ブルー・ゴールド-狙われた水の真実 - 福本次郎

◆水は住むあらゆる生き物の必需品なのに、一部大企業が所有権を独占しようとする。梅雨や台風のおかげで雨水に恵まれ、「水はタダ」というのが常識の日本に住んでいると切実さはないが、その認識はいかに甘いかを痛感する。(60点)

 水はいったい誰のものか。地球に住むあらゆる生き物の必需品であるはずなのに、一部大企業が所有権を独占しようとする。梅雨や台風のおかげで雨水に恵まれ、「水はタダ」というのが常識の日本に住んでいると切実さはないが、その認識はいかに甘いかを痛感する。欧米の貪欲な水企業は、水を戦略的資源として虎視眈々と狙っているのだ。

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(500)日のサマー - 福本次郎

◆男にとって、理性よりも感情で動く女心は永遠の謎。運命の出会いを信じる主人公が、出会いは偶然と割り切る女とのかみ合わない交際のなかで愛の苦悩に苛まれる物語は、傷つくことを恐れる現代の若者の胸の内をリアルに再現する。(50点)

 男にとって女心は永遠の謎。理性よりも感情で動き、ちょっとした出来事で不機嫌にも上機嫌にもなる、そのメカニズムを知らずにいると一方的に振り回される。恋の始まりのころならば小悪魔的な魅力に思える言動が時間がたつにつれて腹立たしくなり、好きな気持ちをはぐらかされ付き合っているつもりになっているのに不意に突き放される主人公は、いつしか愛という名の苦悩に苛まれていく。運命の出会いを信じる男と出会いは偶然と割り切る女のかみ合わない交際を通じて、傷つくことを恐れる現代の若者の胸の内をリアルに再現する。

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彼岸島 - 福本次郎

◆寒色系の映像の中、唯一血の色が鮮やかな色彩を帯びる。かみついた牙から滴る血、剣先がかすめた腕ににじむ血、ぶった斬った胴体からほとばしる血。血こそが人間の証明であるかのように赤い痕跡をスクリーンに焼きつける。(40点)

 寒色系に抑えられた映像の中、血の色が鮮やかな色彩を帯びる。首筋にかみついた牙から滴る血、剣先がかすめた腕からにじみ出す血、ぶった斬った胴体からほとばしる血。血こそが人間の証明であるかのように赤い痕跡をスクリーンに焼きつけていく。吸血鬼に支配された地図にない島に、行方不明の兄を探しにやってきた高校生がたどる凄惨な戦いを通じて、兄弟の思いと友情の大切さを描く。だが、ハンディカメラを多用した移動シーンや戦闘シーンは、その場にいるような躍動感や緊張感を観客に体験させる狙いなのは理解できるが、画面が激しく揺れて見づらい。それを補う効果音もやたら耳障りで、感覚を過剰に刺激するだけに終わってしまった。

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真幸くあらば - 福本次郎

◆ブルーが強調された映像は多く語らない登場人物のように寡黙だが、ピアノの乾いた旋律が彼らの感情を饒舌に物語る。それは時に絶望、時に優しさ、最後には希望にまで昇華され、なんとしても生きたいという願いに変化する。(60点)

 ブルーが強調された冷たい映像は内面を多く語らない登場人物のように寡黙だが、ピアノの乾いた旋律が彼らの秘めた感情を饒舌に物語る。それは時に絶望、時に優しさ、最後には希望にまで昇華される。誰にも愛されず育ったゆえに、他人を愛するどころか自分すら愛せない男。彼が刑の執行直前に覚えた他人を大切に思う感覚、その想いはアクリル板に隔てられ言葉のやり取りでしか交換できない。死の恐怖を知り、生きる喜びを知る、人を愛して初めて生まれた気持ち。それはいつしか、「なぜ生まれてきたのだろう」という己の存在を否定する考えから、なんとしても生きたいという願いに変化する。

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牛の鈴音 - 福本次郎

◆やせ衰え骨が浮き出た尻とあばら、おぼつかない足取りでしか歩けない老牛。一切の機械と農薬を使用せず、人力と牛だけで田畑を耕す頑固な老人。とぼとぼと進むしか能がない人間と牛との絆を通じて、生きることの意味を問う。(60点)

 やせ衰え骨が浮き出た尻とあばら、もはやおぼつかない足取りでしか歩けなくなった老牛を使役し続ける老人。彼らの時間は恐ろしくゆっくりと流れ、効率というものをまったく考慮に入れていない。21世紀にもなって、一切の機械と農薬を使用せず、人力と牛だけで田畑を耕す頑固な老人と、彼と同じくとぼとぼと前に進むしか能がない牛との絆を通じて、生きることの意味を問う。完全に時代からは取り残されている、しかし、そこには経済至上主義では測れない、素朴であるが精神的に満ち足りた人生がある。

