まるでショーウインドウにディスプレイされたような無機質な美しさを持つ手首なし死体。フォーカスを甘くした逆光の映像は幻想的な雰囲気を醸し出し、死に異常な関心を持ちそれを美化する高校生の奇妙な感情をシンボライズする。(40点)
まるで百貨店のショーウインドウにディスプレイされたような無機質な美しさを持つ手首なし死体。今にも動き出しそうなほど躍動感が残っているのに目は死んでいる。オブジェとして人々の目につくところに放置し、猟奇的な部分よりも芸術的な一面を強調することで、犠牲者に生きていた時以上の存在感を与えている。フォーカスを甘くした逆光の映像は幻想的な雰囲気を醸し出し、死に異常な関心を持ちなぜかそれを美化する高校生の奇妙な感情をシンボライズする。憧れなのか恐れなのか、命なき肉体への興味は彼ら自身も持て余しているようだ。
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警察官とロシアマフィア、そして警察官の息子でありながらマフィアの表のビジネスに加担している主人公。愛するものの死と復讐という、逃れられない運命に身を任せた男の正義に目覚める過程を緊迫感あふれるリアリズムで描く。(60点)
© 2007 2929 Productions LLC. All rights reserved
犯罪撲滅に燃える警察官と、警察を侮っているロシアマフィア、そして警察官の息子でありながらマフィアの表のビジネスに加担している主人公。彼は義理人情で結束を固めつつ非情の掟で支配する犯罪組織よりも、血のつながった家族との絆を選ぶ。まだ電子機器や通信手段が限られていた80年代末のローテク潜入捜査、暴力を厭わないソ連軍くずれのロシアマフィア、豪雨の中の壮絶なカーチェイス。愛するものの死と復讐という、逃れられない運命に身を任せた男の正義に目覚める過程を緊迫感あふれるリアリズムで描く。
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尾行・張り込みといった地味な調査から、盗みや銃撃戦まで命がけで現場をはいずりまわる男。テンションあふれる映像は、謎の人物を探すために奮闘する工作員の鼓動が聞こえてくるかのよう。彼の生身の肉体はリアリティをかもし出す。(60点)
© 2008 Warner Bros. Entertainment Inc.
尾行・張り込みといった地味な調査から、盗みや銃撃戦まで命がけで現場をはいずりまわる男。時には味方に足を引っ張られたりもする。信じられるのは自分だけなのに、身を守るための嘘も許されない。テンションあふれる映像からは、謎に包まれた人物を探すために奮闘するエージェントの胸の鼓動が聞こえてくるかのよう。土と汗、時には血にまみれた諜報活動は臨場感満点で、殺人マシーンではない生身の肉体を持った彼の行動は絵空事ではないリアリティをかもし出す。
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他人の悪夢に入り込んでその原因を排除できるが、己の悪夢には苦しめ続けられるというジレンマを持った主人公が、幻覚と悪夢の中をさまよう。その過程で同じようなシーンが繰り返される。もう少し表現にアクセントをつけるべきだ。(40点)
せっかく人の心を読めるのに、うまく使いこなす術を知らずにかえってパニックに陥ってしまう女。周りの人間の悪意にばかり敏感になって、いつしか被害妄想が制御できないくらいに膨らんで、自分を取り巻く世界すべてに恐れを抱くのだ。そんな彼女を母に持った青年は、さらに夢に侵入する能力を身につけている。映画は、他人の悪夢に入り込んで原因を排除できるが、己の悪夢には苦しめ続けられるというジレンマを持った主人公が、幻覚と悪夢の中でさまよった後に救済をもたらす。しかし、その過程で同じようなシーンが何度も繰り返されてうんざり。もう少し表現法を変えてアクセントをつけるべきだろう。
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夢を追うには歳を取りすぎているが、諦観するにはまだ早い。40代を迎えたものなら大抵がふと心に浮かぶ「オレって何」的な感慨は、かつてバンドブームの中で音楽界をリードしてきた中年ミュージシャンの中にも芽生えている。(50点)
夢を追うには歳を取りすぎているが、諦観するにはまだ早い。一応の地位を築いていて人生に満足しているが、何か物足りなさも覚えている。これまでの自分をぶっ壊すようなことにチャレンジしたいと思っているが、先延ばしにしたままだ。40代を迎えたものなら大抵がふと心に浮かぶであろう「オレって何」的な感慨は、かつてバンドブームの中で音楽界をリードしてきた中年ミュージシャンの中にも確実に芽生えている。映画は3人の40代ミュージシャンのコラボレーションを通じて、経済的な安定と肉体的な衰えは感性をどれだけ鈍化させているかの調査をしているようだ。
