お買いもの中毒な私! - 渡まち子

金銭には執着してないところが物語全体を明るくしている(55点)

お買いもの中毒な私!

© Touchstone Pictures and Jerry Bruckheimer, Inc. All Rights Reserved.

 この不景気なご時世に買い物が止められない話とは、さすがは娯楽派ブラッカイマー作品だ。だが買物依存症は立派な病気。少女時代の苦い体験でその原因を説明する導入部が上手い。買物が何より好きなレベッカはカード会社からの支払い催促と請求書の山から逃避する日々を送っていたが、なりゆきでお堅い経済誌の編集者に。匿名で書いたコラムが大人気になってしまう。ヒロインは物欲まみれだが、彼女が好きなのは買物という行為。金銭には執着してないところが物語全体を明るくしている。ただ破産寸前でも買物する主人公は経済事情に通じているはずで、そのあたりのノウハウを盛り込めばコメディとして突き抜けたはず。ご都合主義のハッピーエンドと、日本人にはピンとこないド派手なファッション・センスがご愛嬌だ。

ラスト・ブラッド - 渡まち子

チョン・ジヒョンの大暴れコスプレ大会(45点)

 オリジナルは日本製カルト・アニメ「BLOOD THE LAST VAMPIRE」。人類の未来を背負って戦う少女サヤが、人間界に潜むオニ(バンパイア)と彼らの長である宿敵オニゲンと戦うアクション・ホラーだ。サヤがアメリカン・スクールにセーラー服姿で潜入したり、怪しげな路地でオニの百人斬りを披露したりと、チョン・ジヒョンの大暴れコスプレ大会のよう。だがヒロインの苦悩や世界の危機を救うというモチベーションの描写が薄いので感情移入は難しい。ジヒョン、小雪ともにアクションの迫力はいまひとつ。一瞬静止する場面は美しいが、動いてナンボのアクションでこれでは迫力不足は否めない。しかも二人の関係性は安いSWのようで苦笑。CGが洗練されていて美しいので、話はこのさい忘れてアジアン・ビューティーの姿に酔おう。

路上のソリスト - 渡まち子

人気コラムが原作の実話は音楽を通して綴る友情の物語。モダンな映像感覚に注目したい。(75点)

路上のソリスト

© 2008 DREAMWORKS LLC and UNIVERSAL STUDIOS

 ロサンゼルス・タイムズの記者ロペスは、ある日、路上生活者で天才音楽家のナサニエルと知り合い、彼を素材にコラムを書こうと取材を始める。だが優れたチェリストであるナサニエルは幼少期のつらい過去から心を病んでいた…。

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スター・トレック - 渡まち子

予想を上回る出来の良さ(75点)

スター・トレック

© 2008 Paramount Pictures. Star Trek and Related Marks and Logos are Trademarks of CBS Studio Inc. All Rights Reserved.

 過去のシリーズを知るファンには懐かしく、初めて見る観客には新鮮な驚きを提供する人気SFアドベンチャーは、予想を上回る出来の良さだ。若き日のカークとスポック、クルーたちの出会いを描く本作は、副題こそないが、いわば“ビギニング”。J.J.エイブラムスらしいエネルギッシュな演出で、イキのいい若手俳優たちが宇宙を舞台に大活躍する。無鉄砲な日々を送っていたカークがどさくさに紛れて惑星連邦軍戦艦・USSエンタープライズ号に乗り込み、さまざまなトラブルや冒険を経て成長する青春物語だ。今の時代だからこそ可能な迫力のVFXが魅力的で、宇宙空間の壮大な美しさには思わず興奮する。

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BABY BABY BABY! -ベイビィ ベイビィ ベイビィ- - 渡まち子

未知なる妊婦ワールド(50点)

BABY BABY BABY! -ベイビィ ベイビィ ベイビィ-

© 2009「BABY BABY BABY!」製作委員会

 少子化の憂いも吹っ飛ばすこのコメディは、出産をひたすらポジティブにとらえてみじんも暗さがない。仕事が生きがいの陽子は昇進が決まった矢先に突然の妊娠が発覚。うろたえつつ病院を訪れると、そこは未知なる妊婦ワールドが広がっていた。医師と患者の絆をもう少し描いてほしかったが、満月の夜に産気づくという言い伝えどおりクライマックスはまさに出産バトルで大騒動の共同作業となる。子育て放棄や虐待、産科医不足と、現実ではやるせない話題ばかりだが、ここでは“まずは産もう”という気持ちがすべてのスタート地点。観月ありさと松下由樹の名コンビのかけあいも絶妙だ。幸せオーラと俗に言うが、のほほんとした気持ちこそが新しい命への何よりの栄養なのだろう。彼女たちの子育て奮闘記も見てみたい。

