ウォーロード/男たちの誓い - 福本次郎

主人公が戦場で居並ぶ敵に矛を横一閃、一気に6人の足首をぶった切る。武人として優れているだけでなく軍略にも富む彼は、男同士の友情がはかなく壊れゆく過程で、大義ゆえに信義を捨てる苦悩と悲しみを負わなければならない。(60点)

ウォーロード/男たちの誓い

© 2008 Talentaid International Ltd. All Rights Reserved.

 ジェット・リー扮する将軍が戦場で居並ぶ敵に矛を横一閃、一気に6人の足首をぶった切る。数多の映画で描かれてきた合戦で、これほど効果的な攻撃法があっただろうか。胸や首を狙うのではなく、片足を使えなくすることで相手の戦闘能力を奪い、なおかつ致命傷を与えないことで敵側の負担を増やす。このシーンに見られるように、彼の役は武人として優れているだけでなく軍略にも富む。しかし大義ゆえに信義を捨てる苦悩と悲しみを負わなければならない。物語は共に生き共に死なんと誓った男たちの友情がはかなく壊れゆく過程で、人間の器の大きさは治める範囲や人数に比例することを教えてくれる。

この映画の批評を読む »

余命1ヶ月の花嫁 - 福本次郎

乳がん、恋人の献身、憧れのウェディングドレス、永遠の別れ。涙腺を刺激する要素が満載なのに、あえてくどい演出はせずカメラは淡々と若い二人を見つめる。だが、繰り返されるアップ、長めのカットなど、映像は間延びしている。(40点)

余命1ヶ月の花嫁

© “April Bride”Project

 乳がん、恋人の献身、憧れのウェディングドレス、永遠の別れ。涙腺を刺激する要素が満載なのに、あえてくどい演出はせず、カメラは淡々と若い二人を見つめる。繰り返されるアップ、長めのカット、感情を抑えたセリフ回しなど、どこか間延びした映像はドキュメンタリー番組を意識したのか。しかし、実話に基づいているといっても劇映画にするのならば、もっと劇的な構成で物語を盛り上げるべきだ。エピソードにも緩急が乏しく、もう少し煮詰めた内容にする必要があった。

この映画の批評を読む »

バンコック・デンジャラス - 福本次郎

高額の報酬と引き換えに得るものは究極の孤独。それは一匹狼の殺し屋として暗殺の成功率を100パーセントに保つために自らに課した掟だ。喧騒と排気ガス、悪徳と暴力に満ちた街、バンコックの瘴気が主人公の計算を狂わせていく。(50点)

バンコック・デンジャラス

 一瞬も気が休まる時はなく、胸のうちを打ち明ける相手もいない。高額の報酬と引き換えに得るものは究極の孤独。それは一匹狼の殺し屋として暗殺の成功率を 100パーセントに保つために自らに課した掟だ。しかし、そんな男が弟子を取り、堅気の女に心を奪われたとき、精密機械に誤差が生じるかのごとく運命が暗転。喧騒と排気ガス、悪徳と暴力に満ちた街・バンコック、その瘴気が主人公の計算を狂わせていく。守るべきものができるということは、エネルギーの源となる一方で弱点にもなるのだ。映画は愛と情ゆえに身を滅ぼしてゆく男を通じて、銃弾と血にまみれた死の美学を描く。

この映画の批評を読む »

THE CODE/暗号 - 福本次郎

黒いスーツにネクタイ、中折れ棒に黒縁めがねの探偵たちが、爆弾のコードを解除していくプロローグは非常にスリリング。現代的な都市の風景とレトロモダンな探偵の対比が鮮明で、この作品の持つスタイルを効果的に印象付ける。(50点)

THE CODE/暗号

© 2008 THE CODE プロジェクト

 黒いスーツにネクタイ、黒い中折れ棒に黒縁めがね。同じようなコスチュームに身を包んだ探偵たちが、川崎市の各地に仕掛けられた爆弾のコードを解除していくプロローグは非常にスリリング。現代的な都市の風景とレトロモダンな探偵たちおよび探偵事務所内部の対比が鮮明で、この作品の持つスタイルを効果的に印象付ける。探偵はハイテクに頼らず、あくまで自分の足で情報を集め、自分の頭で整理・分析し、自分の手で事件を解決しなければならないという鉄則。主人公の武器は明晰な頭脳と古い007映画的な小道具だけの古典的な探偵像に対するこだわりが、過去にタイムスリップしたような独特の世界観を構築している。

