バンク・ジョブ - 渡まち子

複雑に絡み合う人間関係をテンポ良くみせる演出(75点)

© 2007 Baker Street Investors, LLC. All Rights Reserved.

 パンチの効いたクライム・サスペンスで、すこぶる面白い。しかもウォーキートーキー強盗として知られる実話というから驚く。70年代のロンドン。テリーは旧知の美女マルティーヌから銀行強盗を持ちかけられる。貸金庫を狙った大胆な計画は成功するがそこには現金や宝石類と共に、王室のスキャンダルに係わる秘密が預けられていた。強盗団、彼らを操る政府高官、裏社会の悪人どもに汚職警官と、複雑に絡み合う人間関係をテンポ良くみせる演出がさすが。最高機密を素人強盗に委ねる政府高官にあきれるが、これが70年代ののどかさか。ステイサムの男気と終盤の展開に胸がすく。

1408号室 - 渡まち子

残酷描写を多用しない演出が洗練されている(65点)

© 2007 The Weinstein Company, LLC. All rights reserved.

 妄想系スリラーだが、自分の心の深淵を見る場所というテーマがスティーヴン・キングらしい。娘の死から立ち直れないオカルト作家のマイクは、NYのホテルを取材。客が次々に自殺を遂げることで有名な謎の1408号室に、支配人の警告を振り切って宿泊する。幽霊を信じないマイクだが、呪われた部屋は恐怖の超常現象で彼を襲う。忌まわしい場所になった理由が不明なことと、支配人の扱いが中途半端なのが気になるところ。だが、残酷描写を多用しない演出が洗練されている。特に、絵画が動き、そこから水が溢れる場面は、創意工夫に満ちたビジュアルで洒落ていた。

私は貝になりたい - 渡まち子

中居正広の個性を評価したい(65点)

© 2008『私は貝になりたい』製作委員会

 伝説的TVドラマを名脚本家・橋本忍が自ら改訂して再映画化したのが本作。理髪店を営む清水豊松は、突如、戦犯として逮捕される。軍隊の非情な実態や、弱者に犠牲を強いるB・C級戦犯裁判の不公正に、誰もが怒りを覚えるだろう。この物語がTV草創期の1958年に生まれたことが驚きだ。旧作の主演は名優フランキー堺だが、彼の演技を真似るのではなく、平凡で誠実な青年というイメージで演じた中居正広の個性を評価したい。ただ、希望の光が見えた裁判が不条理に覆されたからくりを掘り下げてほしかった。21世紀の今だから語れる事実もあるはずと推察できるだけに残念。

ブラインドネス - 渡まち子

謎の病の発生により人間の本性がむき出しになる心理パニック・サスペンス。メイレレスの手腕が見事。(90点)

© 2008 Rhombus Media/O2 Filmes/Bee Vine Pictures

 街角で若い男性が突然視力を失う。それから各地で失明者が続出し、白い闇の病“ブラインドネス”は驚異的なスピードで拡大した。発症者は強制的に療養所に隔離されるが、そこは無法地帯と化し、人々から人間性を奪っていく…。

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ディスコ - 渡まち子

ダサいおやじの勘違いだらけの奮闘物語(60点)

© 2008 窶錀 LGM CINEMA 窶錀 STUDIOCANAL – TF1 FILMS
PRODUCTION 窶錀 JOINVILLE PRODUCTIONS

 全世界的に懐古趣味なのか、フランスから中年男のディスコ・ダンスをテーマにした映画がやってきた。70年代にディスコキングとしてならしたディディエは、今ではすっかり冴えない中年に。愛する息子とのバカンスのため、賞品の海外旅行を狙ってディスコ大会優勝を目指す。どうみてもダサいおやじの勘違いだらけの奮闘物語。それでもかわいらしく見えるのは、主人公たちが自分に誇りを取り戻すために頑張っているから。美人ダンス教師役のベアールもちょっとトボけた味が愛らしい。音楽を「シェルブールの雨傘」の巨匠ミシェル・ルグランが手がけていることが、実は一番の目玉だった。

ラブファイト - 渡まち子

楽しい佳作(65点)

