ハリー・ポッターと謎のプリンス - 福本次郎

冒頭のミレニアム橋の破壊とロンが大活躍するクィディッチのシーン以外には視覚的な見せ場に乏しく、内容も陰々鬱々とした死の世界を濃密に反映させている。原作を読んでいれば、映画を観なくても次回作は楽しめるだろう。(50点)

ハリー・ポッターと謎のプリンス

© 2009 Warner Bros. Ent. Harry Potter Publishing Rights © J.K.R. Harry Potter characters, names and related indicia are trademarks of and © Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

 ハーマイオニーのような常に勤勉で完全主義者の優等生タイプは、向上心を満たしてくれるすぐれた男を選ぶのかと思いきや、明らかな劣等生のロンに惹かれている。一方のロンは、美人でスキのなさすぎる彼女よりも、ストレートに胸のふくらみを腕に押しつけてくるような女子に心地よさを感じている。好きという気持ちだけではどうにもならない、恋というハードルの前に苦悩するハーマイオニーの姿がセンチメンタルだ。親友が恋人に昇格する瞬間、それは普通の状態ならば恥ずかしくて告白などできなくても、無意識に口にしてしまうひとことが決め手になる。

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サンシャイン・クリーニング - 福本次郎

風変りな家族に囲まれてつつましく生きるヒロイン。かけがえのない絆で結ばれた人間同士の濃密な関係、それは頼りになるが足かせにもなる。映画はシングルマザーの奮闘を通じて、一生懸命頑張れば希望が見えてくることを描く。(60点)

 ヤマ師のような父、注意力散漫な妹、身の回りの物をなめる癖をもつ息子。そんな風変りな家族に囲まれて、ハウスクリーニングでつつましく生きるヒロインが健気だ。かけがえのない絆で結ばれた人間同士の濃密な関係、それは頼りになる一方で足かせにもなる。映画はシングルマザーの奮闘を通じて、一生懸命頑張れば希望が見えてくるということを描く。高校時代は学園のスターだったヒロインが元同級生の前で精いっぱい見栄を張る姿が泣かせる。

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ノウイング - 福本次郎

◆傾いた主翼が送電線を引きちぎり大地を切り裂きながら胴体ともに地面に叩きつけられる。暴走する電車がホームを横滑りして支柱をなぎ倒し、乗客を飲み込んでいく。飛行機の墜落や地下鉄の脱線を圧倒的な臨場感で再現される。(40点)

 傾いた主翼が送電線を引きちぎったかと思うと、大地を切り裂きながら胴体ともに地面に叩きつけられる。暴走する電車がホームを横滑りして支柱をなぎ倒し、乗客を飲み込んでいく。飛行機の墜落事故や地下鉄の脱線事故に遭遇した主人公が体験する圧倒的な臨場感がリアルに再現される。さらに巨大化した太陽の放射線に焼きつくされ、あとかたもなく廃墟となってしまう地球。壮大な災害をの前には全く無力な人間の弱さを背景に、逃れられない運命を知ったときに何をすべきかを問う。

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ごくせん THE MOVIE - 福本次郎

暑苦しいほどの熱意で自分の思いを口にするだけでなく、時に暴力に訴えてでも実行に移し大切な道徳的価値観を伝える。相手に真正面からコミュニケーションをとれば必ず理解してもらえるという前向きな姿勢が非常に新鮮だ。(50点)

ごくせん THE MOVIE

© 2009「ごくせん THE MOVIE」製作委員会

 土手を走り、歩道を走り、街中を走るヒロイン。「夕陽に向かって走るぞ」と、教育の理想をコミカルに体現する姿はまさにステレオタイプ、年寄りを敬い、友を守り、義理人情に厚く、正義を貫くことを身をもって生徒たちに教えようとする。暑苦しいほどの熱意で自分の思いを口にし、時に暴力に訴えてでも実行に移し失われつつある道徳的価値観を伝える。何より相手を信じて正直に真正面からコミュニケーションをとれば必ず理解してもらえるという前向きさが、しらけ・あきらめ・無責任が蔓延する現代おいて非常に新鮮だ。

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蟹工船 - 福本次郎

むき出しの鉄の壁に圧迫されるような薄暗い部屋で、太い管の中だけが独りになれる唯一の空間。作業は完全な流れ作業の中の単純な肉体労働。「地獄さ行ってくるべ」という有名な原作の書き出しを見事なヴィジュアルで再現する。(50点)

蟹工船

© 2009「蟹工船」製作委員会

 窓はなく、むき出しの鉄の壁に圧迫されるような薄暗い部屋で、積み上げられた太い管の中だけが独りになれる唯一の空間。作業場で与えられる仕事は、考えることが一切不要な完全な流れ作業の中の単純な肉体労働。監視の目は厳しく手を休めると容赦なく杖で殴られる。凍てつく海の上に浮かぶ工場船の労働者に与えられた劣悪な環境は、まるで脱出不可能な強制収容所のようだ。映画は、「おい地獄さ行ぐんだで!」という有名な原作の書き出しを見事なヴィジュアルで再現する。

