いけちゃんとぼく - 福本次郎

どんなにガキ大将に殴られても、決して涙は見せない。そのくせ昆虫を殺したり弱い子をいじめて憂さ晴らす。そんな少年が感じる世界がリアルに再現され、子供なりに深刻な悩みを持ち、必死に生きるために戦っている姿が健気だ。(40点)

いけちゃんとぼく

© 2009『いけちゃんとぼく』製作委員会

 どんなにガキ大将に殴られても、決して涙は見せない。そのくせいつもやられっぱなしの自分の情けなさに腹を立て、昆虫を殺したり弱い子をいじめて憂さ晴らす。一方でシャンプーするときに目を瞑ると風呂場にお化けが出ると信じていたり、夜中のトイレが怖くてたまらない。そんな小学生の少年が感じる世界がリアルに再現され、子供は子供なりに深刻な悩みを持ち、必死に生きるために戦っている姿がとても健気だ。映画は、父の急死で早く大人になる運命を背負った主人公の成長を優しくみつめる。

この映画の批評を読む »

守護天使 - 福本次郎

命を懸けて守りたいもの、それは家族でもプライドでもなく見知らぬ女子高生。家では鬼嫁に虐げられ、会社は薄給、唯一見出した希望が彼女を見守ること。主人公の冴えない日常が、リアルな中にもほのかな笑いと共感を誘う。(60点)

守護天使

© 2009『守護天使』製作委員会

 命を懸けて守りたいもの、それは家族でもプライドでもなく見知らぬ女子高生。家では鬼嫁に虐げられ、満員電車に揺られて出勤する会社は仕事の割に薄給、唯一見出した希望が彼女を見守ること。カンニング竹山扮する主人公が送る冴えない日常、何をやってもうまくいかずまわりに怯えながら生きている姿が、リアルな中にもほのかな笑いを織り込んで共感を誘う。そんな男が得体の知れない悪と対峙したとき、ありったけの勇気で体当たりする。「生きるってみっともないけど、それでいい」という少年のセリフは彼にとっては最高のホメ言葉なのだ。

この映画の批評を読む »

築城せよ! - 福本次郎

昇りかけた朝日を反射して黄金に輝く天守閣。それが美しいのは威容から来るのではなく、築城に参加した市民・学生・武将たちの夢を乗せているから。みんなで力を合せ、段ボールの城を完成させるという目標に向かって突き進む。(50点)

築城せよ!

© 2009映画『築城せよ』製作委員会

 昇りかけた朝日を反射して黄金に輝く天守閣。それが美しいのは石垣の上に建てられた威容から来るのではなく、築城に手を貸した市民・学生・武将たちの夢を乗せているから。すぐに壊れてしまうと分かっていても、みんなで力を合せ段ボールの城を完成させるという目標に向かって突き進む、大変だけれど楽しいお祭り騒ぎ。その過程で意見が分かれていた小さな街も、自分たちが本当に大切なものは何かに気づき、指導者たちも住民の意見を無視してまで事業を推進することに疑問を感じ始める。上から目線の利益誘導に頼るだけでなく、納税者が積極的に参加できる街おこしが、さびれた街に活気を取り戻す秘訣だ。

この映画の批評を読む »

真夏のオリオン - 福本次郎

日本に残してきた愛する人、同時に戦場に向かった戦友と、戦ううちに尊敬の念すら抱く敵、さらに命の大切さを説く艦長。戦争を舞台にしながらあくまで誇り高く生き抜くことに主眼を置き、従来の日本製戦争映画とは一線を画す。(50点)

真夏のオリオン

© 2009「真夏のオリオン」パートナーズ

 日本に残してきた愛する人、同時に戦場に向かった戦友と、戦ううちに尊敬の念すら抱く敵、さらに命の大切さを説く艦長。物語は戦争を舞台にしながら、あくまで誇り高く生き抜くことに主眼を置く。決して死を美化せず、まして自爆攻撃など絶対に認めない。そこに、ベトナム戦争以前の米国製戦争映画のような、「命をかけたゲーム」としての戦闘シーンの描写。戦争の悲惨さよりも、潜水艦と駆逐艦の虚々実々の駆け引きが繰り広げられる。「死ぬために戦っているのではない、生きるために戦っている」という主人公のセリフが従来の日本製戦争映画とは一線を画す。

この映画の批評を読む »

愛を読むひと - 福本次郎

女は真実を犠牲にしてまで自分の秘密を守り通そうとした。その秘密を知った男は彼女を助けられず、距離を置いて見守るだけ。女と男の繊細な感情のうねりが、朗読を録音したテープと拙い文字で書かれた短い手紙に凝縮される。(80点)

愛を読むひと

© 2008 TWCGF Film Services II, LLC. All rights reserved.

