問答無用で悪党をぶちのめし、銃口を向けてくる者にはためらわずにトリガーを引く。正義感=1%・娘への愛=99%のたった1人の戦いは、善悪の基準を単純かつ明確にし、殺人や破壊といった行動を正当化する価値観は却って潔い。(60点)
© 2008 Europacorp – M6 Films – Grive Productions
問答無用で悪党をぶちのめし、銃口を向けてくる者にはためらわずにトリガーを引く。誘拐した少女を麻薬漬けにして売春宿に売り飛ばし、上物の処女は競りにかけるなどという言語道断の悪行を「ビジネス」などとうそぶく輩に死の鉄槌を下す。主人公の、正義感=1%・娘への愛=99%のたった1人の戦いは、あらゆる者がひれ伏すその圧倒的な強さ。善悪の基準を単純かつ明確にし、彼の殺人や破壊といった行動のすべてを正当化する価値観は却って潔い。枯れた味わいのリーアム・ニーソンが突如殺人マシーンに変身する落差も楽しめた。
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真実に目を背けさせ、平穏なフリをするためにつき続ける嘘。それはやがてほころびを見せ始め、少年を冒険に駆り立てる。傷つき、疲れ果て、精魂尽き果てそうになるが、そのたびに人々の親切に助けられ彼は目的に近づいてゆく。(60点)
© 2009「ぼくとママの黄色い自転車」製作委員会
真実に目を背けさせ、平穏なフリをするためにつき続ける嘘。それはやがてほころびを見せ始め、少年を冒険に駆り立てる。自分を心配してくれているはずの母、しかし文通の形でしか連絡が取れない。写真でしか記憶にない母の姿を求める旅の途中で、少年は傷つき、疲れ果て、精魂尽き果てそうになるが、そのたびに人々の親切に助けられ目的地に近づいてゆく。物語は愛ゆえに強くなっていく彼の成長と、親から子への思いが強いほどそれが失われていく過程の切なさを描く。
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NASAの膨大なアーカイブから厳選された映像は、「未来は臆病者のものではなく勇者のもの」という言葉通り、進取の気性と冒険心、ときに命すら犠牲にしても抑えきれない好奇心を再現し、人間の理性の勝利を高らかに歌い上げる。(60点)
© Dangerous Films(Rocketmen) Ltd. 2009
A Dangerous Films Production in association with BBC Worldwide for Sony Pictures
宇宙を目指す夢はそのままNASAの目的となり、米国は威信をかけて遠大なプロジェクトを実行に移す。米ソ冷戦のさなかに始まった宇宙開発競争、マーキュリー計画からジェミニ計画、月探査を目標としたアポロ計画、そして80年代から始まったスペースシャトル。NASAの膨大なアーカイブから厳選された映像は、そこに記録された宇宙飛行士たちの生々しい息遣いだけでなく、携わった人々、さらに一般市民の反応まで当時の息吹を身近に感じさせる。「未来は臆病者のものではなく勇者のもの」という精神に象徴される、進取の気性と冒険心、ときに命すら犠牲にしても抑えきれない好奇心を再現し、人間の理性の勝利を高らかに歌い上げる。
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なんの変哲もない男の一日、しかし、彼の秘密を知った後では、同じシーンを繰り返してもがらりと意味が変わる。言葉の端々から恐怖や焦りがほの見えて、時間が限られた人間には何気ない日常がかけがえのないものと映るのだ。(60点)
© 2009「ちゃんと伝える」製作委員会
朝食を食べて出勤、仕事の合間に父を見舞い、恋人とのつかの間の語らい。癌で入院中の父親がいる以外、なんの変哲もない男の一日が淡々と描かれる。しかし、彼の抱える秘密を知った後では、同じ行動、同じ会話を繰り返してもがらりと意味が変わってくる。言葉の端々から恐怖や焦りがほの見えて、時間が限られた人間の目には何気ない日常がかけがえのないものと映る様子がリアルに再現される。脱皮を終えたセミに象徴される命のはかなさ、だからこそ悔いのないように生き急ぎ、愛する者に言い忘れたことがないように自分の胸中をちゃんと伝えようとする。
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固く閉じられた鉄の扉の前に脱ぎ捨てられた囚人服という静謐な映像が饒舌に語る死のイメージの中、ドイツ軍将校の息子と収容所のユダヤ人少年の間に芽生える有刺鉄線越しの友情は、戦争の大きなうねりに飲み込まれていく。(60点)
© 2008 Miramax Film Corp All rights reserved.
