Life 天国で君に逢えたら - 福本次郎

◆抜けるような青空とエメラルドグリーンの海、風をセイルいっぱいに受け波を滑っていく。ウインドサーフィンにとりつかれた主人公スリルとスピードを体感させてくれるのかと期待したが、映画は凡庸な闘病記がメインになっている。(40点)

 抜けるような青空とエメラルドグリーンの海、風をセイルいっぱいに受け波を滑っていく。ウインドサーフィンにとりつかれた主人公が、妻とふたり世界中をドサ周りをしながら夢を追っていく過程で、そのスリルとスピードを体感させてくれるのかと期待したが、むしろ病魔に冒された後の闘病記がメインになってしまっている。なぜもっとウインドサーフィンの陶酔感を語ろうとしないのだろう。レースシーンにも工夫がないし、カメラワークは凡庸。波に乗り風を受ける者だけが得るエクスタシーを描いて欲しかった。

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阿波DANCE - 福本次郎

◆阿波踊りとヒップホップ、主人公の2人がまったく違うタイプの踊りで直接対決するという、ばかばかしくて誰も手をつけなかったようなシチュエーションにあえて挑み大いに笑いを誘うが、後半はパワーも完成度も落ち弛んでしまう。(40点)

 阿波踊りとヒップホップ、主人公の2人がまったく違うタイプの踊りで直接対決するという、ばかばかしくて誰も手をつけなかったようなシチュエーションにあえて挑み、大いに笑いを誘う。二つの踊りはいつしか共鳴しあい、新たなダンスへと進化する。ローカル文化と最新流行の融合、高校生たちは最後の夏を完全燃焼しようとそこに未来への飛躍の可能性を見出そうとするが、伝統という壁に阻まれる。同時に若さあふれる溌剌とした勢いに輝いていたこの映画も、後半はパワーも完成度も落ち弛んだ内容になってしまう。

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オフサイド・ガールズ - 福本次郎

◆女であるというだけでサッカー観戦ができない、そんな理不尽な決まりを破りなんとか競技場にもぐりこもうとする若い女性たち。女性の人権を制限することがいかに無意味かを肩の力を抜いて訴えているところに好感を持てた。(70点)

 女であるというだけでサッカー観戦ができない、そんな理不尽な決まりを破りなんとか競技場にもぐりこもうとする若い女性たち。ただW杯予選が見たい、その思いだけが彼女たちを走らせるのだが、ボディチェックは厳しく現実は甘くない。そんな彼女たちと、彼女たちを逮捕した兵士たちとの会話だけで、サッカーがいかにイラン人を熱狂させるかを丁寧に描いている。そしてこれだけ自由に情報がやり取りされる時代に、女性の人権を制限することがいかに無意味かを肩の力を抜いて訴えているところに好感を持てた。

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ラッシュアワー3 - 福本次郎

◆お調子者の警官はパリに舞台を移してもその態度は改まらず、むしろ典型的な米国人としてフランス人から嫌われる役。もし世界中で嫌われているブッシュ流帝国主義の象徴、顰蹙の対象として描いているのなら、それは成功だ。(40点)

 お調子者の黒人警官を演じるクリス・タッカーの早口と傲慢さはもはや見飽きた。パリに舞台を移してもその態度は改まらず、むしろ典型的な米国人としてフランス人から嫌われる役。そのキャラが、もし世界中で嫌われているブッシュ流帝国主義の象徴、顰蹙の対象として描いているのなら、その試みは成功している。何でも自分のやり方がいちばんと、迷惑を顧みずに相手の領域に土足で踏み込むという自己流を貫くが、その結果には責任を持たない。それでいて反省も謝罪もナシ。この映画の客層の米国人がその皮肉に気付くかは疑問だが。

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シッコ - 福本次郎

◆医療すら営利目的となってしまった米国では、金持ちしかまともな治療は受けられず、保険会社と病院、製薬会社ばかりが儲かる仕組み。国民の健康をないがしろにした制度の現場を取材し、他国との比較で問題点を浮き彫りにする。(70点)

 大ケガをしても手術をしてもらええず、病気になっても入院させてもらえない。おまけに治療費を払えない患者は公立の医療施設に捨てる。。。医療行為すら営利目的となってしまった米国の現実。結果として金持ちしかまともな治療は受けられず、保険会社と経営効率ばかりを考える病院、そして製薬会社ばかりが儲かる仕組みになってしまう。世界一の経済大国とは思えないような国民の健康をないがしろにした制度、その現場を取材し、他国との比較で問題点を浮き彫りにする。ただ今回はムーア得意の「アポなし取材」がなく物足りない。保険会社や製薬会社のCEOや、彼らが支持基盤の政治家などを直撃してほしかった。