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フィースト3/最終決戦 - 福本次郎

相変わらず暗くてブレたシーンの連続と、どぎついほどの血のイメージで全編を覆うシリーズ最終作、その人を食ったような展開はとんでもない方向に突き進む。極限に追い込まれた人々が見せる赤裸々な感情が奇妙な笑いを誘う。(40点)

フィースト3/最終決戦

© 2008 The Weinstein Company, LLC. All rights reserved

 正体不明の怪物が人間を食い殺すだけでなく、人間が怪物に喰らいつき噛み殺す。希望を持たせる男があっけなくやられて、意地汚いやつほど助かるのかと思わせてやっぱりあきれるような死に方をする。相変わらず暗くてブレまくったシーンの連続と、どぎついほどの血のイメージで全編を覆うシリーズ最終作、その人を食ったような展開はとんでもない方向に突き進む。安っぽい怪物のグロさよりも、極限に追い込まれた人々が見せる赤裸々な感情が奇妙な笑いを誘う。

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MW-ムウ- - 福本次郎

身代金の入ったカバンを抱えた男がバンコクの雑踏を走り回る。犯人は手の込んだトラップを仕掛け、警察をまいた上にカネを手に入れる。熱のこもった映像で疾走する導入部分は、畳み掛けるようなテンポで見るものを魅了する。(40点)

MW-ムウ-

© 2009 MW PRODUCTION COMMITTEE

 身代金の入ったカバンを抱えた男がバンコクの雑踏を走り回る。犯人は手の込んだトラップを仕掛け、警察の追っ手をまいた上にまんまとカネを手に入れる。手に汗握る警察と誘拐犯の知恵比べ、高架電車と自動車のチェイス、バイクで逃げる男を走って追いかけるなど過去の名作のワンシーンを髣髴させるような熱のこもった映像で疾走する導入部分は、畳み掛けるようなテンポで見るものを魅了する。しかし、まるでそこで力尽きてしまったかのように、舞台を日本に移してからの物語はまったく精彩を失ってしまう。

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モンスターVSエイリアン - 福本次郎

常識はずれの外見やパワー、知能のおかげで世間から隔離されたモンスターたち。物語はそんな彼らの悲しみより、エイリアンを撃退するというアクションに焦点を当てる。めまぐるしい展開はスピード感にあふれ、息つく間もない。(50点)

モンスターVSエイリアン

© 2009 DreamWorks Animation L.L.C.

 常識はずれの外見やパワー、知能のおかげで世間から隔離されてしまったモンスターたち。彼らは外部との接触を許されず、ひっそりと年をとっていくだけだ。しかし、物語はそんな彼らの悲しみには目もくれず、ただただ侵略してくるエイリアンを撃退して自由を勝ち取るというアクションに焦点を当てる。そのめまぐるしい展開はスピード感にあふれ、息つく間もないほど。さらに異形のモンスターたちがエイリアンとの闘いの中で、友情を深め生きていく自信を取り戻していく過程は、心の持ち方一つで未来は変えられるということを教えてくれる。

扉をたたく人 - 福本次郎

自分の殻に閉じこもる男の前に現れた青年と彼の恋人。行き場のない彼らと出会って、男はもう一度生きる喜びを取り戻す。映画は主人公の喪失感と、後に生まれる希望をベースに、米国社会に蔓延する不寛容と個人の良心を描く。(70点)

扉をたたく人

© 2007 Visitor Holdings, LLC All Rights Reserved

 世間とのかかわりを最低限にとどめ、自分の殻に閉じこもる男。他人の干渉を避けて壁を作り、あえて孤独に身をおいて残り少ない人生からフェイドアウトしようとしている。そんな男の前に現れた青年と彼の恋人。真面目に働いているにもかかわらず、絶えず当局の目を気にしている。行き場のない彼らと出会ったことで、男はもう一度生きる喜びを取り戻す。映画は主人公の喪失感と後に生まれる希望をベースに、米国社会に蔓延する不寛容と個人の良心をコントラスト鮮やかに描く。

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ディア・ドクター - 福本次郎

柔和な笑みを満面にたたえているのに、目だけは節穴のように感情が欠落している。その暗黒の深淵は、全能感と不安、だましているという良心の呵責が混在する。そんな複雑な胸中を目だけで演じる笑福亭鶴瓶の存在感が圧倒的だ。(60点)

ディア・ドクター

© 2009『Dear Doctor』製作委員会

 柔和な笑みを満面にたたえているのに、目だけは節穴のように感情が欠落している。その暗黒の深淵は、神の如く崇められている全能感と、いつまでもこんな状態が続くはずがないという確信、そして人々をだまし続けているという良心の呵責が混在している。そんな複雑な胸中を目だけで演じる笑福亭鶴瓶の存在感が圧倒的だ。過疎地、老人と病人、熱心な医師。なにもかも上手くいっていたはずの村に、真実の刃がつきつけられたとき、雪崩をうったように平和が乱されていく。本物以上に本物らしいペテン師は、信じたいことだけを信じている人々にとっては必要なのだ。

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それでも恋するバルセロナ - 福本次郎

望むものは分っている女と、望まないものは分っている女が、人生の答えを探して彷徨する。人を愛し、傷つけ、求めていたものと違う結果に自分もまた傷つく。そんな恋愛遍歴を重ねる女たちを通じて、男と女、女と女の関係を問う。(50点)

それでも恋するバルセロナ

© 2008 Gravier Productions, Inc. and MediaProduccion, S.L.

