書道ガールズ!! わたしたちの甲子園 - 福本次郎

書道ガールズ!! わたしたちの甲子園

© NTV

◆堅苦しい旧来の作法を解き放ち仲間同士力を合わせて創作する、作り手の喜びを伝える新しい書道パフォーマンス。映画は、ひとつの目標に向かって努力する定型のなかで、成功よりも失敗にこそ学ぶべき点が多いこと強調する。(70点)

 筆に墨を含ませ、紙に向かう。書道とは己自身と対峙、その内面が書に現れる心の鏡。だが、ここでの書道は、作品の出来栄えだけでなく、制作過程のパフォーマンスまでを含めて評価するというもの。堅苦しい旧来の作法を解き放ち、部員同士が力を合わせて創作するのだ。独創性を持った新しい波は、作り手の喜びを伝えることから始まると、少女たちは全身で表現する。映画は、ひとつの目標に向かって共に努力する達成感を描く青春モノの定型のなかで、成功よりも失敗にこそ学ぶべき点が多いこと強調し、結果以上に流した汗に価値があるとを教えてくれる。

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エンター・ザ・ボイド - 福本次郎

エンター・ザ・ボイド

© 2010 FIDELITE FILMS - WILD BUNCH - LES FILM DE LA ZONE - ESSENTIAL FILMPRODUKTION - BIM DISTRIBUZIONE - BUF COMPAGNIE

◆全編宙に浮いたような位置でカメラを回して人間界を俯瞰し、リアルな性行為にまで踏み込んで描写するギャスパー・ノエが目指した世界は、大いなるイマジネーションに富んでいる。死は終わりではなく転生までの準備期間なのだ。(60点)

 肉体を離れて浮遊する意識は自由に空間を移動するだけでなく、記憶の中にある過去にも遡ることができる。感覚が冴え、見るもの聞くものが過剰に知覚され、情報の洪水に圧倒されそうになる。死は決して魂の安らぎなどではなく、生という軛からの解放。しかしそれは感じられても、思考や行動で己を主張できない。だからこそ意のままにならないとわかっていても、魂は新たな入れ物を求めて現世に復帰しようとするのだろう。

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劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル - 福本次郎

劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル

© 2010「劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル」製作委員会

◆ダジャレとパロディ、謎解きまで、全編ユル~い展開にテンションは下がりっぱなし。ツッコまれるのが目的の小ネタと脱力感あふれるエピソードの数々は、観客の心をくすぐるのではなく、あえて寒さを感じさせるのが狙いなのか。(30点)

 江戸時代の奇術師と蘭学者の因縁に始まり、「1Q84」をもじった主人公の著作タイトルやベタなダジャレ、過去のドラマ・映画の引用、そして手垢のついた謎解きまで、全編ユル~い展開に、見る者のテンションは下がりっぱなし。ツッコミを入れられることを目的としたとしか思えない瞬間芸のような小ネタからあまりにも幼稚な手品の種まで、脱力感あふれるエピソードの数々は、ストレートに観客の心をくすぐるのではなく、あえて寒さを感じさせるのが狙いなのか。その演出意図は悪くはないのだが、曲がりすぎて捕球できないナックルボールのように、笑いのストライクゾーンをはずしている。

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グリーン・ゾーン - 福本次郎

◆ハンディカメラの映像は激しく揺れ、戦場の緊迫感を再現する。それは自動小銃を手に銃弾をかいくぐり疾走する兵士が知覚する感覚のリアリティ。主人公の息遣いだけでなく、心臓の鼓動までが聞こえそうなテンションの高さだ。(70点)

 街灯も乏しい裏街でターゲットを追い、時に銃撃戦を交えつつ走り抜ける。ハンディカメラで撮影された映像は上下左右に激しく揺れ、戦場の緊迫感を再現しようとする。それはペンやカメラを持ったジャーナリスト的な第三者の目ではなく、実際に自動小銃を手に銃弾をかいくぐり疾走する兵士が知覚する感覚のリアリティ。主人公の息遣いだけでなく心臓の鼓動までが聞こえてきそうなテンションの高さは、おのずと見る者に彼の不安や恐怖、それらを克服しようとする昂奮と冷静さを伝える。

