君が踊る、夏 - 福本次郎

君が踊る、夏

© 2010「君が踊る、夏」製作委員会

◆高知のよさこい祭りを舞台に、青春の夢を追う青年が難病の少女との約束の中で人生で大切なものは何かを問うていく。自分ひとりの名声と仲間と分かち合う喜びを秤にかけ、二者択一を迫られる主人公の成長していく姿がまぶしい。(50点)

 動きを合わせた踊りは躍動感に富み、派手な衣装の裏地や扇の裏表を使って見せる様々な色彩の変化は視覚的に楽しませてくれる。若さあふれる肉体から発散されるエネルギーは自由と歓喜を表現し、一方で仲間と一緒に同じ目的に向かう過程で団結と友情を固めていく。映画は高知のよさこい祭りを舞台に、青春の夢を追う青年が難病の少女との約束の中で人生で大切なものは何かを問うていく。自分ひとりの名声と仲間と分かち合う喜びを秤にかけ、二者択一を迫られる主人公の成長していく姿がまぶしい。

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恋するナポリタン~世界で一番おいしい愛され方~ - 福本次郎

恋するナポリタン~世界で一番おいしい愛され方~

© 2010「恋も仕事も腹八分目」フィルムパートナーズ

◆味覚の記憶が過去を美しい思い出に変え、傷ついたヒロインを癒していく。映画は行き詰ったピアニストと巻き添えで死んだ料理人、そして料理人を想いながら他の男と結婚する女の再生を通じて、人生の素晴らしさを謳いあげる。(40点)

 舌の上でとろけるオムライスの卵、サクサクと香ばしいカツレツ、荒れた胃に優しく病気の体に滋養をつけるおかゆ。男の作った食べ物はヒロインの心で生きている。口にした人が笑顔になる料理、それは彼の思いがこもっているから。味覚の記憶が何気ない出来事を美しい思い出に変え、傷ついた彼女を少しずつ癒していく。映画は行き詰ったピアニストと巻き添えで死んだ料理人、そして料理人を想いながら他の男と結婚する女の悲しみと再生を通じて、人生の素晴らしさを謳いあげる。

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ナイト・トーキョー・デイ - 福本次郎

◆孤独を友とし絶望と添い寝する謎に満ちたヒロイン。そんな彼女が殺すべき男と恋に落ちた時、運命の歯車が狂い始める。大都会の空虚と寂寥、映画は夜の東京を舞台に、胸に哀しみを湛えた殺し屋の切ない感情を切り取ろうとする。(40点)

 孤独を友とし絶望と添い寝する女。他人とのかかわりを最小限にとどめ、深夜に働き昼間は息をひそめている。彼女の事情を録音技師は探ろうとするが、プライベートはほとんど明かさない。そんな謎に満ちたヒロインが殺すべき男と恋に落ちた時、運命の歯車が狂い始める。映画は夜の東京を舞台に、胸に哀しみを湛えた殺し屋の切ない感情を切り取ろうとする。不眠症ゆえに、考えすぎるのを避けるために黙々と肉体労働にいそしむ姿が、大都会の空虚と寂寥を象徴しているようだ。

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悪人 - 福本次郎

悪人

© 2010「悪人」製作委員会

◆金持ちの男友達の前では可愛い女のフリ、不細工な同僚や貧乏な男の前では悪意をむき出しにする女を満島ひかりがさまざまな表情で演じ分ける。欲望に忠実で人を傷つけるのは平気という、女のイヤらしさを巧みに表現していた。(60点)

 祖父母の世話をする青年、父親から娘への一方通行の愛情、胸の空白を埋めるために求めあう孤独な男女。そんな優しさが映画には溢れているのに、人の心に潜む“見下す気持ち”が殺伐とした空気を生み出す。単調で苦労の多い人生にうんざりしながらも懸命に生きる人間と、彼らを笑い飛ばす人間。その二種類の人間が交差した悲劇は、他人からバカにされたに女が他人をバカにしたときに起きる。金持ちの男友達の前では可愛い女でいようとするが、父を利用するときだけ笑顔を見せ、不細工な同僚や貧乏な男の前では悪意をむき出しにする被害者の女を満島ひかりがさまざまな表情で演じ分ける。己の欲望に忠実で人を傷つけるのは平気という、女のイヤらしさを巧みに表現していた。