固く閉じられた鉄の扉、手前には縦縞の囚人服が乱雑に脱ぎ捨てられている。静謐な映像が饒舌に語る死のイメージ、それは強制収容所で命を奪われた人々の無念だ。ドイツ軍将校の息子と収容所に囚われたユダヤ人少年の間に芽生える有刺鉄線越しの友情は、戦争の大きなうねりの中に飲み込まれていく。映画はホロコーストの現場を舞台に、世の中で何が起きているのかを知らない子供たちが、その無垢な心に従ってお互いを理解していく過程で起きる悲劇を余情たっぷりの音楽で彩る。
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まだロックン・ロールが生まれる前の米国音楽界に、夢見る若者たちが黒人音楽でムーブメントを起こす。しかしそのエピソードは歴史の表層をなぞるだけで、喜怒哀楽や創作の苦悩といった人間的な感情が単発的にしか描かれない。(40点)
第二次世界大戦直後、まだロックン・ロールが生まれる前の米国音楽界に、夢見る若者たちが南部の黒人音楽で一大ムーブメントを起こす。それは黒人に対する差別意識のない東欧からの移民が黒人たちの中からダイヤの原石ともいえる才能を発掘し、育て上げた物語。実話に基づき、実在した人物のエピソードを忠実に再現しているのだろう、しかしそのエピソードはただ歴史の表層をなぞっているだけのような薄っぺらさで、登場人物の喜怒哀楽や創作の苦悩、愛と死、友情と裏切りといった人間的な感情が単発的にしか描かれず、焦点のぼけた作品になってしまった。
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身につけているものを武器に変えチンピラを倒し、愛車・アウディが並走するコンテナトラックの隙間を斜め走行ですり抜ける。格闘とカーアクションに、これぞ映画というようなアイデアが惜しみなく投入され見事な融合をみせる。(70点)
© 2008 EUROPACORP – TF1 FILMS PRODUCTION – GRIVE
PRODUCTIONS – APIPOULAI PROD
ジャケットを相手の指にからめ、タイを手首に巻きつけ、シャツで首を絞める。身につけているものを脱ぎながら武器に変え襲いかかってくるチンピラを次々と倒していく。さらに愛車・アウディで、並走するコンテナトラックのわずかな隙間を車体を斜めに倒した2輪走行ですり抜ける。格闘テクニックとカーアクションは、これぞ映画というような奇抜なアイデアが惜しみなく投入され、それらは見事な融合をみせる。そしてジェイソン・ステイサムの鍛え上げられた背筋・8つに割れた腹筋と、クールな物腰が洗練された味わいを醸し出す。主人公の活躍の場を米国から古い街並みが残る欧州に戻したことも成功している。
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夜間だけ命を得る博物館の展示物。世界最大の博物館群に舞台を移して、さらに大掛かりなアクションが繰り広げられる。しかし、主人公の人間的な成長や展示物の抱えるトラウマといった登場人物の感情が描かれず大味な展開だ。(40点)
© 2009 TWENTIETH CENTURY FOX
見物客がいなくなった夜間だけ命を得る博物館の展示物。前作では昼間は見られるだけの存在だった彼らが生き生きと動き回る姿に自由の素晴らしさを感じたが、今回はそういった目新しさはない。その代わり、世界最大の規模を誇る博物館群に舞台を移して、さらに大掛かりな展示物のアクションが繰り広げられる。絵や写真の中に飛び込んだり、ロケットや飛行機まで動かしたりと、事態は混沌を極め、収拾しようと奔走する男を悩ませる。しかし、主人公の人間的な成長や展示物の抱えるトラウマといった登場人物の感情を細やかに描くといった作業が省かれているために、大味な展開になってしまった。
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打ち込むべき目標も反抗すべき対象も特にない、平凡な少年のありきたりな日常は、背伸びもせず、ひねくれているわけでもない。そこには青春のきらめきや生きる喜びのようなものはなく、ただただしょぼい時間が流れていくだけだ。(50点)
© 2009「色即ぜねれいしょんズ」
幸せな家庭に生まれ、グレる理由もないのがコンプレックスという、ボブ・ディランに憧れてギターを弾く文科系男子高校生。打ち込むべき目標も反抗すべき対象も特にない、平凡すぎる少年のありきたりな日常は、背伸びしようともせず、ひねくれるわけでもない。そこには青春のきらめきや生きる喜びのような積極的に人生を肯定するものはなく、ただただしょぼい時間が流れていくだけだ。まだ何ものにもなれない自分の可能性を模索する過程にもかかわらず、苦悩より煩悩が勝るところがほほえましい。
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コルセットからの解放、それが彼女が目指した女の装いだ。実用性とファッション性を兼ね備えた服を作り、女性の社会進出の時流を鋭く捕らえた先見性と、「カワイイ」という概念を初めて生みだしたヒロインの波乱の生涯を描く。(50点)
© 2008 ALCHEMY/PIX ALL RIGHTS RESERVED.
