テンペスト - 福本次郎

彼の最後の戯曲は、400年の年月を経て、壮大なイマジネーションとCGという魔法の表現技術のおかげで21世紀に見事によみがえった。 (点数 50点)


(C) 2010 Touchstone Pictures

空を舞い水に揺らめく妖精は契約に従っていいなりになるしかない。
言葉巧みに住み処を簒奪された怪物は奴隷に身を落とされ小枝運びの
重労働に悪態をつく。女主人の魔法に縛められた者たちの怒りや苦悩、
後悔、そして自由へのわずかな希望。そんな胸の内を俳優たちは表情
だけでなく、指先からつま先まで使って表現する。一方で、この魔法が
作り出す巨大な嵐や炎を帯びた猛犬などはCGでより具体的に視覚化さ
れ、魔術と科学の境界が曖昧だった時代の人間の心理を再現する。

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奇跡 - 福本次郎

映画は、この年齢ならではの正直さと、芽生え始めた他人への思いやりや独立心といった繊細な感情をリアルに描く。(点数 50点)


(C) 2011「奇跡」製作委員会

鹿児島で母と暮らす兄、福岡で父と暮らす弟。小学生の2人はもう一度
家族を元に戻したいと思っている。心配性で理屈っぽい兄と楽天的で
開放的な弟、各々の長所がお互いの短所を補うかのような2人の性格は、
そのまま両親の遺伝。そんな子供たちが、子供たちなりに悩み、知恵
を絞り、大人の力を借りずに冒険しようとする姿がたくましくも微笑
ましい。映画は、この年齢ならではの正直さと、芽生え始めた他人へ
の思いやりや独立心といった繊細な感情をリアルに描く。

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パラダイス・キス - 福本次郎

映画は少女漫画のセオリー通りの設定で観客の乙女心を刺激する。(点数 40点)


(C) 2011「パラダイス・キス」製作委員会

「お前の意志はどこにある」、そう問われたヒロインは一言も返せな
い。期待を裏切るまいと親の顔色をうかがいながら優等生を演じてき
た女子高生が、彼女の生活にいきなり土足で踏み込んできた男の言葉
に衝撃を受ける。その出会いはまさに運命、彼女は自身が気づかなか
った己の可能性に目覚めていく。きらびやかなファッション、自信た
っぷりで強引な男、叶えられる夢。映画は少女漫画のセオリー通りの
設定で観客の乙女心を刺激する。受験という日常とファッションショ
ーという非日常のコントラストが鮮やかだ。

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光のほうへ - 福本次郎

高福祉政策を実現したデンマークが抱えるリアルな社会問題。(点数 60点)

アルコールに溺れる者、ドラッグに手を出す者、暴力の衝動を抑えき
れない者。決して根からの悪人ではないが、我慢の足りなさゆえ易き
に流れてしまう人々。本当は人並に働き家庭を持ちたいと願っている
のだろう、しかし、わずかなトラブルで責任を投げ出してしまう。映
画はそんな社会の底辺で生きる家族の姿を正面から見据え、人間の弱
さを赤裸々にあぶり出す。先の見えないトンネルで見つけた「子供」
という希望ですら、彼らにとっては重い負担でしかない。彩度の低い
冷やかな映像は、身につまされるようなわびしい感情を象徴している。

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もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら - 福本次郎

根本的に野球に対する“真摯さ”に欠けている作品だった。(点数 30点)


(C)2011「もしドラ」製作委員会

もちろん原作に沿ってストーリーが構築されているのは分かっている。
しかし、ロクに捕球もできず練習もほとんどしない高校の野球部が、
いくらその意識を180度転換したからといって甲子園に出られるほど野
球は甘くない。せっかく映画にするのならば、原作にはなかった野球
のリアリティにもっとこだわり、「地方予選のベスト16くらいの実力
はあるが甲子園には届かない」レベルのチームにしていれば楽しめた
だろう。根本的に野球に対する“真摯さ”に欠けている作品だった。

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軽蔑 - 福本次郎

純文学的な非生産性が非常に魅力的に映る作品だった。 (点数 70点)


