ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~ - 福本次郎

借金を重ね、外に女を作り、家庭を顧みない男。そんな男のたった一度の優しさを受け入れてしまったせいで不幸を甘受する女。身勝手なのに不思議な魅力を持った作家と、彼の破天荒な生き方にじっと耐える妻の対比が鮮やかだ。(70点)

ヴィヨンの妻 ?桜桃とタンポポ?

© 2009 フジテレビジョン パパドゥ 新潮社 日本映画衛星放送

 借金を重ね、外に女を作り、まったく家庭を顧みない男。そんな男のたった一度の優しさを受け入れてしまったせいで不幸を甘受する女。常に「死にたい」と周囲に漏らし、弱さを積極的にさらけ出して相手を操っていく、あまりにも身勝手なのに不思議な魅力を持った作家と、彼の破天荒な生き方にじっと耐える妻の対比が鮮やかだ。最初に懐の大きな男と思わせておいて、信頼を勝ち得るととことんまでしゃぶりつくす卑劣な主人公のヒモ体質を浅野忠信がリアルに表現する。大人になっても甘ったれで人に迷惑ばかりかけているけれどどこか放っておけない、典型的なダメ男の本質がよく描けている。

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私の中のあなた - 福本次郎

両親の愛の結晶としてではなく、姉のドナーになるために計画的に生を受けた少女。はたして彼女の臓器は誰のものか、親が本人の意思に反して臓器を提供させられるものなのか。この母娘の葛藤を通じて、家族の在り方を問う。(50点)

私の中のあなた

© MMIX New Line Productions, Inc. All Rights Reserved.

 両親の愛の結晶としてではなく、姉のドナーになるべく計画的に生を受けた少女。彼女はその事実を受け止め、精いっぱい姉のために生き、姉の命を救おうとする。しかし、腎臓の供出を求められ、結果として人なみの青春を送れないと知った時、母親を訴えるという暴挙に出る。はたして彼女の臓器は誰のものか、親が本人の意思に反して臓器を取り出せるのか。映画は、この母娘の葛藤を通じて、家族の在り方を問う。子供への愛に序列をつける母親、彼女を冷ややかに見つめる父親、母の愛を持てあます姉、姉の気持ちも妹の気持ちも理解している息子。それぞれの立場から一家の現状を描きつつ、正解などないけれどよりよい答えを見つけようとして奮闘する姿を追う。

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無防備 - 福本次郎

交通事故で流産を経験した女が息をひそめて生きている姿が非常に不気味で、彼女の感情がいつ爆発するかというサスペンスがスクリーンを覆う。彼女の冷めた目つきが、思いつめた狂気をはらんでいく過程はホラーを彷彿させる。(60点)

 工場では機械の一部になって働き、家では家庭内別居中の夫との間にほとんど会話はない。交通事故で流産を経験した女が、それ以上自分が傷つかないように息をひそめて生きている姿が非常に不気味で、彼女の感情がいつ爆発するかというハラハラしたサスペンスがスクリーンを覆う。彼女の、同僚の妊婦を見る冷めた目つきが、思いつめたような狂気をはらんでいく過程はホラー映画を彷彿させる緊張感。映画は、子供がほしいのに夫に相手にされない女と、出産を無邪気に待ちわびる妊婦のコントラストを通じて、命の大切さと人生の再生を見つめていく。

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アニエスの浜辺 - 福本次郎

少女の感性をそのままに齢を重ねた老映画作家が、心に浮かんだイメージを徒然なままに映像化する。それは美しい詩のようでもあり、一瞬を切り取った写真のようでもある。彼女の人生を記録と記憶の再構築で想像力豊か再現する。(50点)

 まるで少女の感性をそのままに齢を重ねた老映画作家が、心に浮かんだイメージを徒然なままに映像化する。それは美しい詩のようでもあり、一瞬を切り取った写真のようでもある。彼女が自らの人生を振り返るにあたり、多くの人と出会い、欧州とハリウッドをまたにかけ、ユニークな経験をする。その思い出の数々を、記録と記憶の再構築で想像力豊かに表現していく様は、まさにマジック。彼女のアーティストととしての波乱に富んだ生涯と、人間としての愛に満ち溢れた実生活がコラボする。