この映画の批評を読む »

チェイサー - 福本次郎

目まぐるしく変わる展開は落とし穴のごとく見る者の予想を裏切り、気がついた時には闇の深淵に落とされている。そのもどかしさは極限まで不快感を刺激し、緊迫感あふれる追っかけと凄惨な暴力が、物語の救いのなさを加速させる。(40点)

 連続猟奇殺人犯を逮捕したのに信じてもらえない元刑事。犯行を自白し、生存者がいるとをほのめかしているのも関わらず証拠不十分で犯人を釈放してしまう警察。せっかく犯人のアジトから脱出したのに、またあっさりと犯人の手に落ちてしまう被害者。自分の行動は正直に話すくせに、動機は語ろうとしない犯人。目まぐるしく変わる展開はまるで落とし穴を掘るかのごとく見る者の予想を裏切り、気がついた時には闇の深淵に落とされている。そのもどかしさは極限まで不快感を刺激し、緊迫感あふれる追っかけと凄惨な暴力が、物語の救いのなさを加速させる。

この映画の批評を読む »

ビバリーヒルズ・チワワ - 福本次郎

端正な顔立ちと華奢な体、遠くを見るようなつぶらな瞳。チワワの愛らしさを押し出しながらも、飼い主に甘やかされ放題の性悪ペット。ドレスを着せられた上に靴まではかされて毎日エステ三昧、まさに「犬は飼い主に似る」のだ。(60点)

ビバリーヒルズ・チワワ

© Disney Enterprises, Inc. All rights reserved.

 端正な顔立ちと華奢な体、遠くを見るようなつぶらな瞳はつい抱きしめたくなる。チワワの愛らしさを前面に押し出しながらも、演じる役割は飼い主に甘やかされ放題の性悪ペット。ドレスを着せられた上に靴まではかされて美容室で毎日エステ三昧、雑種犬だけでなく人間まで見下した態度をとる。そんな犬の気持ちを人間の言葉でしゃべらせた脚本が秀逸。犬の考えをリアルに伝える一方で、愛犬家の誤った接し方が犬たちにいかに悪影響を与えているかを痛烈に皮肉っている。まさに「犬は飼い主に似る」のだ。

この映画の批評を読む »

ミーシャ/ホロコーストと白い狼 - 福本次郎

ミミズをほおばり、ウサギの死体に歯を立て、イノシシの生肉を口にする。たった1人両親が連れ去られた方角に向かって歩き続ける8歳の少女の、食糧をナマのまま咀嚼するという生きることへの執着が映画に説得力を持たせている。(60点)

 土中のミミズをほおばり、ウサギの死体に歯を立て、イノシシやヒツジの生肉を口にする。たった1人、頼るべき大人もカネもなく、ただ両親が連れ去られた方角に向かって歩き続ける8歳の少女。人目を避け、道のない森を抜ける過程でいつしか彼女はたくましく生き抜く術を身につけていく。しかもその移動は、ベルギーからウクライナまで欧州をほぼ横断するという途方もない距離。交通手段を使わずに踏破したとはにわかに信じがたいが、彼女の食糧を調理せずナマのまま咀嚼するという生きることへの執着が説得力を持たせている。

この映画の批評を読む »

ベルサイユの子 - 福本次郎

フランス王の栄華と威容を誇るのベルサイユ宮殿。隣接する森には多数の無職者が小屋を作って夜露と寒さをしのいでいる。二極化が進んだ21世紀は、もしかして絶対君主の時代よりも格差が広がっているのではと思わせる構図だ。(50点)

ベルサイユの子

© Les Films Pelleas 2008

 フランス王の栄華と威容を誇るのベルサイユ宮殿。隣接する森には多数の無職者が小屋を作って夜露と寒さをしのいでいる。勝ち組と負け組みの二極化が進んだ 21世紀は、もしかして絶対君主の時代よりも格差が広がっているのではと思わせる構図だ。ホームレス母子が手入れされた庭園を背景にたたずむ風景は、革命後200年以上たってもフランスが目指した理想はいまだに達成されていない現実に対する強烈な皮肉。映画はそんな社会で生きる幼い少年を軸に、一緒にいると重荷に感じ離れていると寂しくてたまらない人間関係の距離感を描く。

この映画の批評を読む »

デュプリシティ ?スパイは、スパイに嘘をつく? - 福本次郎

騙したつもりが騙されて、罠にかかったフリをして罠にかける。監視・尾行・盗聴・ハッキング・偽装、手に汗握る攻防戦はラストまで一気に突っ走る。ハイテクよりマンパワーがものを言う情報戦の基本が守られているのがうれしい。(70点)

デュプリシティ ?スパイは、スパイに嘘をつく?

