シャッター アイランド - 福本次郎

シャッター アイランド

© 2009 by PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.

◆感覚はどこまで正しいのか、何が正常で何が異常なのか、主人公が事件の真相を追う過程で、閉ざされた島、消えた患者、謎の灯台、巨大な陰謀といったさまざまな要素が混沌と秩序のメタファーとなり、主観の本質に迫っていく。(60点)

 しっかりと地に足を付けきちんと観察しているはずなのに、どこか現実が歪んでいく。回りの人間が抱く秘密と嘘に、逆に監視されているような気分になっていく。そんな主人公が覚える違和感を、身にまとわりつくようなねっとりとしたカメラワークで再現する。感覚はどこまで正しいのか、何が正常で何が狂ってのか、彼が事件の真相を追う過程で、閉ざされた島、消えた患者、謎の灯台、巨大な陰謀、といったさまざまな要素が混沌と秩序のメタファーとなって、人間の主観の本質に迫っていく。

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ソラニン - 福本次郎

ソラニン

© 2010 浅野いにお・小学館/「ソラニン」製作委員会/写真:太田好治

◆夢だけを追うには歳を取り過ぎ、夢をあきらめるには若すぎる。何者にもなれずにもがいている主人公の感情が非常に切なくてリアルだ。映画はどこかにある希望を探し求める若者の姿を通じて、生きることの辛さと素晴らしさを描く。(70点)

 夢だけを追うには歳を取り過ぎ、夢をあきらめるには若すぎる。大人になる前にやり残したことに未練を覚えている若者と、彼を応援ている恋人。目標に向かって努力しているつもりでも、居心地のいい“今”に押し流され、何者にもなれずにもがいている主人公の感情が非常に切なくてリアルだ。そして彼に身を託し、一緒に寄り添うヒロインもまた、自己の証を求めている。ぬるま湯のような現在に浸りきってしまいそうな恐れと、不確定な未来への不安、映画は閉塞感に覆われそうになりながらもどこかに希望があるのではと彷徨する彼らの姿を通じて、生きることの辛さと素晴らしさを描く。

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誘拐ラプソディー - 福本次郎

誘拐ラプソディー

© 2010「誘拐ラプソディー」製作委員会

◆人生に嫌気がさした男が、父親の愛を知らずに育った少年と旅に出る。コミカルなテンポの中にも人情を交え、男が人としての責任を学び、少年に他人を信じる気持ちが芽生える過程は、信頼を取り戻していく物語に昇華される。(50点)

 思い通りにならない人生に嫌気がさした男が、父親の愛を知らずに育った少年と旅に出る。その途中、男は少年に約束を守る重要性を説き、少年は男に理想の父親像を見る。家族のあたたかさに無縁だったふたりは、やがてお互いに親子のような感情を抱き始める。ふとしたきっかけで誘拐に手を染めた男と少年の逃避行、それはストックホルム症候群以上の依存関係をふたりの間に生む。映画はコミカルなテンポの中にも人情を交え、男は人としての責任を学び、少年に他人を信じる気持ちが芽生える過程は、人間同士の配慮や信頼を取り戻していく物語に昇華される。

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アーマード 武装地帯 - 福本次郎

アーマード 武装地帯

© 2009 Screen Gems, Inc. All rights reserved.

◆命がけだからこそチームワークを大切にし、仕事に誇りを持っている。そんな男たちが立てた現金強奪プランは些細な失敗で崩れていく。映画はB級のにおいを強烈に放ちながらも、良心と友情の狭間で葛藤する主人公の姿を描く。(50点)

 いかにもミリタリー崩れといった風情の荒くれ男たちは、その任務の性格から同僚を家族同然に扱い信頼を深めている。それは、堅牢な装甲を施した輸送車で毎日大量の高額紙幣を運ぶ彼らがギャングの襲撃を備えているから。命がけだからこそチームワークを大切にし、仕事に誇りを持っている。そんな男たちが立てた現金強奪プランは些細な失敗で崩れていく。武骨な輸送車、使われなくなった工場、杜撰な計画、重低音が腹に響くサウンドデザイン・・・。映画はB級のにおいを強烈に放ちながらも、良心と友情の狭間で葛藤する主人公の姿を描く。

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モリエール、恋こそ喜劇 - 福本次郎

◆若き日のモリエールが、喜劇とは何かを模索し、実践する決意を実行するまでを描く。豊かな暮らしの中で暇を持て余した人々が走るものはいつの時代でも恋。相手の美しさを称え愛を語るうちに言葉が洗練されていく過程が楽しい。(50点)

 人間を観察し、そのクセや特徴をつかむ。誰もが他人に抱いているかすかな感情を刺激し、リアリティを持たせつつ笑いに昇華させる。大衆演劇でウケるのは、観客にとって「こんな人いるよね」というような共感を持てるキャラクターで、そのディテールを誇張することで琴線に触れる役者。映画は後に劇作家として歴史に名を残したモリエールが、喜劇とは何かを模索し、実践する決意を実行するまでを描く。豊かな暮らしの中で暇を持て余した人々が走るもの、それはいつの時代でも恋。相手の美しさを称え愛を語るうちに、言葉が洗練されていく過程が楽しい。

