リボルバー - 福本次郎

スタイリッシュな映像と謎めいた登場人物、更に二転三転する展開にアニメーションまで加えて、新感覚の映画にするつもりだったのだろう。しかし、大掛かりな仕掛けでだますはずが、結局ペテンに収拾が付かなくなってしまった。(30点)

© 2005 EUROPACORP – REVOLVER PICTURES LIMITED

 スタイリッシュな映像と謎めいた登場人物、過去の格言を引用し頭脳を駆使して悪党を手玉に取る。さらに二転三転する展開にアニメーションまで加えて、新感覚のバイオレンス&ミステリー&アクション&サスペンス映画にする予定だったのだろう。しかし、大掛かりな仕掛けで観客をだますつもりだった脚本家が、結局一生懸命考えたプロットに収拾が付かなくなってしまい、物語の後半は主人公がアイデンティティクライシスに陥って延々と無意味な禅問答を繰り返す。おまけに彼の仇敵まで分裂した別人格に悩まされた挙句、自己崩壊を起こしてしまう始末。テーマを知的なコンゲームに絞るべきだった。

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ミラクル7号 - 福本次郎

貧乏でも正直ものは尊敬される。そんな説教くさい話をファンタジーとコメディというオブラートでくるみ、CGと特撮で見せる。チャウ・シンチーは手垢のついた物語を、あらゆる劇映画のジャンルをごった煮にしたスタイルで描く。(50点)

 貧乏ゆえにいじめられても、正直に生きるものは尊敬される。そんな説教くさい話は今どき誰も聞いてくれない。ならばファンタジーとコメディというオブラートでくるみ、CGと特撮で見せる。チャウ・シンチーは孤独なETと恵まれない少年の友情という手垢のついたストーリーを、あらゆる劇映画のジャンルをごった煮にしたようなスタイルで描く。思い付きをつなぎ合わせた節操なさが逆に作品に活力を与え、テンポのよさで最後まで飽きさせない。

告発のとき - 福本次郎

戦争は若者を狂気に駆り立てる。休暇中の兵士の不審死をその父親が調査するうちに望まない真実を知るという過程を通じて、イラク戦争がもたらした心の荒廃、ひいては米国がSOSのサインを発するまでに病んでいることを訴える。(50点)

© 2006 Elah Finance V.O.F.

 戦争は普通の若者を狂気に駆り立てる。常に緊張を強いられ神経を高ぶらせて、異常な行為を異常と思わなくなる。一度傷ついた心は簡単には治らず、米国に戻った後も後を引きずり、ちょっとしたきっかけで暴走する。映画は、帰米した若い兵士の不審死をその父親が調査するうちに望まない真実が明らかになるという過程を通じて、イラク戦争がもたらした心の荒廃、ひいては米国がSOSを発するまでに病んでいることを訴える。

インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国 - 福本次郎

ソ連の指揮官に扮したケイト・ブランシェットが圧倒的な存在感だ。ショートボブに頬骨の形まで変え、疾走する無蓋車両の荷台で剣を振り回すその姿は、まさに鋼鉄の女。食傷気味の冒険アドベンチャーに新鮮な風を送り込んでいる。(60点)

© TM & © 2008 Lucasfilm Ltd.. All Rights Reserved. Used under authorization.

 ロシア語なまりの英語を話すソ連の指揮官に扮したケイト・ブランシェットが、すでに身体のキレがなくなったハリソン・フォードに代わって圧倒的な存在感を示す。前髪を切りそろえたショートボブに頬骨の形まで変え、均整の取れたプロポーションを強調するような軍服に身を包み疾走する無蓋車両の荷台で剣を振り回すその姿は、まさに鋼鉄の意志を持った赤軍将校。もはや食傷気味となったこの手の冒険アドベンチャーに新鮮な風を送り込んでいる。

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1000の言葉よりも?報道写真家ジブ・コーレン - 福本次郎

「報道写真家は職業ではなく、人生そのもの」。写真を学ぶ若者に向かって断言するジブ・コーレン。常にカメラを携帯し、事件が起きれば駆けつける。世の中で起きている真実を伝えるために命を賭ける男の熱い息吹が伝わってくる。(50点)

