ラストの総勢500名の激突が見せ場(55点)
© 2009?橋ヒロシ/「クローズZERO?」製作委員会
喧嘩するから不良なのか、不良だから喧嘩するのか。そんなことはどうでもいいが、けんかバカ一代たちがさらに過激に暴れまくる続編だ。鈴蘭高校に転入した源治は、怪物・芹沢は倒したものの不良たちをまとめきれずにいた。そこに因縁のライバル鳳仙学園が攻勢をかけてくる。“殴る蹴る”の連続で見ていて疲れる上に、妙にベタついた展開が気になった。ラストの総勢500名の激突が見せ場だが、山ほどの敵をぶっちぎって屋上へ向かう展開は、ブルース・リーか?!とツッコミたくなる。イケメン揃いなのに、女の子との恋より男同士の殴り合いに喜びを見出す、一種のM映画。それを硬派と呼んでうっとりするのもいいだろう。ただしこの続編に新味はないが。
またもジョン・ウーの悪い癖が出た。それでも、待ちに待った赤壁の戦いに興奮必至である。(60点)
© 2009, Three Kingdoms, Limited. All rights reserved.
西暦208年。撤退した曹操軍が80万の大軍を率いて逆襲。劉備・孫権の軍は、5万と圧倒的に戦力で劣る上、敵の策略で疫病が蔓延する。戦意を喪失し劉備は撤退、連合軍は分裂してしまう。諸葛孔明だけは周瑜の元に残るのだが…。
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想像力を刺激するサスペンス(60点)
アクション映画のイメージのレニー・ハーリン監督の新たな側面が見える。元刑事のトムは犯罪や事故現場を清掃する特殊な会社の経営者。ある殺人現場の清掃を行うが、それは依頼されたものではなく証拠を消すための罠だった。プロの手で完全に証拠隠滅した現場から、いかに犯罪を立証し新犯人を見つけるかがポイントだが、ヒントは意外な場所にある。主人公の友人で、あたたかい家庭を求める孤独な刑事を演じるエド・ハリスが渋い。特殊な職業“CTS Decon”はアメリカに実在する職業。やはり犯罪大国だと複雑な思いがよぎるが、それを利用した展開は新味がある。血まみれの場面が多いがそこに人間がいない分、想像力を刺激するサスペンスだった。
不条理度は「ファニー・ゲーム」級(60点)
© 2007 Focus Features LLC and Intrepid Pictures LLC. All Rights Reserved
安全なはずの“おうち”で襲われる映画は昔からあるが、この映画の不条理度は「ファニー・ゲーム」級。ジェームズとクリステンのカップルは別荘で一夜を過ごすが、マスクを付けた3人組が屋内に侵入、動機も分からないまま命を狙われる。リブ・タイラーの絶叫は賑やかだが、ホラーによくあるこれみよがしの効果音は少なめで、犠牲者も実は最小限。その分、じわじわと追い詰められる怖さがボディブローのように効いてくる。臆病者の私はビクビクし通しの85分だったが、何の解決もなく不気味さだけを残して去る犯人像は観客には不評だろう。だがすべての不満を“実話に基づく”という言葉が黙らせる。アメリカでは日常は決して平穏ではない。いや、近年の日本もまた。
ドニー・イェンのアクションが見事(55点)
武侠アクションのイメージだが、物語のベースはラブストーリーだ。戦国時代、燕国の王となった王女・燕飛児は、王位を狙う家臣が放った刺客に命を狙われる。彼女を救ったのは、森で隠遁生活を送る元戦士の蘭泉だった。王女の割には行動が軽いのが気になるが、争いを憎み一人の女として生きたいと願うのは、蘭泉との間に愛が生まれ、初めて平穏な日々を知ったからだろう。ヒロインをひそかに愛する将軍を演じる武術の達人ドニー・イェンのアクションが見事で、満身創痍で立ち回るその動きはリアリティを越えて、まるで舞踏を見ているようだ。物語がフィクションだけに重みには欠けるが、ダークな戦闘場面と、森の緑の美しさの対比が効いている。
非常に良く出来た青春映画(70点)