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運命のボタン - 福本次郎

◆大金を得るために他人を犠牲にした人間に試練が与えられる。無表情な視線、突然の鼻血、諜報機関の関与。追い詰められていく夫婦が体験するじわじわと真綿で首を絞められるような感覚が、思わせぶりな映像の連続で再現される。(40点)

 大金を得るために他人を犠牲にした人間に試練が与えられる。良心の呵責にさいなまれ、日常が徐々に歪んでいき、わずかな刺激にも過剰反応してしまい、やがては正常な精神状態が保てなくなる。無表情な視線、突然の鼻血、諜報機関の関与。追い詰められていく主人公夫婦が体験するじわじわと真綿で首を絞められるような感覚が、思わせぶりな映像の連続で再現される。ところが、彼らに“運命のボタン”を贈った謎の男の過去が明らかになるにつれ、怖さよりもばかばかしさが先に立つ。

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劇場版“文学少女” - 福本次郎

◆大人になると汚れてしまうと思いこむ少女にとって、意のままにならない人生など生きるに値しない。彼女が、人を愛し愛される、人を信じ信じられるのが、「ほんとうの幸」につながることを知る過程がみずみずしい感性で描かれる。(60点)

 ずっと純粋な気持ちのままでいたい、自分の醜い部分が許せない、そんな思春期特有の繊細な心理が宮沢賢治の作品のモチーフに投影され、「死」という言葉が持つ甘美な響きに強く惹かれていく様子がリアルに再現される。大人になると自らが汚れてしまうと思いこんでいる少女にとって、意のままにならない人生など生きるに値しない。彼女が、人を愛し人に愛される、人を信じ人に信じられるのが、「ほんとうの幸」につながることを知る過程がみずみずしい感性で描かれる。オタク系フィギュアのような登場人物の大きな目と細長い胴体・手足が最初はとっつきにくかったが、“文学少女”のイメージにはぴったりだ。

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ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲- - 福本次郎

ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲-

© 2010「ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲-」製作委員会

◆堕落の果てにある快感を体現するような仲里依紗の弾けぶりに圧倒される。悪を象徴するにふさわしい洗練された様式美に統一され、熱狂と息苦しさを見事に表現するゼブラクィーンが熱唱するシーンだけでも一見の価値がある。(50点)

 スプレーしたシャドウで射るようなまなざしを強調し、漆黒のボンテージ衣装を身にまとって挑発するように腰をくねらせる。マイクを握ったヒロインの邪悪を超えた冷酷さと淫靡を伴った艶めかしい美しさがMTV調の映像に炸裂する。堕落の果てにある快感を体現する仲里依紗の弾けぶりが見る者を圧倒する。モノトーンのステージは、悪を象徴するにふさわしい洗練された様式美に統一され、映画の持つ熱狂と息苦しさという独特の雰囲気を見事に表現する。このゼブラクィーンが歌うシーンだけでも一見の価値があった。

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劇場版 銀魂 新訳紅桜篇 - 福本次郎

劇場版 銀魂 新訳紅桜篇

© 空知英秋/劇場版銀魂製作委員会

◆原作やTVアニメのファン以外の“いちげんさんお断り”と冒頭で宣言されてしまうのだが、まさに何の予備知識もない者はお手上げ状態。ただ、劇場版と銘打つのならば、せめて目を見張るような映像だけでも見せてほしかった。(30点)

 原作やTVアニメのファン以外の“いちげんさんお断り”と映画の冒頭で宣言されてしまうのだが、まさに何の予備知識もない者はお手上げ状態になる。妙に真剣なバトルシーンの間に突然はさみこまれるぬるいギャグ、楽屋裏話で盛り上がっている登場人物、そして悪ふざけとしか思えない次回予告など、無料で視聴できるTVならば「実験的」として見る者も喜ぶだろうが、わざわざ映画館に足を運んでお金を払って見に来る観客に見せる代物ではあるまい。はたして映像のクオリティも低く、これが日本製アニメかと思うほど。劇場版と銘打つのならば、せめて目を見張るような映像だけでも見せてほしかった。

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コロンブス 永遠の海 - 福本次郎

コロンブス 永遠の海

© Filmes do Tejo II - Les Films de l'Après-Midi. 2007.

