花影 - 福本次郎

桜の花びら舞う穏やかな空気が心の鎧を解いていく。ほんのわずかな時間に芽生えた感情を一度は忘れていたのに、胸の奥で大きくなっていく・・・。映画は、ひとりの女性の精神的な成熟を通じて、人生に必要なものは何かを問う。(50点)

 桜の花びら舞う穏やかな空気が心の鎧を解いていく。それはほんのわずかな時間の出会い、その瞬間に芽生えた感情を一度は忘れていたのに、胸の奥で知らず知らずのうちに大きくなっていく・・・。成功を手に入れたヒロインが、自分に不可能はないとさらに高慢になっていく過程で突然陥穽に落ちたとき、桜の下での出来事を思い出す。映画は、ひとりの女性の精神的な成熟を通じて、世俗的な成功だけでは手に入れることができない、人生に必要なものは何かを問う。ただ、彼女の身に起こる変化が唐突で、もう少し伏線を張るような工夫が欲しかった。

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アメリカを売った男 - 福本次郎

スパイをあぶりだすためにスパイするという「誰も信じるな」というルール。嘘と裏切りにまみれた諜報機関の闇、実話を基にしているため映画的なド派手演出はないが、小さな事実を少しずつ積み上げる緊張感にあふれている。(60点)

 証拠が歴然としている犯罪ではなく、機密漏えいという非常に立証が難しい行為においては、スパイをあぶりだすためにスパイするという「誰も信じるな」というルールが適用される。しかし、いくら憎むべき国家の敵とはいえ、親しい付き合いをしていれば自然と親愛の情がわく。相手の懐に飛び込み、信頼を得て、そしてやってくる破滅の瞬間。嘘と裏切りにまみれた諜報機関の闇、実話を基にしているため映画的なド派手演出はないが、小さな事実を少しずつ積み上げる緊張感にあふれている。

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プライスレス 素敵な恋の見つけ方 - 福本次郎

高級ブランドの服や小物を値札も見ずに買い漁り、支払いはすべて男。どれだけ自分にカネをかけてくれるかが愛のバロメーターで、カネのない男は相手にしない。そんな「プロの愛人」をオドレイ・トトゥはチャーミングに演じる。(50点)

 高級ブランドの服や小物を値札も見ずに買い漁り、支払いはすべて男。少し甘えたり焦らしたりオヤジの心を思い通りにコントロールするさまは、まさに小悪魔。可愛く見せるテクニックを日々磨き、己の価値を高めていく。女を究めた生き方はどれだけカネをかけてくれるかが愛のバロメーターで、カネのない男は相手にしない。そんな割り切った人生を送る「プロの愛人」をオドレイ・トトゥはチャーミングに演じる。

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ジャンパー - 福本次郎

思いがけない超能力を得た未熟な主人公には正しい力の使い方を導いてくれる師がおらず、若者の成長物語も敵対組織とのバトルアクションも中途半端。まあ、「自分探し」という安易な流行路線に乗らなかったことは評価できるが。(40点)

 思いがけない超能力を得たとき、最初は驚きもてあます。やがて制御する方法を覚えるとその能力を他人に知られないように隠す。そして部屋いっぱいのカネを集め、自分を蔑んだ友人に報復する。未熟な主人公のたどる道は、そんな欲望に素直に従うというリアリティにあふれている。だが、彼には正しい力の使い道を導いてくれる師がおらず、虚栄心を満たすことに終始しているため、若者の成長物語も敵対組織とのバトルアクションも中途半端に終わっている。まあ、「自分探し」などという安易な流行路線に乗らなかったことは評価できるが。

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明日への遺言 - 福本次郎

部下の行為にはすべて自分が責任を追うという指揮官の姿を通じて、信念ある生き方イコール死に方とは何かを問う。ただ、法廷シーンの半分が英語で、日本映画であるにもかかわらず字幕を追わねばならないのは非常に煩わしい。(40点)

 無差別爆撃という戦争犯罪を犯した者に対する処刑。そしてその処刑を行った者と命令を下したものはいかに処すべきか。指揮下で起きたことにはすべて責任を追うという指令官の姿を通じて、信念ある生き方イコール死に方とは何かを問う。ただ、法廷シーンの半分が英語で、わざわざ逐語訳の日本語字幕でフォローするのだが、このあたりもう少し脚本の段階でうまく処理できたはず。日本映画であるにもかかわらず字幕を追わねばならない煩わしさを作り手はどう考えているのだろう。

