アジャストメント - 福本次郎

映画は“運命”という命題に“調整局”を名乗る組織を介在させ、運命は決まっているけれど突発的な例外もありうると示唆する。(点数 60点)


(C) 2011 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

運命とは定められたものなのか、それとも独力で切り開いていくもの
なのか。自分の未来が望まぬ結果に変えられたと知った主人公が、強
靭な意志で本来あるべき道に戻そうとする。彼は愛という感情に支え
られ、そのエネルギーは人知を超越した者たちでさえ翻弄し、心の叫
びに忠実に生きる大切さを訴える。映画は“運命”という命題に“調
整局”を名乗る組織を介在させ、運命は決まっているけれど突発的な
例外もありうると示唆する。

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パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉 - 福本次郎

3Dの奥行きと飛び出す映像に、“映画は大スクリーンで楽しむもの”であると、あらためて思う。(点数 60点)


(C)Disney Enterprises Inc.All Rights Reserved.

血沸き肉躍るようなテーマ曲と共に帰ってきた海と冒険と女を愛する
ヒーローは、期待にたがわず今回も大暴れ。巧みな交渉術で相手から
譲歩と好条件を引き出していく。ロンドンでの大捕り物に始まり海賊
船での魔術、人魚の襲撃、そして宣教師の恋……物語は息つく間もな
いテンポで疾走、アクションにつぐアクションは圧倒的な情報量で見
る者に思考停止状態をもたらす。3Dの奥行きと飛び出す映像に、“映
画は大スクリーンで楽しむもの”であると、あらためて思う。

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エクレール・お菓子放浪記 - 福本次郎

で曲がったことが大嫌いだが、楽天的でいつも前向きな少年を吉井一肇が大熱演。(点数 40点)


(C) 2011 『エクレール・お菓子放浪記』製作委員会

甘く切ないメロディに乗せて、澄み切ったボーイソプラノで朗誦する
「お菓子と娘」。食糧が不足していた戦中戦後の動乱期、主人公の少
年は砂糖をたっぷり使ったお菓子を夢にみて、歌声に希望を託す。そ
の思いは、好きになった年上の女への恋心とシンクロし、少年を真っ
直ぐに歩ませる。映画は、感化院に収容された少年が美しい先生との
出会いを経て苦難の時代を生き抜く決意を固め、どんな苦労にも耐え
抜く姿を描く。真面目で曲がったことが大嫌いだが、楽天的でいつも
前向きな少年を吉井一肇が大熱演。

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レッド・バロン - 福本次郎

現代では考えられない状況に少し憧れすら感じた。(点数 50点)


(C) 2008 NIAMA-FILM GMBH

“スポーツであって虐殺ではない”と、敵戦闘機に銃弾を浴びせても
パイロットは助けてやろうする主人公。彼にとって戦場とはあくまで
己の勇気と技量を量る場で、戦闘は名誉と名誉がぶつかり合う決闘な
のだ。敵であっても優秀なパイロットには友情を示し、戦死すれば悼
む。冒頭、敵パイロットの葬儀に上空から弔いの花束を落としていく
シーンには爽快なダンディズムすら覚えた。戦争がまだ男のロマンを
かきたてた時代、映画は、馬を飛行機に乗り換え槍を操縦かんに持ち
替えた“20世紀の騎士”たちの最後の輝きを描く。

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大木家のたのしい旅行 - 福本次郎

奇天烈な世界観の、ディテールに至るまでの作り込みが素晴らしかった。(点数 60点)


(C) 映画「大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇」製作委員会

長い同棲生活ゆえに、相手に対するときめきがまったくない新婚夫婦。
その緊張感のなさからにじみ出る緩みきった空気が腹をくすぐる。他
愛のないことで口論しても結論を曖昧にする、長年連れ添った男女の
ごとき落とし所が絶妙だ。そんな、変わり映えしない日常にどっぷり
浸かった倦怠期のカップルが“地獄ツアー”に参加する。奇妙なシチ
ュエーションにも関わらず、痴話げんかを繰り返し、せっかくふたり
で温泉に入っても「話すことがない」と口にするシーンがさらなる脱
力感を醸し出す。

