ねこタクシー - 福本次郎

◆家庭では妻娘に愛想を尽かされ、職場でもうだつが上がらない男が、守るべき対象が現れると人が変わる。負け組に甘んじていた彼が人生に積極的に立ち向かい、不器用ながらもあきらめず目標を目指す姿は思わず応援したくなる。(50点)

 自分が傷つきたくないから他人を恐れている。そのままではダメなのも分かっている。でも、その一歩を踏み出すための背中を押してくれるようなきっかけがない。家庭では妻娘に愛想を尽かされ、職場でもうだつが上がらない、教師を辞めてしかたなくタクシー運転手になった男が、守るべき対象が現れると人が変ったように周囲とかかわりあいを持ちはじめる。負け組に甘んじていた主人公が人生に積極的に立ち向かい、不器用ながらもあきらめず、一生懸命に目標を目指す過程は思わず応援したくなる。

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イエロー・ハンカチーフ - 福本次郎

◆もしかしたらという期待と、やっぱり駄目だろうなというあきらめ。服役を終えたばかりの男は、一通の手紙に願いを託す。将来に甘い夢などすでになく、わずかに残った希望だけを頼りに旅を続ける主人公の後ろ姿が印象的だ。(60点)

 もしかしたらという期待と、やっぱり駄目だろうなというあきらめ。服役を終えたばかりの男は、一通の手紙に願いを託す。誤解と短慮から妻と気まずい別れ方をしたまま長い歳月が経ち、残っているのは後悔だけ。彼女が今も待っているかどうかひとりで確認する勇気を持てず、若いカップルに後押しされる。将来に甘い夢などすでになく、わずかに残った希望だけを頼りに旅を続ける主人公の後ろ姿が印象的だ。過去という十字架を背負ったウィリアム・ハートの寡黙な背中は圧倒的な哀しみをたたえていた。

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モダン・ライフ - 福本次郎

◆山奥のやせ細った土地の農家が直面する厳しい実態を、ひたすら農民たちへの聞き取りという構成で明らかにしていく。エコロジーやスローライフなどの耳に心地よい言葉は一切なく、農村への憧れなど所詮は幻想であると喝破する。(50点)

 山奥のやせ細った土地にしがみつくように農家の人々は暮らしている。耕作地も牧草地も少ないためにスケールの小さな農業しか展開できず、事業としては先細りするばかり。家族の結びつきを大切にし地元を守ろうとしているにもかかわらず、未来に明るい展望を抱けず後継者不足も深刻。そんな農業従事者が直面する厳しい実態を、ひたすら農民たちへの聞き取りという構成だけで明らかにしていく。エコロジーやロハス、オーガニックやスローライフなどの耳に心地よい言葉はここでは一切口にのぼることはなく、農村への憧れなど所詮は広告会社が作り出した幻想であると喝破する。

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SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム - 福本次郎

◆平凡な日常から脱却しようともがく、もはや青春を卒業した女たちの魂の叫びを短く刻んだリズムで解き放つ。セリフにすればクサすぎる思いもラップだとストレートに口にできる、その素直なエネルギーがスクリーンに爆発する。(90点)

 カッコつけるのではなく、いちばん弱いところダメなところカッコ悪いところを脚韻を踏んだ言葉でさらけ出す。冷静に己を見つめ、客観的に対峙し、「ダサくても一生懸命に生きているんだ」と主張する。思い通りにならないもどかしさと周囲に理解されない不満、そんな日常から脱却しようともがくもはや青春を卒業した女たちの冒険と挫折。映画は彼女たちの魂の叫びを短く刻んだリズムに乗せて解き放つ。セリフにすればクサすぎる思いもラップだとストレートに口にできる、その素直なエネルギーがスクリーンに爆発する。

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ボローニャの夕暮れ - 福本次郎

◆高校生の娘にかいがいしく世話を焼く父親は、彼女にボーイフレンドの手配までする。そんな彼らから少し距離を置いている母親の姿が対照的。第二次大戦をはさんだ激動の時代を生きぬいた親子を通じて、家族の絆とは何かを問う。(60点)

 高校生にもなった娘にかいがいしく世話を焼く父親は、彼女にボーイフレンドの手配をして楽しい青春を過ごせるように気を使う。普通の父親ならば結婚前の一人娘に男が近寄るのを快く思わないはずなのに、クラスメイトの少年を買収してまで彼女に接近させる。あらゆるものを犠牲にしても娘に無償の愛をそそぐ父親と、彼らから少し距離を置いている母親の姿が対照的だ。映画は第二次大戦をはさんだ激動の時代を生きぬいた親子を通じて、家族の絆とは何かを問う。

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さんかく - 福本次郎

◆女子中学生がいい歳した男の前に餌をたらし、食いついてくると身をかわす。気まぐれなのか確信犯なのか、男はずるずると彼女のペースに引き込まれていく。そのリアルなセリフと軽妙な語り口が、そこはかとない笑いを誘う。(70点)