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侵略でもなく、友好でもなく、その目的は地球を人類から守ること。多様な生態系をもつ我々の星は、はるかに文明の進んだ宇宙人にも魅力にあふれているのだろう。いや、「我々の星」という思い上がりを打ち砕くことが彼の真意だ。(40点)
© 2008 TWENTIETH CENTURY FOX
侵略でもなく、友好でもなく、その目的は地球を人類から守ること。多様な生態系をもつ我々の星は、はるかに文明の進んだ宇宙人から見ても美しい魅力にあふれているのだろう。いや、「我々の星」という思い上がりを打ち砕くことこそ彼の真意だ。地球はそこに暮らすあらゆる生物・無生物の共有財産。それを勝手に汚染し消費し独占しようとする人間たちに対して大いなる警鐘を鳴らす。しかし、少なくとも彼らの一部は80年前には地球に到着していたわけだから、もっと早く警告してくれてもよかったはずだが。。。
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魔法遣いが人間の日常生活に普通に溶け込み、公務員としても働くことができる世界。魔法を身につけながらも、過酷な運命と闘わなければならないヒロインの姿を通じて、他人を癒すのは自分を癒すことであると映画は訴える。(40点)
© 2008 山田典枝/「魔法遣いに大切なこと」製作委員会
魔法遣いが人間の日常生活に普通に溶け込み、国から魔法士の認定証を受ければ公務員としても働くことができる。彼らは、依頼者の言葉にできなかった思いを伝えたり形にしたりする、一種のセラピストだ。もちろん非科学的なパワーで物理的に難事を解決する時もあるが、基本は人助け。魔法を身につけながらも、過酷な運命と闘わなければならないヒロインの姿を通じて、他人を癒すのは自分を癒すことであると映画は訴える。
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懺悔 - 福本次郎
1984年のソ連といえば、市民生活の監視は当たり前で、食糧など生活必需品も不足がち。日本ではそのような報道が主流だった。しかし、映画の舞台となった当時のグルジアでは思想的な窮屈さを我慢すれば案外暮らしやすそうだ。(60点)
この作品が製作された1984年のソ連といえば、まだゴルバチョフも登場しておらず、レーガン米国大統領から「悪の帝国」呼ばわりされていた時期。軍拡に走り、警察や共産党による市民生活の監視は当たり前で、食糧などの生活必需品の配給を受けるのに数時間も並ばなければならない。日本ではそのような報道が主流だった。しかし、映画の舞台となった当時のグルジアでは少なくとも衣食住は満ち足りている。思想的な窮屈さを我慢すれば案外暮らしやすそうなのが意外だった。
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人間嫌いというわけではないが、基本的に1人でいることが好き。そんな独身男の妄想に周囲が話をあわせていくうちに彼が人とのふれあいもよいものだと気付いていく過程は、他人の気持ちを過剰に気にする現代コミュニティの縮図だ。(70点)
© 2007 KIMMEL DISTRIBUTION,LLC All Rights Reserved
人当たりがよく、教会にも真面目に通い、誰にでも親切で、仕事も普通にこなす。街の人からは好感をもたれ兄夫婦も気にかけているのに、なぜか心理的な壁を作り必要以上に人とかかわろうとしない。人間嫌いというわけではないが、基本的に1人でいることが好き。そんな独身男に周囲が気を使い、彼の妄想に話をあわせていくうちに、いつしか彼は人とのふれあいもよいものだと気付いていく。主人公を見守る暖かい目とそれに応えようとする彼の姿は、まるで他人の気持ちを過剰に気にする現代コミュニティの縮図のようだ。
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人間関係から仕事上の悩みまで、文句を口にしながらも精一杯生を満喫している人々。思い通りにならないことばかりなのに、心を寄せる人に胸をときめかせるわずかな瞬間があるからこそ代わり映えのしない毎日に耐えられるのだ。(50点)
きらびやかなイルミネーションが夜空に浮かび上がるエッフェル塔、そんな観光客が喜びそうな表の顔ではなく、描かれるのはそこに住む普通の人々の暮らし。家族、友人といった人間関係から仕事上の悩みまで、文句を口にしながらも精一杯生を満喫している。そして、彼らの生の源となるのはやはり恋。老いも若きも思い通りにならないことばかりなのに、心を寄せる人に胸をときめかせるわずかな瞬間があるからこそ代わり映えのしない毎日に耐えられるのだ。
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日系人ながらも裏社会の幹部に上り詰めた男が、何ゆえギャンブルに手を染め、非合法組織に身を投じ、そして裏切ったのか。数少ない生存者のインタビューと資料映像で、マフィアに壊滅的打撃を与えた主人公の半生を振り返る。(40点)