◆若くして移民となった主人公が生涯をかけて祖国の復興を夢に見るが、独力でできることはたかが知れている。コロンブスがポルトガル人だったという仮説を立証しようとする医師の姿を通して、常識を疑うのが革新への道と語る。(50点)

 かつて世界の富を寡占したポルトガル、いまやEUの二等国の地位に甘んじたまま栄光は取り戻すには程遠い。若くして移民となった主人公が生涯をかけて祖国の復興を夢に見るが、独力でできることはたかが知れている。せめて歴史に埋もれた事実を掘り起こし、後世に名を残した先駆者の故郷、つまりは新大陸の出発点としてもう一度注目を浴びさせようとする。そんな男の旅は正史に対する挑戦状。彼の行動を見守る国旗を纏った剣を持つ少女は、過ぎ去り日のポルトガルの象徴としてそっと物語に寄り添う。映画はコロンブスがポルトガル人だったという仮説を立証しようと奔走する医師の姿を通して、常識に異を唱えるのが革新の第一歩であることを語る。

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てぃだかんかん~海とサンゴと小さな奇跡~ - 福本次郎

てぃだかんかん~海とサンゴと小さな奇跡~

© 2010『てぃだかんかん』製作委員会

◆己の目標と家族の幸せを秤にかけながら、物質的な豊かさよりも、美しいサンゴの海を取り戻すという使命に突き動かされた主人公の生き方が胸を熱くする。しかし、中途半端に笑いを取ろうとするシーンが彼の熱意に水を差す。(50点)

 沖縄の海に美しいサンゴを取り戻したい。そんな思いにとりつかれた男の一途な行動は、妻子を、友人を、やがては無関心だった人々や開発推進派までも動かしていく。己の目標と家族の幸せを秤にかけながら、物質的な豊かさよりも、環境をこれ以上悪化させてはならないという使命に突き動かされた彼の愚直な生き方が胸を熱くする。しかし、真面目な題材なのに母親が渾身のフックを見舞うという不自然かつ中途半端に笑いを取ろうとするシーンが頻発し、せっかく高邁な理想を持った主人公の熱意に水を差している。いくらコメディアンが演じているからといえ、この作品にバラエティ番組のような低俗な笑いを持ち込む必要があったのだろうか。

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矢島美容室 THE MOVIE ~夢をつかまネバダ~ - 福本次郎

矢島美容室 THE MOVIE ~夢をつかまネバダ~

© 矢島美容室プロジェクト

◆「矢島美容室」というユニットに対して何の予備知識もないと、スクリーンを見ているのが苦痛になってくるはずだ。特に、石橋貴明の異様に強烈なインパクトを残すデカい顔は、不快を通り越してやけくそな気分にさせてくれる。(30点)

 とんねるずのバラエティ番組を毎週見ている視聴者に向けて作られたのだろう、出演者の悪ノリとも思える過剰な演技と毒々しいまでのクローズアップの連続。この「矢島美容室」というユニットに対して何の予備知識もなく映画を見に行くと、おそらくスクリーンを見つめ続けているのが苦痛になってくるはずだ。とくにアフロヘアにアイラインと口紅をさした石橋貴明の異様なまでに強烈なインパクトを残すデカい顔は、不快を通り越してやけくそな気分にさせてくれる。作り手が楽しんでいるのはよくわかるのだが、TVの人気キャラがふざけているだけの作品だった。

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ボーダー - 福本次郎

◆映画史に名を残す2大スターが演技の火花を散らし、謎と秘密、友情と裏切り、犯罪者と刑事、正義と銃弾といったサスペンスの必須アイテムがちりばめられた緊迫感あふれる映像、になるはずだったが、完全なミスキャストだった。(30点)

