監督失格 - 福本次郎

撮影されているのを意識していない人間のナマの迫力、これほどすざまじい映像は初めて見た。(点数 50点)


(C)「監督失格」製作委員会

膝の力が抜けて床にへたり込んでもケータイに向かってしゃべり続け
るおばさんは、目の前の現実を受け入れられず、哀しいのか腹立たし
いのか悔やんでいるのか、次々と胸に湧き上がる気持ちに整理がつか
ない。せりあがってくる慟哭を抑えるように声を絞り出している姿は、
決して再現できないほど壮絶で強烈な感情がほとばしっている。その
様子は床に放置されたままのカメラがとらえている。撮影されている
のを意識していない人間のナマの迫力、これほどすざまじい映像は初
めて見た。

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スマーフ - 福本次郎

テーマパークの体験型アトラクションに乗っている気分にさせてくれる。(点数 50点)


(C)Courtesy of Sony Pictures Animation

スクリーンからモノが飛び出したり遠近感を強調した深い奥行きより、
後頭部から水しぶきが降りかかってくるような映像は、まるで映画の
中にいるリアルな感覚。妖精たちが滝にできたワームホールに落ちる
場面での、彼らが味わうスリルとスピードを3Dで体感させる試みは大
成功、テーマパークの体験型アトラクションに乗っている気分にさせ
てくれる。

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ライフ いのちをつなぐ物語 - 福本次郎

決定的瞬間をとらえるまでに費やされた膨大な時間と最新技術の結晶ともいえる映像の数々は、まさに驚異の世界だ。(点数 60点)


(C)BBC EARTH PRODUCTIONS (LIFE) LIMITED MMXI. ALL RIGHTS RESERVED.

生きるというのは、生き残り子孫を残すこと。強いものが弱いものを
襲って食料にする厳然たるルールがある一方、弱者もまた身を守るた
めに様々な知恵を絞り、数世代にわたって継承するうちに進化してい
く。あるものは天敵がいない環境に適応して特異な形質を獲得し、あ
るものは個体が群れをなし遺伝子を残す確率を上げようとする。動物
たち日々の営みの決定的瞬間をとらえるまでに費やされた膨大な時間
と最新技術の結晶ともいえる映像の数々は、まさに驚異の世界だ。

【ネタバレ注意】

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あしたのパスタはアルデンテ - 福本次郎

濃厚な家族のドラマに仕上がっている。(点数 50点)


(C)Fandango2010

まだ将来を決めかねている若者が親が敷いたレールと自分の夢の間で
迷う過程は星の数ほど描かれてきたテーマだが、物語は同性愛への偏
見を絡めて今日性を持たせる。都市部では珍しくなくなった同性愛者
も、田舎町ではまだまだ好奇の的、息子にゲイであると知らされた父
親は心臓発作まで起こしてしまう。信じられない、信じたくないと狼
狽する彼の姿は、身内に同性愛者がいると知った者のリアルな反応だ。

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カウントダウンZERO - 福本次郎

緊張感に満ちたインタビューの数々は非常に見ごたえがある。(点数 50点)


(c)2010 NUCLEAR DISARMAMENT DOCUMENTARY, LLC.

東西冷戦時は米ソ両陣営の核兵器が全面戦争を回避する“抑止力”と
して機能していたが、21世紀のテロリストたちは使用が前提で交渉の
余地はない。映画は、オッペンハイマー博士に始まる原爆の歴史、旧
ソ連諸国の杜撰な核管理とパキスタンや北朝鮮によってカジュアル化
された核兵器を取り巻く環境を追って、歴史上類を見ないほどの核の
脅威にさらされている「現在」の危うさを訴える。元首脳クラスから
工作員まで、緊張感に満ちたインタビューの数々は非常に見ごたえが
ある。

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神様のカルテ - 福本次郎

人も自然も丁寧に撮られた映像はみずみずしく、悪意を持った人間が登場しないストーリーも口当たりは良い。(点数 40点)


