クロッシング - 渡まち子

クロッシング

© 2008 Big House / Vantage Holdings. All Rights Reserved.

◆あくまでも主人公とその家族の思いに視点を置いて描くことで、彼らの運命が結果として北朝鮮の実態を強く浮き彫りにする(70点)

 脱北のリアルな実態を描いて、悲痛な感動を呼ぶ秀作だ。北朝鮮の小さな村で家族と幸せに暮らすヨンスは、病弱な妻のため薬を手に入れようと、命懸けで国境を越えて中国に出稼ぎに行く。懸命に働くが、不法労働と脱北の罪が重なり、不本意な状況で韓国に亡命することに。だが、その間に妻は亡くなってしまう。孤児になった11歳の息子ジュニは、父を探してあてのない旅に出るが、国境の川で捕まり強制収容所に入れられてしまう…。

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オーケストラ! - 渡まち子

オーケストラ!

© 2009 - Les Productions du Trésor

◆アンドレイがなぜフランスの売れっ子女性バイオリニストと共演したがるのか。歴史の悲劇であるその理由が、クライマックスの演奏会と共に語られる場面がすばらしく感動的だ(70点)

 落ちぶれた元楽団員のリベンジの物語は、笑いと涙の感動作だ。かつて一流オーケストラ・ボリショイ交響楽団の天才指揮者だったアンドレイは、ある事件が原因でキャリアの絶頂期に職を追われ、今はやむなく清掃員として劇場で働いていた。ある日、出演できなくなったオーケストラの代わりを探しているというFAXを入手。アンドレイは、かつての仲間たちを集めてニセの楽団を結成し、生涯の夢だったパリ公演を実現するという無謀な計画を思いつく。ソリストとして指名したのは、パリ在住のヴァイオリニストのアンヌ・マリーだ。アンドレイには、再び音楽で輝きたいという望みとは別に、ある思惑があったのだが…。

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17歳の肖像 - 渡まち子

17歳の肖像

◆原題は「教育」というのだが、ヒロインがひとつの恋を通して、人生を学んでいくストーリーはまさしく体験学習(70点)

 17歳の少女の危うさと、痛みを乗り越えるしなやかさがまぶしい英国映画の佳作。1961年、ロンドン郊外で暮らす成績優秀なジェニーは、両親の期待を背負って名門オックスフォード大学を目指していた。平凡で退屈な彼女の毎日を一変させたのが、偶然出会った年上の男性デイヴィッド。彼が教えてくれたのは、音楽会や旅行、ギャンブルなどの新鮮で刺激的な世界だった。上流階級の友人にも紹介されて大人の世界へと足を踏み入れるジェニーだったが、彼女はまだデイヴィッドの重大な秘密を知らなかった…。

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アリス・イン・ワンダーランド - 渡まち子

◆鬼才ティム・バートンにしてはあまりに凡作。それでもこってりと濃厚な映像美は楽しめる。(60点)

 19歳のアリスは退屈な園遊会を抜け出し白うさぎの後を追って穴に落ちる。そこは不思議なアンダーランドで、住民たちは皆アリスのことを知っていた。アリスこそ残忍な赤の女王の支配に終止符を打つ伝説の戦士だと言うのだが…。

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海の金魚 - 渡まち子

海の金魚

© 2010「海の金魚」製作委員会

◆どうしてこうなるの?? との疑問ばかりが沸きあがる(35点)

 雑賀俊郎監督による鹿児島3部作の第2弾の青春映画は、ヨットレースに挑戦する少女たちの奮闘を描くが、魅力に乏しい物語だ。前作「チェスト!」は小学生が遠泳にトライする姿を、さわやか、かつコミカルに描いた好編だっただけに、今回の出来栄えは残念である。高校生のミオは小説家の父親が海で行方不明になって以来、港に停泊する父のヨットに引きこもっていた。一方、ヨットの天才少女キヨミは、練習中に親友を失ったつらい過去を持つ。共に海での悲しい出来事を体験した二人の少女が出会い、友情を育んでいくのだが…。

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獄(ひとや)に咲く花 - 渡まち子

獄(ひとや)に咲く花

© 2010『獄に咲く花』製作委員会

◆幕府の目を盗んで密航しようとしたほどの松陰にならって、もう少し映画にも冒険心がほしかった(50点)

