チェ 39歳 別れの手紙 - 福本次郎

輝かしい成功体験を引っさげて乗り込んだ新天地は予想と違い、兵士たちの士気の低下は手に負えなくなっていく。革命に生きた主人公の最期の約一年に焦点を当て、息絶えてもなお高潔な理想を捨てなかった壮絶な生きざまに迫る。(80点)

© 2008 Guerrilla Films,LLC?Telecinco Cinema, S. A. U. All Rights Reserved

 あてにしていた支援が得られず、搾取されているはずの人民の教化も遅遅として進まない。輝かしい成功体験を引っさげて意気揚々と乗り込んだ新天地はあまりにも予想と違い、兵士たちの士気の低下と規律の緩みは手に負えない。さらにキューバの二の舞を恐れた米国の援助のもと、高度な訓練を受けた特殊部隊に追い詰められていく。映画は革命を南米に広めようとして挫折したゲバラの最期の約一年に焦点を当て、息絶えてもなお高潔な理想を捨てなかった壮絶な生きざまに迫る。

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愛のむきだし - 福本次郎

ほとばしるような激情が圧倒的なパワーとなるような、少年の肉欲をめぐる彷徨は波乱万丈、それがピュアな愛として昇華される過程は清明なカタルシスさえ味わえる。映画は人間の内奥に迫り、容赦なくむきだしの感情を抉り出す。(90点)

愛のむきだし

© 「愛のむきだし」フィルムパートナーズ

 ほとばしるような激情が圧倒的なパワーとなって、4時間近い上映時間を一気に突っ走る。先の読めない展開は一切の予断を許さず、俳優たちの熱演と緻密に練られた演出は細かい齟齬を力業でねじ伏せる。破壊的な情熱をフィルムに焼き付けたかのような物語は、園子温監督の魂を投影しているかのよう。一人の少年の肉欲をめぐる彷徨はまさに波乱万丈、それがピュアな愛として昇華されるラストには清明なカタルシスさえ味わえる。映画は人間の内奥に迫り、容赦なくむきだしの感情を抉り出す。

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マンマ・ミーア! - 福本次郎

◆少女のようにベッドの上を飛び跳ね、パワフルに踊りだしたかと思うと、桟橋から海に飛び込む。もはや60歳近い年齢のメリル・ストリープのテンションの高さが異様なまでにこの作品を盛り上げ、すっかり主役の座を奪ってしまった。(50点)

 幼い少女のようにベッドの上を飛び跳ね、若者のようにパワフルに踊りだしたかと思うと、桟橋から海に飛び込む。もはや60歳近い年齢になったメリル・ストリープのテンションの高さが異様なまでにこの作品を盛り上げている。さらに昔の恋人からプロポーズされたかと思うと、最後にはロックンローラーのようなステージ衣装に身を包んでABBAのナンバーを熱唱する暴走ぶり。本来、結婚を控えた20歳のヒロインがまだ見ぬ父親への憧れを描こうとしていたはずなのに、すっかり主役の座を奪ってしまった。

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誰も守ってくれない Nobody to watch over me - 福本次郎

平和な日常が突如として崩れていく。自由と名前が勝手に奪われ、犯人の家族だという理由で世間からは断罪され、親子はバラバラになっていく。当事者たちが感じる現実感を伴わないまま周囲に流されていく感覚が非常にリアルだ。(80点)

© 2009 フジテレビジョン 日本映画衛星放送 東宝

 平和な日常が突如として崩れていく。原因は自分にあるわけではないのに、自由と名前が奪われ、人生が暗転する。そして犯人の家族だというだけで世間からは断罪され、親子はバラバラになっていく。当事者たちが感じる現実感を伴わないまま周囲に流されていく感覚がリアルだ。映画は殺人犯の兄を持った少女がマスコミとネット社会による執拗な追跡を受ける過程を通じて、やり場のない怒りを鎮める方法を模索する。加害者は法廷で裁ける。しかし、その肉親に対してはどこまで責任を追及すべきなのだろうか。

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ジョッキーを夢見る子供たち - 福本次郎

馬は馬主からの大切な預かりものだから、敬意を持って接しなければならず、馬を気持ちよく走らせることを最優先にしろと教え込まれる。映画はジョッキー養成学校の少年たちの成長を通じて、プロになるとはどういうことかを問う。(50点)

ジョッキーを夢見る子供たち

© 2008Groupe Deux

 まだ夜も明けきらない早朝の厩舎、子どもたちは一心に敷き藁を入れ替え、馬にブラシをかける。少しでも汚れが残っていると容赦なく教官の叱責が飛ぶ。馬は馬主からの大切な預かりものというだけでなく、プライドの高い動物だから、敬意を持って接しなければならない。自分が楽しむより馬を気持ちよく走らせることを最優先にしろと教え込まれる。映画はジョッキー養成学校の少年たちの成長を通じて、プロになるとはどういうことかを問う。

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レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで - 福本次郎

満ち足りた生活を送っているのに、漠然とした不安を感じている。それは、代わり映えしない日常に埋もれてしまったことに対する絶望的な虚無。主人公が抱える「人生はこんなはずじゃなかった」という思いが非常にリアルだ。(70点)

レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで

© 2008 Dreamworks LLC. All Rights Reserved.