(C) 2011「軽蔑」製作委員会

とてつもなくアホでどこまでも世間をナメた男、でもその愛だけは本
物。夜の世界以外に行き場がなく誰からも愛された記憶のない、肉体
を見世物にするしか生きるすべのない孤独な女は、男の強引さに身を
ゆだねてしまう。カメラはそんなふたりにじっと寄り添い、まるで自
分たちがどこまで堕ちていくかを確認したがっているような自虐的な
彼らの行為を見守っていく。男に共感できる点はなく、女に同情する
余地はない。それでも破滅に向かって一直線に突き進む姿は、純粋な
までに感情のリアリティに満ちていた。

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終わらない青 - 福本次郎

己を愛せない彼女の絶望が切ないまでにリアルだった。(点数 60点)

自分は穢れてしまった。傷つき疲れ果て死んでしまいたいと願う少女
は、苦痛に満ちた思いを胸に地獄のような日々を送っている。誰も助
けてくれない、誰もわかってくれない。いや、それ以上に誰にも打ち
明けられない秘密が彼女の心に大きな重石となってのしかかる。映画
は、そんな運命に刃向かう術を知らないヒロインが、ほんのわずかに
芽生えた希望に縋りつこうとする姿を描く。凍りついた食卓で一家3人
が食事をとる場面がこの家に潜む狂気を象徴する一方、抜けるような
青空の下で真っ赤な傘をさす、その色彩のコントラストの鮮やかさが
彼女の苦悩の深さを物語る。

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バビロンの陽光 - 福本次郎

盗んだり騙したりする人間がいなかったのは、この救いのない物語に一条の希望の光をもたらしていた。 (点数 70点)


(C)2010 Human Film, Iraq Al-Rafidain, UK Film Council, CRM-114

岩だらけの荒涼とした大地、破壊されたまま放置された建物。戦争の
傷痕がまだ色濃い荒廃した国を、老婆と少年は南へ向かう。老婆にと
ってはかけがえのない息子、少年にとっては記憶にない父と会うため
に。ふたりの道行はわずかな望みに縋る旅でもあり、過去に決別する
旅でもある。映画はフセイン政権崩壊直後のイラクを舞台に少数民族
という微妙な立場の祖母と孫が辿る行程を通じ、親が子を思う心と子
が親に抱く理想、そして彼らを見つめる人々の視線を描く。

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レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー - 福本次郎

彼らが人間の本性をむき出しにしていく過程が奇妙なおかしさを誘う。(点数 50点)

環境保護の名のもと「正義」を振りかざす偽善者が憎い! 捕鯨を家
業としてきた一家が、生業を否定され、赤貧生活に甘んじている姿が
生々しい。クジラを取れず、今は観光客相手の土産物で細々と生計を
立てているが、もはやその暮らしも破たん寸前、そして怒りの矛先は
ホエールウォッチングなどという平和ボケした観光客に向けられる。
きっと彼らにとって外国人=反捕鯨で、すべからく憎悪すべき対象な
のだろう。弱々しい太陽、どんよりとした海、湿った重い空気…。深
刻な経済危機に陥っているアイスランドの雰囲気が映像から滲みだす。

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TAKAMINE - 福本次郎

“泣き一揆”首謀者の息子・村井との確執と和解のエピソードが映画を感情的に盛り上げる。(点数 40点)


(C)2011「TAKAMINE」製作委員会

医者の子に生まれ、才を認められて海外留学した明治のエリート。夢
を追い続け、他人の夢に力を貸し、日本を近代国家の仲間入りさせる
ことに捧げた男の生涯は、まるで中学生対象の偉人伝のようなサクセ
スに満ちている。もともとティーンエイジャーに向けて作られた映画
なのか、主人公が結果を出すまでの苦難や葛藤よりも、いかに彼がブ
レない心を持って生きたかが語られる。過剰に説明的なセリフも、普
段コミックやアニメでしか物語に触れない年齢層への配慮なのだ。

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プリンセス トヨトミ - 福本次郎

大阪人の「太閤さん」への尊敬やこだわりの視覚化には親しみさえわいてくる。(点数 60点)


