カムイ外伝 - 福本次郎

キャラクターや時代背景の設定の説明ばかりに時間が割かれ、ストーリーがおろそかになってしまった。そもそも社会をドロップアウトしてまで主人公が目的とした、「自由に生きること」とはどういうことなのかが全く見えてこない(40点)

カムイ外伝

© 2009「カムイ外伝」製作委員会

 濃厚な森の緑に身を同化させ追っ手に罠を仕掛ける様は「ランボー」の如く、群青の大海原から襲いかかる巨大サメを仕留める様子は「ジョーズ」のよう。江戸時代、被差別階級に生まれたゆえに苦難の人生を送るハメになった男がたどる道程は、70?80年代のハリウッド映画を彷彿させる。しかし、キャラクターや時代背景の設定の説明ばかりに時間が割かれ、ストーリーがおろそかになってしまった。そもそも社会をドロップアウトしてまで主人公が目的とした、「自由に生きること」とはどういうことなのかが全く見えてこない。

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サマーウォーズ - 福本次郎

高度にデジタル化されたネットワークに君臨するプログラムに対し、究極のアナログともいえる「家族」というネットワークで対抗する。ネット社会が陥るかもしれない恐怖に対し、人の良心を最大の武器に立ち向かう姿が素晴らしい。(40点)

サマーウォーズ

© 2009 SUMMER WARS FILM PARTNERS

 意思、心、感情etc. さまざまな言葉で表現される人間の精神活動はコンピュータのプログラムで再現できるのか。可能だった場合、どういう結果が待ち受けているのか。巨大サーバー内に構築された仮想空間ではあらゆる人間がアバターを持ち、実生活さながらの行動をとっている近未来、その世界を支配しようとする悪意が暴走する。高度にデジタル化された回線でつながったネットワークに君臨するプログラムに対し、究極のアナログともいえる家族というネットワークで対抗する。ネット社会が陥るかもしれない恐怖に対し、人の良心を最大の武器に立ち向かう姿が素晴らしい。

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のんちゃんのり弁 - 福本次郎

近所の商店街で手に入るような材料だけで調理した、素朴だけれど飽きがこないのり弁の懐かしい味と香りがスクリーンを通じて漂ってくる。映画は弁当と同様、ヒロインの自立を通じて下町のクセはあるけれど深く温かい人情を描く。(50点)

のんちゃんのり弁

© 2009「のんちゃんのり弁」製作委員会

 お惣菜としてではなく、ご飯そのものにさまざまな具材を混ぜ込み、栄養のバランスを取ろうとするお弁当。表層は海苔が敷き詰められているために見た目の美しさはないが、断面は色も種類も違う混ぜご飯が幾層にも重なってそれぞれのうまみを引き立てあう「小巻風のり弁」は、子役俳優が食べている姿を見ているだけでよだれがわいてくるほど。高級食材を使った豪勢なディナーよりも、近所の商店街で手に入るような材料だけで調理した、素朴だけれど飽きがこない懐かしい味と香りがスクリーンを通じて漂ってくる。映画は弁当と同様、ヒロインの自立を通じて下町のクセはあるけれど深く温かい人情を描く。

エリック・クラプトン&ジェフ・ベック LIVE the MOVIE! - 福本次郎

小ぶりなライブハウスとMSGという大きな会場。指先の超絶テクニックでギターをかき鳴らす2人の男のライブを再現する。デジタル録音されたサウンドはプレイヤーが眼前にいるかのような大迫力で、その振動は鼓膜を破らんばかり。(50点)

エリック・クラプトン&スティーヴ・ウィンウッド ライヴ・フロム・マディソン・スクエア・ガーデン cine sound ver.

