マイレージ、マイライフ - 福本次郎

◆人間関係のしがらみを捨て、人を解雇することを生業にしている主人公が薄っぺらな生き方に気付き、人生に本当に必要なものは何かを問いかける。たまったマイレージでワンランク上のサービスを受けて優越感に浸る姿が滑稽だ。(80点)

 人間関係のしがらみという名の荷物をすべて捨て去り、人の働き口を奪うことを生業にしている男。もちろん彼にも多少の後ろめたさがあるのだろう、しかし、それを意識すまいと心がけ、他人からは充実しているように見られたい。そんな主人公が薄っぺらな生き方に気付き、人生に本当に必要なものは何かを問いかける。地に足のついた暮らしよりも忙しく動き回る自分の姿に酔っていて、一年中飛行機に乗り出張ばかりのなかで、ワンランク上のサービスを受けて優越感に浸る姿が滑稽だ。

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息もできない - 福本次郎

◆粗暴な言葉しか口にせずいつキレるかわからない、触れるだけで切れそうな危険な男がスクリーンから発する荒んだ緊張感は、まさに息ができないほど。映像から発散する常識をぶち破ろうとする異常なまでのパワーに圧倒される。(80点)

 男は女を殴り、夫は妻を殴り、チンピラは学生を殴り、息子は父を殴り、取り立て屋は債務者を殴る。殺伐とした暴力の連鎖は、素直に感情を表現できない主人公の荒廃。肉親に愛された記憶がない男が、成長してもなざらついた心を持て余し、バイオレンスの衝動を抑えきれないでいる。粗暴な言葉しか口にせずいつキレるかわからない、触れるだけで指を切ってしまいそうな危険な男がスクリーンから発する荒んだ緊張感は、まさに息ができないほど。映像から発散する従来の常識をぶち破ろうとする異常なまでのパワーに圧倒される。映画はこのチンピラと女子高生の間に生まれた奇妙な共感を通じて、孤独な人間が他者と関わりの中でやさしさを取り戻していく過程を描く。

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スイートリトルライズ - 福本次郎

◆ゲームに熱中する夫と現実感が希薄な妻。お互いの領域に深く踏み込まないことでバランスを保っている。快適さの中のぎこちなさと物足りなさの中の安心感。夫婦を維持していくには、情熱や真実よりも、小さな嘘が必要なのだ。(40点)

 同じベッドで寝ているのに性行為はなく、ひとつ屋根の下に暮らしているのにケータイで連絡を取り合う。自室にこもってゲームに熱中する夫、家事は得意だが現実感が希薄な妻。お互いの領域に深く踏み込まないことでバランスを保っている。快適さの中にあるぎこちなさと、物足りなさの中の安心感。この奇妙なふたりが同時に浮気相手を作り、あらためて自分たちの関係を見直していく。愛しているのに別れなければならない、愛していないのに壊したくない。夫婦という役割を維持していくためには、情熱や真実よりも、相手を傷つけない小さな嘘が必要なのだ。

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フィリップ、きみを愛してる! - 福本次郎

◆嘘だらけの人生の中でたった一つの真実、それは愛。しかし、物語は要領のよい主人公のイージーな人生観を投影しているのみで、切実な感情が描かれているわけではない。せめてコメディの味付けがあれば退屈せずに済んだはずだ。(40点)

 嘘だらけの人生の中でたった一つの真実、それは愛。ゲイ恋人と一緒にいるために他人をだましてカネを盗むだけでなく、恋人本人に対しても虚構を貫き通す。豪勢な暮らし、刑務所での生活、その間に膨大な労力を費やした上に、命がけの偽装までする男の奇妙奇天烈な半生を追う。しかし、「実話」と強調しているあたりそもそもフィクションと宣言しているようなもの。物語はただ要領よく世渡りするイージーな彼の人生観を投影しているのみで、そこに主人公の切実な感情が描かれているわけではない。せめてコメディの味付けがあれば、この荒唐無稽な展開も退屈せずに済んだはずだ。

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ダレン・シャン - 福本次郎

◆人の血をすする悪の権化でもなく、本能に苦悩する理性でもなく、人間と折り合いを付けて共存しているバンパイア。人間の敵ではなく、見世物の舞台に活躍の場を求めるあたりが、善悪の価値観が一元的でなくなった21世紀的だ。(60点)

 人の血をすする悪の権化でもなく、体内に潜む本能に苦悩する理性でもなく、きちんと人間と折り合いを付けて共存しているバンパイア。超人的な力が必要な時だけ少しだけ人間の血を盗み、むやみに仲間を増やそうとはしない。そんな、永遠の生を運命と受け入れ、人目につかないようにひっそりと暮らしている姿が健気。もはや人間の敵ではなく、フリークスとして見世物の舞台に活躍の場を求めるあたりが、善悪の価値観が一元的でなくなった21世紀的だ。人間対バンパイアの対立ではなく、バンパイア界でのタカ派とハト派の主導権争いという視点も斬新だ。