(C)2011 フジテレビジョン 関西テレビ放送 東宝

一見普通なのにどこかおかしい。それは背中に視線を感じるが振り返
ると誰もいないという、言葉にできない気持ち悪い感触。慣れない土
地で覚える居心地の悪さをみごとに映像化している。そんな「大阪中
が口裏を合わせている」ような、公然の秘密を自分だけが知らない不
安と緊張がスクリーンからにじみだし大阪の街が異次元空間のように
思えてくるほど不気味なリアリティを伴う演出にのめり込んでしまう。
さらに歴史から隠ぺいされた出来事をを人知れず守る人々の存在が、
「ダ・ヴィンチ・コード」風のミステリアスな知的興奮を刺激する。

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クロエ - 福本次郎

複雑にねじれた感情を、ジュリアン・ムーアは繊細な表情の動きで見事に表現し、映像のテンションをスリラーの域にまで高めていく。(点数 50点)


(C) 2009 Studio Canal All Rights Reserved.

夫は年齢を重ねても魅力的になっていくのに、自分の容姿は日々衰え
ていく。女としての自信をなくし、夫とのセックスさえ拒むようにな
った妻は更年期を迎えますます不安定になっていく。そんな彼女のわ
ずかな疑念が疑惑に成長し、やがて確信へと変化していく過程は緊張
感たっぷり。映画は高級娼婦に夫の身辺調査を頼んだ女が、その顛末
を知らされていくうちに妄想の度を深め、狂気の寸前まで追い込まれ
ていく姿を描く。女性の体を知り尽くした産婦人科医でありながら、
自らの肉体と精神の変調には冷静に対応できない設定は皮肉が効いて
いる。

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マイ・バック・ページ - 福本次郎

「男の涙」を嫌っていた沢田の涙は、ヒリヒリするほどの切なさに満ちていた。 (点数 80点)


(C) 2011映画『マイ・バック・ページ』製作委員会

「泣く男は男じゃない」、そういってアメリカン・ニューシネマのア
ンチヒーローたちの涙を否定する若きジャーナリストは学生運動家に
のめり込み、“歴史の目撃者”になろうとしている。一方、革命家を
気取る学生は、社会を変えるのが使命と考えているが、明確なビジョ
ンを持っているわけではない。物語はそんな、他の者ではない何者か
になりたい2人が出会い、己を取り巻く世界と格闘しながら自分とは何
かを問い続け、答えを探してもがき苦しむ姿を描く。

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愛の勝利を - 福本次郎

「初期のカラー映画の色彩の感覚を再現」しているらしいが、暗過ぎて見づらいようでは本末転倒ではないか。。。(点数 40点)


(C)2009Rai Cinema-Offside-Celluloid Dreamas

彼の気高い理想と行動力に魅せられた。運命の人だと信じてすべてを
捧げた。だが、彼は指導者になった途端、彼女との過去を封印した。
後に独裁者となる男を誰よりも愛し、誰よりも憎んだ女は、当局によ
ってあらゆる記録を消され、最愛の息子とも隔離されてしまう。映画
は、社会主義の隆盛から第一次世界大戦、独裁政治、教会との和解、
そして破滅へと向かうイタリアの歴史を背景に、悲劇のヒロインの人
生を通じて人間性が抑圧されていく過程を描く。

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ゲンスブールと女たち - 福本次郎

癒せない孤独といったセルジュの苦悩にまで言及していれば、作品に重層的な深みが出たのではないだろうか。 (点数 50点)


(C)2010 ONE WORLD FILMS-STUDIO37-UNIVERSAL PICTURES INTERNATIONAL FRANCE – FRANCE 2 CINEMA – LILOU FILMS – XILAM FILMS

「醜い子はイヤ」と女の子に邪険にされた幼い日、彼は女という生き
物を意のままにしようと決意した。それも飛びきり上等の女ばかりを
・・・。子供のころからヌードモデルを口説き、人気歌手に気にいられる
など、早くも女心をとろけさせるテクニックを身につけている主人公。
どんなに美人で裕福でも、必ずコンプレックスを抱えていて、それを
埋めてやり、夢を語れば大抵の女は寝てくれる。映画はそんな、酒と
タバコと歌を愛した男の破天荒な人生をなぞる。

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