(C)2011 「神様のカルテ」製作委員会 (C)2009 夏川草介/小学館文庫

表情すら失うほど憔悴しているのに、順番を待つ患者たちの治療を続
けなければならない。救命救急、それは医師・看護師の献身的な労働
によって支えられている現実を描くプロローグは緊張感よりむしろ悲
壮感を漂わせている。物語はそんな病院で働く青年医師が、研究の道
に進むべきか目の前の一人の患者を安らかに見送るべきかの葛藤を通
じ、人の命を預かるとはどういうことかと問うていく。

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ハウスメイド - 福本次郎

全編思わせぶりにヒロインが抱える闇を際立たせようとする。(点数 40点)


(C)2010 MIROVISION Inc. All Rights Reserved.

控え目な笑顔とスカートから伸びたしなやかな脚。女の姿態はたちま
ち男の心に火をつけ、禁断の関係が幕を開ける。嫉妬、憎悪、殺意、
ふたりの秘密は、やがて女たちの肚に悪意を呼び覚ます。物語は、大
富豪に雇われた家政婦が主人に手を付けられ、妻とその母から仕打ち
を受けるあまりにも通俗的な内容ながら、全編思わせぶりにヒロイン
が抱える闇を際立たせようとする。

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日輪の遺産 - 福本次郎

死んでいった者、死を許されなかった者、生き残った者、それぞれの立場から戦争の不条理が描かれる。(点数 50点)


(C)2011「日輪の遺産」製作委員会

命を差し出したくらいでは贖えないほどの罪悪感を背負って生きなけ
ればならない苦しみに押しつぶされそうになる。自分を信じ従ってき
てくれた非戦闘員と上官の命令の間で板挟みになる主人公の苦悩は、
時が解決してくれる類のものでは決してない。映画は“マッカーサー
の財宝”を秘匿する密命を帯びた男が、日本再建の重大な目的の前で、
己の命だけでなく純真な少女たちの青春まで奪う価値があるのかを問
う。死んでいった者、死を許されなかった者、生き残った者、それぞ
れの立場から戦争の不条理が描かれる。

【ネタバレ注意】

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ハンナ - 福本次郎

ハンナの愛を知らない人生が悲しみを誘う。(点数 60点)

氷雪に閉ざされた深い森で殺人マシーンとして生まれ育てられたヒロ
インは己の運命に決着をつけるべく一人旅立つ。映画は、第三者との
接触なしに成長した少女が困難を克服する過程で愛や友情といった人
間的な情緒を手に入れていくのかと思いきや、ウエットな感傷に浸ら
ず自分探しに邁進するところがユニークだ。生き残るためには殺すし
かない状況で、感情を消して直観に従う姿は気高さすら覚える。

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リメンバー・ミー - 福本次郎

911が喪失ではなく再生のきっかけとなる、そんな映画はこの作品が初めてではないだろうか。(点数 60点)


(C)2010 Summit Entertainment, LLC.

兄の自殺を発見した男とチンピラに母を殺された女。近親者の死を目
の前で体験したふたりは心の空白を埋めるかのように求めあうが、恋
の喜びに浸る一歩手前で、先に逝ってしまった人への遠慮なのか、気
持ちに一線を引いてしまっている。映画は、ふたりの出会いと別れ、
やり直しの過程で “いまを精いっぱい生きる” 大切さを描く。無駄
な命などひとつもない、無駄な行動などひとつもない。誰かを愛し、
他人の役に立つことで人生は意味を持つのだ。

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インシディアス - 福本次郎

観客が嫌悪感を覚え、ハッと息をのみ、背筋を凍らせるにはどういう映像とサウンドが効果的かをよく知っている演出だ。(点数 50点)


(C)2010 ALLIANCE FILMS (UK) LIMITED, ALL RIGHTS RESERVED.