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終着駅-トルストイ最後の旅- - 福本次郎

終着駅-トルストイ最後の旅-

◆秘書の目を通して見たトルストイ夫妻の愛と、理想を追う側近たちの葛藤。そこにあるのは、自由を標榜する人間ほど目的の達成のためには他人の自由を制限するという皮肉だ。それは後の社会主義の独裁者に通じるものがある。(60点)

 ベッドに伏せる文豪の様子を知ろうと、病院代わりとなった駅舎の周りにできた“記者村”。大勢の報道陣のために脈拍・血圧などの病状が定期的にブリーフィングされる。昭和末期にも日本で見られた光景だが、この物語の主人公・トルストイがいかに大衆の関心を集めていたかを雄弁に語るシーンだ。映画は、彼の秘書の目を通して見た老夫婦の愛と、理想を追う側近たちの葛藤を描く。そこにあるのは、自由を高らかに標榜する人間ほど目的の達成のためには他人の自由を制限するという皮肉。それは後にマルクス主義を拡大解釈し政権をほしいままにした社会主義の独裁者に通じるものがある。

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ニライの丘~A Song of Gondola~ - 福本次郎

◆愛しているはずなのに、ぎこちない接し方をしてしまう父親。胸の内をうまく伝えられず父親を誤解する息子。映画は、青空に陽光が降り注ぐ南国の明るい風土とは裏腹に、出自を知ってしまった少年の苦悩を拗ねた視線で表現する。(50点)

 わが子として愛しているはずなのに、どこかぎこちない接し方をしてしまう。言いつけを守らないときはつい暴力をふるう。そんな、反抗期をむかえた息子の扱いに悩む父親の姿がリアルだ。一方の息子も、胸の内をうまく伝えられず父親を誤解してしまう。そしてすれ違いを繰り返し、お互いの心情に鈍感な父と息子がついに決定的な衝突をしてしまう。映画は、青空に陽光が降り注ぐ南国の明るい風土とは裏腹に、出自を知ってしまった少年の苦悩を拗ねた視線で表現する。その、いつか親に見捨てられるのではないかという、押しつぶされるような切迫感は、戦争で日本に見捨てられて米国の領土となった沖縄の記憶に刻まれた悔しさに起因しているのか。

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ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 - 福本次郎

ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士

© Yellow Bird Millennium Rights AB, Nordisk Film, Sveriges Television AB, Film I Vast 2009

◆胸に宿る復讐の炎に気づかぬ者は大やけどをし、明晰な頭脳をみくびる者は罠にはまる。さらに恐れを知らぬ勇敢さはどんな屈強な男でもぶちのめす。パンクファッションで法廷に現れる雄姿は、あらゆる権威・権力に対する抵抗だ。(80点)

 精神病院で手足を縛められ、「無能力者」のレッテルを張られたヒロイン。彼女を社会から抹殺しようとする男たちは、統合失調症として片付ける。その虐げられた胸に宿る復讐の炎に気づかぬ者は大やけどをし、明晰な頭脳をみくびる者は罠にはまる。さらに恐れを知らぬ勇敢さはどんな屈強な男でもぶちのめしてしまう。鼻ピアスにパンクファッション、髪を逆立てて法廷に現れる雄姿は、あらゆる権威・権力に対する抵抗。反面、今回はハッカーの友人や弁護士、そしてジャーナリストや医者など、味方をしてくれるものには少しだけ胸襟を開くという成長も垣間見せる。

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ミレニアム2 火と戯れる女 - 福本次郎

ミレニアム2 火と戯れる女

© Yellow Bird Millennium Rights AB, Nordisk Film, Sveriges Television AB, Film I Vast 2009