© 2007 Kimmel Distribution, LLC. All Rights Reserved./WISEPOLICY & GOLD RUSH PICTURES
B級臭たっぷりの邦題だが、非常に良く出来た青春映画だ。これだから映画は見てみないと分からない。チャーリーは超お金持ちで成績優秀。彼は転校先の高校で、カウンセリング業を始めたら学園の人気ものになる。学校では人気がすべて。意外な方法でそれを手に入れるが、自分の孤独は癒せない。物語は、恋や友情、親との関係など17歳の少年の等身大の姿を描きつつ、孤独や悩みは大人も子供も同じなのだということまで描いて抜かりがない。彼のトラウマとなった父親の描写が浅いのが残念だが、きっと関係は好転すると思わせるシーンを入れて補ってくれる。映画を引き締めるのが、味のある演技を見せるロバート・ダウニー・Jr.。この小品、掘り出し物だ。
ややアクション寄りの普通の青春映画(60点)
© 2008 SUMMIT ENTERTAINMENT, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
徹頭徹尾女の子目線のラブ・ストーリーだ。内気なベラが恋したのは、謎めた美青年エドワード。なんと彼は現代に生きるヴァンパイアだった。ピンチになればいつも自分を救ってくれるイケメンの彼。この条件なら、10代の少女は、相手が人間以外でもOKである。お話は女の子の妄想炸裂だが、相手がヴァンパイアということを除けば、ややアクション寄りの普通の青春映画。それにしても、同じティーン向け小説でも、不幸の連打で“泣き”を求める大和撫子と違い、アメリカでは、吸血鬼相手に“すべてを奪われたい”とは。やっぱり先祖代々肉食の乙女たちはパワーが違う。微妙な立場の“狼”の存在が気になったが、続編も決定しているので今後の展開が楽しみだ。
金融界のモラルの逸脱をリアルに描く社会派サスペンス。美術館での銃撃戦は手に汗を握る。(70点)
インターポール捜査官のサリンジャーは、国際メガバンクIBBC銀行の違法行為を暴こうとするが、新たな情報を得るたびに証言者や仲間が殺される。自身も危険にさらされながら、NY検事局のエレノアと共に捜査を続けるが…。
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風変わりなドラマ(50点)
中年女性の心の機微を描いたコメディ・タッチのドラマ。39歳のエイプリルは年下の夫から突然別れを告げられ大ショック。実母と名乗る女性が現れたり、新しい恋にとまどう彼女だっが、別れた夫の子供を妊娠していることが発覚する。男2人に女1人というのは実は映画の定番である。だがアラフォー世代のこのヒロインは「突然炎のごとく」激しい恋に走ったりはしない。ギリギリ・セーフの年齢で出産もしたいし、温かな家庭も築きたいというのが切なる願いなのだ。恋愛と母娘のドラマの分量が同じなので、どっちつかずの印象になったのは惜しいが、決してひとつではない家族の形を知ることに、この風変わりなドラマの味がある。オスカー女優ヘレン・ハントの初監督作。
衝撃のラスト(50点)
© nWave Pictures
史上初、全編3D上映を目的に企画・製作された長編アニメは、ハエが主人公。1969年、ハエの子ナットは、アポロ11号にこっそり乗り込み月に行こうと決心する。物語は、小さな生物が知恵と勇気で夢をかなえる定番の展開。無重力状態でハエの子供3匹が、ヨハン・シュトラウスのワルツにのって踊る場面は、幸福感に満ちている。だが、実はこの映画のキモは、エンドマークの後にある。アポロ11号のパイロットだったバズ・オルドリンその人が登場するのだ。いきなり豪華な特別ゲストだが、この英雄飛行士が言うセリフがすごい…というかヒドい。「宇宙ロケットにはハエのような汚染物質はいません」と、なにげなく、かつ露骨な言葉をかましてくれる。85分間にわたるナットの冒険を、汚染物質のひと言で片付ける非情な態度。よい子の皆さんにはキツすぎやしないか。R指定にすべきと本気で思った衝撃のラストであった。