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少女たちの羅針盤 - 福本次郎

“生と死”をテーマにしたシュールな設定の中にリアルな感情を盛り込んだ演目は、じっくり鑑賞したくなるほどの出来栄えだ。(点数 60点)


(C) 映画「少女たちの羅針盤」製作委員会

閉店後の商店街に即席の舞台を設えて、早口芝居を上演する少女たち。
個性豊かな4人組が演じる、コント風シチュエーションの女子高生恋愛
事情を鋭く観察して戯画化した、卓球ラリーのごときテンポのパフォ
ーマンスは、思わず笑いを漏らしてしまう。物語は撮影のために故郷
に戻ったタレントが4年前の死亡事故の迷宮に追い込まれていく過程で、
少女劇団の光と影を映し出す。演劇に没頭する鮮やかな群像劇と、ミ
ステリーの二種類の趣向を楽しませる意図は理解できるが、彼女たち
の繊細な心情を丁寧に紡いだ回想部分だけでも十分に楽しめる。

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富江 アンリミテッド - 福本次郎

どこまでが月子の悪夢でどこからが現実なのか、境界が曖昧になるにしたがって月子が味わう混沌がリアルな感触となっていく。(点数 50点)


(C) Junji Ito (C) 2011東映ビデオ

肩のできものから伸びる長い舌、弁当箱に6つ並んだ小さな顔、宙に浮
く生首etc.…。ヒロインに憑りつく悪霊の数々はまるで古い遊園地の
お化け屋敷に出てくるような質感で、恐怖よりもむしろ懐かしさを覚
えてしまう。また、娘の顔がいくつも連なった大ムカデのような怪物
や巨大化した顔など、その見せ物小屋的なおどろおどろしさのおかげ
で、緊張せずに見られる稀有なホラー映画となっている。

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ジュリエットからの手紙 - 福本次郎

「ロミオとジュリエット」の設定をうまく生かした脚本がとてもウイットに富んでいて、幸せな気分になれる作品だった。 (点数 70点)


© 2010 Summit Entertainment, LLC. All rights reserved.

その思いが真実だと信じている限りは、きっともう一度会えるはず。
半世紀もの間眠っていた手紙に残されていた秘密と後悔は、婚約者と
の距離感に悩む娘に発見されて命を吹き込まれる。そこから見えてく
るのは、歳月は人の姿を変えても、心の中にある純粋な部分は決して
色あせないということ。物語は老婦人の古い恋人を探す旅を通じて、
結婚に迷うヒロインもまた運命の人は本当は誰なのかを問うていく。
使いこまれた石作りの街並みと大地の実り豊かな田園、北イタリアの
詩情あふれる風景をバックに繰り広げられるロマンスは口当たりよい。

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ブラック・スワン - 福本次郎

アートに人生を捧げた者だけが立てる高みを映画は見事に描き切っていた。 (点数 60点)


(C)2010 Twentieth Century Fox

「白鳥の湖」の主役に抜擢されたヒロインが、プレッシャーに押しつ
ぶされていく。妄想と幻覚、悪夢と現実が入り混じり、内なる己との
葛藤に徐々に正気をなくしていく過程で得た妖しさを、胸元からあご
にかけ幾本もの筋が浮き立つほど肉体を絞り込んだナタリー・ポート
マンがホラー一歩手前の鬼気迫る形相で演じる。

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岳 -ガク- - 福本次郎

もう少し人間的な苦悩やトラウマを描いていればキャラクターに深みが出たはずだ。(点数 50点)

足元に広がる白銀の稜線を見下ろし峻嶮な頂に立つ主人公の表情は、
登頂する喜びを与えてくれた山へ、好天を恵んでくれた太陽へ、そし
て自分が関わってきた人々への感謝であふれている。そこにあるのは
生きていることへの感動。映画は山岳救助ボランティアの青年と新人
レスキュー隊員の交流を通じ、山と自然の厳しさと命の大切さを訴え
る。宇宙を感じさせるほど透き通った青空を背景に、足跡一つない新
雪の上を駆ける主人公の姿が神々しいまでに美しい。

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パーフェクト・ホスト - 福本次郎

意外性とユーモアのセンスに、Q.タランティーノに出会った時の衝撃を思い出した。(点数 50点)


(C) 2010 THE PERFECT HOST, LLC ALL RIGHTS RESERVED.