 家族と仕事、そして立派な家と車。何不自由のない満ち足りた生活を送っているのに、未来には漠然とした不安を感じている。それは、かつて自分たちは「特別な存在」と思い込んでいたのに、いつしか他人と同じような代わり映えしない日常に埋もれてしまったことに対する絶望的な虚無。そんな、もう若くない夫婦が再び夢を追いかけようとして、さまざまな障害にぶつかっていく。夫の諦観、妻の焦燥、ふたりが抱える「人生はこんなはずじゃなかった」という後悔が非常にリアルだ。

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エレジー - 福本次郎

年老いてもなお衰えない欲望。愛、嫉妬、躊躇・・・。年を取るよりも分別くさくなることを心配するという、性的にラジカルであり続けようという男の恋を描くことで、枯れない老人というのは恥をかくことを恐れない人だと教えてくれる。(70点)

エレジー

© 2008 LAKESHORE ENTERTAINMENT GROUP LLC. All Rights Reserved.

 年老いてもなお衰えることのない女への欲望。それはただ性欲を満たせばよいという単純なものではなく、精神的な充足感も得られなければならない。愛、嫉妬、躊躇。年を取る心配よりも分別くさくなることを心配するという、いまだ性的にラジカルであり続けようという男の恋を描くことで、枯れない老人というのは恥をかくことを恐れない人だと教えてくれる。煩悩に憑りつかれた老学者をベン・キングスレーが好演。死が身近なものになっても生のエネルギーを発散させるさまは潔さすら感じさせる。

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007/慰めの報酬 - 福本次郎

もはや何が正しくて誰が味方なのか判然としない。MI6にもCIAにも内通者がいる現状では、信じられるのは己の良心のみ。恋人を失った悲しみがその暴走を加速させ、強靭な肉体と精神は殺した人間の数だけ傷つき薄汚れていく。(80点)

007/慰めの報酬

 もはや何が正しくて誰が味方なのか判然としない。善と悪の境目が限りなく曖昧になった現代、007自身も女王陛下や国家の安全保障のために命を張っているわけではない。MI6にもCIAにも敵の内通者がいる現状では、信じられるのは己の良心のみ。愛するものを失った悲しみがその暴走を加速させる。接触してきた相手をことごとく排除する殺人マシーンとなってもボンドは信念を曲げず、強靭な肉体と精神は殺した人間の数だけ傷つき薄汚れてしまう。その姿は価値観が混迷する時代には正義とヒーローは両立し得ないということを如実に物語る。

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我が至上の愛?アストレとセラドン? - 福本次郎

川のせせらぎ、風のささやき、小鳥のさえずり。自然が織りなす見事なハーモニーがみずみずしい映像にマッチし、ローマの神々と土着の神々を信仰する素朴な人々が織りなすその愛の物語はファンタジーの世界に迷い込んだよう。(50点)

我が至上の愛?アストレとセラドン?

© Rezo Productions / C.E.R.

 川のせせらぎ、風のささやき、小鳥のさえずり。自然が織りなす見事なハーモニーがどんな美しい音楽よりもみずみずしい映像にマッチしている。太陽の恵み豊かな季節、緑濃い大地と柔らかい空気、まだキリスト教の洗礼を受けていない5世紀のガリアにおいて、ローマの神々と土着の神々を信仰する素朴な人々が織りなす愛の物語はファンタジーの世界に迷い込んだよう。しかし、文語を棒読みするセリフ回しは紙芝居を見ているような躍動感のなさ。映画は楽園にいるような心地よさを与えてくれるが、逆にそれは変化の乏しさでもある。

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劇場版 カンナさん大成功です! - 福本次郎

全身美容整形で美貌に変身したヒロインの「美人生活」をコミカルに描くだけでなく、容姿よりも中味が大切などという建前を根底から否定する。社会における女のヒエラルキーは容姿で決まるというルールは、女が作ったものなのだ。(40点)

 ブタゴリラと呼ばれていた女が、全身美容整形で美貌に変身したらどうなるか。彼女が憧れていた「美人生活」をコミカルに描くだけでなく、容姿よりも中味が大切などという建前を根底から否定する。社会における女のヒエラルキーは容姿で決まるというルールは、男が作ったものではなく、女が自分の立ち位置がどの辺りにあるのか確かめたくて作ったものなのだ。しかし、映画はヒロインの複雑に捩れた気持ちに迫ろうとはせず、ただ彼女を演じる山田優が過剰に科を作った所作と独白でコンプレックスを裏返しにするだけ。もう少し彼女の繊細な心理を描いて欲しかった。

