彼が二度愛したS - 渡まち子

内容は平凡な官能サスペンス(55点)

© 2007 The Tourist Pictures, LLC. All rights reserved.

 好漢ヒュー・ジャックマンが悪役を演じるのは新鮮だが、内容は平凡な官能サスペンス。孤独な会計士ジョナサンは偶然知り合ったハンサムな弁護士ワイアットに導かれハイソな秘密クラブにのめり込むことになる。だが謎めいた美女Sを愛したことから運命が狂いはじめる。中盤から主人公がハメられたのが分かる展開だが、あまりに先が読めてサスペンスとしての魅力が薄い。だが、官能シーンはエロティックというよりスタイリッシュに描かれているので上品さがある。謎解きやどんでん返しの驚きは少ないが、意外にもセンスある邦題と、都会の孤独をすくい取ったムードは良かった。

櫻の園-さくらのその- - 渡まち子

オリジナルとはまったく異なる物語(60点)

© 「櫻の園」製作委員会

 中原俊監督のセルフ・リメイクだがオリジナルとはまったく異なる物語になっているので、むしろ続編や姉妹編という趣。名門女子高の演劇部で禁止された演目「櫻の園」の上演に情熱を傾ける女子高生たちを描く青春映画だ。女子高という独特の異世界の雰囲気を巧みに描く中原監督の手腕は、繊細でいながら結構タフな21世紀の少女たちを主人公にしても変わらず発揮されている。映画初主演の美少女・福田沙紀はアイドル顔だが声がカマトトじゃないところがいい。ついに上演のとき、伝統や自分の殻を破って一歩前に足を踏み出す少女たちの顔は文字通り輝いていた。

かけひきは、恋のはじまり - 渡まち子

クルーニーが監督・主演した大人のスクリューボール・コメディ。丁々発止のやりとりが楽しい。(65点)

© 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

 1920年代の米国。引退間近の選手ドッジは落ち目のアメフト・チームを何とか立て直そうと学生アメフトの花形スターをスカウトする。そこに、ある目的でチームを取材する美人敏腕記者レクシーが登場。最初は反発し合う二人だったが…。

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X-ファイル:真実を求めて - 渡まち子

普通のサスペンスをちょっと不思議にした程度(50点)

© 2008 TWENTIETH CENTURY FOX

 人気TVシリーズの映画版第2弾は、お約束の宇宙人ネタではなく、普通のサスペンスをちょっと不思議にした程度の内容。FBI捜査官の失踪事件を調査するモルダーとスカリーは、透視能力を持つ神父が鍵だと知る。超常現象を信じるモルダーと科学を信じるスカリーの思考は平行線だが、二人の立場の対立が核心に迫る道となる。だがアブノーマルなこの事件、犯人側の状況説明があまりに不十分。また完全に独立した物語とはいえ、もう少し話をスケールアップしても良かった気がする。映画のメッセージはあきらめずに信じること。忘れた頃に銀幕で再会できたのがその証拠だ。

まぼろしの邪馬台国 - 渡まち子

インパクトが弱く、優等生のよう(50点)

© 2008「まぼろしの邪馬台国」製作委員会

 超多作な堤監督のヒューマン・ドラマは丁寧だがインパクトが弱く、優等生のよう。美しき大女優・吉永小百合が、まだ存命の女性を演じるとあっては、過激な演出もできないというところか。昭和40年代に邪馬台国ブームを巻き起こした盲目の文学者で破天荒な人物・宮崎康平と、彼を支えた妻・和子の絆を描く。物語は、古代史の謎を解く壮大な夢から、いつしか二人で歩むことを慈しむ夫婦愛にギアチェンジ。唐突な卑弥呼コスプレには思わず引いたが、いつもは鼻につく竹中のエキセントリックな芝居が、この物語ではピッタリとフィットしたのは収穫だ。「まぼろしの邪馬台国」オリジナル・サウンドトラック島原の子守歌のメロディが心に残る。