 「報道写真家は職業ではなく、人生そのもの」。写真を学ぶ若者に向かって断言するジブ・コーレン。常にカメラを携帯し、事件が起きれば家族との憩いのひと時であってもスクーターで駆けつける。一番乗りを目指し、スクープを撮るためには他のあらゆるものを犠牲にしなければならない。決定的な瞬間にシャッターを押すチャンスは運の要素が強く、だからこそより長く現場にとどまることで、その機会を逃さないように努力する。また、あまり表に出ない被写体にはとことん喰らい付き、相手の信頼を得るまで通いつめる。いま世の中で何が起きているか、その真実を伝えるために命を賭ける男の熱い息吹が伝わってくる。

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REC/レック - 福本次郎

ドキュメンタリータッチで臨場感を高めようという意図は理解できるが、この作品ではカメラマンは当事者であると同時に傍観者。そのスタンスが主人公の感覚との距離感を生み、スクリーンを通じて伝わる感情の揺れが半減される。(50点)

 劇映画風ではなく、突然予期せぬアクシデントに見舞われた登場人物が持っていたカメラに自分の体験を記録するという、ドキュメンタリータッチを装うことで臨場感を高めようという意図は理解できる。だが、この作品ではカメラを持つ者は当事者であると同時に傍観者でもある。そのスタンスが主人公の感覚との距離感を生み、スクリーンを通じて伝わってくる感情の揺れが半減される。「クローバーフィールド」と同工異曲といわれても、主人公の主観にこだわったほうが恐怖も増幅されたはずだ。

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築地魚河岸三代目 - 福本次郎

義理人情に威勢のよさ、いまだに昔気質が強く残る鮮魚仲買人。非情のビジネス界で生きてきた男が、損得勘定よりも信用を重視する人間関係の濃い世界で仲間と認められていく過程で、いまや希薄となった他人を思いやる心を描く。(50点)

 義理人情に威勢のよさ、いまだに昔気質が強く残る鮮魚仲買人。非情のビジネス界で生きてきた男が、損得勘定よりも信用を重視する人間関係の濃い世界でいかにして認められるか。スーツにネクタイのサラリーマンがハチマキにゴム長という彼らの制服に着替えて、そこで生きる決意をする。映画は主人公とその恋人、彼女の家族の秘密を通じて、いまや希薄となった他人を思いやる心を描く。出生の秘密を隠し続け少し陰のある男を井原剛志が好演。単細胞ばかりの市場関係者の中で異彩を放っている。

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JUNO/ジュノ - 福本次郎

本人は傷つかず、ボーイフレンドも苦しまず、両親や周りの大人も反対しない。女子高生が望まない妊娠をしたのに、映画は通常起こりうるような苦悩や葛藤、軋轢とはまったく無縁に進展し、あらゆる予想に肩透かしを食わせる。(60点)

© 2007 TWENTIETH CENTURY FOX

 本人は傷つかず、ボーイフレンドも苦しまず、両親や周りの大人も物分りがよいのか反対しない。女子高生のヒロインが、望まない妊娠をしたにもかかわらずほとんど逆風が吹かない上に、おなかの中で胎児が確実に大きくなっていっても他人ごとのように距離を取る。それは愛していない男の子供など必要ないというシニカルな気持ちと、養子に出すことが決まっている以上情が移らないほうがよいという考えから生まれる態度なのか。映画は通常起こりうるような苦悩や葛藤、軋轢とはまったく無縁に進展し、あらゆる予想に肩透かしを食わせる。

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ぐるりのこと。 - 福本次郎

憎悪、怒り、悲しみ、後悔。あらゆる負の感情が詰まったパンドラの箱のような法廷で、最後に残った希望であろうとする主人公。世の中にあふれる悪意を感じるほど、精神のバランスを崩した妻を優しく受け入れるようになっていく。(60点)