謎解きがこう幼稚でいいものか(50点)
© 2009「鑑識・米沢守の事件簿」パートナーズ
人気脇キャラが主人公のスピンオフだ。警視庁鑑識課員の米沢守は逃げた女房そっくりの女性死体が発見された事件をきっかけに、彼女の元夫の刑事とともに警察内部の腐敗にからむ事件を調べ始める。右近・薫もチラリと登場。天下りというタイムリーなネタを扱うあたりが「相棒」シリーズらしいが、謎解きがこう幼稚でいいものか。特に遺書のトリックなど、これに気付かない警察に「しっかりしてくれ」と言いたくなる。とはいえ、カジュアルな捜査とゆるいムードは妙に心地よい。妻が去るのも納得の、米沢のマニアックな暮らしぶりをたっぷり見せるなど、サービス満点で、ファンは必見だ。
驚愕のビジュアルは一見の価値(80点)
© 2008 PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved. WATCHMEN and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics. Smiley Face Logo: ™ Smileyworld, Ltd.
単純なアメコミ映画とは一線を画す深みがある。ニクソンが長期政権を握っている、現在とは違う世界。その裏側には歴史的事件を見守ってきたヒーロー集団“ウォッチメン”の存在があった。だがヒーローの一人が殺される事件が発生し、ある陰謀が炙り出されることになる。
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決闘に例えられた伝説のTVインタビューは知的心理戦。F・ランジェラのニクソンに思わず唸る。(75点)
© 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED
ウォーターゲート事件で辞任したニクソン元大統領に、英国人のTV司会者フロストが単独インタビューを申し込む。4日間にわたるインタビューは、全米にTV中継され、双方のブレーンを従えた熾烈なトークバトルとなったが…。
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あたたかい物語(60点)
© 2008 TWNTIETH CENTURY FOX
問題児ならぬ問題犬に悪戦苦闘しつつ主人公が成長する、あたたかい物語だ。ラブラドール・レトリバーのマーリーは、家中をメチャメチャに荒らす困った犬だが、いつしかかけがえのない家族になっていく。やんちゃ犬・マーリーを飼うことを子育ての予行練習とすることは、案外奥深い方法だ。なぜなら、マーリーのしつけがうまくいかないことと同様に、子供を“飼いならす”ことなど無理だし、してはいけないことなのだから。なのに、マーリーが育児に与えたであろう影響はほとんど描写されないのが残念。動物好きの私としてはマーリー自身の心情を知りたいところだが、犬を擬人化しないことがこの作品のクレバーなところである。マーリーとの別れの場面は思わず涙した。
魅力に乏しいキャラたちには最後まで感情移入できなかった(45点)
© 2009「フィッシュストーリー」製作委員会
私は伊坂幸太郎原作の映画とはどうにも相性が悪い。それを差し引いても、この映画はいただけない。70年代に活動した売れないパンクバンド“逆鱗”の楽曲「FISH STORY」を軸に、4つの時代の事件がバラバラに描かれ最終的には一つにつながって、2012年の地球滅亡の危機を救うという壮大な物語だ。フィッシュストーリーとはホラ話の意味。そう思うと都合が良すぎる展開もよしとしなければならないが、表層的になぞっただけの魅力に乏しいキャラたちには、最後まで感情移入できなかった。約2時間の映画にするなら、ストーリーをもっと刈り込んで登場人物を整理し、せめてバンドのメンバーの人間描写くらいはしっかりやってほしい。伊坂幸太郎の作品は続々と映画化されるが、この人が作る物語は元来、映像よりも活字向きなのではあるまいか。