 映画史に名を残すハリウッドの功労者ともいうべき2大スターが演技の火花を散らし、謎と秘密、友情と裏切り、犯罪者と刑事、正義と銃弾といったサスペンスの必須アイテムがちりばめられた緊迫感あふれる映像、になるはずだった。しかし、デ・ニーロもパシーノも現場をはいずりまわる現役の捜査員を演じるには歳を取りすぎ体のキレがない。そもそもこの2人は「そこにいるだけ」で大いなる存在感を示すことができる俳優、それがどう見ても小物のヒラ刑事を演じるとは……。ミスキャストとはこの映画をいうのだろう。

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川の底からこんにちは - 福本次郎

川の底からこんにちは

© PFFパートナーズ=ぴあ、TBS、TOKYO FM、IMAGICA、エイベックス・エンタテインメント、USEN

◆「私なんてどうせ中の下の女ですから」と、己を過小評価するヒロイン。誇れる過去もなく、現在に不平はないが希望もなく、未来の夢もない。まるで不景気にさらされている現代社会の先行き不透明性を体現しているかのようだ。(60点)

 「私なんてどうせ中の下の女ですから」と、己を過小評価するヒロイン。誇れる過去もなく、現在に不平はないが希望もなく、未来の夢もない。まるで不景気にさらされている現代社会の先行き不透明性を体現しているかのようだ。そんな、何をやっても大した成果は上げられず、早くも人生が諦めモードに入っている彼女の日常と思考法がリアルだ。今より向上は望まないけれど、とりあえず生活に不自由しない収入を得てあとはだらだらと日々を過ごせればいいという、今風な若者の空気が彼女の言動に濃密に凝縮されている。

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フェーズ6 - 福本次郎

フェーズ6

© MMVIII by PARAMOUNT VANTAGE, A Division of PARAMOUNT PICTURES CORPORATION All Rights Reserved.

◆不治の病原体に侵された人類が向かう未来とは、利己的な者が生き残る無情の世界。ピクニック気分の若者たちが恐怖と怒りと絶望の中で危機に対して現実的な対処法を身につけていく様子は、人間的な感情を失う過程でもある。(60点)

 異常な状況では非情な判断が正常な行為とみなされる。そこでは助かる見込みのないものは切り捨てられ、生き残る望みがあるものが次のステップに進むことができる。不治の病原体に侵された人類が向かう未来とは、救世主の登場や偉大なリーダーの活躍によって困難が克服される壮大な物語ではなく、生存本能と良心の狭間で揺れながら、最後には利己的な気持ちが強いものがサバイバルするという無情の世界。ピクニック気分の若者たちが恐怖と怒りと絶望の中で徐々に危機に対して現実的な対処法を身につけていく様子は、人間的な感情を失っていく過程でもあるのだ。

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タイタンの戦い - 福本次郎

タイタンの戦い

© 2010 WARNER BROS ENTERTAINMENT INC AND LEGENDARY PICTURES

◆大きな功績を残した者ほど、引き際を自覚するのは難しい。ここに描かれている神々は、代表権のない会長に祭り上げられた元辣腕経営者が、へそを曲げて会社の足を引っ張るような自爆行為に走っているようなおかしさが漂う。(50点)

 断崖にそびえたつ石像が海に打ち捨てられ、巨大なサソリが戦士に襲いかかり、蛇の体に女の頭を持つ魔物が迫ってくる。その、スクリーンから飛び出してくる映像がこの作品の売りのはずなのに、主人公の主観が多いため画面が微妙に揺れて立体感を楽しむ余裕がない。世界を作った神々が人間に及ぼす影響力を失いつつある時代、神と人間の間に生まれた男が大いなる陰謀に立ち向かう物語は、その壮大なスケールがまさに3D向けなのだが、観客席を巻き込む臨場感に乏しかった。それはCGスペクタルに対し不感症になってしまったからだろうか。

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