© 2008『ぐるりのこと。』プロデューサーズ

 憎悪、怒り、悲しみ、後悔・・・その他あらゆる災厄と負の思念が詰まったパンドラの箱のような法廷の中で、最後に残った希望であり続けようとするかのような主人公。世の中にあふれる悪意を強く感じれば感じるほど、精神のバランスを崩した妻を優しく受け入れるようになっていく。一組の夫婦の8年間の軌跡を追いながら、男女が心地よい関係を続けるためには何が必要かを問う。「好きだから一緒にいる」という言葉の向こうにある、胸の奥底で相手を思いやる気持ち。押し付けがましくなくそっと支えあう、激しくはないけれど馴染んでいる、そしていつもそばにいてくれる。そんなふたりの風景があたたかい気分にさせてくれる。

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イースタン・プロミス - 福本次郎

得体の知れない不気味さの奥に潜む鋼鉄の意志を持つ主人公を演じたヴィゴ・モーテンセンが圧倒的な存在感を示し、陰鬱な中に人間の感情を鋭く切り取る映像は、見る者の心に恐怖とその先にある希望をダイレクトに響かせる。(80点)

© 2007 Focus Features LLC. All Rights Reserved.

 血には血を、暴力には暴力を。のどを一直線にかき切る凄惨な報復と裸の肉体がぶつかり合う格闘シーンは、強烈なリアリティをかもし出す。一方で、失意のうちに息絶えた少女が残した子を巡る愛。死が日常の世界に住む男たちが、赤ちゃんという生を目の当たりにして、わずかに残った良心に気付く場面が救いをもたらす。非情の世界に身をおきながらも、得体の知れない不気味さの奥に潜む鋼鉄の意志を持つ主人公を演じたヴィゴ・モーテンセンが圧倒的な存在感を示す。

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DIVE!! ダイブ - 福本次郎

10メートルの飛び込み台に立つダイバーたちをとらえたカメラワークがすばらしい。眼下に広がる目くるめくような空間の広がりが非常に感覚的に再現され、演技に入る寸前の一瞬の緊張感と息遣いが手に取るように実感できる。(60点)

© 2008 「DIVE!!」製作委員会

 10メートルの飛び込み台に立つダイバーたちを斜め下方から上昇したり、上空からなめるかのような動きでとらえたカメラワークがすばらしい。眼下に広がる目くるめくような空間の広がりが非常に感覚的に表現され、演技に入る寸前のダイバーたちの一瞬の緊張感と息使いが手に取るように実感できる。さらに飛び込み選手を演じるにあたり、若い俳優たちの肉体的なトレーニングの成果が水着一枚になったときに明らかになる。しなやかなに伸びた手足と割れた腹筋、贅肉が一切そぎ落とされたボディラインがこの作品にきらめきを与えている。

 ダイビングクラブに通う知季は新任コーチの麻木に素質を見出され特訓を受ける。やがて同じクラブのエリートダイバー・要一、ダイナミックな飛沫らとともに、北京五輪に向けての選考会に臨む。

 物語は3人の少年たちが抱えるそれぞれの私生活上の問題を絡め、つまずいたりくじけたりしながらも最後には飛び込み台に戻ってくるという青春ものの常道で、むしろそういったエピソードを描きこみすぎたために中だるみしている感は否めない。普通の中学生だった知季が自分の運命を自覚し、他のものを犠牲にして飛び込みに打ち込む姿に絞って描いていれば、もっとスピーディな展開になったはず。さらに原作の設定どおりとはいえ、いくら才能があってもほとんど実績のなかった中学生が半年程度のトレーニングで日本のトップクラスになれるほど甘いものなのだろうか。このあたり映画化するにあたってもう少しリアリティを持たせて欲しかった。

 飛び込みというマイナー競技のルールを試合の中継という形を取って解説してくれるので、詳しく知らなくても分りやすい。それ以前に、選手たちが実際にジャンプ台から飛び、ひねりや回転を加えながら落下していく様子を丁寧に撮影しているので、高度に洗練された技がいかに美しく難易度が高いかが理解できる。ただ、せっかく導入した撮影技術をダイバー目線で使って、彼らが体感する落下スピードを再現して欲しかったのだが、その唯一のシーン、選考会のラストダイブに余計な知季の知覚を入れてしまったのは残念だった。