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シャーロック・ホームズ - 福本次郎

◆鍛え上げられた肉体と洗練された格闘術、抜群の記憶力と洞察力。科学の力が神秘や魔法にとってかわった時代、論理的な思考とタフな肉体を武器に難事件を解決する主人公は、さまざまな顔を持つある種のスーパーヒーローだ。(40点)

 クールでスタイリッシュかと思えば少し間の抜けたところがあり、鍛え上げられた筋肉と洗練された格闘術を身につけているが女の扱いには疎い。さらに抜群の記憶力と観察力で過去を見通してしまう洞察力がある割には他人の心を読めない。科学の力が神秘や魔法にとってかわった時代、論理的な思考とタフな肉体を武器に難事件を解決する主人公。ガイ・リッチーによって新たに創作されたシャーロック・ホームズ像は、さまざまな顔を持つある種のスーパーヒーロー、しかし、映画はそんなキャラクターよりも圧倒的な見せ場の波状攻撃で見る者の興味をつなぎとめる。

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噂のモーガン夫妻 - 福本次郎

◆離婚が当たり前のNYから、家族だけでなく地域全体が一つのコミュニティの田舎町にやってきた別居中の夫婦が、日常からの遮断の中でパートナーの良さを再発見する。きれいな水や空気、新鮮な食べ物は人間性まで浄化するのだ。(50点)

 夫の浮気が許せない妻、過ちを認め妻に許しを請う夫。決して嫌いになったわけではないけれど、結婚生活から少し距離を置きたい男女が命の危機にさらされたとき、再び夫婦の絆を取り戻せるのか。離婚や別居が当たり前のNYから、家族だけでなく地域全体が一つのコミュニティの田舎町にやってきたカップルが、日常からの完全な遮断の中でパートナーの良さを再発見する。そして、生き延びるという共通の目標の中で双方ともに相手を必要としていた事実に気づく。映画は、ニューヨーカーが遭遇するカルチャーショックをユーモラスにとらえつつ、きれいな水や空気、新鮮な食べ物が人間性まで浄化していくことを教えてくれる。

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時をかける少女 - 福本次郎

◆「記憶は消されても、心は覚えている」。出会いから別れまでほんの短い間だったけれど、その気持ちはまぎれもなく恋。人探しの途中で、ヒロインが偶然遭遇した大学生との間に芽生える人を思う感情は、時を経ても変わらない。(60点)

 「記憶は消されても、心は覚えている」。出会いから別れまでほんの短い間だったけれど、その気持ちはまぎれもなく恋。30年以上前にタイムリープした少女が、知識では知っていても感覚としては未体験の時代をエンジョイする姿が楽しい。古い自動車や路面電車、消えつつある駄菓子屋、銭湯のマッサージチェア、 4畳半一間のアパートとこたつでの雑魚寝、サイケ調の隣人、そして8ミリカメラ。映画は、人探しをするヒロインが偶然遭遇した大学生と接近していく過程で、人を思う感情は時を経ても決して変わらないことを描く。

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ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ - 福本次郎

◆裏切りと嘘、ハッタリと罠、欲の皮が張った男女が綾なす壮絶な心理バトルがスリリング。参加者の行動を予測し、心の動きを解説する主人公はクールかつニヒルで、人間の本質を突く彼の考察は一般論としても十分に楽しめる。(40点)

 裏切りと嘘、ハッタリと罠、欲の皮が張った男女が綾なす壮絶な心理バトルが非常にスリリングだ。誰が味方で誰が敵か、寝返った者が次のステージではまた協力し、どんでん返しの先にある二重の仕掛けが見る者をひきつける。しかし、繰り返されるアップや短いカットの多用とわざとらしく観客の注意を喚起させる大げさな効果音、さらに後半はくどくどとした説明に大半の時間が費やされ、徐々にその安っぽい展開に飽きてくる。もはやCMによる中断のないテレビドラマの拡大版でしかなく、わざわざ映画にして劇場公開する意味が見えてこない。そういえばスクリーンの縦横比率もテレビと同じくらい、もしかして1年も経たないうちにTV地上波で放映されるのではないだろうか。

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劇場版 喧嘩番長~全国制覇 - 福本次郎

◆どちらが強いかだけでなく、誰がいちばん強いのかを確認したくなる、そんな高校生たちがバトルロイヤルを繰り広げる。小賢しい理屈はなく、有り余るエネルギーを爆発させる機会をもちたい若者たちの情熱がほとばしっている。(50点)

 どちらが強いかだけでなく、誰がいちばん強いのかを確認したくなる、そんな高校生たちが東京に集まり、バトルロイヤルを繰り広げる。各都道府県ひとりずつの腕に覚えのある番長たちが、次第に二派に分かれ、最終決戦に向かう様子は戦国時代を見ているよう。そこには小賢しい理屈はなく、有り余るエネルギーを爆発させる機会をもちたい若者たちの情熱がほとばしっている。あえて熱い友情といったベタな要素を薄くし、喧嘩に明け暮れるバカバカしさに徹したところに好感が持てた。