その日のまえに - 渡まち子

感動を演出する方法に誤りがある(35点)

© 2008『その日のまえに』製作委員会

 大林作品に死はつきもの。だか今回は感動を演出する方法に誤りがある。物語は、余命わずかと宣告された妻と、彼女を見守る夫や子供たちの最後の日々をつづるものだ。たたみかけるようなセリフやカット割は、残り少ない人生を静かに大切に生きる人物の描写には不適切。モチーフとして多用する宮沢賢治の世界観もフィットせず、いきなり素人芝居が入り込んだように見える。この物語はストレートな家族愛だけで十分なはず。美しい詩や音楽は小道具としてさりげなく使うべきだ。過剰なノスタルジーや叙情性が、習慣化した作家性としか映らないようでは才人・大林宣彦の名がすたる。

イエスタデイズ - 渡まち子

好きな人の好きなものを好きになりたい(60点)

© 2008 YESTERDAYS FILM PARTNERS

 わだかまりを抱えた父と息子の和解の物語はファンタジー仕立てだ。余命わずかの父から昔の恋人を探してほしいと頼まれた聡史はしぶしぶ引き受けるが、託されたスケッチブックを開くと、父の青春時代へとタイムスリップし不思議な体験をすることに。若き父の行動は一見立派だが男の身勝手にも思える。だがそれを静かに受け止める恋人と真実を承知で父を支えた母の度量が感動の源だ。この父子はタイムトリップの力がないと分かり合えないのかと思うと心配だが、塚本と國村二人の海辺のシーンは思わずホロリ。好きな人の好きなものを好きになりたいというセリフがいい。

ハンサム★スーツ - 渡まち子

心から笑えないのがイタい(50点)

© 2008『ハンサム★スーツ』製作委員会

 底が浅いコメディで、映画というより長いコントを見ているよう。男だってルックスが命とばかり外見を気にして二枚目になろうとするブサイクな主人公のラブ・コメディだ。腕のいい料理人で心優しい琢郎は、着るとハンサムになれる不思議なスーツのおかげで人生が激変する。整形という現実的な方法を取らないところに“女と違って”男は中身!と都合のいいメッセージが見えかくれして、心から笑えないのがイタい。笑えるのはむしろモデル業界の狂乱ぶり。魔法のハンサム・スーツ着脱で二人一役の塚地と谷原のちょっとした仕草が共通で、芸の細かさが感じられるのはポイントが高かった。

アイズ - 渡まち子

終盤はアクション映画のよう(50点)

© LIONS GATE FILMS INC. AND PARAMOUNT VINTAGE, A DIVISION OFPARAMOUT PICTURESCORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED

 タイ映画「the EYE【アイ】」の・ハリウッド・リメイクは、終盤はアクション映画のよう。盲目のシドニーは角膜移植手術を受けて成功するが、以来、突然襲いかかる人影や燃えさかる火事など、彼女だけに見える不可解な光景に悩まされる。超常現象をただ怖がるだけでなく勇気をもって受け止める設定がいかにも米国好みだ。効果音に頼りすぎる演出と、鏡に映る別の人物のビジュアルが、髪の長さや色が似ていて別人の驚きが薄いのが残念。また、せっかくヒロインをバイオリニストにしたなら音楽を効果的に使ってほしかった。セクシー路線脱皮を目指すジェシカ・アルバの頑張りを評価。

七夜待 - 渡まち子

河瀬監督の意気込みは空回り(30点)

 大きな賞を受賞した後の作品には冒険が許されるが、河瀬監督の意気込みは空回りしてしまっている。タイを訪れた日本人女性が、偶然迷い込んだ森の中の家でタイ古式マッサージにふれ、心の安らぎを得るというのが物語の大筋。とはいえ映画はいったい何が言いたいのかサッパリ伝わらず、異言語のコミュニケーションの行き違いも作品を混迷させるだけ。癒し系の映画のように見えるが頭を混乱させられてはたまらない。変わりたいと願うヒロインと河瀬監督が重なって見えたので、定地・奈良を離れ、脚本を排除したチャレンジが次のステップへとつながってほしいと願うばかりだ。