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半分の月がのぼる空 - 福本次郎

◆思いが純粋なほど喪失感は深く、時間がたつほど自責の念が強くなる。少年と難病の少女の恋という手垢の付いたテーマながら、不器用でも懸命に体当たりする高校生ならではのまっすぐな感情をノスタルジックな映像に焼きつける。(70点)

 その思いが純粋なほど喪失感は深く、時間がたつほど自責の念が強くなる。好きな気持ちに素直になれない出会いのころから、一緒にいるだけでときめいて仕方のない時期を経て、やがてつらい別れの後に悲しい記憶として胸の重しとなっていく。映画は、少年と難病に侵された少女の恋という手垢の付きすぎたテーマながら、不器用でも懸命に体当たりする高校生ならではの感情を、ノスタルジックな映像に焼きつける。主人公のまっすぐに人を思いやる姿が何の衒いもなく描かれ、過ぎ去った青春の日々を思い出させてくれる。

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誰かが私にキスをした - 福本次郎

◆記憶喪失をきっかけに過去を一新しようとする少女は、違う自分になれるような気がしている。3人の少年の間で揺れ動くヒロインの気持ちを軸に、繊細な年頃の残酷な感情を実験精神にあふれたスタイリッシュな映像で再現する。(40点)

 記憶喪失をきっかけに過去を一新しようとする少女は、古いしがらみを思い出すより新たな人間関係を築いて違う自分になれるような気がしている。恋なのか憧れなのか、大人になる一歩手前の複雑な心理がリアルに描かれる。胸の内をストレートに口にするのは偽善者と思われたくないため、しかし、己の言葉が他人を傷付けることもあると知って彼女は成長していく。映画は3人の少年の間で揺れ動くヒロインの気持ちを軸に、繊細な年頃の残酷な感情を実験精神にあふれたスタイリッシュな映像で再現する。だが、エピソードがあまりにもとりとめがなく、何が言いたかったのかさっぱり理解できなかった。まあ、イマドキの高校生が考えている内容など最初からわからんが。。。

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シェルター - 福本次郎

◆多重人格は犯罪者が罪を軽くするための演技、そう断罪する女医が遭遇した信じがたい男は二つの人格が完璧に別れている。心霊かトリックか、科学で解明できない出来事を探るヒロインが、やがて怨念の渦に巻き込まれていく。(40点)

 多重人格は犯罪者が罪を軽くするための演技、そう断罪する女医が遭遇した信じがたい男は二つの人格が完璧に別れている。それは内面的な特徴だけでなく、肉体的な疾患までもが人格によって変化する特異なもの。そんな超自然現象を目の当たりにしたヒロインが彼の秘められた謎を解き明かす過程で、驚愕の過去に突き当たる。心霊かトリックか、科学で解明できない出来事はいったいなぜ起きるのかを探る彼女が、やがて怨念の渦に巻き込まれていく。

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やさしい嘘と贈り物 - 福本次郎

◆朝目覚め、鏡の中を見つめる。その顔には深いしわが刻まれ、目は落ちくぼみ、白髪には張りがない。そんな主人公が新たな出会いに心を弾ませるシーンが微笑ましい。いくつになっても恋の予感は人を若返らせる魔法の薬なのだ。(60点)

 朝目覚め、鏡の中を見つめる。その顔には深いしわが刻まれ、目は落ちくぼみ、白髪には張りがない。主人公は老いを自覚しながらも身だしなみを整える。昼間はスーパーでレジの補助をしつつイラストを描く彼の後ろ姿に、独居老人の現実が恐ろしい影となってのしかかっていく。そんな彼が新たな出会いによって、まるで少年のようにウキウキと心を弾ませるシーンが微笑ましい。いくつになっても恋の予感は人を若返らせる魔法の薬であることを思い出させてくれる。

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TEKKEN-鉄拳- - 福本次郎

◆あらゆる格闘技の使い手が覇を競う大会にひとりの青年が挑戦する物語は、ただ強さを競うにとどまらず怒りと憎悪について掘り下げようとする。だが、ゲームソフトを実写化しただけの奥行きのない世界観が作品の足を引っ張る。(40点)

 マーシャルアーツ、カポエラ、コマンドサンボ、骨法、合気道、剣術、忍法、キックボクシングといったあらゆるジャンルの使い手たちが一堂に会して覇を競う大会にひとりの青年が挑戦する。しかし、そこには彼の知らない秘密が待ち構え、陰謀に巻き込まれていく。映画は通常の格闘技バトルでは飽き足らず、主人公の出生や親子の確執を盛り込み、ただ強さを証明する物語にとどまらず怒りと憎悪について掘り下げようとする。だが、ゲームソフトを実写化しただけの奥行きのない世界観はかえって作品の足を引っ張り、登場人物の華麗なテクニックの数々も驚きとはほど遠い。

