僕がいない場所 - 福本次郎

◆親に見捨てられ、周囲とも折り合いがつけられない少年は、他者との交流を拒みひとりで生きることを選ぶ。しかし寒そうな晩秋、野宿したり毛布や暖や食料もほとんどない状態では、強い意志であっても生き抜けるとは思えない。(40点)

 親に見捨てられ、周囲とも折り合いがつけられない少年は、他者との交流を拒むゆえにひとりで生きることを選ぶ。孤独こそが友人、世間とのかかわりは生きていくために必要なものを手に入れるときに限る。ここに描かれているのは大人たちの恐るべき無関心。確かに大人には浮浪児の面倒を見る余裕などないかもしれない。だからこそ彼は大人に伍して生きていく知恵と力をつけていく。しかし、寒そうな晩秋、林で野宿したり毛布や暖もなく食料もほとんどない状態では、いかに強い意志を持った子供でも生き抜けるとは思えない。

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大統領暗殺 - 福本次郎

◆まるで精緻に構成されたドキュメンタリーのような臨場感と緊迫感で、ブッシュ大統領暗殺事件とその後の米国が警察国家に変貌する様子を克明に描く。しかし、存命中の大統領や実在の人物を登場させるのは悪趣味で後味が悪い。(30点)

 関係者の証言、テレビのニュース番組、監視カメラの映像、そしてハンディカメラによる街頭でのデモ隊と警官隊の衝突。まるで精緻に構成されたドキュメンタリーのような臨場感と緊迫感で、ブッシュ大統領暗殺事件とその後の米国が警察国家に変貌する様子を克明に描く。テロ予防という名目で成立した「愛国者法」の下、FBIが国民を監視し、徐々に自由と人権が制限されていく。映画はネオコンに主導された国の行く末を描き、共和党支持者に警鐘を鳴らす。しかし、存命中の現役大統領や実在の人物を登場させるのは悪趣味で後味が悪い。

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キングダム/見えざる敵 - 福本次郎

◆テロリストを絶対悪と定義するFBI捜査官と、米国を悪魔の帝国と名指しするテロリスト。憎しみの連鎖は更なる犠牲者を生み、殺戮は復讐の糧になる。しかし、他国の主権を踏みにじり捜査を強行する主人公には嫌悪感を覚える。(40点)

 テロリストを絶対悪と定義するFBI捜査官と、米国を悪魔の帝国と名指しするテロリスト。憎しみの連鎖は更なる犠牲者を生み、殺戮は新たな復讐の糧になる。しかし、その過程で強引に他国の主権を踏みにじり捜査を強行するFBI捜査官には嫌悪感を覚える。親友が自爆テロの犠牲になったからといって国際法を無視して外国に乗り込み、現地警官を部下のようにこき使う。捜査法においていかに優秀でも、そのやり方が同盟国からも反感を買うことがどうして分からないのだろうか。あえてその傲慢さを描くことで米国流への反発を煽ろうとしているのなら、その試みは成功している。

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カタコンベ - 福本次郎

◆手持ちカメラの微妙なぶれでヒロインの不安と混沌を表現し、不気味な音楽と大げさな効果音で驚かせる手法に加え、MTV感覚の短いカットと映像にビートの利いたサウンドを重ねるという、ホラーとヒップホップの融合を試みる。(50点)

 うずたかく積み上げられた人骨のトンネル。壁には頭蓋骨が埋め込まれ、闖入者を暗黒の穴と化した眼窩で見つめる。パリの地中に人知れず張り巡らされた地下墳墓、通路そのものが冥界となっている迷路で、ヒロインは追われただひたすら逃げ回る。映画は、フラッシュライトや手持ちカメラの微妙なぶれで彼女の不安と混沌を表現し、不気味な音楽と大げさな効果音で驚かせる手法に加え、MTV感覚の短いカットとビートの利いたサウンドを重ねるという、ホラーとヒップホップの融合を試みる。

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北極のナヌー - 福本次郎

◆2組の母子は、成果主義の民間企業で働くシングルマザーと、手厚い労働組合に守られた公務員のよう。シロクマは子供のときから競争社会でのサバイバル術を教え込まれ、セイウチは母子が向き合って抱き合い助け合いの精神を学ぶ。(50点)

 雪と氷に閉ざされた世界で授かった小さな命。母親に大切に育てられ、成長し、やがて自分で生き抜く術を教えられて自立する。そして彼らが母親になり、今度は命を授け育む立場になるまでをカメラは追う。その間、彼らが祖先から連綿と受け継いできた生活環境が激変し、はるか海を越えて移住しなければならなくなる。その変化に飲み込まれることなく新天地を求める冒険心を持ったものだけが進化の洗礼を生き残るのだ。