 ふとした言葉に期待して、ちょっとした仕種に妄想を膨らませる。そんな単純な男の思いを翻弄する少女の言動が恐ろしい。まだ中学生なのに巧みに表と裏を使い分け、いい歳した男の前に餌をたらし、食いついてくると身をかわす。気まぐれなのか確信犯でからかっているのか、男はずるずると彼女のペースに引き込まれていく。映画はその、恋人の妹に心を奪われた主人公に潜む、人間の愚かさと浅はかさをユーモラスに描く。ありふれた暮らしがいつしか予想外の修羅場になっているという本来は深刻な物語なのに、泥臭いまでにリアルなセリフと軽妙な語り口のおかげでそこはかとない笑いを誘う。

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ザ・ロード - 福本次郎

◆太陽が隠れた空はどんよりとした雲が立ち込め、建物は廃墟となり木々は立ち枯れている。そんな崩壊した地上で、ひたすら南に向かって歩く一組の父子。先に希望があると無理にでも自身を納得させる姿は、哀しみに満ちている。(60点)

 果てしない絶望が支配する世界では、死ですら甘美な夢に思えてくる。ほとんどの生物は絶滅、少ない食料を奪い合うだけでなく、人間が人間を食らう倫理の断末魔のごとき状況で、父は息子に何をしてやれるのか。せめて盗んだり殺したりする悪人にはならないでいてほしいと願う。太陽が隠れた空はどんよりとした雲が立ち込め、建物は廃墟となり木々は立ち枯れている。そんな崩壊した地上で、父子はひたすら南に向かって歩く。先に希望があると信じて、いや無理にでもあると自身を納得させる姿は、力強い半面、恐怖に爆発しそうなほど脆い哀しみに満ちている。

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パリ20区、僕たちのクラス - 福本次郎

◆もともと個人主義が徹底している上に、多種多様な人種・民族・宗教が混在しているクラス。人は違っていて当たり前という考え方のフランスでは、日本のように“異質なものを排除する”タイプのいじめが存在しないのが新鮮だった。(60点)

 14~5歳の少年少女が集う教室、生徒たちは少しだけ世界の広さを知り、それまで絶対的だった大人に疑いを持ち始め、先生や親も実は欠陥を持つ人間であることに気づいている。そして自分のわがままがどこまで許されるのか、自分の声をどう受け止めどんな答えを返してくれるのかを観察して、常に大人を試すような挑発的な態度を取り続ける。映画はあるクラスの9ヶ月間の出来事をカメラに収め、今学校で起きている問題をリアルに再現する。もともと個人主義が徹底している上に、多種多様な人種・民族・宗教が混在している状態。人は違っていて当たり前という考え方のフランスでは、日本のように“異質なものを排除する” タイプのいじめが存在しないのが新鮮だった。

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ザ・ウォーカー - 福本次郎

◆失われた文明、崩壊した都市、荒廃した人心。色彩をなくした地上を歩く男が大切に運ぶのは「本」という名の希望。濃淡を強調したメタリックな映像は理性の喪失を象徴し、手を血で染めなければならない彼の苦悩を表現する。(40点)

 容赦なく照りつける太陽と砂漠を横断する一本道。失われた文明、崩壊した都市、荒廃した人心、色彩をなくした地上をひたすら歩く男が大切に抱えているのは「本」という名の希望。弱い者は常に餌食にされ命を落としていく暴力が横行する世界、主人公は圧倒的な剣さばきと銃器爆弾の扱いで悪党どもをぶち殺していく。濃淡を強調したメタリックな映像は理性の喪失を象徴し、降りかかる火の粉を払うためには手を血で染めなければならない彼の苦悩を表現しようとするが、変に凝った絵作りをして意味深長に見せるよりB級アクションに徹したほうが面白くなっただろう。

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ソフトボーイ - 福本次郎

ソフトボーイ

© 2010「ソフトボーイ」製作委員会

◆「やってみんとわからん!」と、心に浮かんだことにチャレンジする高校生。ソフトボールチームを作るプロジェクトを立ち上げ、周囲を説得し、仲間を募り、志を共にして戦いに臨む。映画はそんな友情と熱血の物語をコミカルに描く。(40点)

 「やってみんとわからん!」と、心に浮かんだことはなんでもチャレンジしようとする高校生。この主人公の根拠なき自信とへこたれない精神力、物おじしない突破力はまさに青春モノの王道だ。小さな田舎町で、簡単にヒーローになりたいと願う彼が、短絡的思考の果てにたどりついたのは競技人口ゼロのスポーツで全国大会を目指すというもの。プロジェクトを立ち上げ、周囲を説得し、仲間を募り、志を共にして戦いに臨む。映画はそんな友情と熱血の物語をコミカルに描く。