神様のパズル - 福本次郎

誕生の瞬間を再現すれば宇宙が作れるという仮説を立てた主人公が、天才少女と共に研究を重ねるうち、人間が内包する宇宙の広大さに気付く。調和の取れた宇宙よりも、矛盾と混沌に満ちた感情のほうが謎と美にあふれているのだ。(50点)

© 2008「神様のパズル」製作委員会

 宇宙に存在するあらゆるものは対称で成り立っている。正と負、物質と反物質、引力と斥力。それでは「対称」の対称は「非対称」なのか。すべては「対称」と定義すると、そこに「非対称」を内包するというパラドックス。その二律背反があったからこそ物質は消滅せずに残り、結果として星や生命、それらを観察し考える人類が生まれた。宇宙誕生の瞬間を再現すれば宇宙ができるのかという壮大な思い付きを口にした主人公が、天才少女と共に研究を重ねていく過程を通じて、人間が心に内包する宇宙の広大さに気付く。規則正しく調和の取れた宇宙よりも、矛盾と混沌に満ちた感情のほうが謎と美にあふれているのだ。

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ブルー・ブルー・ブルー - 福本次郎

サーフボードを体の一部のように操り、スピードとスリルのなかに自分たちの存在意義を確かめる。それは退屈な日常から切り離された一瞬の高揚感、大人になるまでに残されたわずかな時間を惜しむかのように彼らは海へと向かう。(40点)

© 2007 Film Finance Corporation Australia Limited, 3DAP Japan LLC, Shadowfire Entertainment Pty Limited, Jour de Fete LLC and Newcastle Pictures Pty Limited

 海中と海面を自在に行き来するカメラがとらえる、水と戯れ波を切り裂く若者たち。サーフボードを体の一部のように操り、スピードとスリルのなかに自分たちの存在意義を確かめる。それは退屈な日常から切り離された一瞬の高揚感、大人になるまでに残されたわずかな時間を惜しむかのように彼らは海へと向かう。しかし、大会出場を目指す少年の成長を通じてサーフィンの楽しさを伝えようとする姿勢は理解できるのだが、相変わらず身近な人の死で挫折から立ち直るというステレオタイプを踏襲してしまっている。

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ザ・マジックアワー - 福本次郎

張りぼてとハッタリがリアリティを産むという映画の本質を喝破しつつ、三谷監督の自虐的なセンスもまた適度にスパイスとなっている。作り手と観客の間にある「お約束」を見事なメタファーとして昇華する脚本がすばらしい。(70点)

© 2008 フジテレビ 東宝

 上質の芝居を見ているようなセリフの間が笑いを紡ぎだし、そのテンションは終盤まで落ちない。張りぼてとハッタリが撮影と編集次第でリアリティを産むという、映画の本質を見事に喝破しつつ、自分の作品も同じ土俵から生まれたという三谷監督の自虐的なセンスもまたいやみにならない程度にスパイスとなっている。嘘をつくならとことんつき通し、だまされるなら最後まで気分よくだまされていればいいという、映画の作り手と観客の間にある「お約束」を見事なメタファーとして昇華する脚本がすばらしいできばえだ。

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春よこい - 福本次郎

新聞記者によるペンの暴力の恐ろしさ。いかに犯人逮捕のためとはいえ、子供をダシにして一見感動的な記事の体裁をとるという偽善極まりない行為を正当化することはできない。殺人事件容疑者の家族の人権を考えないのだろうか。(50点)
春よこい

 新聞記者によるペンの暴力がもたらす恐ろしさ。いかに犯人逮捕のためとはいえ、子供をダシにして一見感動的な記事の体裁をとるという偽善極まりない行為を正当化することはできない。さらし者にされた殺人事件容疑者の家族はやっと取り戻した平穏な暮らしを奪われ、報道を読んだ人は急にその家族と距離をとり始める。しかも、傷つけた子供の心を他人に指摘されるまで気付かない鈍感さ。こんな男に新聞記者を名乗る資格はなく、映画の後半、改心してもこの男を信用できなかった。

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