◆忌まわしい過去と巨大な秘密に対峙するヒロイン。壮大な仕掛けと張り巡らされた伏線、よりミステリー色を前面に出し、ダークサイドに堕ちた人間の魂をのぞきこむような映像と意表を突く展開に、スクリーンから目を離せない。(80点)

 小柄で華奢、まるで世界を敵に回すかのごとき憎悪をむき出しにする反面、ハッカーとしての天才的能力、何ものをも恐れぬ勇気と行動力を持つヒロインの強烈な個性はこの続編でも健在。まともに言葉を交わせないほどの他人に対する圧倒的な不信感を、なぜ彼女は抱くようになったのか。今回は偶然巻き込まれた殺人事件をきっかけに、彼女は封印されていた忌まわしい過去と巨大な秘密に対峙せざるを得ない状況に陥っていく。壮大な仕掛けと張り巡らされた伏線、よりミステリー色を前面に出し、ダークサイドに堕ちた人間の魂の奥をのぞきこむような映像と意表を突く展開の連続は一瞬たりともスクリーンから目を離せない。

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バイオハザードIV アフターライフ - 福本次郎

バイオハザードIV アフターライフ

◆過去の名作からの引用がちりばめられたこの4作目、クールな映像はより洗練され、登場人物は無機質になっている。絶望と戦い希望の地を目指すヒロインは相変わらず抜群に強く、ゾンビ軍団も数を増やして彼女を追い詰める。(40点)

 垂直に落下しながらマシンガンをぶっ放したり、ロープを握って屋上からジャンプすると同時に爆弾が爆発したり、水平に投げたサングラスが回転しながら飛んで行ったり、犬の頭が裂けたり、波動を描きながら迫ってくる弾丸をよけたり…。まだまだ枚挙にいとまがないほど過去の名作からの引用がちりばめられたこの 4作目、クールな映像はより洗練され、登場人物は無機質になっている。絶望と戦いながら希望の地を目指すヒロインは相変わらず抜群に強く、それに伴いゾンビ軍団もより数を増やして彼女を追い詰める。

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オカンの嫁入り - 福本次郎

オカンの嫁入り

© 2010「オカンの嫁入り」製作委員会

◆薄型テレビと携帯電話と宮崎あおいという小顔の女優が出てこなければ、40年前のホームドラマを見ているような錯覚を起こしかねない舞台設定。家族の絆と近隣同士の交流が盛んだったころの暮らしの原風景を見ている気にさせる。(70点)

 同じ敷地内に母と娘が生活する家と大家のばあさんが住む古い木造家屋が庭を挟んで立っている。高度成長期以前に建てられたのか、時代から取り残された佇まいは、この3人の長く深く濃い人間関係を象徴している。訪れるのも近所の主婦だけの女の世界、薄型テレビと携帯電話と宮崎あおいという顔の小さな女優が出てこなければ、40年前のホームドラマを見ているような錯覚を起こしかねない舞台設定と交わされる会話の内容は、家族の絆と近隣同士の交流が盛んだったころの庶民の暮らしの原風景を見ている気にさせる。

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名前のない女たち - 福本次郎

◆何のとりえもないのを自覚しているOLがAVの世界で未知の自己を“発見”していく。誰からも必要とされていなかったのが、周りにおだてられる快感。褒められているうちにユニークなキャラを構築していく過程が楽しくも切ない。(60点)

 家では母に邪険にされ、会社では要領のいい後輩の陰で存在感が薄い。そんな、何のとりえもないのを自覚しているOLがAVの世界で未知の自己を“発見”していく。誰からも必要とされていなかったのが、周りにおだてられ頼られ慕われている快感。褒められているうちに、彼女にしかできないユニークなキャラを構築していく過程が楽しくも切ない。孤独と不安を抱えながら必死で生きていこうとするヒロインを安井紀絵が好演。映画は、大量に“女優”が使い捨てにされる AV業界の現実に触れつつ、そこにしか居場所を見つけられなかった女の絶望からの再生を描く。