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TAXi(4) - 福本次郎

◆バリバリにチューンアップしたプジョーで300キロ以上のスピードで疾走するテクニックは健在。舞台をマルセイユに戻し、スリルあふれる超絶カーチェイスを見せるのかと思いきや、センスのかみ合わないコメディになっている。(30点)

 バリバリにチューンアップしたプジョーで公道を300キロ以上のスピードで疾走する。他の車を巧みに追い越し、狭い裏道を縫うように走る主人公のテクニックは健在。舞台をこの作品の原点・マルセイユに戻し、スリルあふれる超絶カーチェイスを見せてくれるのかと思いきや、この新作はセンスのかみ合わないコメディになっている。登場人物、特に刑事たちの間抜けぶりを強調することで権力に対する風刺を描きたかったのかもしてないが、あらゆるおふざけがわざとらしく、到底笑えない。フランス人にはこれが面白いのだろうか。

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厨房で逢いましょう - 福本次郎

◆料理だけを愛し、あらゆるものを犠牲にしてきたシェフ。醜いまでに太った容姿の上、自分の気持ちを言葉や表情で表現することができず、女性には無縁。そんなもてない中年男の恋愛に対する臆病な距離感が非常に繊細に描かれる。(60点)

 調理する前の素材に語りかけ、慈しむように火にかける。心から料理だけを愛し、あらゆるものを犠牲にしてきたシェフ。鮮やかなコントラストで白い皿の上に浮かび上がる料理の数々は、視覚へのこだわりを感じさせ、目で味わう幸せを感じさせてくれるだけでなく、舌をとろけさせ、官能に導く。しかし料理人としての才能とは裏腹に、醜いまでに太った容姿の上に、自分の気持ちを言葉や表情で表現することができず、女性には無縁。そんな男が初めて体験する恋の喜びと苦悩がリアルで、もてない中年男の恋愛に対する臆病な距離感が非常に繊細に描かれる。

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長江哀歌(エレジー) - 福本次郎

◆登場人物が失った愛を取り戻そうとする過程で、過去には戻るには遅すぎることを知り、新たな未来に踏み出してく。しかしその語り口は恐ろしく緩慢で、時間の尺度が一桁違うかのよう。この程度のエピソードはアイデア不足だ。(50点)

 悠久の昔から水を湛える大河と、開発によって失われていく景観。人間の心もまた変わらぬ部分と変わる部分を併せ持ち、あるものは不在時間の長さゆえに、あるものは空間的な距離ゆえに気持ちが移る。2人の登場人物が失った愛を取り戻そうとする過程で、もはや過去には戻るには遅すぎることを知り、新たな未来に踏み出してく。しかし、その語り口は恐ろしく緩慢で、人生における時間の尺度が一桁違うかのよう。物語を詰め込む必要はないが、2時間弱の映画でこの程度のエピソードしか描かないのはアイデア不足だ。環境映像ではないのだから、もう少し内容を煮詰めるべきだろう。

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デス・プルーフ in グラインドハウス - 福本次郎

◆カーチェイスの原点に戻り、スタントの神髄を見せる変幻自在のカメラワークは臨場感たっぷり。スタントマンが命を張って見せるスピードとスリルを、より大いなる衝撃をもった新たな表現の可能性を追求する映像で観客を圧倒する。(80点)

 大排気量の自動車同士がフルスロットルでボディをぶつけ合い、パワーを競い合う。カーチェイスの原点に戻り、スタントの神髄を見せることにこだわった変幻自在のカメラワークは臨場感たっぷりだ。狂気に駆られて追うものとハンディを背負って追われるもの、緊迫したつばぜり合いは一瞬も目が離せない。映画は、CGがなかった時代の、スタントマンが命を張ったスピードとスリルを完全に再現する。いや、より大いなる衝撃をもって新たな表現の可能性を追求し、圧倒的に凌駕している。そこではタランティーノの映画への愛が見事に娯楽として昇華している。

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プラネット・テラー in グラインドハウス - 福本次郎

◆義足代わりのマシンガンを華麗な身のこなしで操り、ぶっ放すというアイデアを映像で見せたかったのだろう。そこにゾンビを登場させようという短絡的な内容は、大量の火薬で破壊しまくるだけの大味な出来栄えになってしまった。(30点)

 右足を失ったヒロインが、義足代わりのマシンガンを華麗な身のこなしで操り、ぶっ放す。要するにそのアイデアを映像で見せたかったのだろう。大量の銃弾を撃つわけだから大量の標的が必要。ならば、どんどん殺していったほうがよいゾンビを登場させようという短絡的な内容は、大量の火薬で破壊しまくるだけの大味な出来栄えになってしまった。ダニー・トレホが「ハメられた殺し屋」を演じた、本編とは関係のないプロローグのほうがよほど面白かった。

