気持ちが彼女たちを結び付ける。親友同士の4人は19歳に。環境が変わり、恋や友情の戸惑いを経験する。1本の不思議なジーンズが幸せへと導く展開は同じだが、魔法は少なめ。自分を信じる4人に、もうマジックは必要ないのだ。物語の中心はカーメンの恋と成長だが、個性派のティビーが今回も魅力的。恋に不器用な彼女が幸せになろうとする勇気に拍手だ。ジーンズが“消える”のは切ないが、4人が大人の階段を上り始めた証だろう。

【おすすめサイト】 
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