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悪夢のエレベーター - 福本次郎

突然止まったエレベーターに閉じ込められた4人の男女。やがて彼らの背景に潜む人には言えない事情が明らかになっていく・・・。そんなありきたりな構成と見せかけて、どこか腑に落ちない点を残しつつ、物語は意外な展開に進む。(50点)

悪夢のエレベーター

© 2009「悪夢のエレベーター」製作委員会

 突然止まったエレベーターに閉じ込められた4人の男女。深夜、外部との連絡は取れず時間だけが過ぎていく。だれともなくこのエレベーターに乗り合わせたいきさつを語るうちに、4人の背景に潜む人には言えない事情が明らかになっていく・・・。そんなありきたりな構成と見せかけて、やたらテンションの高い関西弁の男や、ジョギングに行く途中なのにスプーンを持っている超能力者、飛び降り自殺しようとしているはずなのに下りエレベーターに乗った少女と、どこか腑に落ちない点を残しつつ、意外な展開に進んでいく。

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引き出しの中のラブレター - 福本次郎

ちょっとしたすれ違いで身近な人と疎遠になってしまい、ちっぽけなプライドが邪魔をして謝罪の言葉をかけられない。そんな、心の奥に「伝えたかったのに、伝えられなかった思い」を抱えている人々の背中をそっと押してくれる。(60点)

引き出しの中のラブレター

© 2009「引き出しの中のラブレター」製作委員会

 顔を合わせれば言い争いになる親子、遠く離れて暮らす夫婦、突然連絡が取れなくなった恋人。ちょっとしたすれ違いでつい疎遠になってしまい、ちっぽけなプライドが邪魔をして言葉をかけられない。そんな、心の奥に「伝えたかったのに、伝えられなかった思い」を抱えている人々の背中をそっと押してやる。映画はヒロインのわだかまりとなっている死んだ父親への後悔を軸に、便せんにペンで綴る手紙の効用を説く。それは相手に気を配ると同時に己の言動もかえりみる行為。さらに、ラジオというメディアを通すことで、同じ感情を胸にくすぶらせている人々=観客の共感を得ようとする。

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ボヴァリー夫人 - 福本次郎

傷だらけのフィルム、暗い画面、原作をつまみ食いしただけのエピソードの羅列…。見る者の目を楽しませようとか知的興奮を刺激しようとかいう仕掛けがまったくなく、ただ断片的なシーンを重ねた退屈な時間と戦う羽目になる。(20点)

 傷だらけのフィルム、暗い画面、原作をつまみ食いしただけのエピソードの羅列…。こういうタイプの文芸映画は、映像が美しいとかカメラワークが素晴らしいとか表現が斬新だとかいう長所が一つはあるものだが、この作品に限れば見る者の目を楽しませようとか知的興奮を刺激しようとかいう仕掛けがまったくなく、ただただ断片的なシーンを重ねた退屈な時間と戦う羽目になる。思わせぶりなセリフや悲鳴などがところどころに仕込まれてはいるものの、それが何らかの伏線になっているわけでもなく、繰り返されるハエの羽音がヒロインの死を予感させるのみ。何故こんなモノを撮ったのだろうか。

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ワイルド・スピード MAX - 福本次郎

一本道をひた走るタンクローリーからタンク車だけを盗もうとする。恐ろしいほどバカげたアイデアを実行に移し、カーアクションとして昇華するプロローグは手に汗握る出来栄え。スピードと力技でねじ伏せる圧倒的な迫力だった。(50点)