仰々しいタイトルバックと神経を逆なでする弦楽器の高音という古典
スリラー的オープニングは、懐かしさが湧くほどスタイリッシュ。観
客が嫌悪感を覚え、ハッと息をのみ、背筋を凍らせるにはどういう映
像とサウンドが効果的かをよく知っている演出だ。映画はそんな、悪
意に目を付けられた人々の恐怖を描く。音や気配だけでなく、あえて
姿をさらすことで怨念の強さを表現する悪霊たちのおどろおどろしさ、
ダースモール顔をした悪魔、彼らを追い払おうとする霊媒師。それら
のキャラクターはありふれているが、魂が抜けた肉体を悪霊が奪い合
う発想が新しい。

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ホームランが聞こえた夏 - 福本次郎

韓国の高校野球に対する考え方が非常に興味深かった。(点数 50点)


(C)2011 CJ Entertainment Inc. All Rights Reserved

戦う相手に同情される、それはスポーツマンにとって最も屈辱的なこ
と。いくら実力差があっても、全力を出すという最低限の礼儀すら示
されないのは侮辱以外の何物でもない。ろう学校の生徒で結成された
高校野球チーム、もちろん声による連携はなく、サインとアイコンタ
クトで意思疎通を図る。だが、ほとんどの選手は当然ながらコミュニ
ケーションが下手で自分のプレーで精いっぱい、バックを信じられな
い投手の一人相撲で滅多打ちにされたたあと、手抜きをされるのだ。

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レイン・オブ・アサシン - 福本次郎

ワイヤーアクションの新しい境地、中国映画がまだまだアクションの分野で発展する可能性を実感させてくれる。(点数 50点)


(C)2010, Lion Rock Productions Limited. All rights reserved.

武術の達人たちが宙を舞い壁を駆ける。彼らの重力に逆らった動きに
同調するようにカメラも縦横無尽に空間を切り取る。そのめくるめく
感覚はワイヤーアクションの新しい境地、中国映画がまだまだアクシ
ョンの分野で発展する可能性を実感させてくれる。さらにヒロインが
放つ剣の一撃は竹のようにしなり相手の急所に突き刺さる。特撮技術
を駆使した格闘シーンはリアリティには程遠いが、一種の様式美すら
感じさせる幽玄の世界を構築している。

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ゴーストライター - 福本次郎

まるでヒッチコックのようなタッチでじっくりと状況が染み通るのを待つ映像。(点数 80点)


(C)2009 R.P. FILMS – FRANCE 2 CINEMA – ELFTE BABELSBERG FILM GmbH – RUNTEAM III LTD

鉛色の重たい空、波高く荒れる海、不安を掻き立てる音楽…。現代風
のたたみかけるテンポではなく、まるでヒッチコックのようなタッチ
でじっくりと状況が染み通るのを待つ映像は、不可解で巨大な腐臭が
漂う事件に巻き込まれた主人公の感情をリアルに再現する。死者が残
したメッセージ、隠ぺいされた過去、そして戦争犯罪。映画は現代国
際政治のタブーを知ってしまった男が味わう恐怖を通じて、本当に恐
ろしいのは世界の仕組みが一部の組織に牛耳られていることであると
告発する。

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シャンハイ - 福本次郎

なかなか物語は前に進まないのが残念だった。(点数 40点)


(C)2009 TWC Asian Film Fund, LLC. All rights reserved.

愛した者に裏切られ、信じた者に見捨てられる。国家という途方もな
い重責を背負う人間にとって個人の感情や感傷など取るに足らず、戦
争の大きなうねりの中で愛だけが真実と思いこもうとしても、うたか
たのごとく弾けてしまう。太平洋戦争勃発前夜、租界を支配下に置く
列強が鎬を削り、日米の微妙な緊張と中国人レジスタンスによるテロ
が日常茶飯事だった上海。お互いに素性を明かせない男と女が出会い、
運命を共にする。映画は、米国の諜報員が殺された前任者の足跡を追
う過程で、日本軍の機密に迫りつつも許されない恋に落ちる姿を描く。

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