 吉田松陰の生誕180年を記念して作られた歴史ドラマ。1854年、幕末期。寅次郎(松陰)は海外密航に失敗し、長州・萩の武家専用牢屋敷の野山獄に投獄される。その獄は、一度入れられたら二度と生きては外には出られない絶望的な場所だった。そんな場所にも係わらず、他の囚人たちに気さくに声をかけ希望を持つように説き、短歌の会などを主催する寅次郎。獄のただ一人の女囚の高須久は、そんな寅次郎に惹かれていくが、安政の大獄と呼ばれる粛清の時代が迫っていた…。

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ダーリンは外国人 - 渡まち子

ダーリンは外国人

© 2010「ダーリンは外国人」フィルムパートナーズ

◆“ド肝を抜かれる”ほどの目新しさはないものの、「みんな違って当然」という当たり前のことを教えてくれるあたたかい物語(50点)

 国際結婚(カップル)に苦労はつきもの。“外国人なダーリン”を持った女性の日常をユーモラスに描くストーリーだが、恋愛の悩みは普遍的なので共感できる。語学オタクの米国人トニーと漫画家を夢見るイラストレーターのさおりは、ひょんなことから付き合いはじめ、同棲するようになる。トニーの外国人目線の素朴な疑問や思わぬ言動に笑ったり悩んだりするさおり。二人はやがて真剣に結婚を考えるようになるが、さおりの父親の反対や、日常生活の摩擦から心がすれ違い始める…。

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ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い - 渡まち子

ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い

© 2009: Edelweiss Production (Italia), Intervenciones Novo Film 2006, AIE e Radio Plus (Spagna)

◆透下光の一種トランスライトの演出が、現実と物語の二つの異なった場面を同時に見せて、素晴らしい(70点)

 天才音楽家モーツァルトのオペラの台本を書いた劇作家ロレンツォ・ダ・ポンテを主人公に、オペラ「ドン・ジョヴァンニ」誕生秘話を描く華麗な歴史劇だ。1763年・ベネチア。ユダヤ教からキリスト教へと改宗し、神父になったロレンツォは、放蕩生活のためベネチアから追放される。劇作家としてすでに名声を得ていたロレンツォは、友人のカサノヴァの紹介状を持って自由な気風の大都市ウィーンにやってくるが、そこで新進気鋭の音楽家モーツァルトと出会う…。

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月に囚われた男 - 渡まち子

月に囚われた男

◆歯切れのいいセリフの応酬から浮かび上がるお互いの主張の矛盾、暴かれていく秘密と嘘。過去が煮詰まっていく過程で、己をさらけ出す開放感が登場人物の心を浄化していく様子は、空が晴れわたるようなさわやかさをもたらす。(60点)

 ひらめきを感じる映画で、最小限の素材で最大の効果を上げることに成功している。近未来。サムは、地球で必要なエネルギー源を採掘するために、たった一人で月の基地に滞在している。地球との直接通信はできず、話し相手は人工知能を持ったコンピューターのガーティだけという孤独な任務だ。会社からの契約期間は3年で、あと2週間で任務を終えて家族が待つ地球に帰ろうという時、頭痛や体調不良に襲われ、ついに基地の外で作業中に事故に遭ってしまう。なぜか基地の中の診療室で目覚めるサム。さらに、自分とガーティしかいないはずの基地内で自分そっくりの男に遭遇し驚愕する。これは幻覚なのか?

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第9地区 - 渡まち子

第9地区

© 2009 District 9 Ltd All Rights Reserved.

◆社会性と娯楽性をブレンドした斬新なSF。ジャンルの垣根を越えた展開は先読みできない面白さだ。(80点)

 南アフリカ共和国のヨハネスブルグ上空に、突如巨大な宇宙船が現われる。船内には難民と化した無数のエイリアンがいた。困った南ア政府は、第9地区に彼らを強制移住させるが、そこはやがてスラム化する。ヴィカスは、エイリアンに立ち退きを迫る現場責任者として、政府から地区に派遣されるが…。

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ミュータント・クロニクルズ - 渡まち子

ミュータント・クロニクルズ

© 2008 CAMPFAME LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.

