ニュームーン/トワイライト・サーガ - 福本次郎

◆恋人は年を取らないのに、自分は老いてゆく。永遠の命と若さを手にした男に恋をした女は、人間であることを憎む。苦悩と絶望が待ち受けていると分かっていても、その気持ちを抑えきれない女心の浅はかさと身勝手さを描く。(40点)

 恋人は年を取らないのに、自分は老いてゆく。永遠の命と若さを手にした男に恋をしてしまった女は、人間であることを憎む。しかし、男も彼女を愛するがゆえに自制し苦しみを共にしなければならない。相手がいなければ生きていけないと思いこむほどの恋、苦悩と絶望が待ち受けていると分かっていてもその気持ちを抑えきれない。映画は、恋人に去られたヒロインが、失意と自暴自棄の中から立ち直っていく過程で、女心の浅はかさと身勝手さを描く。ヴァンパイアと別れたら、そのすぐ後で狼人間と付き合い始めるというのでは、ベラは単に怪物好きのバカ女。叶わぬ恋に身をやつし、悲劇のヒロインになった己の姿に酔っているだけだ。

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ビッグ・バグズ・パニック - 福本次郎

◆巨大昆虫が襲撃してくるという状況下、人々は絶望と戦い希望を見出していく途中で人間性をあらわにしていく。主人公はヒーローではなく間抜けな若者、サバイバルの過程で彼がほとんど成長せず、最後までアホ面なところがよい。(60点)

 気がつくと、そこは大型犬ほどの大きさに巨大化した昆虫が支配する世界。人間はみな繭に覆われ仮死状態、そんななかわずかに目覚めた仲間と共に安全な場所を目指す生存者たち。襲撃してくる昆虫、ハイブリッド化した人間昆虫、そして状況が理解できず暴走する生存者。未知の状況に置かれた人々が絶望と戦い希望を見出していく途中で人間性をあらわにしていく。主人公をヒーロータイプではなく間抜けな若者にし、サバイバルの過程で彼がほとんど成長せず、最後までアホ面なところがよい。

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戦場でワルツを - 福本次郎

◆従軍したのに戦場での記憶がない男が、過去の断片を拾い集めて全体像を再構築する過程で、戦争の真実に迫っていく。恐怖、怒り、不条理、そして突然の死を、切り絵のようなタッチのアニメーションがリアルな感覚で訴える。(60点)

 人は都合のよい思い出を捏造するだけでなく、忘れたい記憶をなかったことのように封印する。それはトラウマに苦しめられず快適に生きてゆくために働く脳の機能だ。だが、時として無意識のうちにフラッシュバックが起こり、決して事実からは逃れられないことを知る。映画は、従軍したにもかかわらず戦場での出来事を全く思い出せない男の、過去というパズルの断片を拾い集めて全体像を再構築する過程で、戦争の真実に迫っていく。恐怖、怒り、不条理、そして突然の死。殺し合いが日常となった異常な状況がいかに人の心を蝕んでゆくかを、切り絵のようなタッチの陰影が印象的なアニメーションがリアルな感覚で訴える。

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2012 - 福本次郎

◆地割れと陥没をリムジンで逃げ切り、崩落するビルの谷間を飛行機をでかいくぐる。主人公に迫りくる危機を圧倒的な情報量の映像と重低音のサウンドで再現し、体験型アトラクションに乗っているようなアドレナリンの大量分泌を促す。(60点)

 猛スピードで追ってくる地割れと陥没をリムジンで逃げ切り、降り注ぐ火山弾や崩落するビルの谷間を飛行機をでかいくぐる。主人公に迫りくる危機また危機を、圧倒的な情報量と重低音のサウンドで再現し、そのスリルと興奮はまさにテーマパークの体験型アトラクションに乗っているようなアドレナリンの大量分泌を促す。人間的なドラマなどこの作品には付け足しに過ぎず、大規模な地震・津波・溶岩噴出など地球の崩壊を目の当たりにしなんとかサバイバルしようとする男の体感を、ひたすら観客にも味あわせようというサービス精神の詰まった映像は、むしろ爽快なカタルシスさえ覚える。映画は見世物と割り切り、脳幹を刺激することだけに徹した作り手の姿勢は心地よい。

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ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない - 福本次郎

◆中卒・引きこもり・ニートの青年がやっと見つけた正社員の働き口は異常に劣悪な職場だった。それでも己を見失わず、今までの人生から脱却しようと奮闘する姿を通じ、働くこと・頑張ること・最後までやり遂げることの意味を問う。(40点)

 入社初日からいきなり深夜まで残業、手当てなど当然出ない。中卒・引きこもり・ニートという就職氷河期における三重苦を背負った青年がやっと見つけた正社員の働き口。そこは、長引く不況で人件費が削減され、異常に劣悪な環境で働かざるを得ない、地獄のような会社だった。物語はそんな職場でも己を見失わず、なんとか今までの人生から脱却しようと奮闘する主人公の姿を通じ、働くこと・頑張ること・最後までやり遂げることの意味を問う。しかし、軍隊や「三国志」といったデフォルメされた彼の心象風景がいちいち押し付けがましくて興を殺ぐ。