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小さな村の小さなダンサー - 福本次郎

◆深夜のスタジオでひとり開脚の練習に励み、砂袋を足首に巻きつけて跳躍力をつけようとする。教官の指導は厳しく未熟者は容赦なく罵声を浴びせられる。素質のほかに不断の向上心を持つ者が生き残るバレエの世界を再現する。(50点)

 同輩たちが寝静まった深夜のスタジオでひとり開脚の練習に励み、砂袋を足首に巻きつけて跳躍力をつけようとする。教官の指導は厳しく未熟者は容赦なく罵声を浴びせられる。まるでスポ根マンがさながらの合宿生活、素質のほかに誰にも負けない向上心を持つ者だけが生き残るバレエの世界を再現する。彼らに求められるのは革命への強い意志と国家・党への忠誠心、自分のために踊ることを禁じられた感情のないロボットのような表情が悲しい。物語は、1980年代に米国に亡命した中国人バレエダンサーの“現在”と“過去”を交互に織り交ぜ、思想や権力では決して魂の自由を奪えないことを描く。

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東京島 - 福本次郎

東京島

© 2010「東京島」フィルムパートナーズ

◆絶海の孤島で特別な地位を手に入れた女が、それを楽しみつつも何とか助かろうとエゴをむき出しにしていく。女だからとあがめられ、女だからとさげすまれ、それでも女だからこそ生き延びようとする強烈な決意が浮き彫りになる。(40点)

 絶海の孤島、10数人の男の中のたった一人の女。彼女はその立場を利用して女王のごとく振舞い、男たちを操っていく。水も食料も豊富にあり、贅沢をいわなければ結構快適に暮らしていける環境で、いつしか男たちは島の日常になじんでいる。脱出の機会をうかがう女にはそんな男たちが不満でたまらない。映画は図らずも特別な地位を手に入れた女が、それを楽しみつつも何とかわが身だけでも助かろうとエゴをむき出しにしていく過程を描く。女だからとあがめられ、女だからとさげすまれ、それでも女だからこそ生き延びなければならない強烈な決意が浮き彫りにされていく。

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花と蛇3 - 福本次郎

◆自由を奪われたもどかしさと裸であられもない姿をさらす恥ずかしさに打ちひしがれながらも、いつしかその愉悦にヒロインの意識はとろけていく。それは抑圧していた自我の発見、本能に忠実に生きる人間の満ち足りた表情が美しい。(50点)

 拉致され、監禁され、縛られ、吊るされ、人目にさらされる。それは女の胸の奥深くに潜む快楽を求める部分を道徳や羞恥心から解放するための儀式。自由を奪われたもどかしさと裸であられもない姿をさらす恥ずかしさに打ちひしがれながらも、いつしかその愉悦に彼女の意識はとろけていく。「やめて」と言っている唇が「やめないで」と口走りことでヒロインは本当の自分に目覚めるのだ。それは抑圧していた自我の発見、本能に忠実に生きる人間の満ち足りた表情が美しい。

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トイレット - 福本次郎

◆いつも不機嫌そうな顔の老婆は、自己主張の強い北米の若者から見たデフォルメされた日本人像。彼女の孫たちは心をこめて話せば気持ちが伝わることを発見する。家族という社会の最小単位でも努力しなければ維持できないのだ。(60点)

 いつも不機嫌そうな顔で、トイレを出た後にため息をつく。一切話さず、ただ一瞥をくれるだけ。ほとんど表情を変えないこの老婆は、自己主張の強い北米の若者から見たデフォルメされた日本人像だ。彼女の孫たちは試行錯誤の末、心をこめて話せばコミュニケーションを取れることを発見していく。映画は、家族という社会の最小単位ですらお互いが努力しなければそのつながりが維持できない現実を描くとともに、かけがえのない絆が血縁を超えた結びつきを生む幸福も教えてくれる。

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