雷神-RAIJIN- - 福本次郎

スティーブン・セガール簡単なアクションすらできないほど衰えたのか。格闘シーンは明らかに代役が担当し、主人公は後姿しか映らない。これでは彼の合気道を基本にした独特の拳法を楽しみにしているファンをも裏切っている。(20点)

雷神-RAIJIN-

 もはやスティーブン・セガール簡単なアクションすらできないほど衰えてしまったのか。格闘シーンは明らかにダブルが担当し、主人公は後姿しか映らない。セガールの顔がスクリーンに現れても、それはアップだけで彼の手足で敵を攻撃することはない。危険なスタントだから代役に任せるというのではなく、もう激しい動きはできないからと格闘シーンはダブルに演じさせているのがミエミエ。もちろんセガールの作品に過剰な期待はしていないが、これでは彼の合気道を基本にした独特の拳法を楽しみにしているファンをも裏切っている。

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彼女の名はサビーヌ - 福本次郎

視線の定まらない目、緩慢な動作、口から垂れたよだれ、退行した理性。自閉症を目の当たりにして、当人にしてやれるのは見守ることだけ。安らかな生を願いながらも、いつか回復する日が来るのではと期待する気持ちが悲しい。(70点)

 視線の定まらないうつろな目、緩慢な動作、口から垂れたよだれ、貧しいボキャブラリー、そして不安になると暴力的衝動に走る。もはや認知症患者のように退行した理性は介護者なしでは満足に生きていけない。さらに食欲を抑えきれず幾重にも贅肉が付いてしまった肉体は短時間の運動で疲労する。尊厳を失いつつある妹をカメラに収める姉がしてやれるのは見守ることだけ。安らかな生を願いながらも、いつか自閉症が回復する日が来るのではと期待する気持ちが悲しい。

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三国志 - 福本次郎

中国内陸部の荒涼とした砂漠は、西部劇の舞台に似ている。そこに漂うのは、武に生きるものは使い捨てにされる運命にあるという悲しみ。主人公の心象風景は、マカロニウエスタンのような弦をかき鳴らすギターの調べが似合う。(50点)

三国志

© TAEWON ENTERTAINMENT CO., LTD. and © VISUALIZER FILM PRODUCTION LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.

 どこまでも続く中国内陸部の荒涼とした砂漠は、西部劇の舞台に似ている。時は国が3つに割れてそれぞれが覇を競う戦乱の時代、映画は勇猛と豪腕で名を馳せた一人の豪傑に焦点を当て、まっすぐな軍人としての生き様に迫る。そこに漂うのは、いかに腕が立とうとも、武に生きるものは所詮は支配者の駒に過ぎず、使い捨てにされる運命にあるという悲しみ。主人公の心象風景は、マカロニウエスタンのような弦をかき鳴らすギターの調べが似合っていた。

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ディファイアンス - 福本次郎

座して死を待つより銃を手にする道を選んだ男の戦いは、やがてひとりでも多くの同胞の命を救い、生き延びることに変わっていく。普通の男がリーダーとしての使命に目覚めていく過程での葛藤をリアリティたっぷりに再現する。(60点)

ディファイアンス

© 2008 byDEFIANCEPRODUCTIONS, LLC. All Rights Reserved.

 座して死を待つより銃を手にする道を選んだ男。その戦いはやがて敵を倒すよりもひとりでも多くの同胞の命を救い、生き延びることに変わっていく。兵士としての優秀さよりも、女子ども老人もいる集団をまとめていく能力が必要とされる。弱きものを守り、夜露をしのぐ小屋を作り、食料を調達する。もちろん敵とも闘わなければならない。普通の男が窮地にある仲間を救ううちに、リーダーとしての使命に目覚めていく過程での葛藤をリアリティたっぷりに再現する。

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余命 - 福本次郎

結婚10年目にしてやっと授かった小さな命、しかし同時に乳がんが再発する。ヒロインは難問を一人で抱え込み、愛する夫の気持ちを慮るあまり事実を口にしないばかりか、心配してくれる友人たちの心遣いもつい踏みにじってしまう。(40点)

 結婚10年目にしてやっと授かった小さな命、しかし同時に以前患った乳がんが再発する。子供を捨て治療に専念するか、子供が生まれるまで治療を先延ばしにするか。ヒロインは己の延命より、生きた証を残す道を選ぶ。ところが彼女は難問を一人で抱え込み、愛する夫の気持ちを慮るあまり事実を口にしないばかりか、心配してくれる友人たちの心遣いもつい踏みにじってしまう。そのあたりの葛藤がどこかから回りしていて、これほど大事なことを相談できないとはどういうことなのだろうという疑問がわく。事は自分だけの問題ではない、周囲の人間に援助を頼めばもっと明るい展望が開けたに違いない。

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ベンジャミン・バトン 数奇な人生 - 福本次郎

愛する男は時とともに肌の張りを取り戻し、生気が蘇る。年々開く自分との外見の年齢差を実感し、劣等感を覚えていく妻の気持ちがとてもリアル。3時間近い長尺ながらメリハリあるエピソードで最後まであきさせない演出力が光る。(70点)