© Danny Clinch/ Class Act™

 小ぶりなライブハウスとマジソン・スクエア・ガーデンという大きな会場。この2つのステージで行われた、指先の超絶テクニックでギターをかき鳴らす2人の男のライブを再現する。デジタル録音されたサウンドはプレイヤーが眼前にいるかのような大迫力で、その圧倒的なボリュームは鼓膜を破らんばかり。ジェフ・ベックのバンドのドラマーや最前列の客が耳栓をしていたが、これらの映画を見る観客も耳栓は持参したほうがよい。それでもスピーカーから放たれる地鳴りのような振動は椅子ごと体を揺らし、脳髄をシェイクされる感覚は十分に味わえる。

白夜 - 福本次郎

遠い異国の見知らぬ街で出会った男と女。列車の出発時間までふたりの会話だけで進展するが、この映画で発せられるセリフの数々には知的な言葉遊びもエスプリの効いた引用もなく、ありふれた身の上話が繰り広げられるだけだ。(40点)

白夜

© 2009「白夜」製作委員会

 遠い異国の見知らぬ街で出会った男と女。列車の出発時間までふたりの会話だけで進展する物語は、「恋人たちのディスタンス」を連想させるが、この映画で発せられるセリフの数々には知的な言葉遊びもエスプリの効いた引用もなく、ただありふれた身の上話が繰り広げられるのみ。しかも世界遺産に登録されている街並みを誇る都市を舞台にしているのに、古い歴史や住人の人情といったその地の魅力を描こうという意図はゼロ。これではわざわざフランスまで行かなくても、日本国内のロケでよかったのではないだろうか。

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マーシャル博士の恐竜ランド - 福本次郎

砂に埋まったビルや橋、ジャングルに現れるT-REX、毛むくじゃらの原始人、そして怪人。そこは異次元空間というより、チープな想像力が作り上げた文明の終焉。まるで時空の歪みがユーモアのセンスまで捻じ曲げたのかのようだ。(40点)

マーシャル博士の恐竜ランド

© 2009 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

 砂に埋まったビルや橋、ジャングルに現れるT-REX、3つの月が浮かぶ空、毛むくじゃらの原始人、そして怪人が潜む古代の神殿。そこは異次元空間というより、チープな想像力が作り上げた文明の終焉といった様相を呈している。映画はそんな世界に紛れ込んだマッドサイエンティストが宇宙を崩壊から救うという使命に目覚め、ハチャメチャな大活躍をする様子を少しズレたタッチで描く。だが、そこで繰り広げられる連続大活劇はアクションとしては物足りず、コメディとしては難解。まるで時空の歪みがユーモアのセンスまで捻じ曲げたのかのよう。なにか元ネタでもあって、それを知っていれば笑えたのだろうか。

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リミッツ・オブ・コントロール - 福本次郎

目に見えるものの裏で何が起きているのかの説明はなく、寡黙な主人公が感じる違和感はそのまま観客の感覚となる。あらゆるイマジネーションを駆使してもその空白を埋められず、物語は断片的な過程と決定的な結果を示すだけだ。(40点)

リミッツ・オブ・コントロール

© 2008 PointBlank Films Inc. All Rights Reserved.

 目に見えるものの裏に何があり、何が起きているのかの説明はなく、言葉少ない主人公が旅の途中感じる違和感はそのまま観客の感覚となる。あらゆるイマジネーションを駆使してもその空白を埋めることはできず、物語は断片的な過程と決定的な結果を示すだけ。結局、男の彷徨を通じて何が言いたかったのかほとんどわからなかった。「想像力を使え」というのがこの作品のテーマなのは確かだが、荒涼と乾ききった大地をしっとりとした質感でフィルムに焼きつけた豊饒な風景以外は恐ろしく空疎で、どんな解釈もなりたつ展開は、「中心も端もない宇宙」のごとくとらえどころのない茫洋としたものだった。

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ドゥームズデイ - 福本次郎

飛び散る脳漿、扉にはさまった腕、装甲車に轢き殺された悪党、生きたまま丸焼きにされる捕虜……。肉が潰され骨が砕かれ皮膚が焦げる瞬間が非常にリアルで、皮膚感覚ともいえる質感からはそのまま苦痛が伝わってくるようだ。(50点)