© 2008「ラブファイト」フィルムパートナーズ

 幼馴染の男女が、お互いを好きな気持ちに気付くツールがボクシングという設定がユニーク。いじめられっ子でヘタレ男子の稔はケンカが得意の美少女・亜紀に助けられてばかり。亜紀より強くなろうと内緒でボクシング・ジムに通うが、それを知った亜紀もまたボクシングの魅力に目覚めていく。スポ根としての迫力は希薄だが、その分、素直になれないティーンエイジャーの男女の初恋を、コメディタッチで描いて楽しい佳作となった。終盤、稔を好きな少女の意外な素顔が唐突で大爆笑。並行して描かれる大人の恋が、ややテンポを削いだが、それでも二人を見守る大沢たかおは好演だ。

ブロークン - 渡まち子

鏡が割れると7年間不幸が続く(60点)

© 2008 LEFT TURN FILMS/THE BROKEN FILMS ALL RIGHTS RESERVED.

 スタイリッシュなサスペンスで、構図の美しさが光る。パステル調だった「フローズン・タイム」とは全く異なり、全編暗い色調で不安を煽る作品だ。ジーナら5人は食事中に、突然大鏡が激しく割れ落ちる事態に遭遇。それ以来、不可解な出来事が起こり始め、一人ずつ命を落としていく。“鏡が割れると7年間不幸が続く”とは欧州の迷信。だが分身(ドッペルゲンガー)を見たものは必ず死ぬとの言葉の方を濃厚に思い出す。エリス監督ならではの美しいビジュアルが印象的で、自分自身から襲われる異常な恐怖が有無を言わさぬ攻撃力で迫ってきて怖い。美貌のレナ・ヘディがクールだ。

GSワンダーランド - 渡まち子

異様に耳にこびりつくGSの音楽の威力(65点)

© 2008「GSW」製作委員会

 GS(グループ・サウンズ)ブームを背景にした青春音楽映画。1968年、ノリでバンド・デビューした、マサオ、男装したミクら4人は「ザ・タイツメン」として人気を博す。当時を知らない世代の石田や栗山らがかなり恥ずかしい衣装でハジケまくる姿や生真面目な芸能ニュースが楽しいが、流行を追って狂騒する音楽業界の内幕はもっと笑える。冒頭の、ビートルズが秋田にいるというウソさえ信じてしまうほど、当時の人々はGSに夢中だったのだ。異様に耳にこびりつくGSの音楽の威力に驚く。楽器が弾けないおやじ4人組「ザ・フレッシュフォー」がラストまで意外な形で登場。芸能界って奥深い。

ジョージアの日記 ゆーうつでキラキラな毎日 - 渡まち子

ダメっぷりが憎めないヒロイン(55点)

© 2008 Paramount Pictures. All rights reserved.

 “ダサカワ”少女の恋の悩みは深い。大きな鼻が悩みのタネの14歳のジョージアはイケメン転校生のロビーに一目惚れ。だが学校一セクシーな美女と付き合っているとの噂にアセりまくる。どこまでも元気で前向きなジョージアはいろいろあってもしっかりハッピーエンドをゲット。現実はそう甘くないのだが、いざという時のためにキスの練習までするジョージアは努力型なのだ。ダメっぷりが憎めないヒロインの、金銭抜きの玉の輿願望をストレートに描いてくったくがない。ただ終盤なぜかモテモテになるジョージアが、平気で周囲を傷つけるのが気になる。ハードな性格の猫アンガスが笑えた。

ルー・リード/ベルリン - 渡まち子

歌の世界観がわかりやすいのが嬉しい(70点)

 物語のある音楽ドキュメンタリーで非常に映画的なライブが体験できる。名盤「ベルリン」を33年ぶりに全曲披露したルー・リードのステージをジュリアン・シュナーベルが無駄のない演出で作品化。全編に歌詞の対訳が付くので歌の世界観がわかりやすいのが嬉しい。独人娼婦キャロラインと彼女に暴力をふるうジム、語り部である“俺”の3人が、東西に分裂したベルリンの街で繰り広げる愛の悲劇を歌うという構成がユニークだ。さらに物語をシュナーベルの娘ローラがショートフィルムにした映像がライブに絡む形で披露され、幻想的なアートさながら。これは音楽、映画、そして詩だ。

