カサヴェテス家の末娘が長編監督デビュー。30代独身女性の悩みをリアルに描いている。(65点)
ノラは、NYのホテルで働く30代半ば・独身のキャリア・ウーマン。男性との付き合いで失敗続きのため、運命の出会いをあきらめかけている。そんな時、情熱的な仏人ジュリアンと出会い惹かれるが、素直になれずにいた…。
カサヴェテス家の末娘が長編監督デビュー。30代独身女性の悩みをリアルに描いている。(65点)
ノラは、NYのホテルで働く30代半ば・独身のキャリア・ウーマン。男性との付き合いで失敗続きのため、運命の出会いをあきらめかけている。そんな時、情熱的な仏人ジュリアンと出会い惹かれるが、素直になれずにいた…。
幼稚な男の妄想(45点)
美女二人の間で揺れる異色恋愛映画だが、中身は幼稚な男の妄想で失笑する。ゲリーは仕事や恋人ドーラとの関係に未来を見出せず、無気力状態。そんな彼は、夢の中に登場する美女アンナが忘れられず、常に夢を見る方法を習得しようとする。夢の女が現実に現われ理想と違うと露骨に失望するかと思えば、恋人が別の男と寄り添っていれば嫉妬する。大人になれない中年男のジタバタがリアルだが、倦怠期の男女のもがきと見ると共感できる部分も。味があるのは、夢と人生の指南役ダニー・デビート。理想の美女ペネロペと、生活臭たっぷりのグウィネスの対比が効いていた。
田舎と過去が過剰に美化された演出が目に余る(50点)
いい話だが印象が薄すぎる。住宅販売のトップセールスマンの智宏は、家庭を大切にする暇がない。だが、ある一家との出会いから、おばあちゃんっ子だった昔を思い出す。優しい祖母やいい人ばかりの町の人々。田舎と過去が過剰に美化された演出が目に余る。“ぼく”のキャラは立ってないし“おばあちゃん”はあまりに普通だ。これではホームビデオを見ているようで映画としての訴求力に欠ける。原因は、がばいばあちゃんの個性に匹敵するエピソードを用意できない脚本にある。高年齢主役でギネスに認定された菅井きんさんと、これが遺作となった深浦加奈子さんに敬意を払いたい。
映画らしくないテイストが逆に魅力(50点)
人気ナイトドラマの映画化だが、映画らしくないテイストが逆に魅力になっている。昼間は冴えない窓際族、夜は無敵のヒーローと化す係長・只野仁が、アイドルのシルビアを狙った陰謀に立ち向かう。ユルユルの物語に脈絡の薄いアクション、限りなくギャグに近いお色気シーンと、お約束の展開に喜ぶファンの顔が目に浮かぶ。疑問なのはセクシーな場面で張りきる西川史子センセイの起用。大根演技はやむを得ないが、せめて医者の設定にしてあげるべきでは。深い人間ドラマなど期待しなかったが、赤井英和と只野の会話は、サラリーマンの悲哀と意地が見えてちょっとジンとくる。
災害パニック映画のお手軽感動一丁上り(45点)
元救難隊員、医者の卵、抗血液凝固剤に女・子供を加えて、災害パニック映画のお手軽感動一丁上りだ。元レスキュー隊員の祐司は、数名の男女と共に大地震で陥没した新橋駅の地下に閉じ込められた。必死で壁を叩き、生存者ありの信号“252”を、レスキュー隊隊長の兄・静馬に送り続ける。CGが稚拙なのは仕方ない。だが、救難隊が状況判断より身内の情を優先させる設定はいかがなものか。運命の18分間も緊張感に欠ける演出で、ラストは、見てないで助けろよ!とツッコミを入れる気力も失せる。海でも陸でも救助しまくる伊藤英明の熱演と、252の意味を知ったのが収穫。
独創的なラブ・ストーリーに鋭い現代文明批判を組み合わせた秀作。ロボットのカップルが愛しい。(85点)
29世紀、人類が去って荒廃した地球。ゴミ処理型ロボットのウォーリーは、700年間ひとりぼっちで作業を続けていた。ある日、そこに真っ白な流線型のロボット・イヴが現れる。ひと目で彼女に恋したウォーリーだったが…。
贅沢な音楽ドキュメンタリー(70点)
© 2007 by PARAMOUNT CLASSICS, a Division of PARAMOUNT PICTURES, SHINE A LIGHT, LLC and GRAND ENTERTAINMENT(ROW) LLC. All rights reserved.
ロック界の巨星ローリング・ストーンズのヒット曲の数々をたっぷり味わえる贅沢な音楽ドキュメンタリーだ。NYで行われたシアターライブは小さな会場ならではの臨場感が素晴らしい。過去の記録映像は最小限で、ライブに徹した潔さが作品を引き締めた。メンバーの平均年齢は64歳。だがそのパワーは衰えない。まったく体型が変わらないミック・ジャガーもすごいが、仕草がいちいちサマになるキース・リチャーズの姿にシビれる。ただ、曲名を入れるなどの文字情報はほしかった。スコセッシ監督ならではの一流のカメラワークで捉えられた、やんちゃなじいさんたちがカッコいい!
