レッド・バルーン - 福本次郎

パリの街を浮遊する赤い風船は小さな男の子の心をとらえ、空中でさまざまな表情を見せる。あるときは追いかけ、あるときは遠くから見守り、あるときは話しかけるように風船は彼の周りを漂うが、映像は散文的なスケッチに終始する。(50点)

 パリの街を浮遊する赤い風船は小さな男の子の心をとらえ、空中でさまざまな表情を見せる。あるときは追いかけ、あるときは遠くから見守り、あるときは話しかけるように風船は彼の周りを漂う。しかし、50年前に作られたアルベール・ラモリスの映画・「赤い風船」へのオマージュであるこの作品では風船は脇役に過ぎず、何のメタファーなのか判然としない。抑圧との解放という社会的な事情があった半世紀前と現代では事情が異なり、描くべきテーマがなくなってしまったのか映像は散文的なスケッチに終始する。

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インクレディブル・ハルク - 福本次郎

重低音を再現した迫力のサウンドが下腹部にのめり込むような臨場感を生み出す。コントロールできない肉体を持つ主人公の苦悩よりも、理性を超越した怪物の暴力的な側面を強調することで強烈なカタルシスを味あわせてくれる。(60点)

© 2008 MVLFFLLC. TM & © 2008 Marvel Entertainment. All Rights Reserved.

 フォークリフトを放り投げるパワーとビルを駆け上る跳躍力、銃弾を跳ね返す硬い皮膚。巨大化した緑のモンスターが生み出す重低音を再現した迫力のサウンドが、下腹部にのめり込むような臨場感を生み出す。さらに、同等以上の体格と能力を持った敵との1対1の重量感あふれるバトルは、パンチや投げ技などの攻撃も多彩で総合格闘技を見ているよう。コントロールできない肉体を持つ主人公の苦悩よりも、理性を超越した力を持った怪物の暴力的な側面を強調することで、映画は強烈なカタルシスを味合わせてくれる。

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ビューティフル・ルーザーズ - 福本次郎

街の看板や落書きまで「アート」として大量に消費されていくなか、自らの感性だけで表現にチャレンジするはみだし者のアーティストたちには、創作の苦悩から解放され、好きなことをやっているという開放感が満ち溢れている。(40点)

 アンディ・ウォーホール以降、アートの商業化・大衆化で街の看板や倉庫の壁に描かれた落書きまで「アート」と祀り上げられて、大量に消費されていく。当然アーティストの数は美術学校で学んだ者だけでは足りず、教育を受けずに自らの感性だけで伝統的な方法とは異なる表現にチャレンジするはみだし者に需要が回ってくる。そんな正統からはぐれた「美しき落ちこぼれたち」にスポットを当てるドキュメンタリー。登場するアーティストたちには創作の苦悩から解放され、好きなことをやっているという開放感が満ち溢れている。ただ、インタビューがきれいごとに終始しているところが物足りない。

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帰らない日々 - 福本次郎

加害者が感じる良心の呵責、被害者遺族が抱くやり場のない怒り。突然の交通事故が、普通の人々日常をまったく違う世界に変えてしまう。双方のくすぶる感情を非常にリアルに再現し、どちら側の登場人物にも共感を覚えてしまう。(60点)

© 2007 Focus Features LLC. All Rights reserved

 加害者が感じる良心の呵責、被害者遺族が抱くやり場のない怒り。突然の交通事故が、普通の人びとのありふれた日常をまったく違う世界に変えてしまう。怯えながら暮らす加害者はあらゆることに敏感になり神経の休まる間がなく、憎悪に燃える被害者の父は誰を見ても犯人に思えて余裕をなくしてゆく。普段死や苦しみと無縁に暮らしていても、いつ当事者になるか分らない。双方がトスされたコイン表裏のように交互に顔を見せるという構成が、くすぶる感情を非常にリアルに再現し、どちら側の登場人物にも共感を覚えてしまう。

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天安門、恋人たち - 福本次郎

手持ちカメラのブレとピンボケはヒロインの不安定な心理状態を、沈んだ色彩は彼女を取り巻く世界の不透明さを象徴する。天安門事件の敗北で挫折し新しい世の中に順応できずにもがく女性が、喪失感を埋めるために性遍歴を重ねる。(40点)

 手持ちカメラによるブレとピンボケはヒロインの不安定な心理状態を、沈んだ色彩は彼女を取り巻く世界の不透明さを象徴する。天安門事件の敗北で挫折した自由への渇望と、その傷を負ったままその後の政府主導の経済開放政策から取り残された中国の失われた世代。激動の時代の波のなかで見つけた理想の男性との出会いと別れを経て、新しい世の中に順応できずにもがく女性が、喪失感を埋めるために性遍歴を重ねる姿を通じて、経済よりも性モラルのほうがずっと先に開放されていたという実態を描く。

