ハンナ・モンタナ ザ・ムービー - 福本次郎

◆素顔の日常とかりそめの虚像を使い分けるヒロインは、積極的に 「両方とも本当の自分」とその状況をエンジョイする。はちきれんばかりの躍動感と高揚感、16歳のフレッシュな感性をいまだ失っていなければ楽しめるに違いない。(50点)

 素顔の日常とかりそめの虚像を使い分けるヒロイン。いつしかどちらが本来の姿が分からなくなるが、彼女はアイデンティティクライシスに悩んだりせず、積極的に「両方とも本当の自分」とその状況をエンジョイする。これが男なら苦悩の末に生きる道を見つけるストーリーに落ち着くが、米国の少女は己の欲望にあくまで前向きで貪欲に二つの人生を手に入れようとする。その過程で繰り広げられるドタバタ劇はあまりにもベタな設定だが、彼女がマイクを握るとノリノリのダンス&ミュージックにたちまち変貌。はちきれんばかりの躍動感と高揚感、16歳のフレッシュな感性をいまだ失っていない観客ならばきっと楽しめるに違いない。

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交渉人 THE MOVIE - 福本次郎

◆カーチェイスから始まって建物の爆破、さらには航空機乗っ取りと息つく間もないの連続は一時もスクリーンから目を離せない。格差社会の問題点や政府高官の陰謀までが加わって、物語は複雑怪奇なミステリーの様相まで見せる。(50点)

 カーチェイスから始まって建物の爆破、さらには航空機乗っ取りと息つく間もないシーンの連続は一時もスクリーンから目を離せない。そこに格差社会の問題点や政府高官の陰謀までが加わって、物語は複雑怪奇なミステリーの様相まで見せる。映画は、過去のハリウッド作品のエッセンスを織り交ぜながら、日本映画らしい人情も効かせ、ハイジャック機に乗り合わせたヒロインがその機転で犯人グループと渡り合う頭脳戦に、格闘や銃撃戦を交えて最後まで疾走する。

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団地妻 昼下がりの情事 - 福本次郎

◆濡れていないのに挿入しようとする夫に失望した妻。彼女の心に隙間にすっと入り込む男。古い団地を舞台に、必然のごとく出会ったふたりが求めあう姿を通じ、不況や孤独にさいなまれる低所得者層の暮らしをリアルに再現する。(50点)

 残業続きで遅くまで家に帰ってこない上、たまにその気になっても濡れていないのに挿入しようとする夫に軽い失望を感じている妻。近所に住むのは老人ばかりで、悩みを打ち明けられる同世代の友人もおらず、家事の合間につい妄想にふけり股間をまさぐってしまう。彼女の心に隙間にすっと入り込む風のように現れた男もまた、胡散臭い仕事と年頃の息子に手を焼きながら生きる希望をなくしかけている。物語は古い団地を舞台に、必然のごとく出会ったふたりが胸の空白を埋めるために求めあう姿を通じ、不況や孤独にさいなまれる低所得者層の暮らしをリアルに再現する。

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食堂かたつむり - 福本次郎

◆家出をし、コックとして修業を積み、恋人と信じた男に全財産を持ち逃げされ声を失ったヒロインの半生を手短に紹介するイントロ部分は、魔法の国の扉を開けるような不思議なメロディに乗せた歌と簡潔な映像でテンポよく語られる。(30点)

 家出をし、コックとして修業を積み、恋人と信じた男に全財産を持ち逃げされ声を失った女は、たった一つ残されたおばあちゃんのぬか床を手に故郷の村に帰る。ヒロインの半生を手短に紹介するイントロ部分は、魔法の国の扉を開けるようなメロディに乗せた歌と簡潔な映像でテンポよく語られる。これからどんなおとぎ話が展開するのかと期待はふくらむが、ブタを飼う母親が出てくるあたりで急速にしぼんでしまう。そして癖のある他の登場人物は、その存在が不思議というより不自然でまったく物語になじんでいない。もともとスカスカな内容の原作は映画化でいっそう隙間風を吹かせてしまった。

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新しい人生のはじめかた - 福本次郎

◆家族と離れて暮らし仕事も行き詰っているNYの男と、刺激のない日常にウンザリしているロンドンの女。未来などほんのわずかなきっかけで変えられ、運命は自分の足で歩こうとする者の味方をすることをこの作品は教えてくれる。(50点)

 家族と離れて暮らし仕事も行き詰っているNYの男と、刺激のない日常にウンザリしているロンドンの女。人生も中盤を過ぎたふたりが、もう一度生きる目標を模索しているときに知り合う。現在の生活を変化させる勇気と、失敗したらやり直せないかもしれない躊躇の中で、男は未知なる世界に踏み出す決意をする。未来なんてほんのわずかなきっかけで変えられる。それをチャンスとみなして乗ってみるか、漫然と見逃すか。運命は自分の足で歩こうとする者の味方をすることをこの作品は教えてくれる。