© 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

 騙したつもりが騙されて、罠にかかったフリをして罠にかける。自分しか信じることができない産業スパイの世界、そこで生き残れるのは絶対の信頼をおける仲間を持った者だけだ。味方が敵のスパイだったり、敵のスパイが味方だったり、人間関係は複雑に絡まり、解決の糸口はなかなかつかめない。監視・尾行・盗聴・ハッキング・偽装、そういった仕掛けがさらなる仕掛けを呼び、手に汗握る攻防戦はラストまで一気に突っ走る。ハイテクを利用しつつも、結局はマンパワーがものを言う情報戦の基本が守られているのがうれしくなる。

この映画の批評を読む »

新宿インシデント - 福本次郎

カンフーもアクションも封印したジャッキー・チェンの代わりに、カメラが裏路地を走りまわる。根は善人なのに、仕方なく人を殺し、生きるためにさらに殺人に手を染める、善悪の狭間で苦悩する主人公をノワールなタッチで描く。(70点)

新宿インシデント

© 2009 Emperor Dragon Movies Limited All Rights Reserved

 カンフーも派手なアクションも封印したジャッキー・チェンの代わりに、カメラが裏路地や非常階段そして下水道を走りまわる。黒く濁ってしまった心を象徴するかのような抑えた色調の映像は、新宿歌舞伎町に息をひそめる中国人不法入国者の人生そのもの。根は善人だったのに、逃げるために仕方なく人を殺し、生きるためにさらに殺人に手を染める。悪と手を切ろうとしても、一度足を踏み入れた裏社会に引き戻される。映画は善悪の狭間で板挟みになる主人公の苦悩をノワールなタッチで描ききる。

この映画の批評を読む »

テラートレイン - 福本次郎

食肉用に家畜を解体するかのような手際よさで人体を処理していく。肉を切り裂かれ、目玉をえぐられ、悶絶のうちに息絶えていく。突然降りかかる災難、苦痛と不条理、そして絶望の果ての諦めが滴る血とともにリアルに再現される。(40点)

 手足にすっとメスを入れ、皮膚を剥ぎ、臓器を取りだす。まるで食肉用に家畜を解体するかのような手際よさで人体を処理していく男。捕らえられたものは肉を切り裂かれ、目玉をえぐられ、悶絶のうちに息絶えていく。突然降りかかる災難、その苦痛と不条理、そして絶望の果ての諦めが滴る血とともにリアルに再現される。東欧を舞台に、言葉が通じず相手の考えが読めない不気味さと、古い歴史を持ちながら戦乱に明け暮れた土地に残る謎めいた先入観が、さらなる恐怖を増幅させる。

この映画の批評を読む »

GOEMON - 福本次郎

実写とCGの合成、赤を強調した色彩、時代考証を無視した衣装や風俗、権力の強欲を象徴する大坂城の天守閣。それら視覚に訴える圧倒的な情報量はコンピューターゲームのような質感で、壮大なデジタル紙芝居を見ている気分だ。(30点)

GOEMON

© 2009「GOEMON」パートナーズ

 実写とCGの合成、赤を強調した色彩、時代考証を無視したきらびやかな衣装や風俗、権力の強欲を象徴する大坂城の天守閣。それら視覚に訴える圧倒的な情報量はコンピューターゲームのような質感で、壮大なデジタル紙芝居を見ている気分だ。せっかく俳優が演じているのにあえて人間くささを取り除くことにどれだけの意味があったのか。愛と友情、怨念と復讐の入り混じったファンタジーにする予定が、現代語で語られるセリフと楽市楽座と呼ばれる経済の自由化によって格差社会になったという21世紀的な話題を無理矢理ねじ込んだせいで、もともと薄っぺらな世界観がさらに安直な印象になってしまった。

この映画の批評を読む »