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ハート・ロッカー - 福本次郎

◆息をのみ、瞬きを忘れ、背筋は固まり、拳を握りしめ座席から身を乗り出していた。ほんのわずかなミスや油断も許されない緊張感のもと、死と隣り合わせ、極限まで集中した命がけの作業は、見る者にも一瞬の気の緩みを許さない。(70点)

 息ができなかった。正確には息をのみ、瞬きを忘れ、背筋は固まり、拳を握りしめ座席から身を乗り出していた。ほんのわずかなミスや油断が即爆発につながり、莫大な被害をもたらす。道路や車、果ては人体に仕掛けられた爆弾を無力化しようとする兵士たちのテンションがスクリーンから漲る。死と隣り合わせ、極限まで集中した命がけの作業は、見る者にも一瞬の気の緩みを許さない。映画は、イラクに派兵された米軍治安維持部隊の爆発物処理班兵たちの日常を通じ、 21世紀の戦争の現実を描く。圧倒的武力を持つ米軍に対し通常の戦術では勝ち目がなく、抵抗勢力は爆弾テロと狙撃でしか対抗できないのだ。

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後ろから前から - 福本次郎

◆女性タクシー運転手のセクシー営業がコミカルだ。客が彼女の太ももに手を這わせるだけでなく、客に運転をさせて自らは口淫に励んだり、果ては背面騎上位で運転する。ヒロインのセックス大好きなキャラが男の妄想をかきたてる。(50点)

 「自分の行き先が分からないから、客が行き先を決めてくれるタクシーの運転手になった」。そう語る、事故で記憶を失った女は、アイデンティティが分からないゆえに現在にも自信が持てない。迷いが仕事に反映されるのか、売上が伸びない。そんな彼女が一念発起してセクシー営業で成績を伸ばす様子がコミカルだ。助手席に座った客が彼女の太ももに手を這わせるだけでなく、客に運転をさせて自らは口淫に励んだり、果ては背面騎上位で運転する。ヒロインのセックス大好きな明るいキャラが男の妄想をかきたてる。

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パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 - 福本次郎

◆自らの知力と体力と仲間を信じて若者は旅に立ち、途中に立ちふさがる様々な困難を、友情と信頼、勇気とアイデアで乗り越える。映画は、ギリシア神話と現代米国文化を巧みにコラボさせ、壮大な特殊効果で最後まで見せ場が続く。(50点)

 自らの知力と体力と仲間を信じて若者は旅に立つ。途中に立ちふさがる様々な困難を、友情と信頼、勇気とアイデアで乗り越えて、冒険の終わりにはひと回りもふた回りも成長する。それは大人への通過儀礼、英雄になる将来が約束されている少年には避けて通れない道なのだ。映画は、海神の子が現代に生まれるファンタジーの中、ギリシア神話と現代米国文化をコラボさせ、壮大な特殊効果で最後まで見せ場が続く。愛、憎しみ、怒り、嫉妬、権力、そういった人間的感情が人間よりも強いギリシアの神々が己の欲望のために動く姿は皮肉が効いている。

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渇き - 福本次郎

◆現実と妄想が複雑に入り混じり、映画はノワールな色調を湛えたファンタジーの様相を帯びる。それはイマジネーションが生む幻惑的な感覚のリアル、はかなさの中にも凶暴なきらめきを宿す映像は、生きることの切なさを訴える。(50点)

 聖職者としての使命と吸血鬼としての生存本能の葛藤に加え、人間のとしての欲望が主人公の心を蝕む。生き続けるだけでも罪なのに、その上人妻を愛してしまった男の苦悩は更なる深みにはまっていく。現実と妄想、願望と幻覚が複雑に入り混じり、物語はノワールな色調を湛えたファンタジーの様相を帯びてくる。それはパク・チャヌ監督のイマジネーションが生みだした幻惑的な感覚のリアル、はかなさの中にも凶暴なきらめきを宿す映像は、生きることの根源的な切なさを訴える。

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猿ロック THE MOVIE - 福本次郎

◆銀行強盗、ヤクザ、警察、そして謎の美女。逃げては追い、信じては裏切られる複雑に入り組んだ人間関係の中でのスリリングな男の冒険は、スピーディで見る者に考える間を与えず、細かい矛盾や疑問点の芽を強引に引き抜いていく。(40点)

 銀行強盗、ヤクザ、警察、そして謎の美女。突然主人公に降りかかった非日常が彼の人生を変えていく。逃げては追い、信じては裏切られる複雑に入り組んだ人間関係の中で、男のスリリングかつミステリアスな冒険がスピーディに描かれる。次々に立ちはだかる謎と難題を体当たりで解決して行く過程は、見る者に考える間を与えず、細かい矛盾や疑問点の芽を強引に引き抜いていく。だが、余りにも多くの登場人物に様々な意味を持たせ過ぎたため整理がつかなくなり、ストーリーは全体像が見えにくくなってしまった。

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