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地上5センチの恋心 - 福本次郎

物質的な豊かさはなくても、笑いや喜びに満ちた人生。いつも身の回りに小さな幸せを見つけ、空想を膨らませることでいつしか自分が物語のヒロインになっている。そんな愛らしいオバサンをカトリーヌ・フロはキュートに演じる。(60点)

 物質的な豊かさには縁がなくても、笑いや喜びに満ちた人生。それはいつも身の回りに小さな幸せを見つけ、空想を膨らませることで手に入る。心がうきうきすれば体も浮き上がるような感覚になり、いつしか自分が物語の主人公になっている。そんなヒロインが手の届かなかった憧れの人と結ばれそうになったとき、思わず身を固めてしまう。想像の中ではいつも恋を成就させるのに、現実の世界では急に壁を作ってしまう、そんな不器用なオバサンをカトリーヌ・フロはチャーミングに演じている。

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ペネロピ - 福本次郎

醜い鼻と耳をコンプレックスとして隠すか、それを受け入れて自分らしく生きるか。その葛藤の答えは最初から分かっているのだが、人は見た目が9割という一般的な心理も含めて、ありのままの人間を肯定するスタンスが優しい。(60点)

 醜い鼻と耳をコンプレックスとして隠すか、それを受け入れて自分らしく生きるか。その葛藤の答えは最初から分かっているのだが、母親の過剰な愛が障害となり回答を先に引き延ばす一方で、悪意ある人々が結論を急がせる。娘を守ろうという気持が不幸を呼び、カネのためにスキャンダルを追う者が結果的に自立を促すという皮肉。容貌で人を判断してはいけないといいながら、やはり人は見た目が9割という一般的な心理も含めて、ありのままの人間を否定しないスタンスが優しい。

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トゥヤーの結婚 - 福本次郎

障害者の夫と2人の子供の生活を支えるヒロインの顔は日に焼け、衣服もほころびが目立つ。映画は、彼女の一途な思いと、それゆえに夫を傷つけてしまうという葛藤を軸に、ふと垣間見せる女らしい感情が発露する一瞬を見逃さない。(60点)

 内モンゴルの見渡す限りの乾いた大地とそびえる山脈、いっこうに上向かない苦しい暮らし。そんな中、障害者の夫と2人の子供の生活を支えるヒロインの顔は日に焼け、衣服もほころびが目立つ。ただ、家族の幸せを願うがゆえに気丈に振る舞い、求婚してくる男たちに条件をつける。女としての幸福より夫と子供のために生きようとする。その強情なまでに凛とした姿は、男勝りに厳しい自然を相手に日々闘ってきた矜持だ。映画は、彼女の一途な思いと、その一途さゆえに夫を傷つけてしまうという葛藤を軸に、ふと垣間見せる女らしい感情が発露する一瞬を見逃さない。

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ライラの冒険 黄金の羅針盤 - 福本次郎

顕在する魂、魔女、人々を支配しようとする力。パラレルワールドは現実に近いが少しずつ違い、新旧の混在するような不思議な空間。そのディテールは目を見張るようなSFの世界ではなく、デジャヴを感じるように記憶を刺激する。(50点)

 顕在する魂、魔女、人々を支配しようとする力。パラレルワールドは現実に近いが少しずつ違う。それは移動手段や通信手段、ファッションが20世紀初頭風の懐古趣味、実験設備は最先端を行くようなクリーンさと電力を大量に消費するような21世紀風という、新旧の混在するような不思議な空間。それらのディテールは目を見張るようなSFの世界ではなく、デジャヴを感じさせるように記憶の底を刺激する。目新しさよりも、なじみのある風景をバックグラウンドにすることで、パラレルワールドのルールに抵抗なく入っていくことができる。

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裏切りの闇で眠れ - 福本次郎

銃撃戦、リンチ、暗殺・・・。痛みを伴うリアルな暴力描写でギャングたちの生態を活写する。それは裏切りと欺瞞に満ちた世界で生き残る必要条件。ハンディカメラで撮影された映像からは犯罪組織の男たちの息遣いが聞こえてくる。(70点)

 銃撃戦、リンチ、暗殺・・・。痛みを伴うリアルな暴力描写でギャングたちの生態を活写する。それは裏切りと欺瞞に満ちた世界で生き残っていくための必要条件。自分の力以外は頼れるものがなく、ちょっとした油断が命取りになる。ハンディカメラで撮影された映像は、そんな犯罪組織の男たちの息遣いが聞こえてくる。フリーランスの殺し屋を演じるブノワ・マジメルのオールバックと眉根を寄せた鋭い眼光は、まるでロバート・デ・ニーロが演じた若き日のビトー・コルレオーネを見るようだ。