ハッピーフライト - 渡まち子

人物像がにぎやかな飛行機狂想曲(65点)

© 2008 フジテレビジョン・アルタミラピクチャーズ・東宝・電通

 矢口流にデフォルメした人物像がにぎやかな飛行機狂想曲。副操縦士やCA、整備士など飛行機にかかわる多くの人の力でホノルル便が出発するが、離陸後トラブルが発生する。ドジな綾瀬はるかは可愛いがあまりに誇張しすぎ。この演出ではまるで学生アルバイトだ。一方、お疲れ気味のグランドスタッフ役の田畑智子は秀逸。バードさんなど舞台裏の仕事が興味深い。終盤のサスペンスフルな展開を経て、ドタバタ劇は大団円に。ノリは軽いが、ゴージャスなシナトラの主題歌を聴けばきっとハッピーになる。

ダイアリー・オブ・ザ・デッド - 渡まち子

巨匠ロメロのゾンビ・モキュメンタリー。ホラーの枠を超えて社会派映画の域に達している。(75点)

© 2007 George A.Romero’s Diary of the Dead,LLC.All Rights Reserved.

 大学生ジェイソンらは森の中で卒業制作のホラー映画を撮影中。だが各地で蘇った死者のニュースを聞き、慌ててトレーラーで家路を目指す。ゾンビ化した人々に襲われながらも、すべてを手持ちカメラで記録するジェイソンだったが…。

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夢のまにまに - 渡まち子

生きる希望を伝えたいという願いが感じられる(70点)

 映画美術の巨匠・木村威夫の初長編映画は、生きる希望を伝えたいという願いが感じられる。映画学校の学院長の木室は、感受性が鋭い学生・村上や老いた妻エミ子との日々の中で、若き日の戦争の記憶を蘇らせていく。過去を振り返るパートは、独特の美術でまるでアートのよう。妻が作る写真のコラージュも印象に残る。戦争で散った命の無念を想い、現代社会になじめず壊れていく若い命に対し「生きてくれ」と切望する主人公は監督の分身だ。繰り返し登場する巨木の瘤(こぶ)は、喪失感と共に確固としてそこにある生の象徴に思える。各界から集った俳優陣が豪華。

秋深き - 渡まち子

“乳離れ”できない甘ったれ男の勝手な妄想(45点)

© 2008「秋深き」製作委員会

 良く言えば大人のメルヘン。悪く言えば“乳離れ”できない甘ったれ男の勝手な妄想だ。生真面目な教師の寺田はホステスの一代と結婚。彼女の過去の男性遍歴に嫉妬を募らせる日々だが、ある日一代が乳がんになってしまう。織田作之助といえば名作「夫婦善哉」。森繁と比べるのは酷だが、甲斐性なしの男の可愛さを出す演技力がない八嶋では、ただのおバカにしか見えない。女も女で“疲れた”から結婚するとはあまりの言葉。つまりこれは、別世界に逃げ込む現代のファンタジーなのだ。悪人が一人もいないことと「アルハンブラの思い出」の調べが柔らかい余韻となってくれる。

天国はまだ遠く - 渡まち子

徳井義実が実に好演(65点)

 死がすぐそばにあるのにまったりした生の空気が流れ、その対比が魅力になっている。生きることに疲れた千鶴は山奥の民宿で自殺を図るが失敗。宿の主人の青年・多村の不思議と癒されるキャラのおかげで本来の明るさとおおらかさを取り戻していく。千鶴が自殺する動機が甘く見えるのは、田村が抱える心の傷が数倍深いから。だが、誰かと一緒に食べる美味しい食事は、そんな傷をもゆっくりと治癒してくれる。微妙な距離感の二人の関係が気になるが、映画は明白な答えは出さず余韻を残す。徳井義実が実に好演で、特にエンドロール後のワンカットの、切ない表情が絶妙だ。

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