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曲がれ!スプーン - 福本次郎

◆周囲の目を気にしながら生きるエスパーたちのつつましさがほほえましい。透視や電磁波、念動力に時間凍結、そんなパワーを持ちながらせこい用途にしか応用できない彼らの現実が、超能力に対する偏見をリアルに反映している。(40点)

 特殊な力を持っているのに、大っぴらに発揮するととんでもない災難が降りかかることが分かっている。そんな、周囲の目を気にしているエスパーたちのつつましさがほほえましい。透視や電磁波、念動力に時間凍結、パワーを自販機の懸賞やうどんに入った髪の毛を取るといったせこい用途にしか応用できない彼らの現実が、超能力に対する偏見をリアルに反映している。世間の好奇心と能力を利用しようとする権力者、ひっそりと生きていたい彼らにはいちばんの天敵なのだ。

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イングロリアス・バスターズ - 福本次郎

◆人間の命の軽さを延々と描き、壮大な毒を持ったコミカルな寓話の体裁で鮮やかな反戦メッセージを謳いあげる。さらに、延々と続く会話の端々に忍ばせた蘊蓄に富んだディテールと緻密に計算された伏線が、緊張感を盛り上げる。(80点)

 250人の敵を倒したドイツ兵は英雄に祭り上げられて、その活躍はプロパガンダ映画になる。米軍特殊部隊はドイツ兵をバットで殴り、頭皮を剥ぎ、額にカギ十字を刻む。独軍・連合国軍兵ともに敵の命を奪うことが快感という戦時の心理状態。そこには戦争の悲惨さや個人の思いなど微塵もなく、スリルを楽しむかのようにゲーム感覚で人を殺し人が殺されていく。映画は、人間の命などこれほどまでに軽いものであることを延々と描き、戦争が人間性を奪っていく現実を突きつけ、壮大な毒を持ったコミカルな寓話の体裁で鮮やかな反戦メッセージを謳いあげる。さらに、延々と続く会話の端々に忍ばせた蘊蓄に富んだディテールと緻密に計算された伏線が、いつ爆発するのかという緊張感に彩られ、片時も目が離せない。

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マイマイ新子と千年の魔法 - 福本次郎

◆田舎の農家で育った少女と、都会から来た転校生の間に芽生える友情を中心に、彼らの豊かな想像力と繊細な感受性が描かれる過程で、遠い記憶と記録の中にしか残っていない時代の家屋や風景、人々の生活が精密に再現される。(60点)

 ガス式の冷蔵庫はあっても電話やテレビはまだ普及しておらず、子供たちのおやつはポン菓子。食べることに精いっぱいだった「戦後」は終わり、農村の生活は平穏を取り戻している。それでも、まだまだ便利さとは程遠く、人々は濃い人間関係に縛られて生きている。そんな田舎の農家で育った少女と、都会から来た転校生の間に芽生える友情を中心に、彼らの豊かな想像力と繊細な感受性が描かれる。もはや遠い記憶と記録の中にしか残っていない時代の家屋や風景、そして人々の生活が精密に再現され、知らないはずなのになぜか懐かしく、しばし子供のころに戻ったような感覚になる。

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つむじ風食堂の夜 - 福本次郎

◆ひとりでは寂しすぎる、でもそこに行けば必ず誰かがいて、孤独ではないことが確認できる。昭和の面影が色濃く残る古い一軒家の食堂に集まる人々の小さな夢が少しだけ叶うとき、その心にろうそくの火のような暖かさが灯る。(50点)

 ココではないどこかに行こうとしても、結局ココに戻ってきてしまう。自分が今いるところから離れようとしても、やっぱり癒され落ち着けるのは慣れ親しんだ場所。ひとりでは寂しすぎる、でもそこに行けば必ず誰かがいて、孤独ではないことが確認できる。昭和の面影が色濃く残る古い一軒家の食堂に集まる人々の小さな夢が少しだけ叶うとき、その心にろうそくの火のような暖かさが灯る。万歩計、ベレー帽、路面電車、タイプライター、エスプレッソマシン、石油ストーブ、古本屋…。つややかな映像からは電子機器に頼らない人間の温もりが伝わってくるようだ。

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ディセント2 - 福本次郎

◆悲惨な死がサスペンスを盛り上げ、洞窟の閉塞感と迷路のような暗闇で奮い立たせる勇気、逃げ場がなくなり死が待つだけの絶望感、恐怖に立ち向かう過程で人間のエゴと生存本能、自己犠牲の精神が混然一体となって描かれる。(50点)

 その正体が最初からわかっていながら見ているので、この続編は「いつ、どんな形でそれが姿を現すのか」という点が最初の楽しみ。そして、何の知識も持たない新しいキャラクターを登場させ、彼らが悲惨な死を遂げるうちにサスペンスを盛り上げる手法はここでも健在。洞窟の閉塞感と迷路のような暗闇で奮い立たせる勇気、逃げ場がなくなり死が待つだけの絶望感、迫りくる恐怖に立ち向かう過程で人間のエゴと生存本能、自己犠牲の精神が混然一体となって描かれる。