加害者の意識を問うスタンスがユニーク(75点)
いじめ問題を扱う映画だが、被害者を不在にして加害者の意識を問うスタンスがユニーク。いじめを苦にした生徒が自殺未遂事件を起こしたクラスに、吃音の臨時教師・村内がやってくる。いじめた生徒の存在を忘れることをひきょうだと言う村内は、無人の机に挨拶を続けるが、そのことによって学校に波紋が広がっていく。うわべだけ問題を解決し、やりすごそうとする大人。それを見抜き表面だけ反省する生徒。村内はその両方を許さない。どこからともなくやってきて“世直し”を行い、ふいに去っていく。これは学校を舞台にした「ペイルライダー」だ。阿部寛が少ないセリフで静かに熱演。
勘違い系の世直しムービー(60点)
古田新太の映画初主演作は、ブラックで勘違い系の世直しムービーだ。うだつの上がらないサラリーマン小森は、ひょんなことから社会の悪を退治する快感に目覚めてしまう。彼に賛同する部下が作ったのが小森生活向上クラブで、その活動は次第に暴走してしまう。うつろな毎日をおくる中年男の妄想のような話だが、古田の怪演でヒネリの効いた小品になった。殺人計画をキッチリとマネージメントする栗山千秋、イマドキの新入社員の忍成修吾などマンガチックなキャラがいい。凡人が狂気の殺人者になる展開がシュールだが、結局周囲に流されているところに哀愁がある。
B級テイストはお約束(50点)
興奮必至のカー・アクションで、ヘタな人間ドラマをバッサリ切り捨てた潔さが良い。民間企業が刑務所を運営する近未来。無実の罪をきせられた元レーサーのエイムズは、過酷なデス・レースに出場することに。美しさより実用性を重視した武器搭載の改造車が、ヘビー級にぶつかりあう様は見物。心優しいタフガイが似合うステイサムがハマり役だが、知的な演技派女優アレンのキレッぷりも楽しい。有料で生中継される死のレースには、ミサイル、ナパームと何でもあり。むやみにセクシーなナビゲーターが同乗するなどB級テイストはお約束である。もちろんラストはスカッと爽快だ。
派手なCGを自慢するゲームのよう(40点)
韓国映画界が本気を出したと噂のSFムービーだが、物語があまりにおそまつで脱力する。LAに突如ドラゴンが現れ破壊の限りを尽くす。イーサンは少年の頃に聞いた伝説を思い出し、世界を救う運命の女性・サラを見つけるが、邪悪なモンスター軍団も彼女を狙っていた。ファンタジーと災害パニック映画の合体で、派手なCGを自慢するゲームのよう。悪役のキャラが立ってないのが何よりマイナスだ。ごった煮のような物語は何でもアリの韓国映画のカラーが強烈。巨大ビルに張り付くドラゴンのビジュアルは見ものだが、米国進出の足がかりにするには、ビミョーな出来だ。
おバカ映画に大金を投じるハリウッドの心意気が映画のレベルを上げる。カメオ出演が豪華。(75点)
3人のクセ者俳優が戦争映画で共演。製作者は彼らを東南アジアに連れて行く。だが、予算オーバーをカバーするために放り込まれたそのロケ地は本物の戦闘地帯だった。あくまでゲリラ撮影と思い込み、熱演する彼らだったが…。
映画として何がしたいのか分からない(45点)
いつまでやるつもりだと本気で質問したくなる人気シリーズ第5弾。殺人ゲームの仕掛人ジグソウの本当の後継者の誕生と暗躍を描く、種明かし的な1本だ。お決まりの残酷描写は冒頭から全開状態ですさまじい。“参加者”は、密室で死のゲームを強制される5人の男女、元妻のジル、奇跡的に助かったストラム捜査官など。毎回繰り広げられる凝りまくりの仕掛けは、火責めに水責めと今回も健在だが、もはや映画として何がしたいのか分からないのでは。物語性より残酷描写に比重を置くようでは第1作の衝撃は望めない。物語は続きそうだが今後も劣化は免れないだろう。
可笑しくて哀しくて感動的(65点)
愛すべき老人たちがロックをツールに生の輝きを見せる作品だ。マサチューセッツ州の小さな町にある、平均年齢80歳のコーラス隊“ヤング@ハート”がコンサートに向けて練習を重ねる様子を追う記録映画である。歌詞を忘れ、リズムが取れない。病気や死への恐怖もある。さまざまなトラブルと対峙しながら、それでも“ロックする”彼らの姿が可笑しくて哀しくて感動的だ。身体のふしぶしが痛むのに“I Feel Good”と歌うパフォーマンスにシビれる。歌への愛と仲間の絆こそが彼らの元気のもとなのだろう。劇中のミュージッククリップもなかなか味があって良い。
ロジャーとピートの強い絆が静かな感動をよぶ(55点)
4人のメンバーが2人になってなお、活動を続けている気骨あるロック・バンド「ザ・フー」の軌跡を追った音楽ドキュメンタリー。デビュー当時のいきさつや秘蔵ライブ映像、スティングやオアシスのノエル・ギャラガーなどのインタビューが貴重だ。バンド内のトラブルは、音楽、ドラッグ、ファンの死など大物バンドにはお決まりのものだが、ドラムのキースとベースのジョンの死を乗り越えて活動する、ロジャーとピートの強い絆が静かな感動をよぶ。個人的にはケン・ラッセルの異色音楽映画「トミー」に関してのエピソードをもっと知りたかったので、そこが残念なところ。