© 2008 Paramount Pictures Corporation and Warner Bros. Entertainment All Rights Reserved

 輝くような美しさを誇り不可能はないと根拠もなく思いこんでいた20代のころとは違い、30歳を過ぎると確実に身体の衰えはごまかしきれなくなる。一方で愛する男は時とともに肌の張りや艶を取り戻し、生気が蘇る。顔のしわが増え体のシミがとれなくなっていくのに、相手からは消えていく。年々開いていく自分との見た目の年齢差を実感し、劣等感すら覚えていく妻の気持ちがとてもリアルだ。逆に若返る運命を受け入れる主人公は達観した雰囲気をまとい、精神と肉体のアンバランスに何とか折り合いをつけようとする姿勢は悲しみさえ漂わせる。3時間近い長尺ながらメリハリあるエピソードで最後まであきさせない演出力が光る。

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ヘブンズ・ドア - 福本次郎

ソファでまったりしている男の横で、少女が買ってきた洋服を次々と着替える。男の時間は通常の進み方なのに少女のファッションショーは早送り、そのふたつをを同じフレームの中で見せるという非常に斬新な表現が印象に残る。(40点)

© 2009 アスミック・エースエンタテインメント/フジテレビジョン/ジェイ・ストーム

 ソファでまったりしている男の横で、少女が買ってきた洋服を次々と着替えてみせる。男の時間は通常の進み方なのに少女のファッションショーは早送り、そのふたつをを同じフレームの中で見せるという非常に斬新な表現が印象に残る。それ以外にも水槽を浮遊するクラゲ、失神する男が見るビジョンなど、さまざまなシーンで洗練されたシャープな映像を見せてくれる。しかし、そこで繰り広げられる物語は説得力に乏しくオリジナルのドイツ映画の骨格をなぞっているだけ。ひと組の男女が死に向かう過程で、もっと生に対する切実さを描かないと、何の共感も得られない。

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悲夢 Himu - 福本次郎

愛し合う運命にありながら、生きているうちは結ばれない男女が辿る心の変遷を通じて、愛の本質に迫る。状況の説明は一切なく、ただ登場人物の不思議な体験に身を浸すうちに切なさがこみ上げてくるような映像が深い余韻を残す。(50点)

悲夢 Himu

© 2008 KIM KI DUK FILM All Rights Reserved

 別れた恋人が愛おしくてたまらない男の見る夢が、別れた男が憎くてたまらない女の現実となる。肉体は離れているのに、彼らの心はどこかでつながっている。しかし男の幸福が女の不幸となるという事実に、女は傷つき、男はそんな女に責任を感じ眠らないことで償おうとする。最初は訝り罵倒しあいながらも、やがて女は状況を理解する。物語は、愛し合う運命にありながら、生きているうちは結ばれることが叶わない男女が辿る心の変遷を通じて、愛の本質に迫る。状況の説明は一切なく、ただ登場人物の不思議な体験に身を浸すうちに切なさがこみ上げてくるような映像が深い余韻を残す。

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ララピポ - 福本次郎

何をやってもうまくいかないのに、なんとか生きていけるのは、希望が残っているから。理想の姿を想像している間だけは空想の主人公になれる。そんな負け組に近い人々の日常を通じて、リアルな感情をポップな感覚で表現する。(50点)

ララピポ

© 2009「ララピポ」製作委員会

 何をやってもうまくいかないことばかりなのに、なんとか生きていけるのは、ほんのわずかでも希望が残っているから。いや、もはや妄想に近いものがあるのだが、それでも理想とする姿になりきっているところを想像している間だけは空想の主人公になれる。そんな限りなく負け組に近い人々の日常を通じて、彼らのリアルな感情をポップな感覚で表現している。今の生活は自分のものではない、もっと輝ける人生が待っているはずだと思いながらも、這い出せずもがいている登場人物が愛おしい。

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シャッフル - 福本次郎

朝目覚めたら昨日とは連続していない今日が始まる。過去のことなのに記憶になく、未来のことなのに結果がわかる。自分だけが蚊帳の外のような疎外感に、世界が歪んで見えてくるような感覚に苛まれるヒロインの心情がリアルだ。(40点)

シャッフル

© 2007 Premonition Pictures, Inc. All Rights Reserved.