◆28世紀だというのに、4つの企業が繰り広げる戦いは何とも古風で、まるで第一次世界大戦のような趣(30点)

 スウェーデンのゲームシリーズの映画化である本作は、最終戦争を描いたB級SFアクションだ。はるか昔に宇宙からやってきた“マシーン”は、人間を凶暴なミュータント(突然変異体)に変える力を持っていたが、人間の決死の判断で地中深く封印される。そして28世紀の地球。わずかに残された天然資源を巡って、世界を支配する4つの巨大企業が壮絶な戦いを繰り広げる中、マシーンの封印が解かれ、瞬く間に地球全体を恐怖で覆いつくした。人間は滅亡する運命なのか。勇者の末裔である僧侶サミュエルは、世界中から精鋭を募り、マシーンとの対決を決意するが…。

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昆虫探偵 ヨシダヨシミ - 渡まち子

昆虫探偵 ヨシダヨシミ

© 青空大地(講談社刊「モーニングKC」)/昆虫探偵製作委員会

◆冒頭からカブトムシの濃厚な交尾シーンにのけぞった(50点)

 脱力系昆虫サスペンスで、無類の昆虫好きという哀川翔のとぼけた演技が笑いを誘う。謎の大爆発で壊滅した新宿。ヨシダヨシミは、なぜか虫たちと会話できるため、都内で唯一の昆虫専門探偵として活躍していた。助手は犬のムギとインコのピータン。日々、虫の浮気調査や行方不明の虫探しの捜査を行っているヨシミの探偵事務所に、マリという女性が捜査の依頼にやってくる。マリの正体は刑事で、彼女いわく、ヨシミは新宿爆発事件で失踪した自分の恋人の野獣デカ・田中だというのだが…。

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誘拐ラプソディー - 渡まち子

誘拐ラプソディー

© 2010「誘拐ラプソディー」製作委員会

◆ロード・ムービーというほどの開放感はないのだが、秀吉と伝助の擬似親子の関係性には好感が持てる(55点)

 追いつ追われつのクライム・エンタメ・ムービーは、さえない中年男と少年の絆がジンとくる。借金にまみれ、人生にくたびれた前科者の伊達秀吉。自殺さえも失敗してしまうダメ男の前に、偶然、金持ちの子供で家出中の伝助が現われる。家出を手伝うと6歳の伝助を丸め込み、誘拐して身代金をせしめようと企むが、伝助は、暴力団・篠原組の組長の一人息子だった。ヤクザと警察の両方から追われるハメになった秀吉は、大ピンチに陥るが…。

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ソラニン - 渡まち子

ソラニン

© 2010 浅野いにお・小学館/「ソラニン」製作委員会/写真:太田好治

◆どこにでもいるような20代の恋人と仲間たちの日常と心情がリアル(65点)

 都会の片隅で寄り添うように生きるカップルの存在証明を、素晴らしい歌が具現化するリリカルな青春物語だ。アジカンの曲と宮崎あおいの熱唱が忘れがたい。OL2年目の芽衣子は自由を求めて会社を辞める。一方、同棲中の芽衣子の恋人で、フリーターの種田は音楽の夢をあきらめきれずにいた。「ソラニン」という曲を書き上げた種田は、仲間たちと一緒にレコード会社に持ち込み、手応えは感じるものの、アイドル歌手のバックバンドにならないかと誘われ、やりきれない思いを抱く。そんなある日、種田はバイク事故に遭ってしまう…。

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半分の月がのぼる空 - 渡まち子

半分の月がのぼる空

© 2010 映画「半分の月がのぼる空」製作委員会

◆ベストセラー小説の映画化である本作は、いわゆる難病もの。またか…と思っていたら後半に意外な仕掛けがあって驚いた(65点)

 ドラマやアニメで人気のベストセラー小説の映画化である本作は、いわゆる難病もの。またか…と思っていたら後半に意外な仕掛けがあって驚いた。そのことにより青春恋愛映画から、長い年月を懸命に生きた人間ドラマにシフトする。平凡な高校生の裕一は退屈な入院生活を送る病院で、心臓病を患う少女・里香と出会う。最初は里香のわがままに振り回されるが、次第に彼女に惹かれていく裕一。9歳の頃から病院で暮らし、「銀河鉄道の夜」を愛読する孤独な里香もまた、外の世界を見せてくれる裕一に好意を持つ。一方、病院の医師の夏目は、医者でありながら最愛の妻を救えなかった過去に縛られていた…。

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