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COACH コーチ 40歳のフィギュアスケーター - 福本次郎

◆高級車を乗り回す独身生活をエンジョイし、現状にあきらめに近い満足を覚えている一方で、心には埋めがたい空白と将来への漠然とした不安を抱えている。そんなヒロインの感情と、彼女を取り巻くスケート界の日常がリアルだ。(50点)

 才能のない子供や初心者のオッサンにレッスンをしながら心は冷めている。華やかなショーで身にまとう女子高生の制服姿の不自然さも自覚している。かつてフィギュアスケートの五輪候補だった女・40歳の現在が丹念に描かれる。高級車を乗り回す独身生活をエンジョイし、現状にあきらめに近い満足を覚えている一方で、胸には埋めがたい空白と将来への漠然とした不安を抱えている。そんな微妙な気持ちと彼女を取り巻くスケート界の日常が非常にリアルだ。もう若くないけれどまだ若者と張り合うオバサン、十代のスケーターがヒロインを見るイタいまなざしが残酷だ。

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50歳の恋愛白書 - 福本次郎

◆妻と母の役割をきちんとこなし、豊かな暮らしを送る50歳の主婦がふとした瞬間に感じる空白は更年期からくるものなのか。愛や幸せなど幻想で本心に嘘をついている、そんな家族の虚構に気付いた彼女の心理がリアルに再現される。(50点)

 優しい夫、気さくな隣人、少し反抗的だが一応まともに育った子供たち。妻と母の役割をきちんとこなし、それなりに豊かな暮らしを送る50歳の主婦がふとした瞬間に感じる空白は更年期からくるものなのか。不眠と夢遊病、刺激的な都会から老人人口率の高い退屈な住宅地に引っ越してきたヒロインは、あり余る時間の中で過去を振り返り、漠然とした不安と不満を心に抱いてしまう。愛や幸せなど幻想にすぎず、本心に嘘をついている、そんな家族の虚構に気付いてしまった彼女の心理がリアルに再現される。

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サベイランス - 福本次郎

◆2人組の警官が自分たちの持つ権力をひけらかし、被疑者のとる卑屈な態度をもてあそびあざ笑う。思わず嫌悪感を抱いてしまう警官の不正に何らかの因果応報があるのかと期待させながら、映画は予想外の方向にブッ飛んでいく。(50点)

 ごく普通に自動車を運転している市民にスピード違反と因縁をつけて、さんざんいたぶった上に財布を取り上げる2人組の警官。彼らはただ自分たちが持つ権力をひけらかし、退屈な日常に刺激をもたらそうとしているだけだ。しかも周到に役割を分担して、被疑者のとる卑屈な態度をもてあそびあざ笑う。思わず嫌悪感を抱いてしまう警官の不正にきっと何らかの因果応報があるのかと期待させながら、映画は予想もしない方向にブッ飛んでいく。

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抱擁のかけら - 福本次郎

◆2人組の警官が自分たちの持つ権力をひけらかし、被疑者のとる卑屈な態度をもてあそびあざ笑う。思わず嫌悪感を抱いてしまう警官の不正に何らかの因果応報があるのかと期待させながら、映画は予想外の方向にブッ飛んでいく。(70点)

 愛の喜びと失った時の怒りと絶望、一旦忘却の彼方に押しやったそれらの感情が年月を経て熟成され、主人公の胸によみがえる。死という事実を冷静に見つめなおして思い出を客観視し、新たな発見を加えて再評価する。悲劇には違いない、だが前に向かって歩き始めるのが生き残った者の務め。10年以上も時間が止まったままの彼が、ある男との出会いを通じて生きる力を取り戻す過程を、幾重もの秘密と嘘、謎と伏線で包み、愛という最もミステリアスな心の真実に迫っていく。現在と過去が頻繁に行き来する中で、諦観と希望、喪失と再生が見事なコントラストで描かれる。

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ボーイズ・オン・ザ・ラン - 福本次郎

◆何事にも今一歩が踏み出せないのは自信のなさが原因でとわかっているのに、目に見えない殻を脱却できない主人公。その姿には突き放したくなりつつもつい共感を覚え、しまいには応援したくなるほど人間的な魅力に満ちている。(60点)

 押しが弱いために仕事ではうだつが上がらず、好きな女の子との距離もなかなか縮められない。そんな、何事にも今一歩が踏み出せず、どうしようもないほどウジウジした男の生活がリアルに再現される。誕生日をテレクラで迎え、せっかく彼女をホテルに誘っても何もできず、挙句の果てにライバル会社の社員に売り場も彼女も横取りされる。自信のなさが原因であるのがわかっているのに目に見えない殻を脱却できない主人公の姿には、突き放したくなりつつもつい共感を覚え、しまいには応援したくなるほど人間的な魅力に満ちている。