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クローズド・ノート - 福本次郎

◆かなえられた願い、届かなかった想い、さまざまな気持ちが素直に綴られた日記。しかし、未熟な他人にのぞかれることで陳腐な共感となってたちまち色褪せる。映画は幼稚なミステリー仕立ての上に恋愛ごっこを重ね塗りする。(30点)

 かなえられた願い、届かなかった想い、さまざまな気持ちが素直に綴られた日記。それは他人の目を気にすることなく自分を見つめ直す作業だ。文章にすることで考えと感情を整理し、丁寧に万年筆を走らせる。うれしかったことも悲しかったことも一呼吸おくことで冷静になり、やがてそれは思い出という美しい財産に昇華される。しかし、その心の足跡も、未熟な他人にのぞかれることで陳腐な共感となってしまうとたちまち色褪せる。さらに映画は幼稚なミステリー仕立ての上に恋愛ごっこを重ね塗りするという失敗を繰り返す。

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サウスバウンド - 福本次郎

◆「ナンセンス!」の一言で公権力の介入を切り捨てる。もはや絶滅種の過激派の生き残り、中年を過ぎても国家や資本家との闘争を止めようとしない。自分が正しいと思ったことは曲げないオッサンの姿を通じて家族のあり方を問う。(60点)

 「ナンセンス!」の一言で公権力の介入を切り捨てる。もはや絶滅種ともいえる過激派の生き残り、中年を過ぎてもその思想にはブレはなく、国家や資本家との闘争を止めようとしない。時代遅れだが、自分が正しいと思ったことは絶対に曲げないオッサンの姿を通じて家族のあり方を問う。どんなことがあっても男に従う妻、ウザイと思いつつもいつしか父の強さに憧れる子供たち、そしてそのポリシーはいつしか賛同者を増やしていく。子供、特に息子は父の背中を見て育ち、父は身をもって男の生き方を息子に示す。社会の不正に意見する一方、子供を守ろうとする姿勢が過激なほど家族の絆は強まっていく。そんな主人公を豊川悦司が好演している。

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パンズ・ラビリンス - 福本次郎

◆人間の心に息づく自由と豊かな暮らしへの憧れ。そして、独裁者と戦うには誘惑に負けない意思と自己犠牲をいとわない勇気が必要であることを訴える。しかし、少女を試すのにどうしてこれほど回りくどい方法をとるのだろうか。(40点)

 人間の心に息づく自由と豊かな暮らしへの憧れ、それはおとぎ話の中でしかかなえられなかったという独裁政権下の現実。抑圧からの解放を目指して軍事政権に対してゲリラ戦を挑む反政府軍の理想の楽園は、少なくとも当時は空想世界にしか存在しないものだったと少女の目を通して語る。そして、独裁者と戦うには誘惑に負けない強い意思と、仲間のためには自己犠牲をいとわない勇気が必要であることを訴える。しかし、それにしては少女の心を試すのにどうしてこれほどまでに回りくどい方法をとるのだろうか。

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未来予想図 ~ア・イ・シ・テ・ルのサイン~ - 福本次郎

◆満天の星、二人乗りのバイク、手をつないだままの卒業旅行。今の幸せが永遠に続くと思い込む若い恋人たちの姿がまぶしい。10年にわたってさまよう若いふたりの愛の行方を、ドリカムの原曲同様、少し軽いでタッチでリアルに描く。(60点)

 満天の星、二人乗りのバイク、ずっと手をつないだままのスペイン卒業旅行。今の幸せが永遠に続くと思い込む若い恋人たちの姿がまぶしい。目の前の相手を見つめ同じ未来を歩んでいけると根拠もなく信じられた日々、それはやがて仕事を持つことで現実というシビアな世界にさらされる。出会いから別れ、そして再会。10年もの長きにわたってさまよう若いふたりの愛の行方と仕事との板ばさみになる苦悩。ドリカムの原曲同様、少し軽いでタッチでリアルに描く。

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ローグ アサシン - 福本次郎

◆謎の暗殺者を追うFBI捜査官。日本ヤクザと中国マフィアの勢力争い。2つの対立要素が絡み合い、複雑な人間関係と共に謎が謎を呼ぶ。しかし、肝心の主演ふたりの肉体的なパフォーマンスを見せるシーンが少なく物足りない。(40点)

 正体不明の暗殺者を追う復讐に燃えるFBI捜査官。米国進出を狙う日本ヤクザと中国マフィアの勢力争い。2つの対立要素が絡み合い、複雑な人間関係と共に謎が謎を呼ぶ。暗殺者の二重三重の裏切りに日中の犯罪組織プラスFBIという視点が加わり、非常に盛りだくさんで野心的な脚本だ。しかし、肝心の主演ふたりの肉体的なパフォーマンスを見せるシーンが少なく物足りない。大量の銃弾に頼るのではなく、格闘シーンに鍛え上げた俳優だけが見せることができるあっと驚くようなアイデアが欲しかった。