ワイルド・スピード MAX

© 2009 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED

 荒野の一本道をひた走る4台のタンクを従えた牽引車。この走行中のタンクローリーからタンク車のみを切り離し、盗もうとする。最後尾のタンクに女が飛び移り、2・3台めのジョイント部分を破壊して、背後から接合した自分たちのトラックに引っ張らせる。そんな、恐ろしいほどバカげたアイデアを実行に移し、カーアクションに昇華するプロローグは手に汗握る出来栄え。少々荒っぽさはあるが、スピードと力技でねじ伏せる圧倒的な迫力だった。

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キッチン ~3人のレシピ~ - 福本次郎

好きな心を止められない妻、妻の隠しごとに感づく夫、先輩の妻に運命を感じてしまう男。愛と友情と嫉妬、陽光が降り注ぐ幸せな朝食から雨の夜の気まずい食卓まで、料理を通じて不器用な男女の気持ちのうねりが繊細に描かれる。(40点)

キッチン ?3人のレシピ?

 夫との仲は円満なのに、突然出会った若い男と稲妻に打たれたように魅かれあう。しかもその男は夫のかけがえのない友人。好きになってはいけないと分かっていても心の暴走を止められない妻、妻の隠しごとに感づいていても現実を認めたくない夫、先輩の妻に運命を感じてしまう男。愛と友情と嫉妬、いつしか3人の関係はこじれ、選択を迫られる。陽光が降り注ぐ幸せな朝食から雨の夜の気まずい食卓まで、料理を通じて繊細に描かれる不器用な男女の気持ちのうねり。食事をおいしく味わえるかどうかは幸福の尺度なのだ。

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テイルズ オブ ヴェスペリア ?The First Strike? - 福本次郎

命令に背いても己の正義を貫くべきか、帝国の大義を守るために命令に忠実な騎士でいるべきか。2人の新人騎士が軍務の中で成長していく過程で、真の軍人魂を身につけていく姿を追う。そこに求められるのは忠誠と自己犠牲だ。(40点)

テイルズ オブ ヴェスペリア ?The First Strike?

© 2009 NBGI/TOV Project Original Character Design © 藤島康介

 命令に背いても己の正義を貫くべきか、帝国の大義を守るために命令に忠実な騎士でいるべきか。当然ながら理想に燃える若者は大人の世界の「政治力学」よりも、目の前に迫りくる危機に対処しようとする。そしてさまざまな危険を克服し、襲いくる敵を排除し、背後で糸を操る黒幕をあぶり出す。映画は2人の新人騎士が軍務の中で成長していく過程を通じて、真の軍人魂を身につけていく姿を追う。死と隣り合わせの冒険の陰では、後方支援から軍用犬の世話、本部との交渉といった事務方の仕事が軍事組織を支えていて、そこに求められるのは忠誠と自己犠牲なのだ。

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ウォッチャーズ - 福本次郎

故郷を離れた男は自然消滅したと思っていたのに、女は彼を待ち続けている。思い込みの激しい女にはっきりと「別れ」を告げなかったゆえに起きる悲劇が狂気となって加速し、歪んだ愛と執念がリアルな痛みとなって再現される。(40点)

ウォッチャーズ

© 2008 Homecoming the Movie LLC

 故郷を離れた男がその距離ゆえ自然消滅したと思っていたのに、女はただ彼の心を信じひたすら待ち続けている。学園のスターだった男が大学で新たな生活を始めたが、片田舎に残った女にとっては彼は人生ただ一つの希望。そんな、思い込みの激しい女にはっきりと「別れ」を告げなかったゆえに起きる悲劇が狂気となって加速する。魅力的な外見とは裏腹に、思い通りに生きられなかったことが原因で精神のバランスを崩した女の、歪んだ愛と執念がリアルな痛みとなって再現される。

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空気人形 - 福本次郎

人はだれかとかかわりあって生きているはずなのに、登場人物はあえて煩雑な人間関係を避け、ひとりでいるのを好む。映画は、無垢な心を持った人形が体験する誕生と死、愛と別れを通じて、人生の苦悩を圧倒的な閉塞感で描く。(60点)