 女は真実を犠牲にしてまで自分の秘密を守り通そうとした。その秘密と彼女の決意を知ってしまった男は彼女を助けられず、距離を置いて見守るだけ。女と男の繊細な感情のうねりが、朗読を録音したテープと拙い文字で書かれた短い手紙に凝縮される。そして、ふたりの人生だけでなく、ナチス戦犯側から見たホロコーストの実態に迫る。誠実に生きたにもかかわらず、結果的に辛い日々を送る羽目になったヒロインの姿を通じて、運命の残酷さと、思いを届けようとする行為が人間に希望をもたらすことを物語る。

この映画の批評を読む »

マン・オン・ワイヤー - 福本次郎

ツインタワーの最上階にかけられた一本のワイヤーロープの上にたたずむ男。完成前にロープや機材を密かに持ち込み、屋上から矢を放ち、ワイヤを張るまでのスリルは、ポエティックな空中歩行より、手に汗握るドラマだった。(70点)

マン・オン・ワイヤー

© 2008 Jean-Louis Blondeau / Polaris Images

 ツインタワーの最上階にかけられた一本のワイヤーロープの上にたたずむ男。命綱はなく、バランスを崩せばそのまま400メートル余りを落下する。世界一高いビルの間を歩いて渡りたいという6年越しの夢をかなえた男の情熱だけを描くのではなく、準備期間の地道な行動を再現映像にする。綱渡りをするには、まず綱を張らなければならない。そんな当たり前のことに立ちはだかる難問。まだ完成していないツインタワーにロープや機材を密かに持ち込み、屋上から矢を放ち、ワイヤを張るまでのスリルは、ある意味、主人公のポエティックな空中歩行より、手に汗握り人間味あふれるドラマだった。

この映画の批評を読む »

The Harimaya Bridge はりまや橋 - 福本次郎

日本に憎しみを抱く米国人が、日本人の優しさと誠実さにわだかまりを解いていく。人と人のつながりの中で命が受け継がれていくことを実感し、過去より未来を明るいものに変えていこうと態度を変化させる過程がすがすがしい。(60点)

The Harimaya Bridge はりまや橋

© Harimaya Bridge, LLP

 日本に憎しみを抱くアフリカ系米国人が、日本人の優しさと誠実さに触れていくうちにわだかまりを解いていく。不機嫌な主人公が人と人のつながりの中で生命が受け継がれていくことを実感したときに、忌まわしい過去よりもこれからを明るいものに変えていこうと態度を変化させる過程がすがすがしい。父を殺され息子の命を奪った日本人、だが、彼の息子が愛し、夢をかなえ、その証を残したのもまた日本人。コミュニケーションがお互い理解を深め、国籍や人種、言葉やカルチャーの壁を越えた心の交流を促進することを描く。

この映画の批評を読む »

ハゲタカ - 福本次郎

◆日本の自動車メーカーを中国系投資ファンドが買い叩く。それは単に一企業の問題ではなく、製造業というわが国の「魂」を外国人に売り渡すこと。めまぐるしい展開と細部にまでいきわたるリアリティで、企業買収の現場を再現する。(70点)

 日本の基幹産業である自動車メーカーを中国系投資ファンドが買い叩く。それは単に一企業の問題ではなく、アイデアと勤勉が命である製造業というわが国の「魂」を外国人に売り渡すこと。映画はめまぐるしい展開と圧倒的なスピード感、そして細部にいきわたるリアリティで企業買収の現場を再現する。極限までハッタリを利かせるチキンゲームと徹底的な情報戦、さらに世界中に網を広げた壮大な罠。資本主義の落とし児のような男たちが繰り広げる虚虚実実の駆け引きと、ムダをそぎ落としたエピソードは息つく間もない。NHKの底力を見せ付ける力作だ。

この映画の批評を読む »