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きみの友だち - 福本次郎

たくさんの友達を持つより、一人の友達とたくさんの時間を過ごしたい。杖なしでは歩けない少女には、同じ速さで歩いてくれる病気がちのクラスメイトが唯一の友人。彼女とその弟の成長を通じて、友達とは、友情とは何かを問う。(70点)

 たくさんの友達を持つより、一人の友達とたくさんの時間を過ごしたい。杖なしでは歩けない体になってしまった少女には、同じ速さで歩いてくれる病気がちのクラスメイトが唯一の友人。彼女とその弟の成長を通じて、友達とは、友情とは何かを問う。特に強烈な共通体験がなくてもよい、逆に、肉体的なハンディを背負うがゆえに劇的ことが何も起こらず、お互いに温かく見守っていける。映画は一見人を寄せ付けないような少女の優しい一面が、周囲に及ぼす思いやりの輪をしっとりとした色調で描いている。

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雲南の花嫁 - 福本次郎

ちょっとお転婆だけどふくれ面さえもキュート、前向きで思い込んだら一直線でいつも友人たちの中心にいる。そんな、身近にいるとちょっと引いてしまうような少女の物語は、チャン・チンチューのプロモーションフィルムのようだ。(40点)

 パリにアトリエを構えて活動していた画家が、数十年ぶりに故郷のカンパーニュに戻ってくる。庭師募集に応募してきたのは、小学校時代の悪ガキ仲間。ふたりは数十年ぶりの再会を喜び合い、雇い主と使用人という関係を越えて互いをキャンバス(画家)、ジャルダン(庭師)と呼び合う親友同士になる。ふたりは生活も性格も正反対。すっかり都会ズレした画家と、土地に根付いた素朴な人柄の庭師。女ぐせの悪い画家は妻から離婚を切り出されて家庭崩壊の危機、庭師は愛する妻との静かな暮らしに満足している。芸術家の画家と、元国鉄マンで実務家の庭師。しかしそんなふたりは不思議とウマが合い、特に画家は彼と共に過ごす時間が楽しくて仕方がない。だがふたりの関係は、やがて悲しい最後を迎えることになる……。

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ドラゴン・キングダム - 福本次郎

雲の上の猿が高い山の頂で棒を振り回して暴れるという、なじみの深い孫悟空の世界。それは今まで何度も映像化されてきた孫悟空とよく似ており、中国人が演じているのに日本製の孫悟空と変わりばせずかえって違和感を覚える。(50点)

© 2008 J&J Project LLC

 雲に乗った猿が高い山の頂で長い棒を振り回して暴れまわるという、なじみの深い孫悟空の世界にいきなり観客を誘う。それは今まで何度も映像化されてきた孫悟空とよく似ており、本場の中国人が演じているのにも関わらず日本製の孫悟空と変わりばえしないところにかえって違和感を覚えてしまう。なぜ、誰も見たことのないような孫悟空像を創造しなかったのだろうか。米国人にはこのほうが受けるのかもしれないが、日本で見るとジェット・リーが香取慎吾の二番煎じに見えてしまうところが非常に惜しい。

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敵こそ、我が友 ?戦犯クラウス・バルビーの3つの人生? - 福本次郎

ナチス対連合国という単純な第二次世界大戦の構図を覆す。それは裏切りと欺瞞に満ちた正史の裏側、膨大なアーカイブから集めた資料映像と生存者へのインタビューで再現されたひとりの戦犯の生涯を通じて、戦争の真実に迫る。(70点)

© YALLA FILMS 窶錀 WILD BUNCH 窶錀 FRANCE 3 CINEMA.

 ハリウッド映画に描かれるような、ナチス対連合国という単純ではない第二次世界大戦の構図。特にフランスのように一度ドイツに降伏した後に戦勝国になった場合、そのシチュエーションは二元論では語ることはできない。さらに終戦後のドイツの混沌の中、反共のためには元ナチスとも手を組む米国・バチカンの節操のなさ。それは戦場で殺し合いをするだけではない裏切りと欺瞞に満ちた正史の裏側、膨大なアーカイブから集めた資料映像と生存者へのインタビューで再現されたひとりの戦犯の生涯を通じて、戦争の真実に迫る。

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百万円と苦虫女 - 福本次郎

深い人間関係を築くことが苦手でひっそりと生きていこうとする女。内省的で、迷惑をかけないかわりに干渉もされたくない。過剰に気を使うがゆえにバリアを張ってしまうヒロインを、眉間にしわの不機嫌な表情で蒼井優が好演。(80点)

© 2008 『百万円と苦虫女』製作委員会

 深い人間関係を築くことが苦手で、ただひっそりと生きていこうとする女。非常に内省的で、たいていのことは自分の中で完結させ、外部には迷惑をかけないかわりに干渉もされたくない。きっと一日中誰とも口を利かなくとも平気で、むしろその方が気楽と感じているのだろう。そんな過剰に気を使うがゆえにバリアを張ってしまうようなヒロインを、眉間にしわを寄せた不機嫌な表情で蒼井優が好演。結局、不器用にしか生きられないままだけれど、少しだけ成長する姿をカメラはやさしい視線でとらえる。