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パーフェクト・ストレンジャー - 福本次郎

◆謎が謎を呼び、張り巡らせた伏線を糸口に主人公が事件を解決。そんなミステリーの定石を破ろうとするが、不安定な足場の上に乗せられたような違和感は終盤までぬぐいきれず、最後には足場ごとひっくり返すような暴挙に出る。(30点)

 謎が謎を呼び、張り巡らせた伏線を糸口に主人公が事件を解決する。そんなミステリーの定石を破ろうとする試みは成功しているとは言いがたい。やはり観客が感情移入するのはこの映画の場合ヒロイン。なのに彼女自身が身分を偽装して他人を罠にかけたり、仕事上のパートナーを裏切ったりとまったく信用できない。かといって他の登場人物もどこか胡散臭く、すきあらば人を騙そうとしているような連中ばかり。不安定な足場の上に乗せられたような違和感は終盤までぬぐいきれず、最後には足場ごとひっくり返すような暴挙に出る。

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幸せのレシピ - 福本次郎

◆個人的な人間関係の再生物語だった「マーサの幸せレシピ」をベースにしながらも、設定をNYに移すことでキャリアウーマンのサクセスストーリーという普遍的なテーマに変換したため、口当たりはよいが味わいに欠ける作品になった。(40点)

 盛り付けの美しさにすばらしい味。しかし、ヒロインの作る料理は、口うるさい常連客の舌を満足させることはできても、孤独な子供の心を満たすことはできない。仕事は完璧、でも何かが足りない。彼女は孤児を受け入れざるを得ない状況になって、自分ひとりではどうしようもないことがあることを知る。そしてレシピどおりに作れば完成する料理とは決定的に違う人間の心の機微に触れ、他人の気持ちを思いやる心を身に着けていく。ただ、ヒロインが女として魅力的に見えないのが欠点。恋をする過程で少しはその変化を見たかった。

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エディット・ピアフ 愛の讃歌 - 福本次郎

◆悲しみと絶望の中で胸も張り裂けんばかりの歌声で聴衆を前に新曲を絶唱する「愛の賛歌」誕生秘話は、美しい上に力強く、なおかつ儚いほどの短い人生しか与えられなかったエディット・ピアフという歌手の生き方を凝縮している。(60点)

 愛を歌うものは愛を失ったとき初めて愛の真実を知る。幸せの絶頂から一転して不幸のどん底に落とされ、そのつらさをエネルギーに転化する。恋人が飛行機でやってくるのを心待ちにしながら夢と現の間をさまよった挙句、彼の事故死を知り、悲しみと絶望の中で胸も張り裂けんばかりの歌声で聴衆を前に新曲を絶唱する。この、映画の中核をなす「愛の賛歌」誕生秘話は、美しい上に力強く、なおかつ儚いほどの短い人生しか与えられなかったエディット・ピアフという歌手の生き方を凝縮しているようだ。

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ファンタスティック・フォー:銀河の危機 - 福本次郎

◆銀色に輝く肉体でサーフボードを乗りこなし、超スピードで空中を切り裂き壁を抜けるシルバーサーファーの圧倒的な存在感の前にファンタスティック・フォーの影は薄い。その自己犠牲は美しく、彼の苦悩をもっと描くべきだった。(50点)

 銀色に輝く肉体でサーフボードを乗りこなし、超スピードで空中を切り裂き壁を抜ける。シルバーサーファーの圧倒的な存在感の前にファンタスティック・フォーの影は薄い。しかも、見かけの冷たさとは対照的にシルバーサーファーには人間らしい心が残っている。ゆえに4人が今回の戦うべき相手は、良心を持った敵よりも邪心を持った味方。愛するもののために魂を売ってしまった男が、自分のプライドをかけて地球を救う。その自己犠牲は美しいが、ならば彼の苦悩をもっと描くべきだったのではないか。

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さらば、ベルリン - 福本次郎

◆モノクロームのシャープな陰影と戦争の影をひきずる男と女。過去の名作からスタイルを盗むが、物語がきちんと整理されておらず、結果として主人公は謎と秘密と嘘という闇の彼方にある真実に近づいたつもりで遠ざかってしまう。(30点)

 モノクロームの映像が醸し出すシャープな陰影と、戦争の影から逃れられない男と女。過去の名作からそのスタイルを盗むことには成功しているが、そこに描かれる物語はプロットがきちんと整理されておらず、まるでこの映画の舞台となった終戦直後のベルリンのような混沌。結果として、謎と秘密と嘘という闇の彼方にある真実に近づいたつもりで遠ざかっている主人公以上に混乱してしまう。結局彼が愛した女は何者だったのか、命がけで救う価値があったのか、何より主人公との愛は本当だったのか。あまりにも複雑な迷宮のように、明確な答えを得られないまま映画はフェイドアウトする。

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