 南欧の太陽が大胆にさせるのか、女たちは新しい恋と刺激を求めて心の命じるままに動く。自分の望むものは分っていながらも道徳的な価値観から行動を規制しようとする女と、望まないものだけは分っているが本当に自分が手に入れたいものがわからない女が、人生の答えを探して彷徨する。人を愛し、人を傷つけ、そして求めていたものと違う結果に自分もまた傷つく。そんな恋愛遍歴を重ねる女たちを通じて、男と女、女と女、さらに結婚とは何かを問う。

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人生に乾杯! - 福本次郎

社会主義を信じていた旧世代が経済原則に切り捨てられる姿にスポットをあて、庶民の不満を代弁するかのように世間に復讐する老人を追う。個人の密やかな愛の思い出まで奪ってしまう現代社会の冷たさに彼の怒りは爆発する。(60点)

人生に乾杯!

© M&M Films Ltd.

 社会主義だった頃は、多少の不自由を我慢しても国に楯突かなければ死ぬまで衣食住は保証されていたはず。資本主義に転換しEUに加盟した現在では、自由競争の名の下で、引退した人々の年金額は物価上昇に追いつかず、生活は苦しくなる一方。映画は、ハンガリーという国家を信じていた旧世代が経済原則に切り捨てられる姿にスポットをあて、名もなき庶民の不満を代弁するかのように世間に復讐する老人を追う。個人の密やかな愛の思い出まで奪ってしまう社会の冷たさに彼の怒りは爆発するのだ。

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フィースト2/怪物復活 - 福本次郎

いかにもB級というチープな味わいに満ちた映像と人間の本性を前面に押し出す展開は、不快を通り越してむしろ「なんじゃこりゃ」といった驚きやあきれ返りと共に笑いが込み上げ、低俗を極めた楽しみが全編にあふれている。(50点)

フィースト2/怪物復活

© 2008 The Weinstein Company, LLC. All rights reserved.

 質の悪いフィルムで撮ったような粗い映像、かぶり物の怪物、短いカットでごまかそうとする編集、そして小人プロレスラーや女バイカーといった胡散臭そうな登場人物。いかにもB級、いやC級といっていいほどのチープな味わいに満ちている。本来はホラーとして作られたはずなのに、あまりにもグロテスクな表現の連続と、追い詰められた人間が見せる「自分だけは助かりたい」という本性を前面に押し出す展開は、不快を通り越してむしろ「なんじゃこりゃ」といった驚きやあきれ返りと共に笑いが込み上げ、低俗を極めた楽しみが全編にあふれている。

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トランスフォーマー/リベンジ - 福本次郎

腹の底まで響くクリアな重低音が、金属の重さや硬さだけでなくしなやかさや冷たさまで伝える。もはやストーリーは二の次、新手のロボットの名前を覚える余裕もなく、映画はひたすら見る者を思考停止状態においたまま突っ走る。(50点)

トランスフォーマー/リベンジ

© 2009 Dreamworks LLC. and Paramount Pictures. All rights reserved. Photo Credit: Industrial Light & Magic

 腹の底まで響くクリアな重低音が、金属の重さや硬さだけでなくしなやかさや冷たさまで伝える。意思と命を持ったロボット同士が激突し、パンチやキックの応酬の後、関節技まで披露する。そんな大がかりなCG映像のために綿密に計算されたサウンドは、映画館でしか味わえない大迫力。遊園地の体験型アトラクションに参加しているような視覚効果・デジタルサウンドに身を浸すことで、主人公と同じような感覚が味わえる。もはやストーリーは二の次、頻繁に舞台となる場所を変え、次々と登場する新手のロボットたちの名前を覚える余裕もなく、映画はひたすら見る者を思考停止状態においたまま突っ走る。

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劔岳 点の記 - 福本次郎

足元の不安定な雪原を渡り、ほぼ垂直に切り取ったごとく峻険な岩山を登った先で目にするのは、はるか眼下に広がる雲海の先に沈み行く夕日。厳粛な気分にさせてくれる映像は、思わず姿勢を正してしまうほどの荘厳な美しさだ。(70点)

劔岳 点の記

© 2009『劔岳 点の記』製作委員会

 足元の不安定な雪原を渡り、ほぼ垂直に切り取ったごとく峻険な岩山を登った先で目にするのは、はるか眼下に広がる雲海の先に沈み行く夕日。厳粛な気分にさせてくれるワンシーンを撮るために費やした労力はいかほどのものか。この作品の製作者たちが、主人公となった測量隊の苦労を共に味わおうとしているかのような気迫のこもった映像は、思わず姿勢を正してしまうほどの荘厳な美しさだ。映画は未踏峰に三角点を設置するという使命を帯びた測量隊と、山頂の征服が目的の山嶽会メンバーの「初登頂」レースを通じて、仕事に生きるとはどういうことかを問う。

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