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GATE A TRUE STORY - 福本次郎

原爆の悲劇を始まりとなった場所で終わらせるという、ひたすら真夏の太陽の下を歩く僧侶たちの目的を知り、無償の支援をする人々の姿に、米国も市民レベルでは戦争にうんざりしている人々がたくさんいることを教えてくれる。(40点)

 広島を焼き尽くした炎を絶やさず燃やし続ける平和への執念が米国人の琴線に触れ、原爆の悲劇を60年の年月を経て始まりとなった場所で終わらせる。ひたすら真夏の太陽の下を歩く僧侶たちの目的を知り、無償の支援やお布施をする人々の姿に、世界の警察として紛争地域に派兵する米国も市民レベルでは戦争にうんざりしている人々がたくさんいることを教えてくれる。願い、祈るだけでなく、行動することが共感を呼び、大きなうねりとなって政治すら動かす。純粋な善意が動機の行為は必ず賛同者が現れるのだ。

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崖の上のポニョ - 福本次郎

5歳の子が両親を名前で呼ぶという異様な光景。平和を保ってきた人間と海の生物の均衡が、魚の子が人間になりたいと願うことで破れる。幼児が親を呼び捨てにするような道徳の廃れた世など存在に値しないという意図なのか。。。(40点)

© 2008二馬力・GNDHDDT

 5歳の息子が両親を名前で呼ぶという異様な光景。我が子に自分たちのことをお父さん・お母さんという呼称ではなく、親がそう呼ぶように躾けたのだろう。親子の間に親密さが生まれるのかも知れないのだが、そこには決して年長者に対する尊敬は生まれないはず。交流を絶つことで平和を保ってきた人間と海の生物との関係に、海の女神の娘が人間になりたいと願うことで均衡が破れ、街は水没し社会は崩壊に向かう。そのストーリーは、幼児が親を呼び捨てにするような道徳の廃れた世など存在に値しないという意図ならば納得するのだが。。。

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あの日の指輪を待つきみへ - 福本次郎

現在と過去、謎と秘密。戦死した恋人を思い続ける老婆と、死の直前に託した彼女への思い。米国の田舎町とアイルランド、大戦中と50年後、ひとつの愛を巡ってバラバラだった運命の糸がより合わさって真実という一点に集約していく。(70点)

© Scion Premier(Third) Limited Partnership/UK Film Council/Closing The Ring Limited/CTR Canada Limited

 頻繁に入れ替わる現在と過去、徐々に明らかにされていく謎と秘密。戦争で命を散らした恋人を思い続ける老婆と、その恋人が息を引き取る直前に託した彼女への思い。そして頑なに心を閉ざして生きてきたヒロインが最後に自分の誤りを知って、再び愛する気持ちを取り戻す。ミシガン州の田舎町とアイルランドのベルファスト、大戦中と50年後、ひとつの愛を巡ってバラバラだった運命の糸がより合わさるように真実という一点に集約していく。その語り口は、ロマンスとミステリーに少しの暴力の要素を加えた絶妙のバランスで、最後までスクリーンから目が離せない。

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スピード・レーサー - 福本次郎

実写とCGを巧みに合成させ、ポップな映像と爆音とどろくサウンドで、目くるめくような加速感を観客に体感させようという試みは、薄っぺらな紙芝居のようで手に汗握る興奮とは程遠い。もっとリアルな臨場感を追求してほしかった。(30点)

© 2008 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

 実写とCGを巧みに合成させ、ポップな色調で彩られた映像と爆音とどろくサウンドで、目くるめくような加速感を観客に体感させようという試みは見事に失敗している。薄っぺらな紙芝居を見ているような奥行きのなさは、まだゲーセンのドライブマシンに乗っているほうがマシと思えるくらいのできばえで、手に汗握る興奮とは程遠い。もともとは日本の古いアニメを今頃中途半端に映画化した意図はどこにあるのだろう。どうせハリウッドで製作するのなら、もっとリアルな臨場感を追求して、他には絶対にまねのできないものを作ってほしかった。

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ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!- - 福本次郎

アクションとミステリーを融合させ、さらに笑いを取ろうとする。映画的な要素が盛りだくさんで期待させられるのだが、どのシークエンスも中途半端。予想外のところでハズすオチで肩透かしを食わそうという意図は自滅している。(30点)

© 2006 Universal Pictures International. ALL RIGHTS RESERVED.

 催涙弾や実弾が飛び交うポリスアクションと古い村に隠された悪意を暴くミステリーを融合させ、そこにマヌケなキャラクターがドジを連発して笑いを取ろうとする。映画的な要素が盛りだくさんで期待させられるのだが、どのシークエンスも消化不良で中途半端。まるで、見た目は華やかなご馳走が勢ぞろいしているけれどおいしいものは何もないファミレスのメニューのようだ。各々のエピソードが意外なところでハズすようなオチで肩透かしを食わそうという意図はよく分るのだが、結局策におぼれて自滅している。

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