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瞬 またたき - 福本次郎

◆苦悩に満ちた現在と輝きにあふれた思い出、ヒロインの失われた記憶を修復する過程が、生きていれば人はどんな悲しみも乗り越えられることを教えてくれる。そして慰めやごまかしではなく、人を救うのは常に真実であることも。(50点)

 愛する人を亡くし深い喪失感にさいなまれているヒロインが、封印していた過去と向き合ううちに希望を取り戻していく。苦悩に満ちた現在と輝きにあふれた思い出、彼女の失われた記憶を修復する過程が、生きていれば人はどんな悲しみも乗り越えられることを教えてくれる。そして慰めやごまかしではなく、人を救うのはどれほどつらくても真実であることも。お互いを必要としていたのに自分だけ命が助かった後ろめたさ、恋人が最期に伝えようとしたメッセージ、そんな物語の核心に迫りつつ心身の傷を癒していく。

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ダブル・ミッション - 福本次郎

◆戦うべき相手は襲い掛かってくる悪党よりも、言うことを聞かない反抗期の子供たち。「体は小さくても精神年齢は大人」と背伸びしている少年少女の気持ちが、ジャッキー・チェンのコミカルにデフォルメされた動きに反映される。(50点)

 戦うべき相手は大勢で襲い掛かってくる悪党よりも、言うことを聞いてくれない反抗期の子供たち。米国白人女性の子守りをする主人公が、「中国人のダサイおっさん」という彼らの偏見を取り除き、尊敬を勝ち取るまでを描く。父親に捨てられたとひねくれている長女、生意気で嘘ばかりつく長男、そしてまだやんちゃ盛りの次女。「体は小さくても精神年齢は大人」と背伸びしている少年少女の気持ちが、ジャッキー・チェンのコミカルにデフォルメされた動きに反映される。彼のフィルモグラフィで、ここまで子供を対象にした作品は初めて見た。

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闇の列車、光の旅 - 福本次郎

◆夢を抱いて豊かな国を目指す。命を落とす者、強制送還される者、そして幸運にも国境を越えても明るい展望があるとは限らない。社会の底辺から抜けようとする少女と組織を裏切った少年の逃避行の中で、中米の貧困の現実に迫る。(70点)

 故郷にいても未来はない。正規のルートで出国する手立てもカネもない。そんな無産階級が夢を抱いて豊かな国を目指す。それは常に死の危険が伴う過酷な旅。命を落とす者、強制送還される者、そして幸運にも国境を越えられても、明るい展望があるとは限らない。映画は経済格差の底辺からなんとか這いあがろうともがく少女と、組織を裏切った少年の逃避行を通じて、中米の貧困の現実に迫る。無賃乗車で何日も過ごす彼らの忍耐の背景にある道徳心の高さは、信仰の深さからくるものなのか。

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彼とわたしの漂流日記 - 福本次郎

◆最初は「HELP」と脱出を試みるが、食料と寝床を確保すれば「HELLO」に変わる意外に楽しい無人島生活。絶望から希望、そして再生への過程をファンタジックとリアルが混じった筆致で描き、二つの心が触れ合う瞬間が切なく美しい。(80点)

 人生に絶望して命を断とうとしたのに、しがらみがすべてなくなると生きようともがきだす。外界から隔離された世界では、食べることがすなわちサバイバル、たった一人で無人島に漂着した男はごちそうを夢に見て、自らの手で完遂する計画を立ててたくましさを身につけていく。最初は「HELP」と必死で脱出を試みるのに、食料の入手法と寝床を確保してしまえば「HELLO」に変わる意外に楽しい孤島暮らし、映画はそんな主人公の姿を通じ人間に必要なものは何かを教えてくれる。どん底から希望、そして再生にいたる過程をファンタジックとリアルが入り混じった筆致で描き、二つの心が触れ合う瞬間がたまらないほど切なく美しい。

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FLOWERS -フラワーズ- - 福本次郎

FLOWERS -フラワーズ-

© 2010 映画「FLOWERS」製作委員会

◆夫への愛や尊敬は結婚してからでも十分に育むことができ、家族が増えるとともに喜びとなってわが身に返ってくる。映画は3世代6人の女の生き方を通じて、人生とは人を愛し人に愛されて初めて豊かになれることを教えてくれる。(50点)

 花嫁衣装に身を包んだまま自宅を飛び出し、あぜ道を走り出すヒロイン。親同士が決めた結婚にどうしても納得がいかず、こらえてきた感情が爆発する。それは真実の愛をいまだ知らない若さと自由への憧れ。このプロローグが、旧弊に満ちた戦前から21世紀の自立した女性の系譜の始まりとして象徴的に描かれる。愛や尊敬は所帯を持ってからでも十分に育むことができ、家族が増えるとともに喜びとなってわが身に返ってくる。映画は3世代6人の女の生き方を通じて、人生とは人を愛し人に愛されて初めて豊かになれると教えてくれる。

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