ドゥームズデイ

© ROGUE PICTURES

 至近距離の銃撃で被弾した警官の脳漿が飛び散ったり、鉄の扉に腕がはさまったり、装甲車が悪党を轢き殺したり、敵の手首や頭を一刀のもとに切り落としたり、生きたまま捕虜を丸焼きにしてローストされた肉を食らったり……。残虐なシーンの羅列ながら、肉が潰され骨が砕かれ皮膚が焦げる瞬間が非常にリアルで、大型の昆虫やトマトを踏みつぶした時のように内容物がはみ出しながらぺちゃんこになっていく。皮膚感覚ともいえる質感からはそのまま苦痛が伝わってくる。人間の肉体の脆さを強調することで、無力だからこそそこに宿る精神の在り方が重要になってくると主張しているようだ。

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男と女の不都合な真実 - 福本次郎

どんなに気の利いたシチュエーションで飾っても、男の気持ちは「やりたい」のひとこと。それは女も同じで、いかにして本音を隠して己の価値を高めるかを日夜研究している。真実は常に醜く、特に男女関係において正鵠を射ている。(50点)

男と女の不都合な真実

 どんなに気の利いたシチュエーションで飾っても、男の気持ちは「やりたい」のひとこと。それは女も同じで、いかにして本音を隠して己の価値を高めるかを日夜研究している。愛などという言葉は性欲を上品に言い換えただけであると喝破する傍ら、恋愛においては先に動いたほうが主導権を奪われる駆け引きの重要性も説く。真実は常に醜く、特に男女関係において正鵠を射ている主人公の信念がコミカルな展開の中で非常に説得力を持って描かれる。結局、相手の好みに合わせて演技しているより、素のままの自分をさらけ出し、その姿を愛してくれるパートナーが最高なのだ。

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アルティメット2 マッスル・ネバー・ダイ - 福本次郎

圧倒的な跳躍力を備えた男と超人的なマーシャルアーツを身につけた男。人間の身体能力の限界に挑むような見せ場の連続は健在、鍛ぬいたの肉体のパフォーマンスはワイヤーアクションがはるかに及ばない美しさを示してくれる。(60点)

アルティメット2 マッスル・ネバー・ダイ

© 2008 EUROPACORP-TF1 FILMS PRODUCTION-CIBY 2000

 圧倒的な跳躍力を備えた男と超人的なマーシャルアーツを身につけた男。陰謀に巻き込まれた2人か窮地に追い込まれたとき再び手を組む。人間の運動能力の限界に挑むかのような見せ場の連続はこの作品でも健在、鍛え上げられた身体のパフォーマンスはワイヤーアクションがはるかに及ばない美しさを示してくれる。今回はさらに警察機構への反感を軸に、自由に生きる権利の大切さを訴え、虐げられたマイノリティが力を合わせて巨大な悪に立ち向かう場面は圧巻。重武装した警官相手でも銃器を一切使用せず、己の肉体のみで戦う姿はすがすがしさすら覚えた。

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正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官 - 福本次郎

自由の国なのに権利を制限されて、息を潜めるように生きている、不法入国・滞在者という新たな被差別階級の実態をリアルに再現する。対する米国人も、救いの手を差し伸べる者、弱みに付け込む者、同情を示す者と多種多様だ。(70点)

正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官

© 2008 The Weinstein Company, LLC All Rights Reserved.

 豊かな暮らしを求めて、政治的な迫害から逃れるため、夢をかなえるため、貧しい家計を支えるため、人々は国境を越えて自由の国を目指す。しかし、自由を保障されるには現地で生まれるか、特殊な技能を持つか、難民と認定されなければならない。それ以外の者は、権利を制限されて息を潜めるように生きている。そんな、不法入国・滞在者という新たな被差別階級の実態をリアルに再現する。対する米国人も、救いの手を差し伸べる者、弱みに付け込む者、法に厳正な者、一定の同情を示す者というように多種多様だ。