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ワンダーラスト - 福本次郎

自分の夢がいつの日にか叶うことを信じて、日々の暮らしを我慢している3人の男女。そんな彼らの「努力している姿」をあえて描かないことでスタイリッシュな映像に仕上げられているが、わかりきった格言で悪ぶる必要はあるまい。(40点)

 自分の夢がいつの日にか叶うことを信じて、日々の暮らしを我慢している3人の男女。可能性を模索し、チャンスを待っているうちに時は容赦なく流れていく。萎んでいく希望と膨らんでいくあきらめの中、お互いの傷をなめるように身を寄せ合っている。そんな彼らの「努力している姿」をあえて描かないことでスタイリッシュな映像に仕上げられているが、人生の岐路に立っている若者の奮闘物語に変わりはなく、「悪徳と智恵コインの表裏」などというわかりきった格言で悪ぶる必要はあるまい。

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感染列島 - 福本次郎

インフルエンザが流行している時期だからこそ、導入部は非常に身近に感じてしまう。ワクチン不足や院内感染等、現実の事例を巧みに取り入れ、ウイルスという脅威に対してマスクで予防することがいかに大切かを教えてくれる。(30点)

© 2009 映画『感染列島』製作委員会

 インフルエンザが流行している時期だからこそ、導入部は非常に身近に感じてしまう。医者の誤診、ワクチン不足、院内感染等、現実に起きている事例を巧みに取り入れ、ウイルスという目に見えない脅威に対してマスクで予防することがいかに大切かを教えてくれる。だが、この作品から何らかの意義を見出すのはそこまで。人々がパニックになる様子はありきたり、医療関係者の頑張る姿も空回り。さらに後半の湿っぽいエピソードの連続が映画のスピードを完全に殺してしまい、スクリーンを見つめているのがつらくなる。

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ヘルライド - 福本次郎

大排気量・チョッパーハンドルのハーレーにまたがった暴走族風の男たちは酒と女と暴力を生きがいにスロットルをふかす。男の体臭が感じられるような映像はマカロニウエスタンへの強烈な憧憬だが、キャラクターがあまりにも単純だ。(40点)

 大排気量・チョッパーハンドルのハーレーにまたがった暴走族風の男たち。酒と女と暴力を生きがいにスロットルをふかす。彼らが荒野の道を走る目的は何なのか、どうやって生計を立てているのか、そういった生活臭は一切排除して、ただ男の体臭が感じられるような映像に終始する。そこに感じられるのはマカロニウエスタンへの強烈な憧憬。サボテンだらけの砂漠とうらぶれた酒場、そしてはるかな時を経た復讐は容赦なく敵を殺し、床や天井に血しぶきを撒き散らす。だがキャラクターがあまりにも単純で、これでは現代の観客を納得させることはできない。

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戦場のレクイエム - 福本次郎

ただ一人生き残った司令官は、部下の遺骨を回収するために黙々とシャベルを地に突き刺す。映画は、彩度を落とした映像と手持ちカメラで戦場のリアルを再現し、落ち着いた色調で過去を取り戻そうとする男の気持ちを表現する。(60点)

戦場のレクイエム

© 2007 Huayi Brothers Media & Co.,Ltd. Media Asia Films(BVI) Ltd. All Rights Reserved.

 死にゆく者が感じる肉体の痛みと生き残った者の胸の疼き。銃弾と砲弾が飛び交う前線で、次々と部下の体が引き裂かれ息絶えていくなかでただ一人生き残った司令官は、部下の遺骨を回収するために黙々とシャベルを地に突き刺す。彼を衝き動かすのは撤退の判断を誤った自責の念と、失踪扱いされた部下の名誉を回復したいという思い。映画は、彩度を落とした映像と手持ちカメラの臨場感で戦場のリアルを再現し、落ち着いた色調で過去を取り戻そうとする男の気持ちを表現する。

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クローンは故郷をめざす - 福本次郎

進歩したクローン技術は、心まで再生できるのか。クローンがそのオリジナルの人の記憶をたどるうちに背負った苦悩まで追体験する。しかし、メリハリのない演出とエピソードは、クローンの葛藤を十分に描いているとはいえない。(30点)

 進歩したクローン技術は、肉体を再生できても、心まで再生できるのか。無機質で静謐な映像は、人間をモノとしか考えない科学者の思考を象徴しているよう。彼らは人の脳をデジタルデータに変換することはできても、人格や精神活動まで正確に転写することなど不可能であることに気付かない。映画は、クローンがそのオリジナルとなった人の記憶をたどるうちに、オリジナルが背負った苦悩まで追体験する過程を通じて、この技術の在り方を問う。しかし、メリハリのない単調な演出とヤマ場の乏しいエピソードの連続は、クローンゆえの葛藤を十分に描いているとはいえず、退屈な印象を免れない。

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