インスタント沼 - 渡まち子

言葉遊びとナンセンス・ギャグが満載でにぎやかな作品(45点)

インスタント沼

© 2009「インスタント沼」フィルムパートナーズ

 三木聡監督得意の言葉遊びとナンセンス・ギャグが満載でにぎやかな作品だ。出版社を辞めたOLハナメは、実の父で変人の“電球”と出会い、思いつきで骨董屋をはじめる。次々に起こる妙な出来事の果てにお宝が眠るという蔵の鍵を手にすることに。ヒロインは迷信や占いなど目に見えないものは信じないタチなのだが、ガラクタにしか見えない骨董の中に実は夢があると気付いたとき“お手製の”沼からビックリするものが現れるという展開はちょっと愉快だ。いい大人と言える年齢のヒロインのテンションの高さには違和感を感じるが、見かけとは裏腹に人のいいパンクロッカーのガスの存在がほっとさせてくれた。この世ならぬモノが見えてしまうのが怖いような羨ましいような、そんな気になる脱力系ヒューマン・コメディである。

チョコレート・ファイター - 渡まち子

奇想天外というよりムチャクチャなストーリー(45点)

チョコレート・ファイター

© 2008 sahamongkolfilm international all rights reserved. designed by pun international

 タイの格闘技ムエタイをベースにしたアクション映画の主役は、新人のジャージャーだ。日本とタイのハーフで、華奢な美少女ゼンは、アクションを観ただけで同じ技を習得できる神技を持つ。自閉症を患う彼女が、重い病の母の治療費のためにタイ人マフィアと対決するという、奇想天外というよりムチャクチャなストーリーが展開し思わず絶句。話はひとまず捨て置いて、見所は4年をかけて特訓したというジャージャーの武術だ。膝や肘を適格に使い、痛みが伝わるような独創的なアクションはすべて本物で、この映画のキャッチが“生傷アクション”というのも頷ける。登場する敵が派手なオカマ軍団から障害者キャラまで、ヤバいほど差別スレスレ。タイには規制などはないのだろうか??エンドロールで流れるメイキング映像は必見だ。

重力ピエロ - 渡まち子

「メチャクチャだよな」のセリフのとおり(45点)

重力ピエロ

© 2009『重力ピエロ』製作委員会

 毎度のことだが私は伊坂幸太郎原作の映画とは相性が悪い。残念ながら今回も同じだ。一見関係のない出来事が最後にピタリと合致するのが伊坂ワールドの特徴で、本作もそれを踏襲し、ミステリーとしての完成度は高い。だが、この作者の魅力と言われる名台詞は、文字で読む分はいいが、声に出した途端に色褪せる。兄・泉水と弟・春は、街で発生する連続放火事件の謎を追うが、その事件は彼らにかかわる哀しい過去へと繋がっていた。

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消されたヘッドライン - 渡まち子

巨大な権力にペンの力で挑むポリティカル・サスペンス。終盤、ひねりすぎるのが惜しい。(70点)

消されたヘッドライン

© 2009 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

 ワシントングローブ紙の敏腕記者カルは、黒人少年の射殺事件と、国会議員コリンズの部下で愛人の女性が突然死した事件に、奇妙な共通点を嗅ぎ取り調べ始める。やがてそこに軍事企業ポイント・コープ社の影が見え始めるが…。

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This is England - 渡まち子

一瞬のエモーションとその後の絶望を描く物語(60点)

 80年代の英国を彩った、サッチャー政権、フォークランド紛争、スキンヘッド・カルチャーなどの事件やアイテムが当時の音楽とともに活写される。なりゆきで不良グループに入ったいじめられっ子のショーンが知る、一瞬のエモーションとその後の絶望を描く物語だ。行き場を失った若者たちは、仲間とツルんだり、流行のファッションに身を包んでも、心の充足は得られない。主人公ショーンの虚しさを表すのが、劇中に二度登場する、朽ちたボートだ。骸骨のようなその舟の中ではたして未来は見えたのか。監督のシェーン・メドウズは、ケン・ローチやマイク・リーの系譜の作家。二人が、主に労働者階級の大人のやるせなさを描くとしたら、メドウズは若者の焦燥感を描写する。そこには未来に希望を持つ力が残っている分だけ軽味があった。

60歳のラブレター - 渡まち子

心の中で「バッキャローッ!!」と叫んだ(40点)