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脳内ニューヨーク - 福本次郎

◆人生は壮大な一幕芝居、そんな着想を得た演出家が、巨大な倉庫で自らの実生活を演劇として再現する。そこにはステージと社会の垣根はなく、妄想に憑かれた男が真実を求めて試行錯誤を繰り返す過程で不条理の迷宮に落ちていく。(40点)

 人生は壮大な一幕芝居、そんな着想を得た演出家が、巨大な倉庫で自らの実生活を演劇として再現しようとする。日常生活が舞台稽古になり、俳優たちが現実の人間に扮する。やがて演出家自身も他人が演じるようになり、芝居は混迷を極める。そこにはもはやステージと社会の垣根がなくなり、何がリアルでどこからが創作なのかが区別のつかないまま時間ばかりが過ぎていく。狂気なのかアートなのか、映画は妄想に憑かれた男が真実を求めて試行錯誤を繰り返す過程で不条理の迷宮に落ちていく。

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Disney’s クリスマス・キャロル - 福本次郎

◆誰もが他人に優しくなれるはずのクリスマス。幸せだった過去を顧み、カネの亡者となった現在を鳥瞰し、来るべき孤独な最期を予感させるという有名な物語を、めくるめくCGの表現力で絵本のような味わいの映像に仕上げている。(50点)

 誰もが他人に優しくなれ、微笑みを交わすことができるはずのクリスマス。そんな世間とは無縁であるかのように己の世界に閉じこもり、銭勘定しか頭にない男が、一晩の奇跡で生まれ変わる。幸せだった過去を顧み、人間関係よりもカネを大切にする現在を鳥瞰し、来るべき孤独な最期を予感させるという有名な物語を、めくるめくCGの表現力で絵本のような味わいが残る映像に仕上げている。眼光鋭く曲がった鷲鼻がいかにも守銭奴という風貌に、主人公のキャラクターが凝縮されている。

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きみに微笑む雨 - 福本次郎

◆中国人の女と韓国人の男、素直な思いを英語にすることでよそよそしさが抜け切れず、腹を探り合うような距離感がなかなか縮まらない。もう若くない男と女が愛と分別の狭間で迷う姿が、緑濃い古都を舞台に詩的な映像で描かれる。(50点)

 中国人の女と韓国人の男、母国語で同胞と会話をするときは饒舌になるのに、ふたりの会話は英語。自分の素直な思いを英語に翻訳することで強いエモーショナルな部分がそぎ落とされ、どこかよそよそしさが抜け切れず、お互いの腹を探り合うような距離感がなかなか縮まらない。なんでも話せた学生のころと違い、別々の人生を歩んだ歳月というブランクが慎重にさせるのか、あと一歩が踏み出せない。そんな、もう若くない男と女が愛と分別の狭間で迷う姿が、緑濃い古都を舞台に詩的な映像で描かれる。

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ピリペンコさんの手づくり潜水艦 - 福本次郎

◆壮大な夢や挑戦ではなく、ただ膨大な歳月をかけて、思い付きを形に変えようとしている。そんな肩の力が抜けたおっさんの風変わりな道楽をカメラは丹念に追う。情熱を表に出さず淡々と作業を続けていく主人公の姿がすがすがしい。(50点)

 壮大な夢を実現するために寝食を惜しんで努力するのでもなく、挑戦することで自分や周りの人間に変化をもたらそうとしているのでもない。ただ、膨大な歳月をかけて、思い付きを形に変えようとしている。そんな肩の力が抜けたおっさんの風変わりな道楽をカメラは丹念に追う。家族に反対されても他人に白い目で見られても軽く受け流し、やるべきことをやれるときにコツコツと積み重ねる。その、情熱を表に出さず淡々と作業を続けていく主人公の姿がすがすがしい。

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笑う警官 - 福本次郎

◆裏金疑惑の証人と美人警官殺人事件。裏切りと欺瞞、出世争いと保身、個人にとっての正義と警察の体面が正面からぶつかり、二つのスキャンダルが結び付く。そして謎が明らかになる過程でうちに刑事たちは疑心暗鬼に陥っていく。(40点)

 裏金疑惑に関わる証人喚問と美人警官殺人事件。警察に巣食う巨大な悪と、腐敗した上層部に挑む刑事たちの奮闘をアンニュイなジャズの旋律に乗せる。裏切りと欺瞞、出世争いと保身、キャリアと現場、理想と現実。個人にとっての正義と警察の体面が正面からぶつかり、二つのスキャンダルが結び付く。そして、謎が謎を呼び、誰が誰と通じているのか、その過程が明らかになるにつれ刑事たちは疑心暗鬼に陥っていく。しかし、どんでん返しに次ぐどんでん返しの連続はとっててつけたような印象で、驚きよりも失笑を漏らしてしまう。

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