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ずっとあなたを愛してる - 福本次郎

◆彼女は心を閉ざし、笑顔は見せない。まるで自らを罰するかのように、他人のやさしさから距離を取る。罪の意識と死の影にさいなまれるヒロインを、クリスティン・スコット・トーマスが抑制の中にも鋭い悲しみを利かせて演じる。(70点)

 その女は心を閉ざし、笑顔は見せない。まるで自らを罰するかのように、他人のやさしさから距離を取り、言葉も控えめだ。そんなヒロインが、妹と新しい友人に恵まれて人生を見つめなおす過程がミステリー仕立てで描かれる。いったい何が起きていたのか、なぜ長期間にわたる不在があったのか、映画はそれらの疑問の答えを小出しにしながら、衝撃の真実に迫っていく。罪の意識と死の影にさいなまれながらも生き続ける道を選ぶ彼女を、クリスティン・スコット・トーマスが抑制の中にも鋭い悲しみを利かせて演じ、物語に深い奥行きをもたらしている。

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ティンカー・ベルと月の石 - 福本次郎

◆自分ではどうにもならない難局にぶつかったとき、頼りになるのは魔法よりも友人。様々な魔法が使えるヒロインが、いざという時に友情に救われる。映画は他人の知恵と力を借りれば物事は何倍にもはかどることを教えてくれる。(50点)

 ひとりではどうにもならない難局にぶつかったとき、頼りになるのは魔法よりも友人。妖精として様々な魔法がを使えるヒロインが、いざという場面で友情に救われる。邪魔をされ、鬱陶しく感じる時もある。我慢できずに口論になり感情にひびが入ることもある。それでも相手を許し先に「ごめんなさい」と謝る。その一言こそが不可能を可能にする“魔法の言葉”であると彼女は身をもって経験する。映画は彼女の冒険を通じて、他人の知恵と力を借りれば物事は何倍にもはかどる現実を教えてくれる。

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ヴィクトリア女王 世紀の愛 - 福本次郎

◆女の子ならだれもが夢見るプリンセス。しかし、王女の日常は軟禁状態に等しく、しきたりや決まりに縛られ、自由になりたいという思いだけが募っていく。そんな息が詰まるようなの宮殿内のディテールがリアルに再現されている。(60点)

 女の子ならだれもが夢見るプリンセス。しかし、実際に王女に生まれしかも王位継承権第一位にあるヒロインにとっては、宮廷での日常はまさに軟禁状態に等しい。しきたりや決まりに縛られ、階段を下りるのにも侍女の手を借り、就寝も母と一緒。常に誰かに監視され、行動を指図され、自由になりたいという思いだけが募っていく。そんな息が詰まるようなの宮殿内のディテールが非常にリアルに再現されている。映画は、権力とカネ、政治家や貴族の強欲に翻弄されながらも断固として自分の意思を貫いて、19世紀英国を空前の繁栄に導いた女王の若き日を追う。

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釣りバカ日誌20 ファイナル - 福本次郎

◆不況、リストラ、給料カット。オフィスの空気はよどんでいくのに、ハマちゃんだけは危機感ゼロ。経営者のスーさんも、利益より従業員の幸せを考えている。こんな会社などないと分かっていても、映画のノリに引き込まれてしまう。(60点)

 不況、リストラ、給料カット・・・。暗い話題にオフィスの空気はよどんでいくのに、ハマちゃんだけはどこ吹く風と釣り新聞に目を凝らし、危機感ゼロ。一方の経営者であるスーさんも、自分の死期を間近に感じ、目先の利益よりも従業員の幸せを考えている。巧みに現在の世相を取り入れリアリティを持たせることで、こんな居心地のいい会社などないと分かっていても、ついつい引き込まれてしまう。せめて映画館の中にいる間だけは世間の憂さを忘れて、人生を謳歌しているハマちゃんとともに映画を楽しんでもらおうという作り手に好感が持てる。高齢者にはスーさんの生き方を通じて鮮やかな引き際を示す。夢を売るという映画の本質を忠実に実行する姿勢は心地よい。

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海角七号 君想う、国境の南 - 福本次郎

◆日本統治下の台湾で教え子と恋に落ちた教師の届かなかった言葉が60年を経て現代に受け継がれる。日帝支配の過去を持ちながら反日感情が希薄な台湾人の、おおらかできめ細かい人情が南国の風を背景に余情たっぷりに描かれる。(50点)

 「僕が向かっているのは故郷なのか、それとも故郷を後にしているのか」。生まれた日本よりも、愛する人を見つけた台湾に離れがたい郷愁を抱いてしまった日本人。日本統治下の台湾で教え子と恋に落ちた教師が、敗戦に引き裂かれる哀しみを彼女に認めた手紙が60年の歳月を経て現代の若者に受け継がれる。同じ日帝支配の過去を持ちながら、韓国・中国などとは比べ物にならないほど反日感情が希薄な台湾人の、おおらかかつきめ細かい人情が南国の風を背景に余情たっぷりに描かれる。