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いつか眠りにつく前に - 福本次郎

命の火が燃え尽きようとしているとき、封印していた過去を思い出す。決して忘れられないのに、誰にも語れない。罪の意識と後悔、子供を産み育て、愛した記憶にあふれた人生に失敗などないという、肯定する姿勢がすばらしい。(70点)

 命の火が燃え尽きようとしているとき、封印していた過去を思い出す。自分が原因で若者を1人死なせ、自分もまた愛を失ってしまう。決して忘れることができないのに、誰にも語れない。しかし意識が朦朧としていく中でその思いは堰を切ったように口からあふれだす。罪の意識と後悔、それでも生きて子供を産み育て、愛した記憶にあふれた人生に失敗などないという、人の一生を肯定する姿勢がすばらしい。死の恐怖をより生きた満足感、それこそが安らぎに満ちた旅立ちに必要なものだ。

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エリザベス:ゴールデン・エイジ - 福本次郎

恋することを自らに禁じた女王の前に現れた権力に媚びない粗野な男は、彼女と英国の運命を変えていく。映画はふたりの交流を通じて、キリスト教世界の宗教対立に端を発した裏切りと謀略のパワーゲームを豪華絢爛たる筆致で描く。(50点)

 国家と結婚したと宣言し、恋することを自らに禁じた女王。その気高さとは裏腹に内憂外患に心を痛め、暗殺者の存在に安眠すらおぼつかない日々が続く。そんな時に現れた、女王の威光に媚びないひとりの粗野な男の存在が彼女を、ひいては英国の運命を変えていく。映画は国を支配する地位にありながら自由な生活もままならない女王と、進取の気性と冒険心に富み欧州と新世界をまたにかける男の交流を通じて、キリスト教世界の宗教対立に端を発した裏切りと謀略の渦巻くパワーゲームを豪華絢爛たる筆致で描く。

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デイ・ウォッチ - 福本次郎

善悪どちらの側にもせこい者や乱暴な者、そして思慮深い者も温厚な者もいる。人間が知らないうちに世界が崩壊する危険なバランスの上に成り立っている現在を、原色と陰影を強調したシャープでヴィヴィドな色彩で表現する。(40点)

 吸血鬼や狼男、魔法使いといった異種の者たちも、その肉体的な特性を除けば心は人間に近い。善悪どちらの側にもせこい者や乱暴な者、そして思慮深い者も温厚な者もいる。光に代表される善の勢力も闇に代表される悪の勢力もそれぞれに問題を抱えとりあえず休戦協定を結んでいるが、いつその箍が外れてもおかしくない。一般の人間が知らないうちに世界が崩壊する危険性、そんな危ういバランスの上に成り立っている現在を、原色と陰影を強調したシャープでヴィヴィドな色彩で表現する。

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奈緒子 - 福本次郎

天才ランナーがチームメイトとの軋轢に苦しみながらも成長し、仲間を信じることを学んでいく。しかし、駅伝に賭ける熱い思いもなく、恋が芽生えるわけでもない。テーマがぼやけた不完全燃焼の青春ドラマを見せられているようだ。(40点)

 たすきをリレーするのは信頼をつなぐこと。ひとりの天才ランナーがチームメイトとの軋轢に苦しみながらも成長し、猛練習とそれを乗り越えたレースの中で仲間を信じることを学んでいく。しかし、本来主人公のはずの少女がその成長物語に積極的に絡んでくるわけではなく、彼女の存在が盲腸のようになっている。駅伝に賭けるという熱い思いに支えられているのでもなく、恋が芽生えることもない。テーマがぼやけた不完全燃焼の青春ドラマを見せられているようだ。

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ファーストフード・ネイション - 福本次郎

経済発展の犠牲になりながらも、飢えや寒さといった切迫した危機とは無縁の飽食の貧困層。ファーストフードチェーンの原料を生産する牧場から末端のショップまで、その内幕をリアルに描くことで格差社会の現実を突きつける。(60点)

 日々の暮らしに困っているわけではないが、将来に明るい展望もない米国人。米国人の嫌がる仕事でも故郷と比べると破格の給与を手にする密入国のメキシコ人。どちらも経済発展の犠牲になりながらも、飢えや寒さといった切迫した危機とは無縁の飽食の貧困層。ファーストフードの巨大チェーン店を舞台に、原料となる牛肉を生産する牧場から末端のショップまで、その内幕をリアルに描くことでいま米国が抱えている格差社会の現実を突きつける。

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