レスラー - 福本次郎

リングに上がる前は試合の流れを打ち合わせし、試合後はお互いのパフォーマンスを称えあう、プロレスの内幕がリアルに再現される。映画は虚構の中にしか居場所がない男の不器用な生き方を通じて、人生の悲哀をしみじみと描く。(80点)

レスラー

© Niko Tavernise for all Wrestler photo

 リングに上がる前は試合の流れを入念に打ち合わせし、試合後の控室ではお互いのパフォーマンスを称えあう。前半、プロレスというショーの世界の内幕がリアルに再現される。映画は虚構の中にしか居場所がない男の不器用な生き方を通じて、人生の悲哀をしみじみと描く。栄光の時代は遠い過去になり、しがない毎日を送る主人公をミッキー・ロークが熱演。老眼鏡や補聴器を付け、忍び寄る衰えと戦いながらもトレーニングを続け、日焼けした肌や金黒まだらの髪といったヒーローの外見にこだわる。どんなに無様な格好をさらしてもプロレスしがみつく彼の姿が切ない。

この映画の批評を読む »

ザ・スピリット - 福本次郎

黒いスーツに黒いマスクと帽子、街を犯罪者から守るために戦う男の扮装は、あくまでスタイリッシュ。闇の深さを強調するシャープな映像はモノクロ映画の様相で、夜を切り裂く真っ赤なネクタイが色彩のない世界で正義を象徴する。(40点)

ザ・スピリット

© 2008 SPIRIT FILMS, LLC. All Rights Reserved. THE SPIRIT trademark is owned by Will Eisner Studios, Inc. and registered in the U.S. Patent and Trademark Office.

 黒いスーツに黒いマスクと帽子、街を犯罪者から守るために戦う男の扮装は、あくまでスタイリッシュ。闇の深さを強調するシャープな映像はモノクロ映画の様相で、夜を切り裂く真っ赤なネクタイが色彩のない世界で正義を象徴する。だが、不死身の主人公はキャラクターの魅力に乏しく、敵役も個性が浮かび上がってこない。唯一の見所がエヴァ・メンデス扮する女泥棒のセクシーな口元というのでは、原作コミックになじみのないものにはまったく共感を呼ばない。

この映画の批評を読む »

ターミネーター4 - 福本次郎

人類の行く末を予見するような色彩の乏しい世界、「ターミネーター」と冠しているが、あくまで人々が主人公。戦闘型ロボットの恐怖よりも、抵抗軍リーダーの勇気と機械の体を持つ男の葛藤を通じて、生きる価値とは何かを問う。(70点)

ターミネーター4

 人類の行く末を予見するような色彩の乏しい世界、地上はコンピューターとロボットに支配され、生存者は息をひそめるか抵抗軍に参加するしかない。「ターミネーター」とタイトルに冠しているが、あくまで絶望的な状況で戦い続ける人々が主人公。戦闘型ロボットの迫りくる恐怖よりも、抵抗軍リーダーの勇気と機械の体を持つ男の葛藤を通じて、人間にとって生きる価値とは何かを問う。命を捧げてまで守り通したいもの、それは誇り高さと未来への希望。3人の男たちの戦いの中で、感情の持ち方が人間を定義し、運命を切り開くカギであることを描く。

この映画の批評を読む »

ウルトラミラクルラブストーリー - 福本次郎

訛りのきつい津軽弁に始まり、キャベツ畑に埋められたり、首のない人間と会話したり、さらには心臓が止まっても生き続ける。それらのエピソードは、物語の有機的な帰結よりも思考を置き去りにすることが目的であるかのようだ。(40点)

ウルトラミラクルラブストーリー

© 2009「ウルトラミラクルラブストーリー」製作委員会

 半分くらい何を言っているのか理解不能の訛りのきつい津軽弁に始まり、キャベツ畑から首だけ出して埋められたり、逆に首のない人間と楽しく会話したり、さらには心臓が止まっても生き続ける。それは知的障害を持った主人公の妄想でもなく、何らかの隠れた寓意を含むメタファーでもない。周囲の人々は微妙に歪んだ現実を疑問をさしはさむことなく受け入れる。脳みその配線を間違えられた男が異常な方法で少しづつ正常を取り戻す過程で、常識や理屈を超越した観念が映画を支配する。答えを探すことを拒否し、考えることを放棄させるようなエピソードの連続は、物語の有機的な帰結よりも見る者の思考を置き去りにするのが目的であるかのようだ。

この映画の批評を読む »

アルマズ・プロジェクト - 福本次郎

宇宙ステーションに閉じ込められた乗務員を船内に設置されたモニターが記録していく。映画は、船内で起きた事故が撮影された映像を編集して一本の作品にまとめた体裁で、乗組員が正体不明の恐怖と戦う様子をリアルに体感させる。(60点)

アルマズ・プロジェクト

© 2007 INTEGRATED INFORMATION INTERNATIONAL, LLC.