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ベクシル ?2077日本鎖国? - 福本次郎

◆ロボット同士がぶつかり破壊しあう金属の重量感にこだわった圧倒的なサウンドとヴィジュアル。CGだからなしえたメタリックな質感はデジタルの特性を極限にまで引き出し、リアルを超えた未来社会をディテールまで描きこむ。(50点)

 ロボット同士がぶつかり破壊しあう金属の重量感にこだわった圧倒的なサウンドとヴィジュアル。CGだからこそなしえたメタリックな質感はデジタルの特性を極限にまで引き出し、リアルを超えた未来社会をディテールまで描きこむ。しかし、そこに現れるロボットやアンドロイドはハリウッド映画の焼き直しの域を出ておらず、せっかくの表現技術をデザイン力不足ゆえに生かしきれていない。特に東京の街並みは東南アジアのマーケットのよう。活気にあふれてはいるが未来社会という感慨はない。

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遠くの空に消えた - 福本次郎

◆ファンタジーとしては作りこみが甘く、コメディとしてはセンスが悪い。冗漫なエピソードの連続に2時間半近い長尺を最後まで見るには相当な忍耐と努力が要求される。遠くの空に消えなくても、映画館からはすぐに消えるだろう。(20点)

 開発の波が押し寄せる田舎の村、推進派と反対派が分裂する大人たちを尻目に子供たちだけで生まれ育った環境、すなわち未来をを守ろうとして立ち上がるいう趣旨は理解できる。しかし、ファンタジーとしては作りこみが甘く、コメディとしてはセンスが悪く、登場人物が多岐に渡る上に人物像がまったく描かれていない。冗漫でアホくさいエピソードの連続は退屈以外のなにものでもなく、2時間半近い長尺を最後まで見るには相当な忍耐と努力が要求される。まあこの作品、遠くの空に消えなくても、映画館からはすぐに消えるだろう。

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キャプテン - 福本次郎

◆ボールを怖がり、バットをまともに振れないほどの野球センスのない少年が、猛練習でみるみる上達していく。その一方で、素人同然だった主人公役の少年の演技が、物語が進行するにつれて野球同様に上達していく様子が楽しい。(50点)

 ボールを怖がり、バットをまともに振れない。そんな、信じられないほど野球センスのなかった少年が、猛練習でみるみるうちに上達していく。いくら伸び盛りの中学生とはいえ、リアリティを無視した練習シーンには引いてしまう。その一方で、最初は俳優として素人同然だった主人公役の少年の演技が、物語が進行するにつれて野球同様に上達していく様子を見るのが楽しい。その他にも演技経験のないような元女子アナを起用したりと、俳優の演技レベルが非常にばらつきがあり、過剰な演技と不足気味の演技が混在するという、そのちぐはぐ感が逆に映画に手作り風の味わいを与えている。

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恋するマドリ - 福本次郎

◆突然の失踪、突然の引越し・・・。素敵なことはいつも突然の出来事の後に偶然やってくる。ヒロインが引越しで新たな生活を始め、ゼロから人間関係を作り上げていく過程は楽しめるが、その偶然性があまりにも作為に満ちてる。(40点)

 突然の妊娠、突然の失踪、突然の引越し・・・。素敵なことはいつも突然の出来事の後に偶然やってくる。ヒロインが引越しによって新たな生活を始め、ゼロから人間関係を作り上げていく過程は楽しめるが、その偶然性があまりにも作為に満ちていてうそ臭い。ご近所づきあいなどというものが絶えて久しい東京、それでもちょっとしたきっかけで友人はできるということを映画は描こうとしているのは分かるが、少し現実離れしていていかにも脚本家の頭の中だけで考えたような設定だ。

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呪怨 パンデミック - 福本次郎

◆骨ばった肩をくゆらせて接近し、目でにらみ髪を絡ませ指で触れる。伽耶子を演じる藤貴子の動きがより洗練され骸骨が踊るような不気味さだ。しかし、米国で公開させるために無理やり作った英語の設定が足を引っ張っている。(50点)

 廊下の奥の闇、ロッカーの陰、布団の中、スエットシャツのフード。さらに今回は白昼堂々と公衆電話ボックスの中にまで現れる。神出鬼没の伽耶子は自分の霊が眠る廃屋に足を踏み入れたものを決して許さず、異界へと引きずり込む。このシリーズも4作目、首の骨を鳴らすように登場する伽耶子は、その恐ろしさよりも、どこからどういうタイミングで現れるかがひとつの楽しみとなっている。特に写真の現像液の中から頭半分だけ出すシーンは、あまりにも滑稽で笑ってしまった。

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