60歳のラブレター

© 2009「60歳のラブレター」フィルムパートナーズ

 60歳を迎えた3組の男女が人生を模索する姿を描くこの映画は、8万通を超える応募が寄せられた手紙をまとめたものが原案。仕事一筋の夫と耐える妻、奥手の独身カップルの恋、突然の病に対峙する魚屋夫婦。エピソードは別々に語られるが、チラリとすれ違う場面を作っている。60歳という年齢をまだ知らない私が言う資格があるか迷うが、あえて言う。不倫を続けた孝平と自立に目覚めたちひろの話だけはどうにも納得できない。この展開は男性側の身勝手な願望にすぎないではないか。現代の妻たちはもっとドライなはず。「すべてを捨ててきたんだ」との夫の言葉とその後の妻の態度に、私は心の中で「バッキャローッ!!」と叫んだ。きたない言葉でスミマセン。他の2つのエピソードが、心あたたまるものだったのが救いだ。

鈍獣 - 渡まち子

激しく好みが分かれるだろう(50点)

鈍獣

© 2009『鈍獣』製作委員会

 クドカンらしい奇想天外なファンタジック・ミステリーだ。失踪した作家凸川(でこがわ)を探して編集者の静が彼の故郷を訪ねるが、そこでは凸川の同級生たちがまったく要領の得ない話をするばかり。常識が通用しないその田舎町で起こった悲喜劇とは? 殺しても殺しても死なない“でこやん”を不思議な明るさで演じる浅野忠信が面白い。とりあえずテーマは友情だが、そこには互いを傷つける毒も含まれる。元が舞台だけあってテンションの高さはハンパではなく、奇妙な登場人物や極彩色の画面構成は、激しく好みが分かれるだろう。個人的には共感できる部分はほとんどなかったのだが「人間は鈍い獣だ」とのセリフはなかなか深い。冒頭で流れるラテン系サウンドが、ブラックホールのような町のダークな笑いの空気を象徴している。

セブンティーン・アゲイン - 渡まち子

テイストは軽いが真面目なメッセージが込められている(65点)

セブンティーン・アゲイン

© 2009 NEW LINE PRODUCTIONS

 “入れかわりもの”映画の変形のファンタジック・コメディは、テイストは軽いが真面目なメッセージが込められている。バスケ部のエースのマイクは将来有望な高校生だったが、恋人の妊娠で人生プランが激変。20年後の今では結婚も仕事も破綻して負け犬状態だ。そんなとき不思議な現象で突然17歳に戻ってしまい、人生をやり直そうと奮闘する。自分だけが過去に戻るという、タイムスリップとも少し違う設定が面白いが、17歳に戻る仕掛けが安易すぎる。だが、人生の絶頂期に戻って本当に大切なものに気付くプロットは悪くない。映画は、つまらない生活を人のせいにせず、自分自身で努力して前向きに生きようとする気持ちが大切と説く。ザック・エフロンにはさしたる意味もないダンスが用意され、ファンサービスもバッチリだ。

ブッシュ - 渡まち子

こんなにも凡庸なアプローチでいいのか(30点)

ブッシュ

© 2008 Prescott Productions, LLC All Rights Reserved

 ストーン監督の社会批判精神はいったいどこへ?歴代最低支持率の大統領の映画がこんなにも凡庸なアプローチでいいのか。名門に生まれたジョージ・W・ブッシュは、偉大な父へのコンプレックスからアルコール依存症になり、信仰で覚醒した、いたって“フツーの人”でしたというお話だ。そんな物語の主人公なら、大儀なきイラク戦争や金融危機を招き、災害復興でさえモタつく世界一の大国のリーダーでなくてもいい。戯画化された側近の描写は笑えたが、石油確保の悪だくみなど、もはや周知の事実だ。存命の元大統領を描くならもう少し斬新な視点が必要で、準備不足で作るにはあまりに不適切な題材だった。ただ、ブッシュ家の柱だった強母バーバラの存在は興味深い。特殊メイクで本人に似せたジョシュ・ブローリンは好演。

天使と悪魔 - 渡まち子

前作以上の謎とスピード感で描く歴史犯罪ミステリー。駆け足の謎解きを重厚な背景がサポートする。(65点)

天使と悪魔

 宗教象徴学の権威、ロバート・ラングドン教授は、秘密結社イルミナティが復活したことを知り、教皇が急死したヴァチカンへと向かう。次期教皇候補の暗殺を阻止するべく、ガリレオの暗号コードの解明に挑むが…。

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