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アート・オブ・ウォー2 - 福本次郎

裏切りと欺瞞、誰も信じることができない諜報の世界で生きてきた男が、傷ついた心をいつまでも引きずっている。低予算ながら、複雑に入り組んだ人間相関図と意外な展開は単純な暴力に頼るだけのB級映画とは一線を画している。(40点)

アート・オブ・ウォー2

© 2008 OPERATION EAGLE PRODUCTIONS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

 陰影の濃い映像は主人公の心の闇を投影しているのだろう。裏切りと欺瞞、誰も信じることができない諜報の世界で生きてきた男が、その傷ついた心をいつまでも引きずっている。そして再び現実に引き戻されたとき、彼の眠ったいた本能が目覚め、銃弾と鉄拳で悪党どもの陰謀を打ち砕いていく。明らかに低予算なのだが、複雑に入り組んだ人物相関図と意外な展開は単純な暴力に頼るだけのB級映画とは一線を画している。ただ、それを洗練されたエンタテインメントに昇華させるだけの力量がこの作品の監督には欠けていた。

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しんぼる - 福本次郎

◆あらゆる事象には理由があり、誰かが原因となる出来事の引き金を引く。「自分が選ばれた」という、偶然のひらめきを啓示と理屈付け、自らを神格化していく過程で、怪しげな宗教家の説く終末論の胡散臭さをシンプルに視覚化する。(60点)

 あらゆる事象には理由があり、誰かが原因となる出来事の引き金を引く。原因と結果、出口のない部屋に閉じ込められてその関連を学んだ男は、世の中に影響を与える力を手に入れたことを知る。ところが、世界を操ることができても、そこに本人がいないという矛盾。映画は意思に反して他人の運命を握ることになった主人公がたどる迷宮を通じ、怪しげな「宗教家」が説く精神世界を描く。「自分が選ばれた」という、偶然のひらめきを啓示と理屈付け、自らを神格化していく過程で、彼らの説く終末論の胡散臭さをシンプルに視覚化する。

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火天の城 - 福本次郎

天に届けとばかりに、小高い丘の上に建てられた5層の天守閣。壮麗なたたずまいと睥睨するかのような威容は、かがり火に照らされて見上げる者すべてを圧倒する。信長の難題を形に変えた大工の棟梁の苦労と工夫を再現する。(50点)

火天の城

© 2009「火天の城」製作委員会

 天に届けとばかりに、小高い丘の上に建てられた5層の天守閣。その壮麗なたたずまいと睥睨するかのような威容は、かがり火に照らされて、見上げる者すべてを圧倒する。天下統一のシンボルとして織田信長が建築を命じた安土城、その大事業に設計から仕上げまですべての工程に携わった大工の棟梁の奮闘は、現代の超高層ビル建設に匹敵する大工事。模型作りから材木の入手、組み立てそして棟上げまで、信長の難題を形に変える苦労と工夫を再現する。

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ウルヴァリン:X-MEN ZERO - 福本次郎

傷ついてもすぐに治癒する肉体を持つ一方、その心はもろく、いつまでも傷を引きずっている。不滅の命を授かったゆえに苦悩する主人公の姿を通じて、愛するものや守るべきもののために戦ってはじめて人生が意味を持つことを描く。(50点)

ウルヴァリン:X-MEN ZERO

© X-Men Character Likenesses TM & © 2009 Marvel Characters, Inc. All rights reserved. TM and © 2009 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

 傷ついてもすぐに治癒する肉体を持つ一方、その男の心はもろく、いつまでも傷を引きずっている。やがて彼は、戦争の中でしか自らの存在価値を見いだせなくなる。そして人を殺すことに倦んだとき初めて人間らしい生き方を選ぶ。映画は、不滅の命と若さを授かったゆえに苦悩する主人公の姿を通じて、愛するものや守るべきもののために戦ってはじめて人生が意味を持つことを描く。苦痛や悲しみはリアルなのに、決して死ねない苦しみは、永遠に続く地獄なのだ。

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