コルセットからの解放、それが彼女が目指した女の装いだ。男社会の添え物として派手に着飾ることを義務付けられた上流階級の女たちが戦争の勃発とともに自らの手を汚して働かなければならなくなったとき、ヒロインは丈夫な生地で動きやすくなおかつオシャレ心を満たす服を作る。古臭いしきたりがしみついた男のデザイナーが考えたお仕着せの流行ではなく、女が女のために考案した実用性とファッション性を兼ね備えた仕事着。映画は女性の社会進出の時流を鋭く捕らえた先見性と、「カワイイ」という概念を初めて生みだした彼女の波乱の生涯を描く。
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南極越冬隊員の心に、時季折々の豪華な料理で少しでも潤いを取り戻させようとする料理人のまなざしがあたたかい。セリフの間と人物配置の構図が精密に計算された演出は、ほのかなユーモアの中で人情の琴線に触れる効果を生む。(80点)
© 2009『南極料理人』製作委員会
果てしなく続く雪原と雲ひとつない青空。まったく変化のない風景の中で暮らす人々にとって唯一の楽しみは食事だ。孤立した状況の限られた人間関係、任期を終えるまでは決して抜け出せない閉塞感、単調で変わり映えしない業務、ほとんどないに等しい娯楽。隊員たちは皆何らかのフラストレーションをかかえている。そんな彼らの心に、時季折々の豪華な料理で少しでも潤いを取り戻させようとする料理人の優しいまなざしがあたたかい。セリフの間と人物配置の構図が精密に計算された演出は、ほのかなユーモアの中で人情の琴線に触れる効果を生み、非日常が日常となった男たちの感情をリアルに再現している。
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守るべきものは家族か名誉か。囚人護送を請け負った男が、命より大切なものがあることを、身をもって息子に伝えていく。駅馬車、銃撃戦、裏切りと騙しあい、汗と埃にまみれたガンマン・・・。本格的な西部劇の風格を備えた作品だ。(70点)
© 2007 Yuma, Inc. All Rights Reserved.
守るべきものは家族の生活なのか己の名誉か。カネために囚人の護送を請け負った主人公が、命より大切なものがあることを、身をもって息子に伝えていく。さらに正義を振りかざす男たちの浅薄さと、悪党でありながら人間の真実により近い男との交流を通じて、混迷する価値観の中では何が一番大切かを問う。ヒーローでもアンチヒーローでもない、ただ、1人の男が変わらぬ信念と誇りを持って生きたといえる人生を取り戻すまでの過程が、荒涼とした風景の中で展開する。疾走する駅馬車、派手な銃撃戦、裏切りと騙しあい、汗と埃にまみれたガンマン・・・。久々に本格的な西部劇の風格を備えた作品だ。
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弾頭争奪戦から、パリの大追撃、北極の秘密基地での死闘など、壮大なスケールの実写とCGの合成による膨大な情報量は見る者を思考停止に追い込む。一方で登場人物の性格付けが明確でわかりやすく整理されていて好感が持てた。(60点)
© 2009 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.
パワーを増幅させるボディスーツに身を包んだ男たちが装甲を施したハマーを追う。銃弾やロケット弾の攻撃と弾き飛ばされた自動車が降ってくる中、大通りから路地裏まで驚異的な走力と跳躍力で駆け抜ける姿はスピードとスリルが満点。さらに基底部が腐食したエッフェル塔がセーヌ川に横倒しになるシーンでは、ランドマークが突然崩壊するテロの恐怖がリアルに再現される。冒頭の弾頭争奪戦から、パリの大追撃、北極の秘密基地での死闘など、壮大なスケールの実写と CGの合成による膨大な情報量は見る者を思考停止に追い込む。一方で登場人物の性格付けが明確でわかりやすく整理されているところに好感が持てた。
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雨の日も雪の日も飼い主を待ち続けた伝説の犬が現代アメリカに復活する。運命的な出会い、愛情とじゃれあった日々、突然の別れ。さらに、飼い主の死後も変わらぬ忠誠心。映画は犬と人間の関わりを通じて、信頼の大切さを描く。(50点)
© Hachiko,LLC
激しい雨の日も、凍てつく雪の日も、太陽が照りつける夏の日も、毎日欠かさず飼い主が電車から降りてくるのを待ち続けた伝説の犬が現代アメリカに復活する。運命的な出会い、家族同様に注がれる愛情とじゃれあった日々、そして突然の別れ。さらに、飼い主の死後も変わらぬ忠誠心。犬にとって、命を救ってくれた上に育ててもらった人間はこれほどまでに信じられるものなのだろうか。映画は犬と人間の関わりを通じて、信頼の大切さを描く。そこにあるのは打算でも駆け引きでもなく、ただ相手を思う純粋な気持ち。人間同士ならば決してありえないような忠実な友情が犬との間には成立するのだ。
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除草剤を使う果樹園に隣接するオーガニックの畑。果樹園の土は乾いた粘土のように固く脆いが、オーガニック畑の土は生命にあふれている。統計やグラフでは実感がわかないが、死んだ土と生きている土の対比は切実な恐怖だ。(50点)
除草剤を使っている果樹園に隣接するオーガニックの畑。果樹園はきれいに表土が露出しているがオーガニック畑は作物が雑草の中に埋もれ、その境界は見事に線引きされたような雑草の壁。しかし、果樹園の土は乾いた粘土のように固く脆いが、オーガニック畑の土は草の根やミミズといった生命にあふれている。降った雨も前者は表層を削り取るが後者は地中にしみ込んで命を育む。農薬による汚染は土から始まり、農作物を通じて人間の口に入る。統計やグラフでは実感がわかないが、死んだ土と生きている土の対比は切実な恐怖を見るものに与える。
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