レッドクリフ PartI - 渡まち子

アクション映画の詩人ジョン・ウーならではの三国志の世界。金城武の諸葛孔明が魅力的だ。(80点)

© Bai Xiaoyan

 3世紀の中国。80万の大軍を率いて天下統一を目論む曹操に対し、民を思う劉備は、曹操に屈しようとしていた孫権と同盟を結ぶ。連合軍の兵力は5?6万と圧倒的に劣るが、知将・周瑜と天才軍師・諸葛孔明は奇策を講じていた…。

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ハロウィン - 渡まち子

意外にも起承転結がしっかりした“まっとうな”作り(60点)

 スプラッタ、今さらのリメイク、監督はデスメタルのロブ・ゾンビとくれば敬遠する人も多いだろうが、意外にも起承転結がしっかりした“まっとうな”作りだ。これだから映画は見てみないと分からない。ハロウィンに現われる殺人鬼マイケルの少年時代と、精神病院を脱出し街へ戻るいきさつが描かれる前日譚だ。マイケル少年の壮絶な殺戮シーンは、容赦ない血しぶきが飛ぶ残酷さだが、妹との関係性は哀しいもの。キーパーソンの医師を演じるマルコム・マクダウェルが物語を引き締めるが、どうしても彼の顔に狂気を見てしまう。70年代のヘビーな楽曲がたっぷり楽しめる音楽系ホラーだ。

釣りバカ日誌19 ようこそ!鈴木建設御一行様 - 渡まち子

馴れ合いを味わおう(50点)

 ユルい雰囲気が心地よい人気シリーズの19作。健康診断で胃カメラを飲む苦行をこなしたハマちゃんは、無事に再検査をパスし、晴れて大分に社員旅行に出発。釣り優先で楽しく暮らす主人公と気のいい仲間たちの、愛すべき馴れ合いを味わおう。鈴木建設に入社したいと本気で思うサラリーマンが多いのもうなずける。今回は派遣社員の常盤貴子と大会社の御曹司の山本太郎という格差問題を“玉の輿”チックに解決してみせる。豊後水道の海はどこまでも美しく、安心して楽しめる内容だが、ある親子共演にちょっと驚いた。今後、レギュラーに加わるのか興味津々である。

ICHI - 渡まち子

綾瀬はるかのコスプレ映画(45点)

 座頭市という有名なダークヒーローを大胆にも性別を女に設定し、いわば外伝の趣である。物語は盲目で“離れ瞽女(ごぜ)” の市の孤独で過酷な運命を描くアクション時代劇だ。逆手居合斬は瞬間の速さが勝負なのにスローの多用でスピードを削ぎ、とぼけた味が可愛い綾瀬が虚無的で無表情、現代劇そのままの芝居の窪塚、芸達者な大沢もこの役では技量が活きない。何もかもがちぐはくなのが理解できなかった。最先端のVFXを操る曽利監督ならではの殺陣は迫力よりも美しさを重視しているので、座頭市という枕詞をはずし綾瀬はるかのコスプレ映画として楽しむしかなさそうだ。

リダクテッド 真実の価値 - 渡まち子

限りなく実話に近い問題作(70点)

 擬似ドキュメンタリーの形だが、限りなく実話に近い問題作だ。イラクで起きた米兵によるレイプ・殺害事件を軸に、戦場で狂っていく兵士と軍隊の不条理を描いていく。特筆なのは、その表現技法。米兵の一人がプライベート・フィルムで撮影する映像を中心に、携帯の動画、イラクと米国を結ぶTV電話、ユーチューブの映像など、一般人が容易に手にできる主観映像情報が満載で、戦争の実態や米兵が起こした事件と共に、映像メディアの功罪にも言及している。リダクテッドとは“編集済み”の意味。映像技巧派のデ・パルマらしいやり方で報道の意味をも問い直す社会派映画と言えよう。

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