脅したつもりが脅される、人質を取ったつもりが人質にされている。
不運な犯罪者と妄想に取りつかれた変質者が織りなす意表を突いた展
開は、不思議の国に迷いこんだような戸惑いをもたらす。シュールで
奇妙、スタイリッシュでアンバランス、どこかボタンをかけ違えた感
覚が非常に新鮮だ。またコンビニ強盗に渡す紙幣を入れる袋の種類を
わざわざ尋ねたり、足の傷を治療するのかと思いきや床の血を拭うな
ど、ウイットに富んだやり取りが緊張をほぐす。その意外性とユーモ
アのセンスに、Q.タランティーノに出会った時の衝撃を思い出した。

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4月の涙 - 福本次郎

エーミルの葛藤が、同胞が殺し合う悲惨さ以上に強烈な印象を残す作品だった。(点数 60点)

男は殺され、女は犯されてから殺される。敵に対する容赦なき制裁、
国と国の戦争ではなく同国民同士の階級闘争においては、俘虜への情
けなど一切必要ないとばかりに、降伏した彼らに銃弾を撃ち込む。映
画はそんな状況に置かれたインテリ階層の苦悩を、1人の女捕虜の扱い
を巡って重層的に描く。あくまで理性的に振る舞おうとする准士官、
信念を曲げない女赤軍兵、そして人文主義の大家といわれた軍事裁判
所判事。愛も理想もヒューマニズムも、圧倒的な暴力の前ではうたか
たのごとき非力なものに過ぎないのだ。

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アンノウン - 福本次郎

圧倒的にスピーディな展開がじっくり考える暇を与えない。(点数 70点)


(C)2011 DARK CASTLE HOLDINGS,LLL

自分はいったい誰? 記憶のみならず、一切の身分証明をなくした男
が途方に暮れ、ヒントを探し、真実を求めてさまよう。ところが、わ
ずかによみがえった妻との思い出も否定され、あらゆる自己認識が崩
壊していく。映画は交通事故に遭った男が経験する奇妙な世界に観客
を放り込み、主人公と同じ感情を体験させる。それは今までに味わっ
たことのない不思議で不愉快な感覚。まるでパラレルワールドに迷い
込んだようなリアルな悪夢となって五感を刺激する。

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豆富小僧 - 福本次郎

利益と効率ばかり重視する現代社会で、誰からも求められない寂しさが、愛嬌のある容姿をした主人公を通して表現される。(点数 50点)


(C) 2011「豆富小僧」製作委員会

妖怪なのに人間から怖がられないばかりか、バカにされてしまう。仲
間からも非力を笑われ、父からは怒鳴られる。そんな妖怪が、いなく
なった母を探す過程で、自分にもできることを見つけていく。映画で
は、利益と効率ばかり重視する現代社会で、誰からも求められない寂
しさが、愛嬌のある容姿をした主人公を通して表現される。何かの役
に立ちたい、でも己には知恵も力もない、そう思い込んでいる彼が、
友人たちとの触れ合いの中で自らの使命に目覚めていく姿が愛おしい。

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マーラー 君に捧げるアダージョ - 福本次郎

マーラーの作品は愛してもマーラー本人は愛せなかったアルマの複雑な気持ちを描くなどの工夫がほしかった。 (点数 40点)


(C) 2010, Pelemele Film, Cult Film, ARD, BR, ORF, Bioskop Film GmbH

世紀末の面影を色濃く保ち、落日の帝国の首都としてかつての繁栄の
残滓に寄り添うかのような20世紀初頭のウィーン。妻の不貞に心を痛
め、創作に行き詰まり、強迫観念に取りつかれたあげく精神科医のコ
ンサルティングを受ける作曲家の苦悩は、近代から現代への大変換に
取り残されそうになっていることに遠因があるのか。貴族趣味の象徴
であるサロンが最期の輝きを見せた時期、アーティストはいかに生き
るべきか、映画は主人公と妻の感情に密着する。

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