空気人形

© 2009業田良家/小学館/『空気人形』製作委員会 写真/瀧本幹也

 人はだれかとかかわりあって生きているはずなのに、登場人物はあえて煩雑な人間関係を避け、ひとりでいるのを好む。彼らを見つめるカメラは寂しさをとらえようとするが、本人たちはその暮らしに満足しているよう。映画は、無垢な心を持った人形が体験する誕生と死、愛と別れを通じて、人生の苦悩を圧倒的な閉塞感で描く。将来の展望や夢がなくても命ある限り生活ていかなければならない、そんな人々の現状をあるがままに受け入れる姿勢は、押し付けがましさがなくて心地よい。

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アドレナリン:ハイ・ボルテージ - 福本次郎

自動車のバッテリー、スタンガン、果ては変圧器で電気を供給する。人工心臓にチャージしながら、盗まれた自分の心臓を取り戻そうとする主人公の破壊力はこの作品でも健在。このバカバカしさは、ある種のカタルシスさえ覚える。(40点)

アドレナリン:ハイ・ボルテージ

© TM & COPYRIGHT © 2009 LAKESHORE ENTERTAINMENT GROUP LLC AND LIONS GATE FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

 舌と乳首を自動車のバッテリーにブースターケーブルをつなげ、スタンガンをスパークさせ、果ては変圧器を直に触って体を帯電させる。さらに、電源がそばになければ摩擦による放電を利用しようと、衆人環視のもとでセックスに励む。胸に埋め込まれた人工心臓に充電しながら、盗まれた自分の心臓を取り戻そうと悪党を追いかける主人公の破壊力はこの作品でも健在。追撃の過程で見せる下品な行為の数々を真面目な顔でこなしていくジェイソン・ステイサムのバカバカしさは、ある種のカタルシスさえ覚える。ただ、物語の構成は緻密さに欠け、荒涼感漂う映像は粗雑な印象を残す。

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あの日、欲望の大地で - 福本次郎

不倫する人妻と奔放なセックスにふける女。現在と過去がランダムに語られ、やがて複雑に絡み合った情念と愛の糸となって一本に紡がれてゆく。重大な秘密と罪の意識を抱えて生きるヒロインの姿を通じて、家族の崩壊と再生を描く。(60点)

あの日、欲望の大地で

© 2008 2929 Productions LLC, All rights reserved.

 赤茶けた荒涼とした大地と陰鬱な雲に覆われた街、トレーラーハウスに通う人妻と奔放なセックスにふける女。舞台となる風景は対照的でもそこで繰り広げられる欲望は相似形をなす。それは彼女たちが血のつながった母娘だから。現在と過去、都市と荒野、それぞれの登場人物がランダムに語られ、やがて複雑に絡み合った情念と愛の糸となって一本に紡がれてゆく。心に重大な秘密と深い罪の意識を抱えながら生きるヒロインの姿を通じて、家族の崩壊と再生を描く。

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ココ・アヴァン・シャネル - 福本次郎

恋をしても愛するな、言葉だけの約束は信じるな、己を安売りするな。常に男に対して挑発的で主導権を取らせない、そんな若き日のココ・シャネルが貴族に囲われていた時代にスポットを当て、彼女が愛よりも仕事を選ぶまでを描く。(50点)

ココ・アヴァン・シャネル

© Haut et Court – Cine@ – Warnerbros. Ent. France et France 2 Cinema

 きっと父が面会に来てくれる、そう願って孤児院での生活に耐えていた少女時代。自分たちを捨てた父という男はとうに彼女のことなど忘れている。その原体験が後の彼女の人生において、男性不信を植えつける。恋をしても愛するな、言葉だけの約束は信じるな、己を安売りするな。常に男に対して挑発的な態度をとり続け相手に主導権を取らせない、そんな高慢で自我の強いのヒロインが唯一心を許した男も、やはり他の女のもとに走る。映画は、若き日のココ・シャネルが貴族に囲われていた時代にスポットを当て、彼女が愛よりも仕事を選ぶまでを描く。

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