 朝目覚めたら昨日とは連続していない今日が始まる。過去のことなのに記憶になく、未来のことなのに結果がわかる。回りの人間がすべての事情を知った上に口裏を合わせ、自分だけが蚊帳の外に置かれているような疎外感に、世界が歪んで見えてくる。そんな不思議な感覚に苛まれるヒロインはその状況の謎解きに挑戦していく。しかし、映画はなぜ彼女だけが奇妙な体験をするのか説明するわけではなく、運命をコントロールしようとする彼女も無力だ。

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旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ - 福本次郎

ゴリラの恋やチンパンジー夫婦の思いやりなど、あたりまえのようで今まで知らなかった動物の生態をカメラは根気よくとらえ、命の尊さを教える。単に成功物語に留まらず、動物の気持ちを理解しようとする映画の姿勢がすばらしい。(60点)

旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ

© 2009『旭山動物園物語』製作委員会

 飼育員に恋をしたメスゴリラが担当が替わったとたんに衰弱死したり、妊娠中毒で食餌制限中のチンパンジーの手をオスが握り締めてやったりと、類人猿とはかくも濃やかな愛情を持っているのか。親が子を世話をするという本能ではなく、相手を一個のパーソナリティとして愛している。あたりまえのようで今まで知らなかった生き物の生態をカメラは根気よくとらえ、人間たちに命の尊さを教える。単に有名動物園の成功物語に留まらず、動物たちの気持ちを理解しようとする映画の姿勢がすばらしい。

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20世紀少年 -第2章- 最後の希望 - 福本次郎

目の中に人さし指を立てたイラストを描いたマスクの教祖が恐ろしく漫画的で、そこだけが異様な違和感を放っている。荒唐無稽な展開の連続にため息を漏らしている観客に対し「これは所詮マンガなんだよ」と言い訳しているようだ。(40点)

© 1999,2006 浦沢直樹 スタジオナッツ/小学館 © 2009 映画「20世紀少年」製作委員会

 カルト教団に支配された近未来の日本、国民はますます従順になり信仰を深め、学校では歪んだ歴史観を植えつけて生徒を洗脳していく。そんな、社会が全体主義に毒されていく過程が非常に不気味だ。しかし、目の中に人さし指を立てたイラストを描いたマスクをかぶったままの教祖が恐ろしく漫画的で、せっかく実写映画にしているのにそこだけが異様な違和感を放っている。それは、リアリティのまったくない荒唐無稽な展開の連続にため息を漏らしている観客に対し「これは所詮マンガなんだよ」と言い訳しているよう。原作では象徴的なシーンということで許されるような描写も、映像にすると意味不明になる可能性もあると作り手は気づくべきだ。

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キャラメル - 福本次郎

いくつになっても現役の「女」でありたいと願うさまざまな年代の女性たちの日常を散文的な筆致でスケッチしつつ、カメラは鋭く人間の内奥に迫る。平凡で人間的な悩みを持てることが彼女たちにとっていかに幸福かを物語っている。(60点)

© Les Films des Tournelles – Les Films de Beyrouth – Roissy Films – Arte France Cinema

 結婚、不倫、同性愛、抗加齢、そして老い・・・。いくつになっても現役の「女」でありたいと願うさまざまな年代の女性たち。日々のできごとに心をときめかせたり、ガッカリしたり、怒ったり、喜んだりしながら、大きな夢を持っているわけではないけれど、小さな幸せは掴み取ろうとする。そんな彼女たちの日常を散文的な筆致で描きつつ、カメラは鋭く人間の内奥に迫る。それは戦乱に明け暮れたベイルートという都市では、平凡で人間的な悩みを持てることが彼女たちにとっていかに幸福かを物語っている。

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ロルナの祈り - 福本次郎

優しさゆえに弱い男を愛してしまい、罪の意識ゆえにその男の痕跡を残そうとする女。豊かな生活を夢見たものの犯罪に手を染めてしまい、それでも最後の良心だけは命がけで守ろうとするヒロインの切実な行為が哀しいほど美しい。(70点)

ロルナの祈り

 優しさゆえに弱い男を愛してしまい、罪の意識ゆえにその男の痕跡を残そうとする女。何度も立ち直ろうとしては挫折する男にうんざりしながらも、頼りにされると彼を突き放すことができない。そんな、腐れ縁のような関係のカップルに隠された殺意。東欧から豊かな生活を夢見てベルギーに来たものの、カネのために犯罪に手を染めてしまい、それでも最後の良心だけは命がけで守ろうとするヒロインの切実な行為が哀しいほど美しい。

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天使の眼、野獣の街 - 福本次郎

あらゆる人物に目を配り隅々まで記憶し、情報の断片をもとに地を這うような調査を続け、犯罪の核心に迫っていく捜査官たち。目と足だけを頼りに悪党の居場所を突き止めていく過程から、張り詰めた現場の息遣いが聞こえてくる。(70点)

天使の眼、野獣の街

© 2007 Sundream Motion Pictures Limited

 あらゆる人物に目を配り隅々まで記憶する。鋭い観察力だけでなく先を読む洞察力、そして臨機応変の対応も求められる。情報の断片をもとに地を這うような調査を続け、犯罪の核心に迫っていく捜査官たち。彼らの任務は監視と追跡、それゆえ名前は同僚以外には知らせず、犯人逮捕という華々しい舞台も用意されていない。目と足だけを頼りに悪党の居場所を突き止めていく過程は、張り詰めた現場の捜査官の息遣いが聞こえてくるようだ。派手な銃撃戦やカーチェイスとは無縁でも、緊張感あふれる映像に思わず手に汗を握る。

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