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NINE - 福本次郎

◆撮影が始まるのに脚本が書けない、追い詰められた映画監督の創作の苦悩が浮き彫りにされる。現実から逃げ妄想に浸る主人公のイマジネーションが生んだ、ゴージャスな女優陣のセクシーなダンスの数々は華やかに目を楽しませる。(60点)

 新作の撮影が始まろうとしているのに、脚本が一行も書けていない。記者会見、銀行員、プロデューサー、映画に関わる人々が次々と催促するなか、インスピレーションはわかず、ペンが進まない。いっそ誰もいないところに消えてしまいたい、そんな追い詰められた映画監督の、創作の苦悩が浮き彫りにされる。現実から逃げ回り妄想に浸る主人公のイマジネーションが生んだ、ゴージャスな女優陣によるセクシーなダンスの数々が華やかだ。まだ映画が娯楽の王様で監督が撮影所の神様だった時代の雰囲気を残しつつ現代風な味付けもなされており、豪華なセットを組んだミュージカルナンバーは虚構の世界を存分に堪能させてくれる。

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ブルーノ - 福本次郎

◆相手を挑発して笑いものにしようとする作意はむしろ悪意に近い。主人公の言動にはユーモアのセンスよりも悪趣味が先行し、彼に不愉快な思いをさせられる映画の中の登場人物同様、見ているほうもうんざりした気分になってくる。(20点)

 人はどれだけ無礼な他人に対して寛容になれるか。最初は好意的に笑顔で接していても、徐々に眉根を寄せる怪訝な表情に変わり、そこに不可解な異物と接触した不気味さが加わり、ついには怒りが爆発する。その反応はごく当たり前のもので、相手を挑発して笑いものにしようとする作り手の作意はむしろ悪意に近い。主人公の言動にはユーモアのセンスよりも悪趣味が先行し、彼に不愉快な思いをさせられる映画の中の登場人物同様、見ているほうもうんざりした気分になってくる。コメディを指向するのなら、対象は権威や権力、古臭い因習や時代遅れの伝統にすべきであって、常識的な価値観や普通の人々の暮らしではないはず。まあ、そういった良識に対してションベンを引っ掛けてやろうというのがこの作品の狙いなのは理解できるが。

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ウディ・アレンの夢と犯罪 - 福本次郎

◆仲の良い兄弟は金持ちになる夢を見る。それは成功した人々のアイデアや勤勉を見習うのではなく、稼いだカネという結果に憧れる浅はかなもの。幸運は簡単に訪れるはずもなく、ふたりが陥穽に落ちていく過程は教訓に満ちている。(50点)

 仲の良い兄弟は金持ちになる夢を見続ける。それは世間で成功した人々のアイデアや勤勉を見習うのではなく、稼いだカネという結果に憧れる浅はかなもの。兄は怪しげな投資に夢中になり、弟はギャンブルで一攫千金を狙う。そんな、貧しさにあえいでいるわけではない、それでも今より豊かになりたい人間の愚かな欲望に油を注ぐ21世紀的な拝金主義に、映画は強烈なしっぺ返しをくらわせる。自分の利益にこだわる彼らに幸運は簡単に訪れるはずもなく、ふたりが陥穽に落ちていく過程は教訓に満ちている。

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アイガー北壁 - 福本次郎

◆目まぐるしく変化する山の表情を前にして、己の知識と経験、そして肉体を頼りに頂上を目指す。垂直に切り立った絶壁で重力を克服し、氷雪と風がもたらす最悪のコンディションと戦い、凍傷の痛みに耐える姿が生々しく再現される。(60点)

 雲ひとつない満月の夜、足元さえ見えない濃霧、容赦なく吹きつける極寒の猛吹雪。目まぐるしく変化する山の表情を前にして、己の知識と経験、そして肉体を頼りに頂上を目指す。しかし、当時の装備では気まぐれな風雪に対抗するには十分とはいえず、挑戦者たちは無残にも命を落とす。垂直に切り立った絶壁で重力を克服し、氷と雪と風がもたらす最悪のコンディションと戦い、凍傷の痛みに耐え、それでもわずかな生存への望みをかけるクライマーたちの姿が生々しく再現される。

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抵抗 死刑囚の手記より - 福本次郎

◆モノクロの画面は淡々と主人公の行動を描写するが、映像にかぶせられた独白が心理的な緊張感を盛り上げる。カメラと対峙する俳優は感情を大げさに表現することを拒み、脱走の準備をする過程はこの上ないテンションをはらむ。(60点)

 自動車のドアノブ、狭い独房、木製のドア、スプーンで作ったノミ、高窓からみた中庭・・・。主人公は目で見た世界を分析し、脱走のプランを練る。モノクロの画面は淡々と彼の行動を描写するが、映像にかぶせられた独白が心理的な緊張感を盛り上げる見事な演出だ。カメラと対峙する俳優は感情を大げさに表現することを拒み、あくまでリアリティに徹する。それゆえ狭い独房で繰り広げられる外部との通信、道具の製作といった脱走の準備はこの上ないテンションをはらんでいく。

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