 宇宙ステーションに閉じ込められた乗務員を船内に設置されたモニターが記録していく。発信源不明の電波を受信した後、コンピュータに異常が現れ、地上との交信も途絶え、脱出用の宇宙船も勝手に離脱する。退路が断たれたうえ、軌道を外れて落下する運命。さらに謎のパルスは地球の反対側から発せられたものと判明し、ステーション内は疑心暗鬼に支配されてゆく。その過程で、ロシア人乗組員と欧州宇宙機構クルーの対立が浮き彫りになる。映画は地表に墜落した宇宙ステーションのブラックボックスを回収し、船内で起きた事故が撮影された映像を編集して一本の作品にまとめた体裁をとり、乗組員が正体不明の恐怖と戦う様子をリアルに体感させる。

この映画の批評を読む »

サガン ?悲しみよ こんにちは? - 福本次郎

莫大な富と名声を手に入れた先にあったものは孤独。成功と挫折、恋愛と破局、大儲けと破産、それらを何度も繰り返すヒロインの私生活は、才能に溢れ、大衆に支持され、時代の寵児として君臨した作家としての顔とは正反対だ。(60点)

サガン ?悲しみよ こんにちは?

© 2008 ALEXANDRE FILMS / Etienne George

 誰もがうらやむような富と名声を手に入れた先にあったものは孤独。成功と挫折、恋愛と破局、大儲けと破産、それらを何度も繰り返すヒロインの私生活は、才能に溢れ、大衆に支持され、時代の寵児として君臨した作家としての顔とは正反対の侘しさだ。あまりにも自分に正直だったゆえに、愛することも生きることも不器用だった女の栄光と転落の人生をリアルに再現する。苦悩に満ちた彼女の後半生は幸福よりも悲しみに出会うことの多い、デビュー作のタイトルそのもののような生き方だった。

この映画の批評を読む »

チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ - 福本次郎

活劇と人情とコメディと美女、そこに歌と踊りがミックスされた、「映画は娯楽だ」というストレートなメッセージが心地よい。2時間30分以上の上映時間を濃密な見せ場でつなぐ映像に身を浸しているだけで幸せな気分になってくる。(60点)

チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ

© 2008 Warner Bros. Pictures(India) Pvt. Ltd. and RSE People Tree Films

 活劇と人情とコメディと美女、そこに歌と踊りがミックスされた、「映画は娯楽だ」というストレートなメッセージが心地よい。ストーリーは大体予想がつくのだが、2時間30分以上の上映時間を中だるみさせることなく、次々と濃密な見せ場でつなぐ映像に身を浸しているだけで幸せな気分になってくる。インドの冴えない青年が万里の長城近くに住む中国人を救うという波乱万丈の展開は、思考停止にしなければ楽しめないが、積極的に頭の中を空っぽにするのをなんら恥じることはない。

この映画の批評を読む »

【おすすめサイト】 
Warning: file(): php_network_getaddresses: getaddrinfo failed: node name or service name not known in /export/sd09/www/jp/r/e/gmoserver/6/1/sd0158461/cinemaonline.jp/wp-content/themes/blog/sidebar.php on line 80

Warning: file(http://www.beetle-ly.net/linkservice/full_nor/group73): failed to open stream: php_network_getaddresses: getaddrinfo failed: node name or service name not known in /export/sd09/www/jp/r/e/gmoserver/6/1/sd0158461/cinemaonline.jp/wp-content/themes/blog/sidebar.php on line 80

Warning: shuffle() expects parameter 1 to be array, boolean given in /export/sd09/www/jp/r/e/gmoserver/6/1/sd0158461/cinemaonline.jp/wp-content/themes/blog/sidebar.php on line 82

Warning: Invalid argument supplied for foreach() in /export/sd09/www/jp/r/e/gmoserver/6/1/sd0158461/cinemaonline.jp/wp-content/themes/blog/sidebar.php on line 83

 

File not found.