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のだめカンタービレ 最終楽章 前編 - 福本次郎

◆安っぽいシチュエーションと大げさなリアクションは、世間の常識など一顧だにせず自分の目指すアートに邁進する音楽家たちの青春をデフォルメする。前半は笑えないコメディだが、真摯に楽曲に向きあう後半は聞き入ってしまう。(50点)

 安っぽいシチュエーションと大げさなリアクションは、世間の常識など一顧だにせず自分の目指すアートに邁進する音楽家たちの青春をデフォルメする。恐ろしく幼稚なメンタリティしか持たないのにピアノの腕前は大きな可能性を秘めた女と、己が振るタクトが紡ぎだすハーモニーこそ完璧と信じる男の、プロとして通用するかが試されていく過程が騒々しいエピソードの連続で綴られる。人気テレビドラマの延長線上にある前半部分は笑えないコメディだが、真摯に楽曲に向きあおうとする後半は思わず聞き入ってしまった。

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アバター - 福本次郎

◆緑濃い木々、色鮮やかな花、地を覆う輝く苔、そして動物たち。先住民は生活に恩恵をもたす動植物と神経線維を接続して意思の疎通を図るという設定が、地球を破壊してきた人間との決定的な違いとなり、エコロジーを前面に訴える。(60点)

 鬱蒼と育った森は天高く生い茂り、絡み合った枝や蔓が空中に張り巡らせた迷路のような道を形成している。緑濃い木々、色鮮やかな花、地を覆う輝く苔、舞い落ちてくる木の精、野生の獣たち、そして先住民。生けとし生きるものは魂のレベルでつながりを持っていて、お互いの命を尊重しながら暮らしている。壮大なパノラマで描かれたユートピアの人々は、科学や文明を否定し自然と共生する道を選ぶ。それはテクノロジーの進歩の先にあるものではなく、満ち足りた環境が保証してくれる安寧だ。先住民は生活に恩恵をもたらしてくれる動植物に神経線維を接続して意思の疎通を図るという設定が、地球を破壊してきた人間との決定的な違いとなり、映画はエコロジーを前面に訴える。

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THE 4TH KIND フォース・カインド - 福本次郎

◆心理学者のもとを訪れた患者を撮影したビデオと、その様子を俳優によって再現した映像は、なにかとてつもない異常が起きていることを予感させる。しかし、ドキュメンタリーに擬した手法はさんざんやりつくされていて生ぬるい。(30点)

 心理学者のもとを訪れた患者のインタビューを撮影したビデオと、その様子を俳優によって再現した映像。それら二つを、スクリーンを左右に分割し同時進行で見せ、なにかとてつもない異常が起きていることを予感させる。アラスカの小さな街でたびたび起きる超常現象を解明しようとするヒロインが真相に迫る過程で、彼女自身もまた犠牲者になっていく。しかし、UFOによる拉致といった題材自体が古臭い上に、ドキュメンタリーに擬した手法も最近ではさんざんやりつくされていては、その衝撃は生ぬるい。

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蘇りの血 - 福本次郎

◆呪術と迷信が混在する世界では一度死んでもこの世に戻ってこられる。緑濃い森、煌々と闇を照らす月、満天にきらめく星……人と自然、魂と精霊が共存できた太古の昔、人間が人間として生きていくために必要なものは何かを問う。(40点)

 呪術と迷信が混在する世界では生と死の境は明確に定義されておらず、一度死んでもこの世に戻ってくることができる。緑濃い森、煌々と闇を照らす月、満天にきらめく星……人と自然、魂と精霊が共存できた太古の昔、人間が人間として生きていくために必要なものは何かを問う。何者にも束縛されない自由と命がけで守るべき愛、結ばれない運命の男と女がひとときの安らぎを求めて彷徨する。しかし、その過程は冒険活劇の興奮も純愛物語のカタルシスにも乏しく、ドラムを多用した音楽の激しさとしっとりと落ち着いた映像のミスマッチが見る者の興味をつなぐ。

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よなよなペンギン - 福本次郎

◆ソフトな曲線と温かみのある質感で描かれたキャラクターと、光と影がファンタジックなコントラストを醸し出す背景の家並み。月光に照らされた街をペンギン柄のコートの少女が走りまわるプロローグは、おとぎの国に迷い込んだよう。(50点)

 ソフトな曲線と温かみのある質感で描かれたキャラクターと、光と影がファンタジックなコントラストを醸し出す背景の家並み。月光に照らされた街をペンギン柄のコートを着た幼い少女が走りまわるプロローグは、おとぎの国のテーマパークに迷い込んだよう。「ペンギンだって空を飛べる」と信じている彼女の一途な心が非常にキュートで、どんな夢も叶うと思い込んでいた子供のころに戻った気分になる。

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