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ゴールデンスランバー - 福本次郎

◆巧妙に張り巡らされた罠とカメラの目。権力によってスケープゴートにされ、あてもなく逃げ回る主人公。誰を信じればいいのか、追い詰められた男は己の無実を疑わない友人知人たちへの「信頼」だけを武器に、街中を奔走する。(60点)

 巧妙に張り巡らされた罠とカメラの目。警察組織とさらにその上に君臨する権力によってスケープゴートに仕立て上げられた主人公が、あてもなく逃げ回る。ゴールは見えず、あきらめたときはすなわち死。誰を信じればいいのか、誰が裏切り者なのか、追い詰められた男は己の無実を疑わない友人知人たちへの「信頼」だけを武器に、街中を奔走する。情報管理の名のもとに政府が行う国民の監視に対して日頃から反発を覚えている一般市民が、できる範囲で彼に手を差し伸べて少しでも不快感を表明しようとする。彼に力を貸すのは、ひいては民主主義を守ることにつながるとみな感づいているのだ。

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インビクタス/負けざる者たち - 福本次郎

◆アパルトヘイトの名残りある南アフリカ、マンデラは国をまとめるためラグビーW杯を利用する。映画はイーストウッドが近年描いてきた愛や苦悩といった個人的な感情より、壮大な目的に命をかけた男のゆるぎなき人間像に迫る。(70点)

 手入れの行き届いた芝のグラウンドでラグビーの練習をする白人、道路一本隔てた石ころだらけの空き地では黒人少年たちがサッカーに興じる。その境界の道路を釈放されたマンデラが乗る自動車が走りぬける。まだアパルトヘイトの名残りある南アフリカが新しい時代に向かってスタートを切る象徴的なシーンだ。やがてマンデラは人種の入り混じった国を一つにまとめるためラグビーW杯を利用する。映画は、イーストウッドが近年描いてきた愛や苦悩といった個人的な感情の機微より、新国家建設という壮大な目的に命をかけた男のゆるぎなき人間像に迫る。

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オーシャンズ - 福本次郎

◆イルカの群れがイワシの大群を水面近くに追い込み、一気に突進する。さらに、生まれたばかりのウミガメの赤ちゃんに群がるグンカンドリや、海岸で戯れるオタリアの幼獣に突然襲いかかるシャチなど、弱肉強食の掟を繰り返す。(60点)

 イルカの群れがイワシの大群を水面近くに追い込み、一気に突進する。上空からは海鳥がくちばしを突き出して銛のように急降下してイワシをとらえる。仕上げにサメやクジラが大きな口をあけてイワシの群れごと一気に飲み込もうとする。まさにイワシ食べ放題といった壮大な晩さん会は、食べる者と食べられる者の力関係を冷酷に描写し、餌となるためだけに生まれてきたようなイワシにまったく同情を寄せることはない。さらに生まれたばかりのウミガメの赤ちゃんに群がるグンカンドリや、海岸で戯れるオタリアの幼獣に突然襲いかかるシャチなど、弱肉強食の掟を繰り返し、海洋で生きる厳しさを見せつける。

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パラノーマル・アクティビティ - 福本次郎

◆音はするが姿は見えない。気配は感じるが実体はない。邪悪な空気は小さな物音から始まり、ドアを動かし、ついには就寝中のベッドに侵入する。その得体の知れない存在に神経をさいなまれていく主人公ふたりの葛藤が生々しい。(50点)

 音はするけれど姿は見えない。気配は感じるのに実体はつかめない。霊感の強い女が日々悩まされる未知なるものからのコンタクト。「それ」は邪悪な空気を振りまきながら、最初は小さな物音から始まり、やがてドアを動かし、窓を開け、ついには就寝中のベッドにまで侵入する。その得体の知れない存在に神経をさいなまれていく主人公の葛藤が生々しい。映画は、恋人の身に起きる超常現象を記録しようとする男のカメラがとらえた映像を通じて、常識の範疇を超えた恐怖に追い詰められていく感情の昂りをリアルに再現する。

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おとうと - 福本次郎

◆迷惑ばかりかけられるのに見捨てることができない。幼いころから弟の出来の悪さを知っている、血縁の濃い姉という立場の微妙な距離感と戸惑いを吉永小百合が上品に演じ、彼女が口にする言葉の美しさが映画に品を与えている。(80点)

 出来が悪いからこそいとおしく、迷惑ばかりかけられるのに見捨てられない、肉親のストレートな情愛。中年を過ぎてもいまだに中途半端な生き方しかできず身内のトラブルメーカーとなっている弟を持ったヒロインは、いつか彼が立ち直ると期待している。物語は、そんな姉と弟の腐れ縁を人情味あふれるタッチで描く。親ならばたいてい先に死ぬが、姉はほぼ同時に年をとる。幼いころから弟の素行を知っている、血縁の濃い姉という立場の微妙な距離感と戸惑いを吉永小百合が上品に演じ、彼女が口にする言葉の美しさが映画に品を与えている。

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