頭部に3発の銃弾を撃ちこまれても生き永らえた男。日系人でありながらも裏社会の幹部に上り詰めたにもかかわらず、組織に切り捨てられた報復にFBIに協力する。いかなる環境で生まれ、何ゆえギャンブルに手を染め、どういう過程を経て非合法組織に身を投じ、そして裏切ったのか。映画は彼を知る数少ない生存者のインタビューと資料映像で、シカゴマフィアに壊滅的打撃を与えたTOKYO JOEことケン・エトーの半生を振り返る。だが、公判での証言の代償として証人保護プログラムを受け、残りの人生を人目を忍んで生きなければならなかったために、本人に関する資料が少なく、思い出話に終始する。
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恐怖と絶望、憎悪と苛立ち、疑問と勇気が交互に主人公夫婦の心に浮かび上がり、同じ感情を観客は体験させられる。救いのない状況下の人間の心理を描き、幸せな家族が理由なき邪悪に翻弄される過程は観客の忍耐を試すようだ。(70点)
© 2007 Celluloid Dreams Productions – Halcyon Pictures – Tartan Films -X Filme International
好感が違和感にかわり、さらに不安から怒りにまで達したとき、突然の暴力が襲い掛かる。その後は恐怖と絶望、憎悪と苛立ち、疑問と勇気が交互に主人公夫婦の心に浮かび上がり、彼らと同じ感覚を観客は体験させられる。究極の不条理、納得の行かない不快感。どっしりとカメラを据えた長回しのショットを多用して、救いのない状況下に置かれた人間の心理を余すことなく描き切る。端正な外見に秘められた計算された狂気、ほんのわずかな希望すら簡単に打ち砕いていく冷血、幸せな家族が邪悪に翻弄される過程は、見る者のの忍耐を試すかのようだ。
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舌足らずなしゃべり方でとりとめもなく話しているかと思えば、歌いだすと一転して饒舌に自分の感情を訴える。映画はCoccoというシンガーソングライターの2ヶ月間のツアーに密着することで、彼女の生き方を浮き彫りにしていく。(40点)
舌足らずなトークでほとんど意味不明のことをとりとめもなく話しているかと思えば、歌いだすと一転して饒舌に感情を訴える。沖縄という、米軍基地を憎みながらも依存しなければ生きていけない運命を背負った島に生まれ育った諦めと悲しみ、その一方で明るく前向きに暮らしている人びとのしたたかさ。人はまだしも、太古から住むジュゴンの海を奪われることに対しては怒りを露にし、抗議行動に立ち上がる。映画はCoccoというシンガーソングライターの2ヶ月間にわたるツアーに密着することで、彼女の生き方を浮き彫りにしていく。
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冷たい水につかりながら夜襲に向かったり、トンネルから敵陣に爆弾を投げ込んだり、スケールの大きさを強調するような合戦シーンとは一線を画し、前線ではいずりまわる兵士の視線で戦争を描くシーンはリアリティにあふれる。(40点)
小銃と火種だけは肩から上に持ち上げて胸まで冷たい水につかりながら夜襲に向かったり、トンネルから敵陣に爆弾を投げ込んだり、スケールの大きさを強調するような戦闘シーンとは一線を画し、前線ではいずりまわる兵士の視線で戦争を描くシーンはリアリティにあふれる。古代でも中世でも現代でもない17世紀前半の欧州、甲冑を脱ぎ捨てた軍人はいかに戦ったか。さらに長槍歩兵同士の合戦では硬直した槍衾の下をくぐって短剣で敵を刺すなど、初めて見るような戦い方に目を見張る。しかし、戦場を離れた主人公のエピソードは前後関係を端折ったような急ぎ足の語り口で、元ネタを知らないと因果関係がよくわからない。
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仕事は有能、友人に恵まれ、夜の相手にも事欠かない。だが、本当に愛せる男は見つからないという悩みを抱えるNYのアラフォー独身キャリアウーマン。映画は彼女の日常を通じて、恋することの手軽さと愛することの困難を描く。(50点)
仕事は有能、友人に恵まれ、夜の相手にも事欠かない。だが、本当に愛せる男はなかなか見つからないというリアルな悩みを抱えるNYのアラフォー独身キャリアウーマン。それは本人や周囲の人が思っているように「男運が悪い」のではなく、直感が信じられず行動に移せないだけなのだ。彼女は強迫観念に縛られるかのようにデートとセックスを繰り返し、心の空白を埋めようとする。結婚はしたいが妥協はしたくない、運命の出会いを信じるほど若くはないが消去法で選びたくない。そんなわがままがもう通用しないことは分っている。映画は彼女の日常を通じて、恋することの手軽さと愛することの困難を描く。
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