レイン・フォール/雨の牙 - 福本次郎

凄腕の暗殺者が女と逃亡する「ボーン・アイデンティ」さながらの展開だが、主人公を演じた椎名桔平は明らかにアクションの訓練を積んでおらず、この役に不適格。短いカットで格闘シーンをごまかし、安っぽい印象しか残らない。(30点)

レイン・フォール/雨の牙

 凄腕の暗殺者が契約を実行するが、警察のみならずCIA、ヤクザにまで追われる。東京の、あらゆるところに設置された監視カメラが人々を記録していく中、彼の行動はすべて筒抜け、しかし、逆にそれを利用して相手をかく乱する。物語は事件に巻き込まれた女とともに姿を隠しつつ反撃の機会をうかがうという「ボーン・アイデンティ」さながらの展開を見せるが、主人公を演じた椎名桔平は明らかにアクションの訓練を積んでおらず、この役に不適格。短いカットで格闘シーンをごまかそうとするが、安っぽい印象しか残らない。

この映画の批評を読む »

ハイキック・ガール! - 福本次郎

蹴りの美しさに特化した格闘シーンに瞠目。ヒロインが抜群のスピードと鞭のようなしなやかさで脚を操り、相手をとらえる一瞬の痛みが伝わってくる。ひたすら空手の魅力を描く姿勢はワイヤーアクションを見なれた目には新鮮だ。(50点)

ハイキック・ガール!

© 2009 ハイキック・ガール!パートナーズ

 ローからハイまで、蹴りの美しさに特化した格闘シーンに瞠目する。ヒロインが抜群のスピードと鞭のようなしなやかさで脚を操り、相手の急所をとらえる一瞬、一撃の痛みが伝わってくるようだ。予算も時間もあまりない中で、精一杯面白い映像を作ろうとする熱意が彼女のキックを通じてスクリーンから発散される。もはやストーリーや設定、登場人物の演技など二の次、ひたすら空手の魅力を描こうとする姿勢はワイヤーアクションを見なれた目には新鮮で、肉を打ち骨がぶつかる音も迫力満点。鍛え上げた格闘家の肉体の可能性を最大限に引き出すことに成功している。

この映画の批評を読む »

ウェディング・ベルを鳴らせ! - 福本次郎

仕掛け時計に始まり、落とし穴、催眠渦巻き、標識に頭をぶつけたりロープで逆さ吊りにされたり。冒頭からラストまで、そんなベタなギャグのオンパレード。オチがミエミエのネタでも何度も繰り返され、パワフルな連打は止まらない。(40点)

ウェディング・ベルを鳴らせ!

 朝寝坊の少年をたたき起こす仕掛け時計に始まり、落とし穴、催眠渦巻き、標識に頭をぶつけたりロープで逆さ吊りにされたり、天井までの放尿や壁を壊す頭突き、果ては空から屋根を突き破って男が降ってくる。田舎の少年が都会で嫁探しをする物語の冒頭からラストまで、そんなベタなギャグのオンパレード。オチがミエミエのネタでも何度も繰り返され、パワフルな連打は止まらない。しかし、悲しいかなそのセンスは20年前のコントを見ているようで、完全にスベっている。母国セルビアではウケるのかもしれないが、試写室から一切笑い声が漏れなかったところを見ると、このテイストは日本人には合わなかったようだ。

この映画の批評を読む »

【おすすめサイト】 
Warning: file(): php_network_getaddresses: getaddrinfo failed: node name or service name not known in /export/sd09/www/jp/r/e/gmoserver/6/1/sd0158461/cinemaonline.jp/wp-content/themes/blog/sidebar.php on line 80

Warning: file(http://www.beetle-ly.net/linkservice/full_nor/group73): failed to open stream: php_network_getaddresses: getaddrinfo failed: node name or service name not known in /export/sd09/www/jp/r/e/gmoserver/6/1/sd0158461/cinemaonline.jp/wp-content/themes/blog/sidebar.php on line 80

Warning: shuffle() expects parameter 1 to be array, boolean given in /export/sd09/www/jp/r/e/gmoserver/6/1/sd0158461/cinemaonline.jp/wp-content/themes/blog/sidebar.php on line 82

Warning: Invalid argument supplied for foreach() in /export/sd09/www/jp/r/e/gmoserver/6/1/sd0158461/cinemaonline.jp/wp-content/themes/blog/sidebar.php on line 83

 

File not found.